中途採用においてリファレンスチェックは、企業と求職者のミスマッチを防ぐためにも大切な業務です。
応募書類や面談時の内容だけで採用の可否を判断するには、客観性に欠けているため、それを補足するために実施されるからです。
ところが、リファレンスチェックには本人の承諾が必須。そのため、拒否されることもあります。
そこで今回は、リファレンスチェックが拒否される理由や拒否された際の対処法についてご紹介します。また、拒否されないためにできる対策についても言及しています。
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中途採用において多くの企業が導入しているリファレンスチェック。
自社でもこれから導入を検討しているけれど、よくわからないという採用担当者のために、ここでは簡単にリファレンスチェックについてご紹介します。
リファレンスチェック(Reference check)とは、経歴照会を意味しています。
求職者の前職における勤務態度や実績、人柄などを前職の上司や同僚に問い合わせることをいい、応募書類や面接での応答内容に虚偽がないかを確かめるのが目的です。
経歴や職歴が誇張されたり虚偽があった場合に公正な選考ができず、自社と求職者の間でミスマッチが起こる一因になるからです。
また、応募書類や面接におけるPRでは、どうしても求職者の主観が強く入りやすくなり、客観的あるいは多角的な自己分析をできているとは言い切れません。
これらのことから、情報の正誤を確認して公正に判断するため、リファレンスチェックが行われているのです。
リファレンスチェックは、個人情報に触れる行為でもあります。
第三者である企業が、本人の目の届かないところで前職場での情報を得ようとするわけですから、後ろ暗いところがない求職者にとっても何を聞かれるのか不安なもの。
リファレンスチェック自体には違法性がないとはいえ、求職者にとっては同意できないケースもあります。
もちろん、個人情報保護法第23条において、第三者が本人の同意なしに個人情報を取得することは禁じられていますから、業務に関係のないことを訊ねえることはできません。また、業務に無関係な情報を提供することもできません。
仮に求職者本人の承諾を得ずに情報の授受や提供をすれば、同法律に抵触することになり、企業としての信頼は失墜します。
リファレンスチェックのキホンを更に詳しく知りたい方は詳細については、次の記事を参照してください。
ミスマッチを防ぎ、公正な選定をするのにリファレンスチェックが重要だとしても、必ずしも本人や前の職場が応じてくれるとは限りません。
では、どんな理由のときに拒否をされやすいのでしょうか。ここでは、それぞれの立場ごとに分けて見てみましょう。
リファレンスチェックを求職者本人が拒否する理由には、多くの場合、次のケースのいずれかに該当します。
中途採用者の場合は、転職活動していること自体をリファレンスチェックを通して職場に知られてしまうことを恐れているケースがあります。
この背景には、現職場である企業への不満が理由の場合もあれば、上司や部下など人間関係が理由になっていることも考えられます。
本人が「転職活動を伏せている」との理由からリファレンスチェックを拒否するようであれば、別の方法で人柄や適性を判断し、そのうえで退職後にリファレンスチェックを行うのが最適です。
強引に同意を求めることがないように留意し、臨機応変に対応する柔軟性が必要です。
人間関係が良好でないケースやすでに離職しているのものの円満退職ではないケースでリファレンスチェックが拒否されることもあります。
この場合、求職者自身のコミュニケーション能力などへの疑問が湧くかもしれませんが、もしかしたらブラックな労働環境によって関りたくないと考えている可能性もゼロではありません。
拒否をされたら、まずはその理由をしっかりとヒアリングし、前職の状況を確認します。そのうえで、リファレンスチェックで公平な判断材料として適切に情報提供かのうかどうか判断しましょう。
最後に、何としても採用をつかみ取りたい中途採用者の中には、虚偽や誇張によってリファレンスチェックを拒否するケースがあります。
拒否の理由を確認しても、その答えが不明瞭であれば正当な理由があるとは言い難いため、不採用への判断材料の一つとしても差し支えないでしょう。
求職者が指定しても前職場への担当者が必ずしも回答に応じてもらえるとは限りません。
求職者が優秀で手放したくない、辞められると困るといった場合に、前職場がリファレンスチェックに応じないことがあります。しかし、求職者は転職を望んでいるわけですから、前職場に応じてもらえないのであれば、他の方法で求職者の人柄や適性を判断する必要があります。
次に注意したいのが、求職者との関係性が良くなく、転職活動に非協力的な場合です。
このケースでは、何が影響して良好な関係構築ができなかったのか第三者が正確に把握して判断することは難しいもの。
たとえ求職者自身に大きな非がなくても、無理に情報提供を依頼したところで公正な情報を提供してもらえるかどうかは怪しいため、他の方法で求職者の適性を判断しましょう。
リファレンスチェックが採用の合否に影響するとわかっている担当者の場合、回答依頼を受けても、荷の重さから拒否するケースもあります。
採用選考を行う企業側としては対応してもらいたいところですが、答える側も人間です。他人の人生を左右するような責任から逃れたいと思う気持ちも受け止めたうえで、別の手段を考えましょう。
担当者が繁忙期や配置換えなどで忙しく、回答に協力する時間が取れないケースもあります。そもそもリファレンスチェックには、回答に対する報酬が発生しません。
これは、回答の信ぴょう性と公平性を保つためでもあります。そうした事情から、リファレンスチェックは担当者の善意に甘える行為とも言い換えられます。
非協力的であっても致し方ないと受け止め、他の方法で求職者の人柄や適性を判断するよう考えましょう。
前職の企業や組織がリファレンスチェックへの回答を拒否する理由には、以下の事情があることも。
時期にもよりますが、会社の繁忙期や決算期などで担当者が多忙で、回答のためにわざわざ時間を作らせたくないと考えている場合もあります。
また、担当者が退職していたり、他の部署や支店などに配置換えになったりして、求職者のことを知る人がおらず、回答が難しい状況であることも。
求職者との関係が良好でなかったり、円満な退職でなかったりした場合には、心理的に回答する手間や時間を取りたくないと非協力的な態度を取られることもあります。
まれに、リファレンスチェックにおいて本人の同意があるにもかかわらず、個人情報流出になるのではないかと二の足を踏む企業もあります。
この場合は、リファレンスチェックにおける法律をもとに、丁寧に説明すれば応じてもらえるケースもありますから、まずは拒否の理由をしっかりと確認するのが望ましいでしょう。
また、中には本人に同意の事実を確認したいと考える企業もあります。
コンプライアンスがしっかりとしている証拠でもありますから、返答内容も十分に採用選考での判断材料として有効と見ることができるでしょう。
拒否されてリファレンスチェックができない場合、どのように対処すればいいのか。ここでは、対処法について触れていきます。
リファレンスチェックは、あくまでも求職者本人を含め前職場の厚意によって成り立ちます。
相手に依存する情報取得の手段でもあるため、リファレンスチェックができない求職者もいるんだと理解することも重要です。
しかし、企業のリスクコントロールの観点から、どうしてもリファレンスチェックを抜きに採用は難しいというのであれば、どれだけ優秀な求職者でも不採用にするしかありません。
それでは、本来求めている人材を手放すことにもなりかねないため、企業側は柔軟に対応する必要があるでしょう。
リファレンスチェックでは、できる限り求職者との関係性が近い人物に回答してもらうのが望ましいもの。しかし、上司や部下、同僚に依頼することがどうしても難しいようであれば、同じ職場ですでに転職しており、先に前職場を離れた先輩や同僚などに依頼する方法もあります。
また、求職者が過去に複数回転職の経験があれば、直近の前職場に限る必要はありません。その前やさらに前に勤めていた職場からの取得も可能です。
その場合は、事前に求職者に事情を話して承諾を得ましょう。
ツールを導入するほど採用枠がない場合は、リファレンスチェック以外での評価制度を取り入れたほうが適していることもあります。たとえば、ワークサンプルテストや入社体験制度です。
ワークサンプルテストは、Googleをはじめ大手国内企業でも実施されているもので、業務遂行能力を確認できるテストです。
テストといっても紙ベースで回答を得るのではなく、体験入社で実務に則した課題を与えて、その遂行能力を見るというものです。
これには利点があり、求職者自身が実務を体験することで入社後のミスマッチ予防にも繋がります。
また、キャッシュレス決済サービス『Coiney』の開発・運営で知られるヘイ株式会社や、クラウド型ビジネスチャットツール『Chatwork』の開発・運営元であるChatwork株式会社では、社風や社内文化の体験にも役立てているようです。
これによって、求職者は実務以外の面でも自分に合った職場かどうかを判断できるため、企業側としては早期離職を予防するのにも有効です。
リファレンスチェックを実施する場合は、拒否されないように段取りしておくことも大切です。
担当者が不在や多忙、あるいは本人確認が欲しいなどから拒否されるのであれば、早い段階で求職者に通達しておくことで拒否を回避できる可能性が高まります。
前出の事情であれば、早めに求職者に伝えておけば、求職者が事前にリファレンスチェックを依頼する旨を連絡しておいてくれることもあるからです。
リファレンスチェックの回答は、少なからず担当者の負担になるため、その負担を軽減することによって応じてもらえるケースもあります。
近年では、リファレンスチェックに関するWEBサービスも増加していますから、そうしたツールを活用して担当者の手すきのタイミングで回答できるようにしておくのも一つの手です。
リファレンスチェックは、中途採用者の人となりや適性を知るうえで大切なものです。しかし、場合によっては求職者本人や前職場の担当者から拒否されることもあります。
採用選考において重要な項目であるからこそ、自社側でできる回避策を取り、できる限り応じてもらえるように準備しておきましょう。
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