軽減税率とは?制度の概要から対象品目をわかりやすく解説します!

軽減税率とは?制度の概要から対象品目をわかりやすく解説します!

記事更新日: 2021/04/07

執筆: 浜田みか

2019年10月1日より軽減税率制度が実施されましたが、消費者も小売店もまだまだ現場では混乱しているようです。この税制度は、小売事業者はもとより全事業者・消費者、国内で消費活動する全ての人に影響するものです。

ところが、身近な買い物ですら、いまだに何が軽減税率で何が標準税率なのか把握しきれないという声もあるほど、複雑に見える税制度になっています。

しかし、一つ一つ紐解けば、切り分けのポイントがわかります。

そこで今回は、一般消費者を対象に軽減税率制度とは何か?基本的な部分から、気になる対象品目について解説します。事業者として消費者側になる方にとっても、把握すべき内容ですので、ぜひ参考になさってください。

軽減税率とは

2019年(令和元年)10月1日より始まった軽減税率の制度。国内で初めて導入された複数税率ということもあり、混乱のもとになっています。

ここでは、軽減税率制度の基本的な部分を解説しています。

軽減税率制度の概要

軽減税率制度は、税制抜本改革法第7条に基づいて実施された、税改革の一つです。

今回実施された制度の目的は、増税による低所得者層への経済面へのダメージを軽減すること。しかし、実際には所得に関係なく、購買する全ての人が対象になっています。

最初に消費税が導入されたのが、1989年(昭和64年)3月。そこから増税を重ね、現在に至ります。軽減税率は、2014年(平成26年)4月の税制改正で実施された消費税率8%を、対象品目に限り据え置いたものです。対象品目以外は、税率が10%にアップしています。これを、標準税率といいます。

いずれ軽減税率(消費税率8%)は撤廃されて、消費税率10%に一本化するとみられます。

しかしながら、税率10%への改正には障壁も多く、経過措置として導入された軽減税率は、当面維持される予想です。

事実、政府も経過措置の期間をいつまで、と具体的に決定していません。ですから、まず軽減税率についての理解を深めておき、複数税率に慣れていく必要があります。

軽減税率の対象品目

消費税率8%の軽減税率が適用される対象品目は、税法によって定められています。対象外の品目に対してのみ、消費税率10%の標準税率が適用されます。

しかし、この線引きがわかりづらく、小売り業などの販売事業者や家計を預かる人にとっての悩みどころになっているようです。

ここでは、各品目ごとに何が軽減税率の対象で、何が対象外に当たるのかを一覧にして解説しています。

図を見ていただくだけでも把握できるようにしました。値付けや経理業務、購入時の参考にぜひ活用してください。

軽減税率と標準税率の線引き

軽減税率と標準税率は、以下の基準によって分別されています。

  軽減税率(消費税率8%) 標準税率(消費税率10%)
対象品目
  • 酒類と外食を除外した飲食料品
  • 週2回以上発行されており、定期購読契約を締結している新聞
左記以外のもの

つまり、軽減税率は「酒類と外食以外の飲食料品」と「定期購読している“紙”の新聞」に対してのみ有効とされており、それ以外は標準税率の対象です。

対象品目ごとの税率

酒類について

酒類に関しては、アルコール分の含有率が1%以上なのか、未満なのかによって税率が変わります。これは、酒税法第二条によって定められた、何をもって酒類とするかという定義に基づいています。

そもそも酒類と呼んでいいのは、アルコール度数が1%以上の飲料です。よって、軽減税率の対象になっているアルコール類は、酒税法上で“酒類”に分類されない飲食料品に限定されています。

これを踏まえると、料理に使われるみりんや料理酒も、成分表示の掲示に書かれたアルコール度数を見れば、それが軽減税率の対象なのかどうか判断しやすくなります。

事業者も一般消費者も、購入の際には含有量で税率を判断するとわかりやすいでしょう。

外食について

外食に関しては、パーティなどでケータリングや出前を注文する際は、届けられる食事が届け先において、配達した人によって温めなどの調理を必要とするかどうかで判断します。

出前は、すでに調理済みで、なおかつ完成された料理が届けられるため、外食に当たりません。

しかし、ケータリングや出張料理のように、届け先で最後の調理を行い、料理提供が行われる場合は外食に該当し、10%の消費税がかかります。

同様に考えると、レストランやイートインスペースを設けた屋台の場合も、軽減税率が適用されないことがわかります。

外でアルコール飲料を飲む人も多いでしょう。この場合、アルコールと食事をそれぞれ別で考えると適用される税率が判断しやすくなります。

たとえば、お祭りなどの屋台で焼き鳥とビール(アルコール度数4.5%)を注文した場合。

屋台で用意されたテーブルで焼き鳥とビールを食したケースでは、まずビールはアルコール度数が1%以上のため酒類の扱いとなり、標準税率の対象です。焼き鳥は外食扱いになるため、標準税率に該当します。

これが、屋台で用意されたテーブルは使用せずに食べ歩き・飲み歩きでテイクアウトする場合であれば、焼き鳥は軽減税率の対象で、ビールが標準税率の対象になります。

新聞について

情報収集のために新聞を複数購読しているというビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。

その新聞では、"定期購読契約を交わしている紙"の新聞であるかどうかが判断のポイントです。

コンビニエンスストアや駅の売店で、新聞を毎日購入していても、新聞配達所と定期購読契約を交わしているわけではありませんから、この場合の税率は10%の適用です。軽減税率の対象になっているのは、全国紙・地方紙・スポーツ新聞だけに限りません。

そもそも新聞の定義は、1949年(昭和24年)に新聞紙法が廃止されてから、きちんと定義されないままです。

しかし、今回の税制改正では、軽減税率の対象となる新聞について次のように定義されています。

一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する新聞(1週に2回以上発行する新聞に限る。)の定期購読契約(当該新聞を購読しようとする者に対して、当該新聞を定期的に継続して供給することを約する契約をいう。)に基づく譲渡

これを踏まえると、軽減税率が適用されるのは、一週間に2回以上発行されており、なおかつ掲載内容が一般社会の事実に当たる“紙”の新聞ということになります。

婦人新聞や教育新聞、業界新聞であっても、それが社会的事実を掲載しているものであり、定期発行される頻度が一週間に2回以上であれば、軽減税率で計上していいということになるのです。

贈答品・カタログギフトについて

また、つき合いでお中元やお歳暮などを送る習慣があります。これも、何を送るかによって税率が異なります。仕事や交際関係で、プレゼントを贈る際も同様です。

贈答品の内容が飲食料品のみ、あるいは食品の価格が商品の税抜き価格の2/3以上を占めるものには、軽減税率が適用されます。

ギフト商品の中には、コーヒー豆や茶葉がティーセットと一体になったものがあります。こうした商品のことを、一体資産といいます。子どもが購入するお菓子で玩具などのおまけが付いたものがあります。これも一体資産に分類されます。

一体資産のギフト商品の場合は、食品価格が商品の税抜き価格の2/3以上を占め、なおかつその商品の税抜き販売価格が1万円以下のものが、軽減税率の対象です。

では、カタログギフトなどを送る際や、インターネットから食料品を購入する場合はどうなるのでしょうか?

文章にするとややこしく感じるかもしれませんが、二段階で考えるとわかりやすくなります。

1. 軽減税率対象の品目か?

2. 提供されている価格に送料が含まれているか?

対象品目で、かつ提供される販売価格が送料込みであれば、その商品は8%で購入できます。

また、対象品目ではあるが、提供される販売価格が商品のみの価格で送料が別になっているものは、商品価格に対して軽減税率がかかり、送料には標準税率がかかることになります。

栄養ドリンク・サプリメントについて

ビジネスパーソンの相棒ともいえる栄養ドリンクやサプリメントは、医薬品もしくは医薬部外品に該当するか否かで、軽減税率の対象かどうかを判断します。

コンビニエンスストアや通販などで購入するサプリメントは、特定保健用食品もしくは栄養機能食品に該当します。それらは、軽減税率の対象です。

栄養ドリンクの場合、普段気に留めていない方も多いかもしれませんが、「医薬部外品」と「医薬部外品ではないもの」に分けられます。

たとえば、オロナミンCやレッドブルは、清涼飲料扱いですので、「医薬部外品ではないもの」に該当します。

アリナミンVやリポビタンDといったものは医薬部外品の一種に当たる「指定医薬部外品」に該当しますから、標準税率の適用です。

一見すればわかりづらい軽減税率も、実はしっかりと線引きがされています。

ややこしいと感じてしまうのは、法律で定められている条文が、現場の状況と照らし合わせた際にわかりにくい内容になっているからです。

これによって「軽減税率はなんだか難しい」といったイメージができてしまっているのが原因です。

軽減税率が事業者に及ぼす影響と対策

軽減税率が及ぼす影響は、消費者だけではありません。消費者と直接かかわることのある小売事業者にも影響があります。影響があるということは、それに対する対策も当然必要です。

ここでは、事業者に及ぼす影響と対策について解説しています。

小売事業者に及ぼす影響と対策

軽減税率が小売事業者に及ぼすと想定できる影響は、次の事柄が挙げられます。

  • システムの複数税率対応
  • 提示している税込み価格の変更
  • 領収書やレシートの税率・税額表示の対応
  • 帳簿の記載方法の変更
  • 従業員への税制内容の教育

今回の税制改正で複数税率になったこともあり、従来のPOSレジや請求書発行システムでは対応ができません。新制度に対応した機器やシステムを導入する必要があります。

導入に関しては、補助金制度が用意されています。活用することで、経費を軽減することも可能です。

表示価格の変更については、これまで税込み表示価格を掲示していたところでは、それぞれの税率を課税した価格表示への変更が必要です。

新制度導入にあたり、商品価格そのものが変更になっている場合や税率表示をしている場合は、それらも新制度に対応させなければなりません。

また、軽減税率制度の導入により、領収書やレシートに印字する項目にも修正が必要です。これまでは一律税率だったため、「内税」としても問題ありませんでした。

しかし、複数税率になったことで、商品によって税率が異なるため、適用される税率ごとに税額を印字する必要があります。

自社内で開発した独自システムで発行した領収書であれば、対応するためのシステム改修を行わなければなりません。

POSレジを使わないECサイト運営者などは、各自で対応することが求められます。

現在施行されている税制度では、税率や税額の表示がされていなくても、発行元が手書きで追記することは許されています。

しかし、2023年(令和5年)10月から実施されるインボイス制度(適格請求書等保存形式)では、印字が必須です。

その時期を迎えて再びシステム改修することを考えると、今の段階で対応しておいたほうが明らかにコストを抑えられます。領収書やレシートへの印字対応を早めに済ませておきましょう。

今回、軽減税率制度が導入され複数税率となったことにより、売上や仕入れなど取引にまつわる経理処理も変更されています。軽減税率の対象品目と対象外の品目がわかるように、区分して経費管理することが定められたのです。

これにより、税率8%と税率10%それぞれで集計して、消費税額を計上せねばならなくなりました。これを区分経理といいます。

これまで内税で計算していたところでは経費管理の方法が変わりますから、十分に注意してください。

なお、これに関連して2019年度の確定申告では、消費税と所得税の一本化された従来の申告方法から、申告期間が同じでも個別で申告を行うことが決まっています。

軽減税率の影響は、ハード面だけではありません。従業員などスタッフの税知識のアップデートや、税率に伴う案内などの教育も徹底しなければなりません。

商品ごとに税率が異なることで、購入者から問い合わせされることもあれば、イートイン・テイクアウトの違いでトラブルが起こることも想定されます。

そんなときに根拠を持って案内ができるように、従業員がまず軽減税率制度について理解を深めておくことは必須といえるでしょう。

小売事業者以外の店舗に及ぼす影響と対策

軽減税率制度で大きく影響を受けるのは、飲食料品を扱う小売事業者のほか、飲食店もです。

特にアルコールを提供する店や、イートイン・テイクアウトの両方が可能な店では、小売店と同等の対策を行わなければなりません。

まず、アルコールを提供する店では、酒類かそうでないかで税率が異なりますから、利用者にわかりやすいように表示する必要があります。

表示することで、利用者とのトラブルを防ぐことにもなりますし、税率に対する従業員教育が行き届いていなくても、接客時のサポートとして活用することもできます。

テイクアウトもイートインも両方できるという店では、販売時に購入者に対してどちらを希望しているのかを確認しなければなりません。

この対応は、従来と変わりませんが、どこで食べるかによって適用税率の案内が加わります。接遇マニュアルと併せて、軽減税率対策としてマニュアルを整備しておくといいでしょう。

まとめ

2019年10月1日より軽減税率が始まり、購入時に混乱することもあるかもしれません。販売側も全てを理解するのには、時間がかかることもあるでしょう。

消費者としても、売り手側が軽減税率について100%理解しているものと考えるのではなく、お互いに理解するよう努めることが、スムーズな売買に繋がるのではないでしょうか。

今回ご紹介した対象品目の一覧画像を印刷して持ち歩いていただいたり、目につくところに置いていただいたりして、日々の買い物や販売活動に役立てください。

画像出典元:Pixabay、Life of Pics、Unsplash、O-DAN

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