KPIを活用すれば、カスタマーサービスのパフォーマンスを数値化して評価できます。
この記事では、カスタマーサポートにおけるKPIの重要性や設定すべき具体的な7つのKPI、注意点など、実務に役立つ情報をご紹介します。
KPIを上手に活用して、顧客満足度の向上と業務改善を目指しましょう。
このページの目次
KPI(重要業績評価指標)とは、「Key Performance Indicator」の略称で、最終目標達成に向かって順調に段階を踏んでいるのかを判断するための中間指標です。
カスタマーサービスの業績評価は、顧客の意見や感想などの定性的な要素が多いため、目に見えて分かるものではありません。
しかし、KPIを設定すれば成果が数値で表されるので、カスタマーサポートの状態が可視化できます。
KGI(重要目標達成指標)は「Key Goal Indicator」の略称で、企業が目指す最終ゴールを示し、その達成度を測る指標です。
一つのKGIには多くのKPIが連なり、相互に補完し合う関係にあります。
的確なKPIを設定し、一つひとつを着実にクリアすることが、最終ゴールであるKGIの達成につながります。
さらに、KGIの進捗を定期的に評価し、必要に応じてKPIを見直すことで、目標達成に向けた効果的なアプローチができるようになるのです。
KPIツリーとは、最上位の大きな目標であるKGIから、細かな目標であるKPIを段階的に表したフレームワークのことを指します。
KGIを木の幹に見立て、KPIを枝葉として表現しているため、KPIツリーと呼ばれています。
図を用いて表すことで、KGI達成のために何を行うべきなのかを明確化できるという利点があります。
KPIツリーは、組織全体で共有し、目標達成に向けて協力し合うことが肝心です。
また、ツリー作成後は、定期的にKPIツリーを見返し、どの程度目標が達成しているかを確認しましょう。
目標達成が遅れている場合は、どのKPIで問題が発生しているのかを分析し、改善策を講じることが大切です。
カスタマーサポートの品質改善や業務効率化を図るためには、KPIを設け、目標設定と評価の基準を明示することが重要です。
ここでは、カスタマーサポートで設定したい7つのKPIについて解説します。
顧客からの問い合わせを受け、最初の応答までにかかった時間を「一次応答時間」といいます。
一次応答時間が長いと顧客は不満やストレスを感じるだけでなく、企業への信頼を失いかねません。
一次応答までにかかる時間の目標を設定し、平均応答時間が目標値内に収まっているかを確認しましょう。
応答率とは、顧客からの全問い合わせに対して実際に応答できた件数の割合のことを指します。
応答率は「応答済み件数 ÷ 総問い合わせ件数×100」で算出します。
例えば、営業時間内の応答率をKPIとして設定し、計測・分析することで、自社のサービスレベルが明確になります。
応答率が低い場合は、スタッフのスキル不足による処理能力低下や、不適切な人員配置が疑われます。
カスタマーサポートの業務目的は、顧客の疑問や不安を解消することであるため、解決率は非常に重視すべき指標です。
解決率は「解決数 ÷ 総問い合わせ数× 100」で算出します。
解決率の目標は100%とし、未対応や保留中のまま放置しないようにしましょう。
また、解決率には、顧客からの初回コンタクト時に問題が完全解決した割合を表す「一次解決率」や、総問い合わせ数に対して最終的に問題が解決した率を表す「最終解決率」などの種類があります。
サポートの目標や提供するサービスの特徴に合わせて選定しましょう。
問題を解決するまでにかかる時間は、顧客の満足度に直結するため、なるべく短くするのが理想です。
ただし、単純に対応時間が短ければ良いというわけではありません。
対応時間が短くなるのに比例して、サポート品質が低下しないように注意しましょう。
品質保持のために必要な対応時間も考慮し、ほかの指標も組み合わせて、総合的に評価することが大切です。
エスカレーション率とは、現場スタッフだけでは解決できない問い合わせを、上司や他部門に相談したり、対応を引き継いだりする割合です。
エスカレーション率は「(エスカレーション件数 ÷ 総問い合わせ件数)× 100」で算出します。
エスカレーション自体は、顧客の問題を適切に解決するために必要な過程であるため、ある程度発生することは避けられません。
しかし、過剰なエスカレーションは、顧客の待ち時間の増加や、関連部門や上司の負担増加につながります。
定期的にエスカレーション率をモニタリングし、必要に応じて対策を講じるようにしましょう。
再問い合わせ率とは、解決されたと判断した問題に再び問い合わせが来る割合のことです。
再問い合わせ率は「再問い合わせ件数 ÷ 解決済み件数 × 100」で算出します。
再問い合わせ率が高い場合は、説明や対応が不十分な可能性があります。
原因の一つとして、スタッフのスキル不足が考えられるため、研修やトレーニングを行うようにしましょう。
ただし、顧客側の理解度による場合もあるため、再問い合わせに至った背景をしっかり見極める必要があります。
顧客満足度とは、カスタマーサポートの対応品質に対する満足度の度合いです。
例えば、満足度の5段階評価によるアンケートやNPS調査で、カスタマーサービスを他人にどの程度すすめたいか質問し、顧客の声を数値化します。
また、顧客満足度は結果が分かりやすく、直に顧客の声が届くため、スタッフのモチベーション維持に有効な指標ともいえます。
KPIの設定方法を誤ると、企業の理想とするカスタマーサポートの形に近づくことはできません。
以下では、適切なKPI設定を行うために、気をつけるべきポイントを紹介します。
KPIはKGIを達成させるために設定する指標であるため、KPIを単独で設定するのは不適切です。
例えるなら、KGIのないKPIは、目的地のない道標のようなものです。
KPIとKGIを合わせてセットすることで、目標全体の方向性がはっきりするため、一貫性のある目標管理が行えます。
KPIを設定する際には目標を数値化すると、目標達成の進捗状況が分かりやすくなるため、評価が容易に行えます。
例えば「顧客に満足してもらう」という抽象的な目標では、達成度の判断が困難です。
「満足度アンケートで非常に満足と回答する割合を70%以上に増加させる」など、具体的に目標を設定することで、明確な評価基準が生まれます。
また、数値化されたKPIは、目標が明らかであるため、チームやスタッフ個人の意欲向上にもつながります。
目標数値を設定する際には、現実的で無理のない数値にすることが重要です。
あまりにも高い目標にしてしまうと、スタッフに大きなプレッシャーがかかり、モチベーションが低下する恐れがあります。
また、他部門が関与するKPIを設定する場合、目標が未達になった時に、どの部門が主要因だったのか、特定しにくいことがあります。
最初に役割を決め、どの部門がどのKPIに責任を持つのかを明確にしましょう。
カスタマーサポートのサービス品質向上に、KPIの設定は欠かせません。
具体的な数値目標を定めることで、チーム全体一丸となって目標達成に向かうことが可能になります。
また、KPIは一度設定したら終わりではありません。
見直しと改善を繰り返すことで、企業は持続的に成長していくでしょう。
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