経営者や経理担当者にとって決算申告は1年のうちとても大切でありかつ難しい仕事のひとつです。
個人の所得税の申告と異なり、法人企業の法人税の申告には専門知識が必要です。
申告には、膨大な時間と労力が求められるので、ある程度の規模の会社ならば税理士に依頼するのが一般的と言えます。
しかし、税理士への依頼はハードルが高いことも否めません。
この記事では決算申告の業務は自力ですべきか、それとも税理士に依頼すべきか、さらに決算申告業務のみを税理士に依頼するメリット、その他の業務も含めて税理士と顧問契約を結ぶメリットを紹介します。
この記事を読めば税理士を上手に活用する方法がわかるでしょう。
このページの目次
結論から言いますと、決算申告は税理士に依頼することをおすすめします。
決算とは会社の1年間の収益と費用を計算し、利益や損失の額をまとめた「決算書」を作成することです。
この決算書でその会社の財務状態や経営状態を把握できます。そして決算書に基づき税金の計算、申告そして納付を行います。
事業規模に関係なくすべての法人は、1年に1回決算業務を行い、決算書と税務申告書を作成します。
作成された決算書は、会社の経営状態を知らせる資料として取引先や金融機関、株主に提示されます。
さらに決算書をもとにして税金を計算し、決算書、法人税申告書、課税対象事業者ならば消費税申告書、勘定科目内訳書などの書類を税務署に提出しなければなりません。
個人の所得税の申告よりも、法人企業の法人税の申告には専門知識が必要です。
もし消費税課税対象事業者ならば、その処理に関する知識も新たに身につけなければなりません。
こうしたことには、膨大な時間と労力が求められるので、ある程度の規模の会社ならば税理士に依頼するのが一般的です。
そして経営者に代わり税務代理・税務書類の作成が行えるのは税理士だけです。
決算申告は自力で行うよりも税理士に依頼するほうが便利であることはわかりました。
税理士に決算申告を依頼する方法は2つあります。次にその2つの方法を紹介します。
一つの方法は決算申告だけを税理士に依頼する方法です。
事業年度終了後に、1年分の帳簿類や会計記録を税理士に渡して決算書や税務申告書を作成してもらい、税務署に必要書類と一緒に提出してもらうという方法になります。
継続的な顧問契約ではなく、決算申告のみを依頼するスポット契約になります。
税理士に決算申告を依頼する別の方法は顧問契約を交わすという方法です。
この方法を取れば決算申告だけでなく、税務相談や経営に関するアドバイス、資金調達面でのサポート、月次決算などの業務を依頼することができます。
会社の規模や年間売上などに応じてどちらかの方法を選ぶことができます。
決算申告のみをスポットで依頼すれば顧問契約を結んだ場合よりも税理士費用のコストを抑えることができます。
税理士と顧問契約を結ぶメリットは定期的に税理士に税務相談ができたり経営のアドバイスなどを受けられることです。
しかし、繁忙期などにはそうしたやり取りが負担になる場合もあります。定期的に税理士に税務相談をしたり経営のアドバイスを求める必要がないのであれば、決算申告のみのスポット契約を検討しましょう。
とはいえ、決算申告だけを依頼した場合でも、税理士に渡した帳簿や勘定科目の仕訳の仕方に不明瞭な点があれば税理士とのやり取りが必要になります。
税理士と顧問契約を結んだ場合にも当てはまりますが、自力で作成した決算書よりも、税理士が作成した決算書の方が正確性が高く信頼度が増します。
さらに決算書には税理士の署名が入るので、税務署や取引先に決算書を提出するときにもプロの手によるものであることが伝わります。
しかし税理士が決算書を作成しても税務調査の対象となることがあるのを覚えておきましょう。
決算申告だけをスポットで税理士に依頼することにはいくつかのデメリットがあります。次にその点について紹介します。
効果的な節税対策は決算前ではなく、新しい事業年度が開始されたら、そこから対策を講じていく方が効果的です。
スポット契約の税理士ではこうした対策はできません。
税務調査が入る場合、顧問税理士がいれば経営者に代わり日程の調整や必要な書類の準備、実際の調査が行われるときに立ち会い、調査官に説明をすることができます。
しかしスポット契約の税理士であれば税務調査への十分な準備ができないという場合があります。
年間を通じて税理士と顧問契約を結べば、決算申告だけでなく他の税金や経理に関係する業務も依頼できます。税理士と顧問契約を結ぶメリットを次に紹介します。
税理士と顧問契約を結べば、定期的に税務上の問題や悩みを相談することができます。
また税理士として様々な会社の会計状態を見てきましたから、経営に関する的確なアドバイスを受けることも可能です。
顧問税理士は、依頼されている会社の会計状態を定期的にチェックしています。ですからスポット契約の税理士よりも的確なアドバイスが可能です。
税理士と顧問契約を結べば効果的な節税対策が可能です。
たとえば正しい控除の受け方、経費として計上できる項目について教えてもらうことができます。
また決算前だけでなく、事業年度の開始時から節税対策を講じることができるので、より効果的な節税対策が可能です。
経営者自身が会計や経理の業務を行っているケースがあります。
顧問契約を結べば、会計や経理の仕事から解放されるので、本業や経営に専念できるようになります。
税理士と顧問契約を結べば資金調達面でもサポートを受けられます。
たとえば銀行からの融資、助成金や補助金の活用法について税理士に相談できます。さらに、金融機関から融資を受ける場合に必要な事業計画書の作成も依頼できます。
税理士がすでに銀行の融資担当者とパイプを持っている場合もあります。そうした税理士と契約をすれば融資の話もスムーズに進める事ができます。
税理士と顧問契約をむずべば決算申告以外の仕事、たとえば記帳代行や月次決算、給与計算などの仕事も依頼できます。こうした仕事のために誰かを採用する、既存の社員を教育するとなると採用、教育、毎月の給与、福利厚生などの分野でコストがかかります。
もちろん税理士に支払う顧問料や記帳代行などの作業のための別料金が必要ですが、新しく経理担当者を雇う費用と比べるとコスト削減になる場合があります。
税制はたびたび変更されます。経営者や経理担当者がそれについていくのはとても大変です。顧問税理士に依頼すれば、最新の税制に対応した正確な処理をしてくれます。
また不正確な申告による修正申告や追徴課税の支払いも心配いりません。
顧問税理士は経営者の代理として税務調査の立ち会いが可能です。
税務調査の事前通知の受領、日程調整、調査で必要な書類の準備、当日の調査官への説明などを行ってくれます。
税理士は他の士業、弁護士、司法書士、行政書士と連携している場合があります。
土地の登記は司法書士、顧客や取引先とのトラブルが起こった場合は弁護士、労働環境の改善は社会保険労務士といった案件や内容に応じた士業を紹介してもらえる場合もあります。
顧問税理士に仕事を依頼するデメリットはやはり、スポット契約の場合と比べるとコストが高くなるという点です。
しかし税理士費用以上の節税効果が期待できる、経理担当者を雇うよりコストが抑えられる、決算申告や他の経理業務を自力で行うのは無理といった状況にあるならば、顧問税理士を検討したほうが良いと言えます。
決算申告のみを依頼する場合と顧問契約を結ぶ場合の費用の相場を次に紹介します。
決算申告のみを依頼する場合の税理士費用の相場は以下のようになります。
これらの金額はあくまで相場であり、実際の金額は会社の売上や従業員規模など基づく税理士の判断で変化します。
年間を通じて依頼するような税務関連の業務がないのであれば、スポット契約を結ぶ方が有利です。
たとえば、以下のような事柄だけを依頼することができます。
こうした税務関連の仕事や相談をときどき頼むだけなら、顧問契約よりもコストを抑えることができます。
基本的に税理士と顧問契約を結ぶ場合、一般的に顧問料・記帳代行・決算料の3つの費用が必要となります。
またこれらの費用は依頼する企業が個人事業主か法人かによって金額が違ってきます。個人事業主の場合、法人の場合それぞれの費用相場を紹介します。
税理士が法人から依頼を受けた場合の費用相場は以下のようになります。
顧問料の金額は訪問ペースにより変化します。また記帳代行の費用はその作業量によって金額が上下する場合もあります。
税理士が個人事業主から依頼を受けた場合の費用の相場は以下のとおりです。
法人・個人事業主が税理士に支払う顧問料・記帳代行・決算の相場を紹介しました。
しかし実際の費用は税理士と相談して決まるので、相場の金額はあくまで参考程度にしてください。
税理士と契約するかどうかは面談をして判断できますが、その前に候補となる税理士を探さなければなりません。税理士を探す方法としては以下のものがあります。
それぞれの方法やメリットを紹介します。
税理士に対する広告規制が緩和されたことにより、税理士は自分の情報をホームページなどで宣伝することができるようになりました。
インターネットで税理士を探すメリットは出かけるための費用と時間が節約できることです。また地域や条件を指定して探すことができるというメリットもあります。
しかし、ネットの情報だけでは税理士としてふさわしい知識やスキルがあるかどうかを十分に判断できないという点も覚えておきましょう。
会社を経営している知人がいればすでに税理士に仕事を依頼している場合があるので、そうした知人に紹介してもらうことができるでしょう。
知人の経営者が利用している税理士であれば、ある程度信頼できると判断できます。
しかし、知人から紹介された税理士が、自分と考え方や話が合わない人だった場合、断りにくいという状況が生じます。長く付き合いできる税理士を探すことが大切ですから、そうした場合は、上手に断ることも必要でしょう。
経営者と税理士をマッチングさせる税理士紹介サービスが増えています。
こうしたサービスを利用すれば、いくつかの候補の中から自社に最適な税理士を選ぶことができます。税理士のホームページをいくつも閲覧して自分で比較検討する必要はありません。
一般的な税理士紹介サービスは、利用者と税理士の間で契約が成立した場合、税理士側から手数料を受け取る仕組みになっています。ですから利用者が紹介手数料を支払う必要はありません。
しかし、すべての税理士紹介サービスが紹介手数料無料サービスを提供しているわけではないので、利用する前に確認しましょう。
利用料完全無料の代表サービスといえば、税理士ドットコムが挙げられます。実績も登録税理士数も充実しているため、まず登録して損はないサービスです。
さらに、税理士との面談のセッティング、税理士が期待どおりではなかった場合のキャンセルの連絡などのサービスを提供している紹介サービスもあります。
良い税理士の選び方は以下の記事でご紹介していますので、是非ご覧ください。
税理士紹介サービスでは登録している税理士のみが紹介されるので、利用しようと思う紹介サービスの税理士の登録者数、年間の成約件数、サイトの情報量などをチェックしましょう。
また、専任の税理士コーディネーターが付くかどうかなどのサービスもチェックできます。専任の担当者が付けば税理士選びの相談もできるでしょう。また税理士との面談に立ち会ってくれるかなども確認できます。
決算申告の仕事を税理士にお願いする場合2つの方法がありました。
それぞれにメリットがありました。
売上げや会社規模を考慮して決算申告のみを依頼するという企業もあれば、効果的な節税対策や税務相談が必要といった事情があれば顧問契約を検討できます。
コスト面では、税理士に決算申告のみをスポットで依頼するほうが安く済みます。しかし顧問契約を結べば節税対策や資金調達、経営アドバイスなど多方面でサポートを受けることも可能です。
自社の現状を分析し自社にふさわしい仕方で税理士を力を借りていきましょう。
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