【失敗例】なぜ創業者へのストックオプション付与はNGか?

【失敗例】なぜ創業者へのストックオプション付与はNGか?

記事更新日: 2019/10/16

執筆: 編集部

VC等の投資家が出資先の創業者から自身にストックオプションを付与する議案を提案されて困惑したり、新規のベンチャーへの出資検討に入ったら、創業チームが10%以上のストックオプションを持っていて出資を断念した、というような話を資本政策の重要性が十分認知された最近でもまだ聞きます。

ここでは、なぜ創業者の自らに付与するオプションが原則NGなのか整理したいと思います。

ストックオプションは人事戦略上の最大の武器である!

資金が不足しがちな創業期・成長期のベンチャーにとって、ストックオプションとは、優秀な人材を採用し、また絶対辞められては困る幹部や社員を留めておくための手段であり、そのために最大限活用することが戦略的に重要なのです。

一方で、将来のIPOまで視野に入れれば、日本の慣行として、ストックオプションは総発行株数の15%程度までに抑える傾向があります。

それは、旧商法下の新株引受権は、付与株式数が発行済株式数の10%までという制限があったからなのです。

現在は新株引受権の制限が撤廃されているにもかかわらず、総発行株数を15%程度までに抑えたいのは、この当該制限が意識されているためです。

また、上場時の潜在株式比率が高いと上場後の希薄化を招き、株価に悪影響を与えるおそれもあります。

したがってストックオプションは、会社の成長の為の採用と優秀な人を引き止める手段に最大限活用すべきであり、大株主である創業者に付与する余裕は、本来無いはずなのです。言い換えれば、創業者自らへのオプション付与は合理的な資本政策ではないと言えます。

ストックオプションでいうと、昨年上場したメルカリが役員・社員(子会社も含む)の6割以上にストックオプションを分配し付与していた事例が有名です。

メルカリのように、ストックオプションは自社の成長の為に徹底的に活用することがスマートな資本政策と言えるのです。

創業者が持つストックオプションは資金調達を難しくする

次に投資家の視点でストックオプションを検証してみましょう。ストックオプションが行使されれば、発行済み株式が増えて希薄化するので、投資家にとっては原則ストックオプションは無い方が良いことになります。

かつ、投資家は不確定要因を嫌うので、将来の自分の持分がストックオプションの行使の有無によって変動することは、同じ希薄化率を前提にすると、成長のための増資で希薄化が進行する以上に嫌います。

よって創業者へのストックオプションはマイナスな印象を与えるのです。

では、なぜこれほどストックオプションが広くベンチャーに普及しているのでしょうか?

それは、繰り返しになりますが、ストックオプションを活用した人事戦略が、大企業のように安定して高賃金を払えないベンチャーにとってはとても有効な成長の為の施策だと投資家も理解しているからです。

言い換えれば、投資家にとって出資先のストックオプションはそのベンチャーの成功のためのコストなわけです。

だからこそ、最大限有効に活用して欲しく、好き勝手ともとれる創業者自らへの付与は原則して欲しくないのです。

以上のことから、大株主の創業者へのストックオプションの付与率が高いと、それに起因する持株比率の将来の変動(不確定)と、優秀な人材の採用の柔軟性が低くなることから、VC等投資家が出資を躊躇する要因となりえるのです。

よって、創業者へのストックオプションの付与は潜在的希薄化によって、既存の外部出資者の利益を棄損するだけではなく、将来の外部調達にも支障をきたす可能性が高いので、基本はNGと考えて資本政策を練るべきです。

本当にあったメルカリの事例から見るストックオプションのお話

2018年マザーズ市場に上場した、メルカリの事例から、ストックオプション活用法と創業チームへのオプション付与の例外的な事例を見てみましょう。

当初メルカリは、ストックオプションを幹部や従業員、子会社従業員に対して凄いスピードで付与していきました。7回目の付与からはCEOの山田氏をはじめ創業メンバーにも何回か付与しています。

これはあくまで推測になりますが、大型増資(H28年3月の83億円 の増資等)に加え、想定以上の速さでストックオプション付与を実行したため、創業メンバーの潜在株を含む持株比率が50%を切るような状況が予想される事態になりました。

そのような状況を避けるようなタイミングで少しずつ創業メンバーにも最小限のオプションの付与をIPOまで継続していたのだと考えられます。

メルカリのIPO時のストックオプションの比率は潜在株を含む総株数の17.3%と、日本のIPOとしては例外的に高い水準が幹事証券と市場に受け入れられました。

これはメルカリが実質25回に渡り、 史上最大の幹部・従業員向けオプション戦略で成長してきたことに対する高い評価の証と言ってもよいでしょう。

因みにIPO時の山田CEOを含む創業メンバー3名の持株比率は38.26%で、 内ストックオプションは3.35%になっています。また、現経営幹部の持分まで含めると持株比率は50%程度になっています。

以上の例から言えるのは、創業メンバーへのストックオプション付与は経営コントロールに重要な持株比率50.1%や33.4%を切るようなケースでの節度ある付与ならばVC等の投資家も容認していると言えるのではないでしょうか。

それ以上に、メルカリの徹底したストックオプション活用した成長戦略を是非参考にしていただきたいと思います。

最後に

何もわかっていない税理士や起業家仲間から創業者がストックオプションを持つことが正しいと言われても流されないようにしましょう。

例えば、担当の会計士が、税制適格でもないオプションを、将来の希薄化対策でそそのかし、創業者の税制と資本政策への教養不足に付け込んでくるケースなどがあります。

そして、3分の1以上の株を保有する人と親族へのオプション付与は税制適格でなく、最大55%の税金がかかるため会計士へのお金と税金で二重に損をします。

また、会計士は一回オプションを設計して登記のサポートすると手数料相場は20万円ほど(登記を含めた総費用は30万程度)かかるので、資本政策のことは知らずに(あえて税制は無視して)創業者に薦めるケースもあります。

そのため、創業者ストックオプションは税制メリットがなく、ただ時間と数十万を損することになるので、絶対やらない方が良いでしょう。

画像出典:PAKUTASO,Pixabay

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