CTOとは、米国式の企業組織における役員の呼称の一つで、エンジニアとして働く人が目指すべきキャリア目標の一つ。
しかし、「C×O」という役職はたくさんあり、違いがよく分からない…、という声も聞かれます。
CTOとはどのような立場の人を指し、どのような役割があるのでしょうか?
本記事では、CTOの意味や役割、CTOになるために必要なスキルや年収、さらには現在有名企業で活躍中のCTOを紹介します。
現在エンジニアとして活躍中の人はCTOについての理解を深め、キャリアの道しるべを見つけましょう。
このページの目次
政府主導による産業界のデジタルトランスフォーメーションが進む中、新たなポジションとしてCTOを設置する企業が増加しています。
CTOとは、どのような存在なのでしょうか?CTOの意味や概要について紹介します。
・CTO = Chief Technology OfficerまたはChief Technical Officer
CTOとは、Chief Technology OfficerまたはChief Technical Officerを略した言葉で、「最高技術責任者」を意味します。
執行役員制を導入している企業において、テクノロジー部門の総責任者や開発部門の総括者を呼ぶときに使われるのが一般的です。
CTOは元々アメリカで使われ始めた呼称であり、日本の会社法によって定められたものではありません。
CTOについての厳密な定義はなく、主にスタートアップやテクノロジーを強みとする企業で導入されているポジションです。
CTOが注目される背景としては、市場のグローバル化・デジタル化が挙げられます。
科学技術は日進月歩で発展を続けており、企業が競争力を維持・強化するためにはアナログからのデジタルトランスフォーメーションが不可欠です。
自社のデジタル部門強化の必要性を感じている企業は多く、ITスキルのあるCTOの重要性は高まっています。
一般社団法人「日本CTO協会」の理事である松岡 剛志氏は、CTOについて「最先端のデジタル技術に対する深い理解と幅広い実践を経営に生かしていく職業」であり、「テクノロジーへの深い知見はいまや企業経営・ビジネスに欠かせぬものとなった」と語っています。
(参考:日本CTO協会について|一般社団法人日本CTO協会)
CTOは会社法に設置を義務付けられた役職ではないものの、CTOを設置して業務効率化・責任の所在の明確化を図る企業は増えています。
CTOを設置する企業において、CTOはどのような役割を果たしているのでしょうか。CTOの役割や仕事内容について紹介します。
企業が事業に着手する際の技術選定や自社に導入するシステムの選別等の最終判断は、CTOが行うのが一般的です。
CEOは「新システムを導入する」「新事業に着手する」という大まかな事項を決定しますが、手段・実施方法といった細部には携わりません。
CTOが数あるシステムや手法から適材適所で最善のものを選び取り、企業目標・経営目標をクリアできる体制を整えます。
CEOや役員たちが策定する事業戦略や目標について、技術面から助言・提案を行います。
経営トップがどれほど素晴らしい事業戦略・経営アイデアを挙げたとしても、技術的に不可能だったりもっとよい選択肢があったりするケースもあるでしょう。
大まかなプランに対し、「現実的・技術的にどのような課題があるのか」「それをクリアするためにはどのような技術が必要か」を具体的に提案するのは、CTOの役目です。
CTOは、技術開発に必要な環境構築のため、条件にかなうエンジニアの採用や管理・育成の責任を持ちます。
IT業界のスタンダードは変化が激しく、求められる人材・スキルは常に同じというわけではありません。
CTOは時流を適切に読み「今自社に必要なのはどのようなエンジニアか」「自社のエンジニアにはどのようなスキルを身に付けてもらうべきか」を判断します。
CTOがどのような判断を下すかで、企業に在籍するエンジニアの性質・役割分担、さらには採用条件や教育方針が大きく変わります。
実際のところ、CTOの役割は企業のフェーズや規模によって異なります。
企業規模が小さいベンチャーやスタートアップなら、CTO自身もコードを書き、一エンジニアとしてプロジェクトを進めていかなければならないでしょう。
一方で規模の大きい企業なら、CTOの役割はマネジメント中心になることが少なくありません。
現場はプロジェクトマネージャーに一任し、自身は現場と上層部・外部をつなぐ存在として現実的な提案・連絡・交渉等を行います。
「この資格があればCTOになれる!」というものは存在しません。
CTOに求められる役割は企業の規模・フェーズによって異なるため、どのような資質が必要かはケースバイケースです。
「自社のCTOになりたい」という明確な目標がある場合は、「自社ではどのような人材が求められているか」を現状に照らして考える必要があるでしょう。
ここでは、CTOになった人の特徴から、CTOに求められる基本的なスキルや資質等を考察します。
CTOは技術と事業経営とを結び付ける役割を持ちます。重役の1人として事業戦略を技術面からフォロー・修正するためには、エンジニアとして優秀であることは必須です。
実務的な知識・経験の幅が広いほど提案の選択肢が増え、事業展開をスムーズかつ成功確度の高いものにできるでしょう。
また、CTOは自社のエンジニアをフォローし教える立場でもあります。上流工程から下流工程までこなせるスキルがあると、エンジニアたちとのコミュニケーションを取りやすくなります。
特に規模の小さい企業の場合、CTOは多くの時間を現場に割かなければなりません。自分でコードを書くシーンも多く、エンジニアとしての実務スキルの有無は非常に重要です。
CTOはプロジェクトを適切にマネジメントできる能力が必要です。
「どのプロジェクトにどの程度の人員を配置するか」「どのツールを選択するか」を適切に判断し、納期に間に合うように事業計画を立てなければなりません。
自社にエンジニアが不足している場合はアウトソーシングを利用したり、新しく採用したりすることとなるでしょう。「どのエンジニアに依頼するか」「どのような人材を採用するか」もCTOの判断で行われます。
CTOは常に全体を俯瞰し、事業の流れが止まらないように気を配る必要があるのです。
CTOは一エンジニアであり、経営陣の1人でもあります。現場と上層部の橋渡し的な役割が期待されており、双方と適切に意思疎通するためのコミュニケーション能力は必須です。
また、技術面のトップであるCTOは、自ら渉外交渉を行うシーンも出てきます。企業の技術面代表として、企業理念・目標をしっかり語れる人材であることが望ましいでしょう。
「CTOになりたいけれど、どのようなキャリアパスを描けばよいか分からない」というエンジニアは少なくありません。
現在CTOを務めている人は、どのようなルートでCTOに就任したのでしょうか?CTOになるためのキャリアパスについて紹介します。
学生や企業のエンジニアとして働いた後、気の合う仲間と共に起業してそのままCTOに…、これは、現在CTOとして活躍する人の中で最も多いパターンです。
ただし起業後すぐにCTOになるには、エンジニアとして高いスキルを持つことは必須です。
メンバー内で「技術面ではこの人!」と言われるくらいの知識・スキルを身に付けた人がCTOに任命されます。
企業のエンジニアとして実績を積み重ね、他社にCTOとして転職するパターンです。
1社目で上流工程・下流工程の一通りをカバーできるスキルを身に付けるのはもちろん、新規プロジェクトの立ち上げに関わったり、プロジェクトマネージャーを経験したりといった実績が必要です。
転職してCTOになるパターンは、実力・経験・実績を評価してくれる企業があってこそ成り立ちます。
起業してすぐにCTOになるパターンと比較すると、CTO就任まではそれなりに時間がかかるでしょう。
一エンジニアとして入社した企業で、そのままCTOに就任するパターンです。ベンチャーやスタートアップなら、実力次第では比較的早めにCTOになれる可能性があります。
しかし、小規模企業は、内輪のメンバーで上層部を固めるパターンがほとんどです。外部から入社して認められるためには、それなりの実績・スキルを見せなければなりません。
加えてコミュニケーション能力・マネジメント能力を磨くことも必須で、「企業のために積極的に働く」という姿勢を強くアピールしていくことが重要です。
CTOは技術部門の最高責任者であるため、ほかのエンジニアよりも多くの年収を得られます。
エンジニアからCTOに就任した場合の年収について見ていきましょう。
一般的なエンジニアよりも年収が多いとはいえ、具体的な金額は企業規模・役割によって異なります。
企業規模が大きく任される責任が大きいほど、年収は高くなるでしょう。
一概にはいえませんが、一般的なCTOの年収は500~2,000万円と幅広くなっています。
CTO就任を打診された場合は、「求められる役割と受け取れる報酬のバランスは適切か」を熟考するのがベターです。
ただし、年収が低くてもCTOにはストックオプションが付与されるケースが多々あります。
自社株を割り振ってくれる企業なら、年収が低くても、ある程度許容できるのではないでしょうか。
「デジタル後進国」といわれる日本では、政府主導のもと経済産業界全体のデジタルトランスフォーメーションが進められています。
現状、CTOが活躍するシーンは増えこそすれ、減るとは考えにくい状態です。
ただし、CTOに求められる役割はフェーズごと・企業ごとに異なります。
より好条件でCTOに就任するためには、エンジニアとしてのスキルはもちろん、マネジメント・マーケティング・経営・コンサルティングなど、「自分にはこんな強みがある」とアピールできるスキルを身に付けることが必須でしょう。
現在、IT系をはじめとする多くの企業がCTOポジションを設置しています。
有名企業の技術部門を統括するCTOとは、どのような人たちなのでしょうか?有名企業で活躍するCTOのプロフィールや経歴を紹介します。
現在CTOを目指すエンジニアは、ぜひ参考にしてみてください。(役職は2021年10月時点のものです)
1976年生まれのCTO。傑出したエンジニアが多いといわれる「76(ナナロク)世代」の1人です。小学生の頃よりプログラミングに取り組み、大学時代にはシステム開発に着手していました。
1999年・23歳でアメリカ・シリコンバレーに渡り、「サン・マイクロシステムズ株式会社」に入社。開発実績を積んだ後、2000年に株式会社アプレッソを起業します。このとき氏が開発に携わったデータ連携ミドルウェア「 DataSpider」は高く評価され、年間最優秀ソフトウェア賞を受賞しました。
2013年には自社がセゾン情報システムズの子会社となり、CTOに就任します。
株式会社クレディセゾンに入社したのは2019年で、2020年より取締役兼常務執行役員 CTOを務めています。
1980年生まれ。複数社の技術顧問としても活躍しており、エンジニアとしてのスキルの高さは国宝級といわれます。現在は、メルカリグループの新規事業の創造に従事するCTOです。
小学校からプログラミングを始め、大学在学中より在学中からSIerとしてシステム開発を行ってきました。2004年に「株式会社サイバーエージェント」に入社し、リードエンジニアとして『アメーバピグ』『AWA』『AbemaTV』等の開発を手掛けています。
メルカリに入社したのは2016年で、US版メルカリの開発等を担当しました。2017年4月に同社のCTOに就任し、2021年より株式会社ソウゾウ 取締役CTOも兼務します。
1991年生まれ。2019年より日本CTO協会理事を務めています。
2013年・大学在学中に「株式会社Gunosy」でアルバイトし、卒業後はそのまま同社に入社します。2年後の2015年にCTOに就任し、技術面の統括を任されました。
2018年には「合同会社DMM.com」のCTOとして技術・組織変革を担当し、ブロックチェーン・マネジメント・経営管理等の実績とスキルを習得。
その後DMMを抜け、2021年より「株式会社LayerX」の代表取締役CTOに就任しました。
2005年に株式会社イー・マーキュリー(現:株式会社ミクシィ)に入社。SNS「mixi」の開発に携わりました。
2009年にいったん会社を離れますが、2013年に復帰し、スマホゲームアプリ「モンスターストライク」の開発担当となります。ゲームは爆発的な人気となり、動画・アニメなどのメディアミックスへと展開しました。2021年4月時点で、モンスターストライクの世界累計利用者数は5,500万人超。注目度はますます高まっています。
2018年より執行役員CTOを務め、2019年に取締役CTOに就任しました。現在はエンジニア組織を最適化する役割を担っており、個々のメンバーのフォローアップに努めています。
2005年にグリー株式会社のCTOに就任。現在まで同社のエンジニア組織を牽引しています。2021年9月に発足した「デジタル庁」でもCTOを務めることが決まっており、「日本のCTO」としての活躍も期待大です。
大学卒業後、2001年に株式会社アストラザスタジオ入社。2003年には有限会社テューンビズに入社し、オープンソースソフトウェアシステムのコンサルティング業務を担当しました。
さまざまな企業の技術コンサルティングを手掛ける中、創業者に誘われてグリー株式会社へ入社します。
CTOというと、比較的短期間で会社を変わる人が少なくありません。そんな中、16年も同じ会社でCTOを務める氏は、極めてまれな存在といえるでしょう。
2003年に会社法が改正され、日本でも米国型のガバナンス制を適用できるようになりました。
これにより、従来の「社長」「取締役」といった編成に加え、米国式の編成を導入する企業が増え始めたといわれます。
現在CTOを設置している企業の多くは、ほかにも「C×O」の役職を導入しています。CTO以外にどのようなものがあるのか、詳しく見ていきましょう。
・CEO = Chief Executive Officer
「最高経営責任者」を意味する略語です。企業のトップであり、経営に関わるあらゆる事項の最終責任者となります。
日本ではCEO=代表取締役とするケースがありますが、代表取締役は「会社法」で認められた役職です。
一方でCEOに関する法律の規定はなく、役割・立ち位置は企業によってバラつきがあります。
日本では、代表取締役社長が経営責任を負うケースがほとんどです。そのため、肩書きの英語表記について「President & CEO」とする企業が多く見られます。
・COO = Chief Operating Officer
「最高執行責任者」を意味する略語です。
CEOが経営に関わる事項を決定する責任者であるのに対し、COOは経営方針を実行するための責任者です。CEOが決めた経営戦略の実行をサポートするのが主な役割で、実務面のトップといえるでしょう。
COOは主にアメリカの企業で設置される役職ですが、グローバルに展開する日本の大手企業ではCOOを設置する動きが見られます。
例えば日産自動車では2019年よりアシュワニ・グプタ氏がCOOを務めていますし、SONYは「事業分野ごとに異なるCOOを設置する」というイレギュラーな人事配置を行っています。
・CFO = Chief Financial Officer
「最高財務責任者」を意味する略語です。
企業の財政面・資金調達面を統括する責任者で、財務戦略の立案・実施を行います。
マーケティングや金融関連の深い知識を持つことが必須で、CEOを財務・経理の面からサポートするための役職です。
いわゆる「財務部長」と異なるのは、CFOには将来戦略も含めた、「企業経営全体の財務を見通す視点」が必要なことです。
CFOは金融機関や投資家に対し、具体的な数字を上げて経営戦略を説明したり採算性について説明したりします。
COOを設置することでCEOは財務・経理面の負担から解放され、より経営に集中しやすくなるのです。
・CSO = Chief Strategy Officer
「最高戦略責任者」を意味する略語です。
経営戦略の立案等の最終責任者はCEOですが、CEOと連携して経営戦略を立て、実行を支援するのはCSOです。
つまりCSOは、中長期的な視点からCEOの経営戦略をサポートする、参謀的な役職といえるでしょう。
近年は市場の変化が早く、CEOだけでは対応しきれないシーンが増えています。
判断の遅れが企業にとっての致命傷とならないよう、CSOがプロジェクトの旗を振ったり、各部門と親密なコミュニケーションを取ったりして、「ミニCEO」の役割を果たすこともあります。
・CIO = Chief Information Officer
「最高情報責任者」を意味する略語です。
企業の情報化・デジタル化を経営戦略に沿って進めていくこと、IT技術の適切な導入により効率的な業務プロセスを作り出すことなどが求められます。
CTOと混同されることの多いポジションですが、CIOは情報やシステムをマネジメントするのが主な役割です。
技術的な面はCTOに任されることが多く、CIOはCEOが定める経営方針に基づき、IT技術の導入・活用フェーズをサポートします。
・CKO = Chief Knowledge Officer
「最高知識責任者」を意味する略語です。
ナレッジ経営を実現するための責任者で、個々が持つ知識・情報を企業価値向上のために共有することを目指します。
近年は終身雇用制の崩壊で社員が流動的になっている上、テレワーク等で社員の知識の把握・共有が困難です。個々の知識が属人化するのを防ぎ社員に一体感を持たせることは、非常に重要といえるでしょう。
CKOが手腕を奮うことで、重要なスキル・情報を共有したり部門間での情報分断が起こりにくくしたりすることが可能です。これにより社員の質を均一化できる上、業務全体の効率化も促します。
このほか、企業が持つ知的財産権の管理等もCKOの役割です。
マネジメントから経営・コーディングまでできるCTOは、今後も需要が高まっていくと予想されます。
これからCTOを目指そうと考えているエンジニアは、「ITスキル+α」を身に付け、自身の強みをアピールすることが必要です。
ただし、企業によって求めるCTO像は異なります。一般に、大手ほどマネジメント能力が重視され、小規模企業ほど現場スキルが必要とされる傾向にあるようです。CTOにアプライする場合は、自身のスキル・経験との適合性をしっかりと見極めましょう。
今後のキャリアパスを明確化して日々研鑽を積めば、CTOになることは不可能ではありません。
画像出典元:Unsplash、Pixabay
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