リファレンスチェックは求職者に関して前職調査が行われるため、個人情報保護法など法律に抵触するなどの懸念があります。
そのため、リファレンスチェックが違法行為とならないよう、気を付けるべき点はしっかりと抑えておくことが重要です。
今回は、リファレンスチェックで違法とされるのはどういう行為なのか。また、法律上の注意点なども詳しく解説していきます。
このページの目次
リファレンスチェックとは、中途採用の選考をおこなう際、求職者の実績や勤務状況、人間性など、面接や書類では知り得ない情報を第三者から得ることをいいます。
なお、リファレンスチェック先となる推薦者の決定方法としては基本的に「求職者側がリファレンス先を紹介する」、「企業側がリファレンス先を探す」この2つで、どちらかは企業によって様々です。
いずれにしても、採用におけるミスマッチをなくし、入社後の定着率を向上させることがリファレンスチェックの主な目的です。
ただ、リファレンスチェックを実施するためには、あらかじめ求職者に対して同意を得なければなりません。求職者の同意なしに実施してしまうと法に触れる可能性があるため注意が必要です。
下記のページでは、リファレンスチェックについてより詳しく解説していますので、そちらも併せてご参照ください。
リファレンスチェックは求職者の身辺を調査するようなものですので、それに対して違法性はないのか。こうした疑問を抱く方も少なくないでしょう。
リファレンスチェックに関する違法性の有無についてですが、リファレンスチェック自体は違法ではありません。
ただし違法となる可能性もあります。それは個人情報保護法に抵触していないか、ここが重要なポイントとなります。
なお、個人情報保護法という法律には、個人データの取り扱いに関して様々なルールが定められています。なかでも個人情報保護法・第23条には下記のように記されています。
(第三者提供の制限)
第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
つまり、リファレンスチェックの実施には求職者に対し、事前にリファレンスチェックを実施することの同意を得ていなければ、それは違法となるのです。
そのため、リファレンスチェックの実施は原則として、本人の承諾を得ない限り実施することはできない。特に企業はこうした違法性の認識をしっかりと持っておくべきです。
リファレンスチェックの違法性について知ったところで、採用担当者がやってしまいがちなリファレンスチェックの違法行為について、いくつかご紹介します。
前職場に知人が在籍していて、その知人から求職者の情報を入手したり、SNSなどを使用して勝手にリファレンスを取得したりすることは違法行為に当たりやすいです。
個人情報を本人の承諾なしに提供すること、またそれを取得することは禁止されています。
リファレンスチェックでは、質問内容にも気をつけなければなりません。
特に求職者が不利益や差別に繋がるおそれのある質問については、原則として禁止されています。(要配慮個人情報)
リファレンスチェックだからといって、なんでも聞いて良いというわけではありませんので注意してください。
リファレンスチェックを行った結果、求職者に関して問題が発覚したため、すでに出している内定を取り消しにしたい。
気持ちはわかりますが、すでに内定を出している場合、学歴や経歴詐称、重大な懲戒処分を受けていたなど、よほどの理由がない限り内定を取り消すことはできません。
これは、内定を出した時点で労働契約が成立しているからです。すでに決まった内定を取り消す行為は、解雇権濫用法理に該当するのです。
リファレンスチェック自体に違法性はありませんが、実施方法によっては違法行為となってしまうことがあるため注意が必要です。
そのため、リファレンスチェックで違法行為にならないためにも、下記の事項は徹底して対策しておくべきです。
個人情報の取り扱いに関しては極めて重要です。個人情報を適切に取り扱わないと、個人情報保護法の観点から違法行為となってしまいます。
なお、個人情報保護法では、個人情報を扱う個人情報取扱事業者に対し、以下の事項が義務付けられています。
個人データを取り扱う場合、個人情報保護法を遵守した体制の整備が必要不可欠です。
前述のとおり、リファレンスチェックの実施には、あらかじめ求職者の承諾を得ていなければ実施することはできません。承諾を得ずに実施してしまうと個人情報保護法に抵触する可能性があります。
こうした違法行為を防止するためには、求職者に対して事前承諾を得ることの周知徹底が非常に重要です。
リファレンスチェックを実施するタイミングは企業によって様々ですが、基本的には内定を出す前の段階がベストといえます。
採用フローは一般的に、書類選考から面接、内定へと進んでいきますが、内定の前にリファレンスチェックを挟むことで、より多角的な視点での見極めが可能となります。
また、リファレンスチェックを実施した結果、会社の雰囲気や価値観があっていないなど採用を見送りたい場合も、内定を出す前であれば問題ありません。
内定の取り消しは、合理的な理由がないと解雇権濫用にあたる可能性があるので注意が必要です。
こうしたことを考慮すると、リファレンスチェックは内定を出す前のタイミングで行うのが妥当であると考えます。
では続いて、リファレンスチェックを受ける側(求職者)がチェックを受ける前に注意すべきことを紹介していきます。
近年ではリファレンスチェックを実施する企業も増え、特に外資系企業では当たり前のように行われています。しかし、求職者によっては現職場に黙って就職活動を行っている場合もあり、リファレンスチェックはやめて欲しいといったケースもあります。
もちろんリファレンスチェックは強制ではないので拒否することができますが、ただ拒否すること自体、採用選考においてマイナスな印象を与えかねませんので、リファレンスチェックできるだけ拒否しない方が良いです。
ただ、どうしても拒否したいという場合は、拒否したい理由をしっかり丁寧に説明できるよう、あらかじめ準備しておくことが重要です。
リファレンスチェックの候補者となるのは、以前勤めていた会社の上司や同僚が一般的です。
ご存知のとおり、リファレンスチェックは採用可否にも関わる重要なものですので、候補者選びは慎重に、そして自分のことを高く評価してくれる、もっとも信頼のできる人に依頼するべきです。
また、質問内容など、候補者と事前に打ち合わせをすることを忘れずに行いましょう。事前に打ち合わせをすることでリファレンスチェックもスムーズに進めることができます。
もちろん、リファレンスチェックが終わったら候補者へのお礼は忘れずに行いましょう。
当然のことですが、学歴や職歴、資格の有無など、自分の経歴やスキルを偽る行為、経歴詐称は絶対にしてはいけません。
もし経歴詐称が発覚すれば、たとえ内定が決まっていたとしても内定取り消し、入社後でも懲戒解雇といったことも十分あり得ます。
社会人、特にビジネスにおいて信用を失うことは致命的でもあるため、虚偽は絶対にやめましょう。
リファレンスチェックを実施すること自体に違法性はありません。しかし、個人情報を取り扱う以上、個人情報保護法など法律に抵触しないよう、企業は細心の注意を払う必要があります。
また、応募先に好印象を与えたいと、つい嘘をついてしまいたくなることもあるでしょうが、学歴や職歴など偽る行為は詐欺に該当する可能性が極めて高く、後のトラブルに繋がりやすくなります。当然ですが、求職者は絶対に虚偽をしてはなりません。
もともとリファレンスチェックはナイーブな部分が非常に多いものです。
そのため、リファレンスチェックを実施する場合は、社内におけるルールを徹底し、違法行為にならぬよう十分な配慮が必要不可欠です。
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