システムやサービスへの問い合わせ対応は、企業の日常業務のひとつです。
しかし、問い合わせ内容ごとに窓口が分かれていると、対応が属人化したり、対応漏れが発生したりといった課題を抱えやすくなります。
そこで注目されているのが「サービスデスク」という存在です。
本記事では、サービスデスクの業務内容や種類、ヘルプデスクとの違いをわかりやすく解説します。
また、サービスデスクを設置するメリットや課題、SPOCを活用した課題解決の方法についても紹介します。
このページの目次
サービスデスクとは、ユーザーからの問い合わせに対して、ITシステムやサービスをスムーズに利用できるようにサポートする窓口です。
ここでいうユーザーには、外部の顧客だけでなく、社内の従業員も含まれることがあります。
サービスデスクについて、ポイントに分けて詳しく解説します。
サービスデスクの業務内容は、ユーザーから寄せられるIT関連の問い合わせに対応し、解決まで導くことです。
顧客に対しては、製品やサービスに関するサポートを提供します。
従業員に対しては、社内システムやツール、業務に関するサポートを行います。
サービスデスクは、4種類に分類することができます。
それぞれの特徴やメリット・デメリットは以下の通りです。
特徴 | メリット | デメリット | |
ローカルサービスデスク | オフィスや店舗などを、ユーザーと物理的に近い場所に設置する | 担当者がすぐに現場へ向かうことができるため、迅速な対応が可能 | 地域ごとにスタッフを配置する必要があり、人件費や運営コストがかかる |
センターサービスデスク | ひとつの拠点にサービスデスクをまとめ、全体の問い合わせに対応する | 複数拠点の状況を一元管理でき、人件費や運営コストを抑えられる | 対応までの待ち時間が長く、迅速なサポートが難しい |
バーチャルサービスデスク | インターネットを通じて複数拠点をつなぎ、ひとつのサービスデスクとして運営する | インターネット環境があれば、どこからでも対応できるため、在宅勤務など柔軟な働き方に対応できる | 拠点ごとに対応のバラつきが発生する可能性があり、サービスの質を安定させるための工夫が必要 |
フォロー・ザ・サン | 世界の異なる国や地域に拠点を置き、時差を利用して24時間体制で運用する | 昼夜を問わず、常に誰かが対応できるため、世界中の顧客にサポートを提供できる | 拠点ごとに文化や言語が異なるため、業務のルールや手順を統一することが難しい |
サービスデスクとヘルプデスクの違いは、業務範囲の広さにあります。
サービスデスクは、企業におけるIT全般の窓口として、社内外からの問い合わせを受け、クローズまでを一貫して対応します。
パソコンやソフトウェアの不具合といった内容だけでなく、発生した問題を記録・管理して再発防止のために分析や業務改善まで行う点が特徴です。
一方のヘルプデスクは、IT領域における技術的なトラブルなどの問い合わせに対して、一次対応を行います。
パスワードのリセットやWeb会議用ライセンスの発行など、比較的簡単な問い合わせへの対応が中心であり、専門外の内容であれば他部署へ引き継ぐこともあります。
社内外からの問い合わせに幅広く対応をするサービスデスクですが、実際に設置することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。
ここでは、4つのメリットについて解説します。
サービスデスクを設置することで、ユーザーは困ったときに迅速にサポートを受けられるようになり、顧客満足度の向上につながります。
満足度が高まることで既存顧客のロイヤルティが強化されるだけでなく、SNSや口コミを通じてポジティブな評価が広まり、新規顧客の獲得も期待できます。
サービスデスクを設置すると、問い合わせ内容を一元的に管理できるようになり、蓄積されたデータの活用が可能です。
頻繁に起きているトラブルや、顧客から寄せられた要望の中には、潜在的なニーズも含まれています。
これらを可視化・分析することで、数値的根拠に基づいた顧客戦略が実行でき、既存製品の見直しや新製品の開発にも役立てることができます。
社内外からの問い合わせを各部門が個別に対応している場合、同様の質問に対して何度も調査や説明を繰り返す必要があり、人件費や対応時間が増えてしまいます。
サービスデスクに窓口を集約すれば、業務の重複を避けることができ、対応の効率化と組織全体の運用コストを抑える効果が期待できるのです。
サービスデスクでは、問い合わせの内容や解決方法が集約されるため、ナレッジとして蓄積・共有が可能です。
これにより、同様のトラブルが発生した際に、過去の対応履歴を確認することで迅速に解決まで導くことができます。
また、FAQやマニュアルとしてナレッジを整理しておけば、一定の品質でサポートを行えるようになり、属人化の解消にも役立ちます。
サービスデスクは、企業にとってメリットが多い一方で、設置前に確認しておきたい注意点もあります。
本章では、サービスデスクが抱えがちな課題についてお伝えします。
サービスデスクでは、ユーザーからの問い合わせに対して総合的な窓口を担うため、業務の負担が大きいという課題があります。
問い合わせ内容は、「パソコンが起動しない」といった簡単なものから、システム障害やアカウント管理など専門的な知識が求められる内容まで様々です。
担当者は常に対応に追われることとなり、時間的・精神的な負担がかかりやすいのです。
サービスデスクの設置には、人件費やシステム整備費などの運用コストが発生します。
特に、問い合わせ件数が多い場合は、迅速な対応ができる人員を確保するだけでなく、情報共有を円滑に行うためのシステム環境の整備も必要です。
また、24時間対応や多言語対応が求められる企業では、オペレーターの数を増やす必要があるため、固定費が大きくなる傾向にあります。
サービスデスクの業務では、ITやシステムに関する高い専門知識に加えて、コミュニケーション能力や問題解決能力が求められます。
さらに、問い合わせに対して最適なサポートを提供するためには、常に最新の情報をキャッチアップして学び続ける姿勢も必要です。
業務範囲が広く、求められるスキルが高いため、人材が集まりにくいという点はデメリットといえます。
サービスデスクは、オペレーターの質を統一するのが難しいという課題があります。
問い合わせの内容によっては、高度で幅広い知識やスキルを求められるため、すべてのオペレーターが一貫した対応を行うことが難しくなります。
ナレッジが適切に共有されていない場合、個々のオペレーターの経験に依存した対応が増え、業務が属人化してしまう恐れがあるのです。
問い合わせへの対応が遅れたり、オペレーターの質にバラつきがあったりすると、顧客は不満を抱きやすくなります。
例えば、サービスデスク内で情報が適切に共有されていない場合、顧客が毎回最初から説明をしなければならず、そのたびにストレスや不信感を抱く可能性があります。
サービスデスクの対応品質は、企業のイメージやブランド価値にも影響するため、常に高いレベルでの対応を維持することが求められるのです。
SPOC(Single Point of Contact)とは、問い合わせ先をひとつの窓口に集約して対応する仕組みのことです。
ユーザーは、トラブルや疑問が発生した際にSPOCへ連絡をすれば良いため、「どこに問い合わせたら良いかわからない」といった状況を回避できます。
一方で、サービスデスクの担当者は、問い合わせ内容に応じて適切な部門や担当者へ確認を行い、問題の解決までをサポートします。
SPOCへ問い合わせが一元化されることで、ナレッジが蓄積されるため、同様の質問に対してスムーズに対応できるようになります。
さらに、各部署の担当者に直接問い合わせが届かなくなるため、現場の負担が軽減され、リソースの有効活用にもつながります。
サービスデスクを効率的に運営するためには、専用ツールを活用するという選択肢もあります。
サービスデスクツールとは、業務の効率化をサポートするもので、主に以下のような機能があります。
インシデント管理機能 | システムのトラブルやエラーに関する問い合わせを記録し、復旧までの対応状況を追跡・管理する |
ステータス管理機能 | 問い合わせの進行状態を「未対応」「対応中」「解決済み」などのステータス別に分類して管理する |
チャットボット機能 | 自動応答によるFAQ対応や、対話形式のシナリオを設定し、ユーザーからの問い合わせ対応を自動化する |
ナレッジ管理機能 | 過去の問い合わせ内容や対応方法を蓄積し、社内で共有・活用できるようにする |
エスカレーション機能 | 問い合わせ内容の難易度が高く、すぐ解決できなかった場合に他部署へエスカレーションする |
ワークフロー機能 | 問い合わせの処理の流れや手順を予め設定し、自動で進められるようにする |
レポート・分析機能 | 対応件数・内容・時間などのデータを集計し、グラフや表で分析する |
自動割り振り機能 | 問い合わせの内容やユーザー情報をもとに、最適な担当者に自動で割り振る |
アラート通知機能 | 一定時間内に対応が進まない場合などに、自動でアラートを送る |
FAQ管理機能 | よくある質問とその回答をまとめて管理・公開する |
マルチチャネル対応機能 | メール・電話・チャット・Webフォームなど、複数の問い合わせ経路を一括管理できる |
サービスデスクの業務内容は、顧客や従業員から寄せられるIT関連の問い合わせに対応し、迅速に解決へ導くことです。
高い専門知識やスキルが求められるだけでなく、業務負担が大きいため、人材不足やオペレーターの品質低下など多くの課題が存在します。
SPOCを活用すれば、全ての問い合わせを一元管理し、ナレッジ蓄積や共有を効率的に行うことができるようになります。
さらにサービスデスクツールで業務を自動化するという選択肢もあるので、サービスデスクの設置を検討している方はぜひ参考にしてください。
画像出典元:O-DAN