確定申告は個人、法人ともに1年間の事業活動を締めくくる重要な作業であり、かつ公的機関である税務署に対して行うために間違えがあってはならない繊細な作業でもあります。
そこで力を借りたいのが、税のプロフェッショナルである税理士です。
自分一人の労力や知識だけではどうにも難しい確定申告であっても、税理士に頼ることで作業から解放され、その分事業にマンパワーを費やすことができるようになります。
ただし、税理士に依頼する場合は費用がかかりますので、自分でできる・やった方が良いケースと、税理士に頼む方が良いケースについて下記のような図を用いてわかりやすく解説します。
会社員や退職者、年金受給者で確定申告が必要となる人や、税理士に依頼するかどうかの判断基準となる、確定申告を税理士に代行依頼する場合の費用相場についても、ケース別に紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
このページの目次
確定申告が必要となるケースについて、(1)会社員などの個人(2)個人事業主(3)法人、の3つのケースを解説していきます。
下の図に、確定申告が必要な人をまとめました。
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
確定申告が必要となる場合については、国税庁のウェブサイトに明記されています。
直近の1月から12月の収入等が以下に該当すると確定申告が必要となるので、覚えておきましょう。
昨今の「働き方改革」により、珍しくなくなった「2か所給与」。
今までの日本であれば、ひとりの人が2つ以上の仕事をするというのは認められていませんでしたが、この数年、自由な働き方に注目が集まり、1か所以上から収入を得ている人が増加しています。
この場合でも「源泉所得税」が徴収されていることがほとんどです。しかし日本の所得税法には「従たる所得が20万円以上の場合は申告が必要」という規定があります。20万円ない場合は申告の必要がなく、20万円を超えている場合は申告が必要です。
多くの場合は、還付になることが多いのですが、従たる給与で社会保険料を納めていない場合は、社会保険料控除がないため納付になることがあります。かといって申告しないというのは論外です。必ず申告をしましょう。
そもそも2,000万円以上の収入が1か所からある場合、年末調整ができません。
年末調整ができないのですから、本来納めなければいけない正しい所得税が計算できていないことは明らかです。
2,000万円と聞くと多くの場合は会社の経営者が該当することがほとんどです。また外資系企業で働く役員等も該当するケースがあります。
収入2,000万円ある人が、年末調整ができないので給与所得控除の定期用ができないというわけではなく、確定申告をすることで年末調整を行う人たちと同様の控除をうけることができます。
住宅ローンを組んで家を購入した場合、1年目だけは確定申告をしなければなりません。
この申告を行うことで、以後適用できる年数分の「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」をもらえます。
適用年度分が一度に渡されるので、紛失しないよう保管します。2年目以降の適用は、この用紙を一緒に提出することで年末調整可能となります。
上記の住宅ローン控除と同じく、医療費や寄付金などの各種控除を受けたい人は確定申告をする必要があります。
退職所得がある場合、多くの場合は勤続年数で計算した控除額により源泉所得税額がゼロ円になります。しかしここで問題があります。
まず、退職金を受領した場合支給した会社に対して「退職所得の受給に関する申告」という会社保管の申告書を提出しなければなりません。これを提出することではじめて源泉所得税が「ゼロ」として計算されます。
この「ゼロ」と記載されている退職所得の源泉徴収票と給与所得の源泉徴収票の両方を使用して確定申告を行います。
給与所得と退職所得はそれぞれ別で計算されるため、一般的には給与所得の源泉所得税が還付となることが多くなります。
公的年金受給額から生命保険や扶養などの所得控除を差し引いて残額がある場合は、確定申告をしなければなりません。
個人事業主として事業を営んでいる場合は、原則として確定申告が必要です。確定申告で所得を申告することで、初めてその年分の源泉所得税の額が決まります。
ポイントは以下の4つです。
①「申告=納税」ではない
② 青色申告の場合は、申告することで赤字を翌年に繰り越せる
③ 課税所得があり控除を適用したい人
④ 消費税の課税事業者
申告すれば必ず所得税を納めなければいけないというのは間違いです。
基礎控除以外の控除を適用するためには、必ず申告が必要です。その結果、所得が発生しないこともあります。
その場合は源泉所得税額がゼロであり、納付の必要はありません。また、予定納税を行っている場合、確定申告で各種控除を適用し結果的に還付となることもあります。
青色申告の届出をしている場合は、青色申告と言われる申告をおこないます。それ以外の人は俗にいう「白色申告」という申告を行います。
ただしこの白色申告という表現は正式な表現方法ではなく、正確には「青色申告者以外」となります。
青色申告を行う場合、例えば前年に赤字があり本年が黒字という場合は前年からの赤字額を本年に繰り越して、黒字額と差引することができます。
つまり前年の赤字が100万円、本年の黒字が80万円という場合は、本年の所得額はゼロとなり所得税が課税されません。また、黒字額が120万円という場合には差引した20万円が課税所得となります。
明らかに黒字であるという場合、青色申告者であれば10万円若しくは青色申告特別控除で65万円の控除を受けることができます。
しかしこれは申告することで初めて適用できる控除です。
勝手に差引きをして「税額はない」となったからといって申告が必要ないというわけではありません。
ただし、控除の種類の中に「基礎控除」と言われる誰でも受けられる控除があります。この控除額は38万円で、所得が38万円以下の場合はこの控除を適用することで所得がゼロになります。この場合のみ申告の必要はありません。
必然的に消費税の課税事業者ということは売上高が1千万円を超えていることになります。確定申告もさることながら、消費税の申告も必要です。
もちろん結果的に申告すべき課税所得がないということもありますが、それは申告をして初めて承認されることです。
「所得税の税額がないから消費税の納税もない」というものではないため、消費税は消費税、所得税は所得税で必ず申告を行います。
確定申告というのは、直近の1月から12月までの所得等収入の確定額を申告することで所得税や住民税等の税額が決まる、というものです。
そこで、特に個人事業主の方がはじめての確定申告で悩むのが、例えば3月など1年の途中で独立した場合の確定申告です。
この場合、3月までは給与所得を受け、4月以降は個人事業主としての報酬等所得を受けることになります。
このとき、3月までの給与所得についても源泉徴収がされていたとしても、その金額は1年間の収入をおおよそで見積もった場合の仮の金額です。
つまり「調整されていない金額」ということですから、3月までの給与所得についても1年間の所得等収入に含めて確定申告を行う必要があります。
また、個人事業主の中には、独立当初は生活を安定させるためにアルバイトを並行して行う、という方もいます。
この場合、アルバイトとして得る給与所得も年間の所得等収入に含まれるので、やはり同じように確定申告の際に所得等収入の計算に含めなければいけません。
法人の確定申告は事業年度ごとに行います。事業年度が終了したら決算をし、税務署に決算申告を行うことで「法人税」「法人住民税」「法人事業税」「消費税」などの金額が決まります。
その後、それぞれの税について確定申告を順次行っていく流れになります。
法人の確定申告は、個人の場合とは異なり法人が定める事業年度期間が終了してから2か月以内に行われるというルールとなってます。
つまり、事業年度期間が4月から3月となっている場合、5月までに確定申告を行う必要がある、ということです。
例えば個人事業主としてではなく法人を設立して、いわゆる「一人社長」のような形で事業を行っている方も多いでしょう。
そういった場合は、自分に支払う給与や報酬については法人として「年末調整」の手続きを行なうために「個人」としての確定申告は必要ないですが、一方で法人としての確定申告が必要となります。
確定申告を自分でやるべきか、税理士に依頼するべきかを(1)会社員などの個人(2)個人事業主(3)法人、についておすすめの方法をまとめました。
会社員などの個人は、確定申告の知識は必要ですが、自分で調べて確定申告をする形で問題ありません。
副業をしているなどで2か所以上から給与所得を得ている人も、自分でできます。各市役所などの確定申告会場でも相談できますので、自分で確定申告をすることをおすすめします。
個人事業主は、白色申告か青色申告をするのか、年間売上の金額によって自分でやった方がいいのか、税理士に頼むべきかが異なってきます。
法人は個人事業主よりも会計管理が複雑ですので、税理士の依頼をおすすめします。
次の章では、おすすめする理由について、詳しく解説していきます。
税理士へ依頼をしようか悩む、個人事業主と法人の確定申告の費用相場について、見ていきましょう。
まず、個人事業主が確定申告の代行を依頼する場合の費用について解説していきましょう。
個人事業主の確定申告は白色申告と青色申告のどちらもが利用できますし、税理士もどちらの形での申告とも対応してくれます。
個人事業主の白色申告をスポットで依頼する場合の報酬は、数万円から多くとも10万円程度で収まることがほとんどです。
ただし、個人事業主の白色申告であれば、個人で利用できる会計ソフトの確定申告書類作成機能を使うなどすれば、自力でできてしまうことが多いです。
また、もし確定申告により所得税の還付金が発生する場合には、せっかくの還付金が税理士への報酬支払により消えてしまうことも考えられます。
個人事業主になった以上、個人にかかる税のシステムを理解することも重要ですから、そういった観点からも白色申告は自力で取り組むことをオススメします。
青色申告の税理士費用については、「記帳」代行の有無と売上規模で相場が変わるというのが大きなポイントです。
青色申告の場合、白色申告ではマストではなかった「記帳」という作業が必要になります。
青色申告では、「青色申告特別控除」という控除(65万円)を受けることができるのですが、そのためには「複式簿記」という形式で事業の収支状況を管理しておく必要があります。
その作業のことを「記帳」といい、かつては文字通り会計簿というノートのようなものに記録していたのですが、現在は会計ソフトに入力して管理するのが主流となっています。
青色申告の代行を依頼する場合の報酬は、この「記帳」の作業を含めて税理士にお願いするか、もしくは「記帳」の作業は自力で済ませておいて確定申告のみを税理士に依頼するかで、まず相場が違ってきます。
さらに青色申告の場合には、売上規模でも相場が変わってきます。だいたい以下のような相場であると認識していただければおおよそ間違いはありません。
青色申告の時の税理士費用相場
年間売上が1,000万円未満で、かつ「記帳」は自分で行う場合であれば、白色申告の代行の相場とあまり変わりません。
なるべく安く済ませたいのであれば、「記帳」の作業は普段からマメに行っておくなどして自分でやっておくことをオススメします。
「記帳」の代行も依頼し、かつ年間売上が1,000万円を超えるようであれば費用相場も20万円を超えてきます。
ただし、これだけ年間売上の規模が大きいとなると、そもそも法人化を行ったほうが税金の面で有利です。法人化については、以下の記事で解説しているので、こちらもぜひ参考にしてください。
ここまで説明してきたように、個人事業主の場合は税理士に依頼せずに会計ソフトを使って自分で確定申告を行ったほうがコスパが良いことがほとんどです。
最近では会計freeeやMFクラウドなど、初心者でも使いやすくて安く使える会計ソフトが充実しています。
税理士なら数万円かかる費用が、会計ソフトでは月額1,000〜3,000円で済みます。
まだ会計ソフトを導入していない方は、税理士の前に会計ソフトの導入を検討しましょう。
法人の確定申告について税理士に依頼する場合の相場は、会社の規模などにもよりますが確定申告のみの場合はおおむね15~25万円が相場となっています。
確定申告だけではなく記帳などの管理作業も含めて一括で依頼する場合には、プラス10~20万円が必要となることが多いです。
法人としての会計管理は個人事業主と比べてかなり複雑で作業量も多くなるために、一人社長が自力でやろうとするのはあまり良いとはいえません。
確定申告だけではなく日常的に面倒を見てもらえるよう税理士の先生に顧問となっていただくことを検討すべきでしょう。
なるべく費用を安くしたいという場合には確定申告のみをお願いするなどの交渉をしてみてください。
以下の記事では、顧問契約をする場合などを含め、ケース別の税理士報酬の相場を解説しています。こちらもぜひ参考にしてください。
いうまでもなく税理士は「税の専門家」です。唯一税金に関する知識が豊富にあるうえに税務申告ができる有資格者です。
「申告をすればいい」と思っている一般の人に比べると格段の税金に関する知識の差があります。
税理士に依頼すれば、自分が持っていない専門的な知識を自分の申告のために利用できます。
個人事業主で事業所得がある場合、給与所得者で不動産所得がある場合には給与所得のみの場合とは違い税額控除が利用できるケースがあります。
もちろん赤字であれば関係ない話ですが、税額が出る「黒字」の場合だと少しでも税金を安くするための税額控除についてアドバイスが受けられます。
税額控除は専門的な知識がなければ、所得税の計算過程の中でどこで適用できるのかわかりません。そのような難しいことでも、専門家である税理士に依頼すれば簡単に出来てしまいます。
確定申告を税理士に依頼することによる最大のメリットは、確定申告の作業にかかる負担を軽減できる、という点です。
確定申告を個人で行う場合には、白色申告であっても1年間の収入・支出状況をきちんと管理しておく必要がありますし、青色申告や法人としての確定申告の場合にはより厳密なルールにのっとった管理が必要となります。
加えて確定申告の書類作成そのものも、慣れていない人にとっては手間のかかる作業ですから、これらの面倒な作業を一部ないしは全部税理士に任せることによって、負担はだいぶ軽くなります。
さらに、特にはじめて確定申告を行うという場合には、白色であっても計算の仕方や書類の記入方法などでミスをしてしまう可能性はあります。
その点、会計業務の専門家である税理士に任せることで、正確性を確保できるというメリットも享受できます。
高すぎる費用がいいとは言いませんが10万円前後での申告であれば、高すぎるといったことはありません。
この程度の費用で申告をしてくれる上に、申告内容に責任を持ってもらえるのであれば税務調査となっても安心して任せることができます。
よく耳にするのは、「税理士に依頼していないから税務調査の対象になってしまった」という話です。これは、「税務代理権限証書」がないために、顧問税理士がいないと判断され「同じ税務調査をするのであれば、専門家がいない方がやりやすい」という課税庁の発想です。
確定申告を税理士に依頼する際には、個人事業主の白色申告であっても数万円から、状況によっては数十万円の費用がかかってしまいます。
特に個人事業主の白色申告のような場合には、本来であれば自力でできて、かつそれなりの金額の還付金を受け取れたはずのものが、安易に税理士に依頼してしまうことで余計な出費となってしまうのはもったいないです。
とにかく申告だけでもお願いしたいといった場合は別ですが、通常であれば中身が伴った申告にはそれなりの費用が掛かって当たり前です。
1万円や2万円といった費用では、「確定申告書を作成した」といっただけになってしまいます。
税理士によっては「申告は作成するから、提出は自分でしてください」という税理士がいます。このような場合は申告書の中身に責任が持てないという場合です。
それなりに費用を支払っているのであれば、そういったことはまずありません。
税理士費用を抑えたい方は、複数の税理士に相談することをおすすめします。
いわゆる「合い見積もり」をとるイメージで、複数の税理士のサービス内容や報酬を比較し合うことで、より良い税理士を選択することができます。
税理士探しで重宝するのが、税理士紹介サービスです。税理士紹介サービスとは、豊富な税理士ネットワークからあなたに合った税理士を無料で紹介してもらえるサービスのことです。
すでに税理士候補がいる場合でも、税理士紹介サービスを通して紹介してもらって他の税理士と比較することで、より確信をもって選ぶことができます。
税理士紹介サービスを使うとき、まず使ってほしいのが税理士ドットコムです。
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また、税理士ドットコム以外であれば、税理士紹介ラボもおすすめです。
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顧客満足度も96.8%と非常に高いです。
なお、税理士の探し方・選び方については以下の記事もぜひ参考にしてください。
税理士へ確定申告を依頼する際には、費用というデメリットと先に挙げた作業負担の軽減および正確性の確保というメリットとを天秤にかけて判断すべきです。
今回、繰り返し述べたとおり、まず個人事業主の白色申告であれば税理士に依頼せず自力でやるべきです。
青色申告の場合でも、会計ソフトを活用して極力自力で進めるようにしましょう。
法人の場合には、確定申告を機に税理士との顧問契約も含めて検討することをおすすめします。
画像出典元:PEXELS,Burst,Pixabay
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