CMOという役職やポジション名を耳にしたことがありますか?
「CEOなら聞いたことがあるけど、CMOはよくわからない」と感じている人もいるかもしれません。
CMO(シーエムオー)はChief Marketing Officer(チーフ・マーケティング・オフィサー)を略したもので、日本語では最高マーケティング責任者と訳される役職名です。
この記事ではCMOがどのような役職なのかといった基礎はもちろん、求められている役割やスキル、年収の目安、実際に日本で活躍しているCMOも紹介します。
このページの目次
CMO(シーエムオー)はChief Marketing Officer(チーフ・マーケティング・オフィサー)を略したもので、日本語では最高マーケティング責任者と訳される役職名です。
主に米国企業で、CMOを始めとしたC*Oという役職名が使われています。
CMOはマーケティングの最高責任者です。
CMO(Chief Marketing Officer)に含まれる英単語を分解すると次のようになります。
CMOは企業(組織)全体の最高マーケティング責任者であり、単にマーケティング部門の部長や事業部長を指すものではありません。
組織内では、経営戦略をマーケティング戦略に落とし込み、マーケティング部門とほかの事業部門との連携を図ります。
対外的にはその組織のマーケティング責任者として、説明責任(アカウンタビリティ)を負うのがCMOです。
CMOが生まれた背景には、消費者の購買行動モデルの変化があります。
消費者の購買行動モデルとは、消費者が商品やサービスの購買に至るプロセスを定義したものです。
従来からAIDMAやAISAS、AICEASなどさまざまな購買行動モデルが提唱されてきましたが、CMOと関わりが深いモデルは、SNSが普及した頃に提唱されたSIPSといえます。
つまりSIPSは、共感を軸にした購買行動モデルといえます。
消費者はSNSなどでつながっている人たちの言動に「共感」し、有益かどうかを「確認」したら、コミュニティなどに「参加」して、共感を「拡散」するという行動をとっているのです。
共感を軸にした購買行動においては、組織全体が顧客視点で戦略を行っていかなければなりません。
そこで部門横断的に企業のマーケティング活動を主導するため、CMOというポジションが設置されるようになりました。
CMOは、組織の「マーケティングを主導する最高責任者」と位置付けられていることを紹介しました。
それでは、CMOに求められる具体的な役割とは何でしょうか。
具体的な役割はその組織ごとに設定されるのが基本といえますが、ここでは一般的なCMOの役割を紹介していきます。
CMOは、経営戦略をマーケティング領域に落とし込むことが求められます。
マーケティング戦略は、経営戦略の趣旨に沿ったものである必要があり、経営戦略を理解していることが前提です。
会社経営層が担うことが多いCMOは、経営戦略をマーケティング業務の担当者がやるべきことまで落とし込んだうえで、マーケティング戦略を策定すべきでしょう。
CMOはマーケティングの最高責任者です。
けれども、CMOはマーケティング部門だけではなく、企業全体のマーケティング責任者でもあるので、部門間の調整役もしなければなりません。
顧客とのコミュニケーションはもちろん、組織内においても、たとえば営業部門とマーケティング部門、カスタマーサクセス部門など部門間の情報連携を進めていくことが求められます。
CMOは、その組織のマーケティングを担う人物なので、企業の「顔」と捉えられることもあります。
その組織におけるマーケティングの顔として、組織内や顧客はもちろん、プロモーション会社や提携企業、株主などの利害関係者(ステークホルダー)との関係性を構築するのです。
社内外の利害関係者とコミュニケーションを取り続け、良好なつながりを維持することもCMOに課された役割といえます。
CMOに必要なスキルは次のとおりです。
近年では、顧客情報のデータベースともいえるCRM(Customer Relationship Management)、組織が保有するデータの分析や視覚化をするBI(Business Intelligence)ツールも普及してきました。
ユーザーのオンライン・オフラインでの行動履歴に加え、売上データなどを活用してマーケティングに関する意思決定を行う、データ・ドリブン・マーケティングという言葉も注目されています。
「共感」が購買行動の軸となる現在は、ユーザーの感情や行動を把握したデータ分析力がデータ・ドリブン・マーケティングを推進するためにも、CMOに必要な要素です。
CMOには、顧客がどんな体験を求めているかを想像する力が必要です。
顧客がその商品を使うことによって、得たいと思う体験はどのようなストーリーかを導き出す必要があります。
たとえばファミリーカーなら、家族旅行をして、楽しそうに笑う家族の姿を見て幸せを感じるといった体験が、顧客が求めているストーリーといえるでしょう。
組織によって異なりますが、CMOは経営者の1人として数えられることがあります。
共感を軸にしたデータ分析や顧客が求める体験を想像しながら、経営者視点での決断力も必要です。
CMOはマーケティングを統括する経営者であるため、チーム(組織)をまとめるリーダーシップが必要です。
部門を横断する横串的な活動が求められるため、ときには意見が食い違う部門同士もまとめなければなりません。
意見が食い違う場合、当然ながらそれぞれの部門は言い分を持っているはずです。
このように組織内で対立が生じた場合でも、チーム(組織)全体が同じ方向を向いて活動を進められるよう、CMOには高いリーダーシップが求められます。
CEOやCOOなどは、CMOより知っている人が多いかもしれません。
このような役職名はC*Oと総称されることがあります。
そこでCMOと併せて、各C*Oも簡単に把握しておきましょう。
CEO(シーイーオー)はChief ExecutiveOfficer(チーフ・エグゼクティブ・オフィサー)を略したもので、日本語では最高経営責任者と訳される役職名です。
数あるC*Oのなかでも、よく知られている役職名といえるのではないでしょうか。
また、日本では社長や代表取締役社長といった役職も一般的です。
代表取締役は会社法で定められている株式会社の機関(役員)のことであり、株式会社(株主)から会社の業務執行(経営)を委任され、かつ株式会社の代表という立場にあります。
一方で、社長は法律で定義されている呼び方ではありません。
あくまでも商習慣上、会社の経営責任者を示すときに用いられるものです。
会社によっては、代表取締役を社長と呼び、社長がCEOという肩書きを持っている(地位についている)ことも少なくありません。
COO(シーオーオー)はChief Operating Officer(チーフ・オペレーティング・オフィサー)を略したもので、日本語では最高執行責任者です。
CEOの右腕を担う側近として位置付けられることがあり、たとえばCEOが代表取締役社長ならCOOは副社長とされるケースもあります。
CFO(シーエフオー)はChief Financial Officer(チーフ・ファイナンシャル・オフィサー)を略したもので、日本語では最高財務責任者と呼ばれます。
資金調達や運用、予算管理業務などの責任者です。
CTO(シーティーオー)はChief Technical Officer(チーフ・テクニカル・オフィサー)を略したもので、日本語では最高技術責任者と呼ばれます。
業種によって役割は多少異なるものの、技術に関する業務の責任者です。
CEOやCOO、CFOなどと比べるとCMOはやや知名度が低めです。
知名度が低いのはCMOが日本で定着していないためであり、次のような理由があります。
日本でCMOが定着しにくい理由として、マーケティング部門をバックヤードととらえる企業風土が挙げられます。
日本では製造業を中心に技術部門が中心的立ち位置にありました。
そういった背景から、マーケティング部門をバックヤードととらえる風土ができあがり、マーケティングを組織全体で推進しようとする動きには消極的だったのです。
そもそも経営者視点を持ったCMOにふさわしい人材が不足しているという理由も挙げられます。
企業のマーケティング活動は、単に広告を出して顧客を獲得するという短絡的な話ではありません。
その一方で日本では、マーケターが各種施策で成果を出すためのスキルに固執する傾向があり、経営者視点でのマーケティングを推進できる人材に乏しいという指摘もされています。
CMOになるためのキャリアパスと、CMOの年収の目安を紹介します。
CMOになるためのキャリアパスは1つだけではありませんが、王道といえるのはマーケティング部門への配属後、社内で昇進を続けるケースです。
社内外から高い評価を得るためには相応の実績が必要となるため、当然ながら昇進は簡単なことではありません。
王道キャリアのほかにも、営業部門や企画部門からキャリアチェンジしてCMOになるというパターンもあります。
営業部門では実際に顧客とコミュニケーションを取る機会が多いため、CMOに必要な「顧客が求めている体験の想像力」も身につけられるでしょう。
さらに営業部門は、業績評価指標(KPI)である売上高などと直接関係する部門です。
そのため、経営者としての視点が育ちやすい側面もあります。
マーケティングの上流ともいえる、商品企画職からのキャリアチェンジも現実的です。
CMOの年収は、マーケターの平均年収が約500万円といわれていたり、マーケティングコンサルタントの平均年収が約900万円といわれていたりすることから、大まかに約1,000万円程度と想定されます。
もちろん企業によって実際の年収は異なることは注意しておきましょう。
欧米で置かれることが多いCMOですが、日本でも活躍している有名なCMOがいます。
ここでは3名紹介しますので、キャリアを考える参考にしてみてください。
足立光(あだち・ひかる)さんは、日本を代表するマーケターです。
そんな足立さんは2020年10月1日、おなじみファミリーマートの初代CMOとして就任。
ファミリーマートに就任する前、日本マクドナルド株式会社に上級執行役員マーケティング本部長として在籍しており、ポケモンGOとのコラボなども手掛けた実績があります。
参考:Wantedly(https://www.wantedly.com/id/hikaru_a_a)
飯髙 悠太(いいたか・ゆうた)さんは、株式会社ホットリンク執行役員CMOとして活躍する日本のマーケターです。
2014年に株式会社ベーシックに入社し、「マーケターのよりどころ」をコンセプトとするウェブメディア「ferret」を立ち上げ。
これまで複数のWebサービスやメディアを立ち上げ、東証1部上場企業を含めて100社以上のコンサルティング経験をもつマーケティングのプロです。
参考:FASTGROW(https://www.fastgrow.jp/people/93)
田部 正樹(たべ・まさき)さんは、ラクスル株式会社のCMOを務める日本のマーケターです。
2004年に中央大学を卒業後、丸井グループに入社。
その後2007年にはウェディング事業を営む株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ社に入社し、2012年には同社事業戦略室長に、2012年には同社マーケティング戦略部長を務めます。
2014年にはBtoBプラットフォームを展開する「ラクスル」に入社し、マーケティング部長からCMOに就任しました。
参考:NewsPicks(https://newspicks.com/user/198818/)
CMOは最高マーケティング責任者のことで、経営戦略をマーケティング分野に落とし込み、部門を横断しながらマーケティング戦略を主導するポジションです。
感情や行動を把握したデータ分析力のほか、顧客が求めている体験の想像力、経営者としての決断力や横串的なリーダーシップが求められるでしょう。
現在では日本においてCMOは定着していませんが、「共感」を軸にしたマーケティング戦略を打ち出すうえで、CMOを設置する企業はこれから増えていくと想定されます。
画像出典元:Unsplash
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