近年、MICEという言葉が頻繁に使われるようになってきました。でも、実際のところMICEとはどういう意味を持った言葉なのでしょうか。なぜ、最近になってこれほど言われるようになっているのでしょうか。
MICEとは、一体何を表した言葉なのか。
なぜ、観光庁が先陣を切って誘致に励むのか。
MICEがもたらすメリットや今後に向けての課題、MICEをどのようにしてビジネスに活かすのか、徹底的に解説します。
このページの目次
MICEとは、一言でいうと「ビジネスイベントや国際会議等」のことです。
ビジネスイベントや国際会議等を日本に誘致することで、多くの人や物が動きますので、経済効果が期待できるのです。
そんなMICEについてもう少し詳しく見ていきましょう。
MICEとは、Meeting、Incentive Travel、Convention、Exhibition/Eventの頭文字を取って造られた言葉です。
【Meeting】ミーティング | 企業等の会議 |
【Incentive Travel】インセンティブトラベル | 企業等の報奨旅行や研修旅行 |
【Convention】コンベンション | 国際機関や団体・学会の国際会議 |
【Exhibition/Event】エキシビション・イベント | 展示会・見本市・ビジネスイベント |
ミーティング(Meeting)は、企業等が行う会議のこと。
インセンティブトラベル(Incentive Travel)は、企業等の行う報奨での旅行や研修での旅行のこと。
コンベンション(Convention)は、国際機関や団体、学会等が行う国際会議のこと。
エキシビション・イベント(Exhibition/Event)は、展示会や見本市、ビジネスイベントのこと。
これらは、多くの集客や交流が見込まれるものです。
観光目的ではなくビジネス目的で誘致するビジネスイベントや国際会議などのことを総称してMICEといいます。
MICEは、ビジネスイベントや国際会議等を日本に誘致する目的で造られた造語です。
日本は、経済成長戦略の一環として、観光を基幹産業へと成長させ、観光先進国の実現を目指しています。
近年では、訪日外国人観光客を呼び込むことで、インバンド需要が拡大してきました。
訪日外国人観光客によるインバウンド消費の拡大に向けて、官民一体となり取り組んでいるというのは、皆さんもご存じのことだと思います。
MICEは、その観光立国実現に向けた主要な柱の一つとして、外国人観光客によるインバンド消費の拡大と同じレベルに位置付けられているものです。
観光庁が先陣を切って動いているというのも、このような背景があるからなのです。
では、MICEはどのような形で取り組まれているのでしょうか。
2013年6月「日本再興戦略 - JAPAN is BACK - 」が閣議決定されました。
これは、経済成長戦略の中長期的なプランや目標を定めたものですが、その中の1つに「2030年に、アジアNo.1の国際会議開催国として不動の地位を築く」という目標が明確に掲げられました。
また同月「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」が観光立国推進閣僚会議で決定し、「国際会議等(MICE)の誘致や投資の促進を図ることが重要」と明確に謳われました。
また、MICE誘致競争を牽引することができる実力ある都市を育成するために2013年6月に7都市、2015年6月に5都市の計12都市を「グローバルMICE都市」と選定しています。
さらに、産業界や学術分野において国内外に対し発信力やネットワークを有する方々を「MICEアンバサダー」として委嘱する「MICEアンバサダープログラム」を2013年から実施。
2016年12月には、MICEの受入環境整備や誘致拡大に関係府省が一丸となって支援するための枠組みとして「MICE推進関係府省連絡会議」を設置しています。
まさに観光庁が先頭に立って施策を進めているのです。
では、なぜ官民一体となってMICEにそこまで力を入れるのでしょうか。
観光庁は、MICEを誘致することのメリットとして次ぎの3つの具体的な効果が期待できるとしています。
MICEは、通常の外国人観光客の誘致とは違って、ビジネス目的で日本に来てもらうことを目的としています。
観光客は、自らの休暇を楽しむために訪れるものですが、MICEは仕事の一環として日本を訪れます。
ですので、ビジネスイベントや国際会議等では仕事上の交流が生まれ、新しいビジネスのヒントやイノベーションの機会が出て来ることが期待されています。
また、新しいネットワークや交流、繋がりが生まれることで、あらたなビジネス創出の機会ともなります。
MICEは、ビジネスとして日本の人員と海外の人員を交流させていくことも一つの目的としていて、そこから新しいビジネスチャンスの芽が出て来ることも期待しているのです。
一つのイノベーションが経済に与える影響はとても大きいですので、ネットワークや交流による経済効果が期待されているのがMICEなのです。
MICEは、誘致する都市や地域の経済効果も期待されています。
外国人観光客によるインバウンド消費ももちろん経済効果はあります。 ですが、MICEは、ビジネス目的で日本に誘致することを目的としています。
ですので、そこで生じる経済効果も観光での消費とは趣が異なってきます。
たとえば、国際会議は、参加者が50人以上になるものを指しますが、規模が大きくなれば、200人から1,000人、大規模なものであれば、数千人の人間が会議に参加します。
それだけたくさんの人間が一堂に会するわけですから、波及効果も含めると高い経済効果が期待されます。
また、ビジネス目的で来る方の消費額と観光目的で来る方の消費額には違いがあるというデータもあります。
国際会議の参加者:1人当たり1日消費支出額 | 約69,000円 |
日本への外国人旅行者:1人当たりの1日の消費額 | 約11,000円 |
国際会議協会(ICCA)のデータによると、国際会議に参加する1人の1日当たりの消費支出額は、約69,000円(691USドル)と算出されています。
日本を訪れる外国人観光客のインバンド消費について見てみると、旅行中の1人当たりの1日の消費額は、約11,000円と言われています。
比べてみると約6倍以上の開きがあるのですね。
それだけビジネス目的での誘致は日本の経済にもたらす効果も大きいと言えるのです。
ビジネス目的での誘致を考える場合、インフラ面での整備はかかせません。
規模の大きい国際会議を開催するとなると、会議に出席する参加者は、国際的な大物や有名人である場合も少なからずあります。
要人であればあるほど、安全面への配慮や宿泊施設、交通等さまざまな面から整備することが求められてきます。
ただ、これらの整備や経験を重ねることで、経験値が上がり、より規模の大きい国際会議を誘致することができるようになっていきます。
インフラが整い、経験値が上がることで国際的な都市としての競争力がついてくるのです。
また、規模の大きい会議がとある都市で行われるとすると、各国の報道機関でその都市の名前が全世界に向けて報道されます。
そのことにより都市としての知名度があがり、観光として訪れる人が増えるという面も期待されています。
ワールドカップ等が開催された都市というのは、自然と覚えてしまうもので、規模の大きいビジネスイベントや国際会議等にもそのような期待があるのです。
さて、MICEを誘致することのメリットを見てきました。
たくさんのメリットがあるように思えるのですが、まだまだ課題もたくさんあります。
どのような課題があるのでしょうか。
ユニークベニュー(Unique Venue)とは、特別な場所という意味になります。
たとえば、博物館や美術館、歴史的建造物、神社仏閣、城郭、屋外空間(庭園・公園、商店街、公道等)などが該当します。
海外においては、会議やレセプションを開催するときに、歴史的建造物や公的空間等を活用することで、特別感や地域の特性を演出したりします。
そこにしかない施設や空間を利用することが都市としての差別化になりますので、ユニークベニューの活用が進んで行われています。
ところが、日本の施設では、まだまだ会議やレセプションのために施設を開放するという考え方は一般的ではありません。
そのため、ユニークベニューとして利用できるようなポテンシャルを持った施設や建物、空間は多く存在するものの、なかなか利用開放への理解は得られていないというのが現状です。
その都市にしかない歴史的建造物や空間などが利用できることは、MICE誘致への大きな鍵となるものです。
このあたりがMICE誘致への日本の課題となっています。
ビジネス目的で日本に訪れる場合と、観光目的で訪れる場合とでは、利用する交通機関も違えば、宿泊施設も違ってきます。
また、多くの人間が一堂に会することができる会議室や建物の空間も必要となってきます。
日本にはまだまだ外国からの大規模イベントに対応できるだけのインフラが整った場所というのは多くありません。
規模の大きい国際会議等であれば、各国の要人が出席しますので、安全面への配慮はもちろんのこと、宿泊や交通など、さまざまな方面から整備されている必要があります。
都市や地域に、さまざまな規模のイベントに対応できるインフラを整備していかなければいけないというのもMICE誘致へ向けた一つの課題です。
ビジネスイベントや国際会議等を日本に誘致するとなると、マーケティングや集客に関する知識や経験も必要となってきます。
ビジネスイベントとして展示会を開催するとしても、日本国内の日本の法人に向けた展示会であれば、今までにもたくさん行われてきましたし、すでに知識や経験を持った会社も多数存在します。
ですが、海外に向けての展示会というのは、まだまだ多くはありません。
どのように誘致するのか、どのようなマーケティングを行い、どのように集客するのかなど、これらの知識や経験が不足しているのが現状です。
このあたりは、官民一体となり取り組んでいるところで、今後に向けてどのようなターゲットにむけたプロモーションを展開していくかなど、まだまだ課題は山積みの状態です。
MICEは、今まさに官民一体となり盛り上げていこうとしている施策です。
では、ビジネスの視点で見たときに、どのような分野や産業がMICEをビジネスに活かすことができるのでしょうか。
今、MICEで注目される産業をみていきましょう。
MICEは、国際会議やビジネスイベントを誘致するのが目的となっています。
ですので、必要となってくるのが、会議をする場所やイベントで人が集まれる空間です。
また誘致するのは外国から訪れる方ですので、空間があるだけではなく宿泊施設や交通などが整っているかなどの多方面から運営を考える必要があります。
日本の課題の一つにユニークベニューの活用が進んでいないというのがありました。
ユニークベニューは、その都市やその地域のそこにしかない施設や空間というのが一つのポイントになってきます。
施設や会議室、空間を持っている産業というのは、注目されるポイントになってきます。
「そんな施設を持っていない」という声も聞こえてきそうですが、ビジネスで大事なのは「いかに繋げていくか」という視点です。
進んでいないユニークベニューの活用を促すような事業というのも考えられます。
ユニークベニューとは歴史的建造物のことだけではありません。 その地域のその場所にしかない建物や空間のことです。 商店街だってユニークベニューになります。
そこにしかない空間に対して、いかに価値を高めるマーケティングを行っていくのか。
地域や空間の価値を高める事で、その場所でたくさんの交流を生むことができます。
施設を持っている事が重要なのではなく、その空間に対して価値を高められる事業や人員が今求められています。
MICE誘致に向けてインフラの整備はかかせません。 これからもどんどんとMICEに向けた建設が盛んに行われていくところでしょう。
ただの建設産業かと思われるかもしれませんが、大事なのは、外国人に向けた施設の建設の知識を持っているかどうかということです。
日本に圧倒的に不足しているのが、外国人がビジネス目的で来たときに利用できる施設や空間に対する知識や経験値です。
観光客であれば、観光目的で訪れますので、その国のそのままのあり方を楽しむということで問題ありません。
宿泊施設や観光地なども対応は必要ですが、以前からのやり方で対応できる部分もあります。
ですが、MICEはビジネス目的での誘致となります。 ビジネスで訪れるわけですので、休暇で訪れる施設とは一線を画す必要があります。
今日本にはビジネス目的で訪れる方向けに何を提供すべきかなどの知識や経験値が圧倒的に不足しています。
ただ建物を建てるといったことではなく、ビジネス目的での誘致に向けた施設を建てることができる知識を必要としています。 外国人ビジネスマンが利用する施設に関する知識や知見を活かすことができる事業というのが、今求められているのです。
MICEがかかえるもう一つの問題が、誘致する手段や取り組む人材が不足しているというものです。
どのようにして各国にアプローチしていくのか。
また各国のビジネスマンにどのようにプロモーションしてくのか。
このあたりも圧倒的に手段や人材が不足しています。
ですので、外国のビジネスマンと繋がりを持てる産業というのは、MICEの視点で見たときにビジネスチャンスがたくさん転がっています。
今までも外国人との交流が盛んなビジネスというのはたくさんありました。
今後はもっと別の意味で交流が必要とされるでしょうし、MICEという視点から協力が求められてくるかもしれません。
外国人とのコネクションや交流がある産業というのもビジネスチャンスかもしれませんね。
MICEの意味、メリット、課題、今後のビジネスにどう活かすのかを見てきました。
MICEは、観光庁が先陣を切って取り組んでいる施策の一つです。
それだけに、さまざまな方面から後押しがあるでしょうし、予算もつきやすい産業となります。
MICEという言葉をビジネスに活かすのであれば、どのような方面にチャンスがあるのかを考えてみるというのも大事な部分ではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。
画像出典元:Pixabay、Unsplash
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