ブラック企業の対義語として普及したホワイト企業という言葉は、人手不足が深刻化するなかで、企業にとっては意識せざるを得ないキーワードとなりつつあります。
しかし、ホワイト企業についての共通認識はあるものの、何をもってホワイト企業といえるのかについては、具体的な内容を示せる人は多くはないのではないでしょうか。
この記事では自分の在籍している会社がブラック企業かもしれないと思っている方に向けて、ホワイト企業を探すための手がかりを紹介するとともに、ブラック企業だと判断した後の対処方法についても解説していきます。
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ブラック企業の対義語であるホワイト企業はマスメディアにより一般化した言葉であり、厳密な定義を持つ言葉ではありません。
ビジネス誌の記事のなかで、定着率の高い企業のランキングがホワイト企業ランキングとして紹介されたことから広く使われるようになったといわれています。
ホワイト企業の定義という意味合いにおいては、新卒社員の早期離職が少ないという、ビジネス誌がランキングを作成する際に設けた条件もその一つといえます。
そのほかにも、厚生労働省が所管する「安全衛生優良企業認定ホワイトマーク」、就活予備校を運営する民間会社が行う「優良ホワイト企業認定」のそれぞれの認定要件がホワイト企業の定義と考えることができるでしょう。
労働安全衛生法を遵守し、労働者の安全・健康確保に積極的に取り組み、高い安全衛生基準を維持し改善している企業として厚生労働省が認定するもの。
80項目に及ぶ認定基準を満たすことが求められ、認定されることで商品やホームページ、求人広告などに認定マークをつけることができる。
当社運営のホワイト企業総合研究所に「優良ホワイト企業認定」の調査を依頼。当研究所が依頼企業を調査した上で、「優良ホワイト企業」に該当するかを判定。認定されれば1年間の「優良ホワイトマーク」の使用を認められる。
ブラック企業も定義を持つ言葉ではなく、2000年代に入り掲示板サイトから広まったといわれています。
一般的には、低賃金での極端な長時間労働を強要し、特に若年層の労働者を搾取・使い捨ての対象とするコンプライアンスに欠けた企業を指します。
これと対極にあるのがホワイト企業です。
給与などの待遇面、労働時間などの労働条件、コンプライアンスを遵守する企業風土、働きがいなどを含めた労働環境の面から、従業員にとって好ましい職場を実現しているのがホワイト企業です。
企業のHPを見るだけでもホワイト企業かどうかを判断する手がかりになります。
企業HPは企業側からの一方的な情報発信であることを勘案する必要がありますが、大手企業や有名企業は企業HPも充実しているので、そのなかからホワイト企業の可能性を探っていきます。
社歴が長く、安定した業績をあげている企業は、企業組織として全体の仕組みが上手く回っていると想定され、ブラック企業である可能性は低いと考えられます。
財務基盤に不安定な要素があれば、それをカバーするためのしわ寄せが組織のなかに生まれやすく、従業員の労働環境や精神衛生面にも影響します。
企業のHPを見ると、代表取締役をはじめとする経営上層部の名前や顔写真が掲載されていることがあります。
そのなかに女性の顔ぶれが見られる場合、女性を積極的に活用している時代の流れにあった会社と考えることができます。
大手企業を中心に「ダイバーシティ&インクルージョン」というキーワードをHPに掲げるところが増えてきました。
性別・年齢・国籍・障がいなどに関わらず受容し認め合うということを企業自ら宣言していることの現れです。
女性の活躍と同じ文脈で、差別のない公平な組織風土であることの一端を表しているといえます。
特に採用を意識している企業では、HPのなかで求職者や新卒者に向けて教育・研修制度の内容や入社後のキャリア開発について詳しく紹介しています。
制度として教育研修体制がしっかりした企業は、人材を重視し育てていく理念や社風を持った企業であると想像できます。
最初にご紹介した厚生労働省の「安全衛生優良企業認定 ホワイトマーク」をHPに掲載している場合は、労働安全衛生法の基準に照らして一定の水準をクリアしたものと判断できます。
厚生労働省のお墨付きであることを表すものであることからホワイト企業である可能性は高いといえます。
求人情報には給与などの待遇面や休日数、福利厚生の種類など多くの情報が掲載されています。
求人媒体によって掲載される項目は異なりますが、新卒の離職者数や平均残業時間、有給休暇取得日数などを掲載する媒体も見られます。
残業が多く労働時間が長いことはワークライフバランスを図る上での一番の障害です。また、法律で定められた有給休暇を取得できない企業風土はコンプライアンスにもつながる問題です。
まず、これらの労働条件の問題から解消を図っているのがホワイト企業の特徴といえます。
待遇面で最も重要な位置づけにある給与は求人情報のなかに必ず掲載されている項目です。
業界平均など他企業と比較して妥当な水準かどうかをチェックします。待遇面についても他に劣らないことはホワイト企業の一つの条件と考えていいでしょう。
福利厚生には社会保険をはじめとする法定福利と、企業が独自に設けている法定外の福利厚生制度があります。
注目すべきなのは会社独自の福利厚生制度の内容です。住宅支援や育児・介護支援、福利厚生施設などの法定外福利厚生は、企業が従業員の生活や働き方にどれだけ配慮しているかを表すものです。
特に新しい企業で多様な福利厚生制度を設けるケースが多く見られます。
定着率・離職率は人を育てることができる企業かどうかの判断材料になります。
新卒社員の離職率が一定数あるのは一般的なことですが、就業人口が減少し、特に若年層の人材不足が叫ばれるなかにあって、貴重な人材が辞めてしまうことは企業にとって大きな痛手です。
ホワイト企業は定着率が高く、勤続年数の長い社員が多いのが特徴です。
定着率に関連して、早期に辞めてしまう従業員が多い企業は必然的に求人情報を利用する頻度が高くなります。
中途採用の募集を高頻度で行う企業は定着率の悪い企業か、事業の規模を拡大している企業のどちらかです。
求人サイト等でよく見かける企業の場合は、なぜ頻繁に募集を行っているのかに注意してみましょう。
ホワイト企業とブラック企業の違いとして最もわかりやすいのが職場の雰囲気ではないでしょうか。
ホワイト企業では良好な人間関係のなか、皆がやりがいを持って仕事に取り組んでいます。
ホワイト企業は日常業務を行うオフィス環境の改善にも配慮しています。
職場環境は生産性の向上にも結びつく大切な要素であり、レイアウトや備品、衛生環境にコストをかけることはホワイト企業としてのイメージアップにもつながっています。
スムーズなコミュニケーションと円滑な人間関係が築ける職場環境は、組織で成果をあげていくための基本です。
円滑なコミュニケーションを取り合える企業風土が醸成されていれば、ハラスメントなど起こる機会も少なくなっていきます。
ホワイト企業は経営上層部からの意識改革が進んでいます。
良好な人間関係と同時に、それぞれの従業員が自らの仕事に対して責任と意義を感じ、一つひとつの業務や目標の達成に充実感を得られているかどうかによって職場の雰囲気は大きく変わります。
ホワイト企業では与えられる仕事の内容と業務量が適切であり、それにやりがいを感じられる従業員が多いといえます。
会社と従業員との間の信頼関係を示すエンゲージメントもホワイト企業では高いことがあげられます。
従業員は所属する企業で働くことに満足しており、それに誇りを感じています。
以下では一般的にホワイト企業といわれる企業が多く見られる業界についてご紹介します。
鉄道、航空などの交通機関や電力、ガスなどのエネルギーといったインフラ業界は安定した需要と経営基盤が安定していることからホワイト企業が多いといわれています。
大手の素材・化学メーカーは給与水準も高くホワイト企業ランキングに入る企業も少なくありません。外資系企業が多いことや研究職の給与が高額であることがその要因です。
電気機器・機械などの業界は社歴の長い大手企業が多く、社内制度や福利厚生が確立されているケースが多いと考えられます。
大手はブランドが確立されているメーカーが多いことから、企業認知度と好感度の高さが従業員の働きがいにつながっています。
マスメディア等のホワイト企業ランキングなどで上位に取り上げられるのがIT業界です。
グーグルやフェイスブックなど外資系のIT大手が名を連ねています。人事制度などについても先進的な取り組みを行っていることが要因の一つです。
ホワイト企業について見てきましたが、ブラック企業の特徴についてもご紹介します。
働き方改革や女性活躍といった社会的な風潮は、少子高齢化、就業人口の減少、経済成長の鈍化傾向、IT化の進展といった社会情勢の変化に合わせて生まれてきたものです。
高度成長期の企業文化を引きずったままの企業は、時代に適応できない企業として淘汰されていくでしょう。
精神論を声高に唱える社風を持つ企業はブラック企業といわれても仕方ありません。
これまでに述べましたが、労働時間はワークライフバランスを図る上でもっとも重視されるところです。
マスメディアで取り上げられるような過労死ラインに及ぶ長時間労働は今の時代に受け入れられなくなっています。
カリスマ経営者を経営トップとする企業や中小企業に多く見られるのがトップダウンが徹底した会社です。
それが奏功している例も少なくないものの、企業の成長と長期的な企業の存続にはそれが障害となることが多いこともまた事実です。
時代の要請と言い切ることはできませんが、精神論と同じく時代に合わなくなってきた経営スタイルではないでしょうか。
経営者や幹部の個人的な好みや感情論によって、部下の差別や不当な扱いを行うケースがブラック企業の特徴の一つとされています。
ここまで来ると経営者や上司の人間性に関わる問題ですが、少なくない企業でこういった状況が存在しています。
第三者に相談するなど改善の見込みを考えながら対処を検討すべきです。
ホワイト企業もブラック企業もはっきりと色づけされているわけではないため、自分の勤めている企業がブラック企業では、と不安に感じる場面があるかも知れません。
そのような場合、まずは周囲の同僚や上司に相談してみることです。相談できる相手がいない場合には、労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。
前に挙げたブラック企業の特徴と見られる場面に遭遇した場合には、まず同僚や上司に相談した上で解決の可能性があるかどうかを判断します。
大手企業では職場のなかで問題があった場合などに相談できるコンプライアンス部門の窓口を設置している場合も多くなっています。
不当な扱いや不正を報告することで改善につながることが理想です。
ブラック企業であるがゆえに相談や報告が受け入れられないこともよくあります。その場合には離職を検討することが最善の選択です。
退職の引き止めなど手続きが難航する場合は労働基準監督署に相談しましょう。電話と面談どちらでも可能です。
最初に述べたとおり、ホワイト企業に明確な定義はありません。
ある従業員にとってはホワイト企業でも他の従業員にとってはホワイトと捉えられないこともあり得ます。また、以前は違ったのに、今はホワイト企業として認められているといったケースもあるかも知れません。
それに対し、コンプライアンスに欠けるブラック企業が存在することは否定できません。今回ご紹介した内容を参考にブラック企業を選ばないように気をつけて、自分のホワイト企業を見つけて下さい。
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