TOP > 組織 > 採用 > 採用のミスマッチはなぜ起こる?原因やリスク、対処法を紹介
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採用のミスマッチは、「労働条件」「人間関係」「仕事内容」などについて企業と求職者の認識にズレが生じている場合に起こります。
「社員の定着率が低い」「欲しい人材を得られない」などの悩みがある企業は、ミスマッチに気づかないまま採用活動を展開しているのかもしれません。
本記事では、採用のミスマッチの概要やリスク、ミスマッチの原因、さらにはミスマッチを防ぐ上で有益な対策について紹介します。
採用に悩む企業担当者は、ぜひチェックしてみてください。
このページの目次
「靴とスーツがミスマッチだ」などと言われれば、「ちぐはぐな状態なのだな」と分かります。
人材採用などにおけるミスマッチも、これと同様です。企業と求職者が掛け違いを起こし、ズレてしまっている状態を指します。
採用のミスマッチについて、具体的に見ていきましょう。
ミスマッチとは、不釣り合いなこと、既に組み合わされているもの同士にズレが生じている状態を示す言葉です。
企業の人材採用などで「ミスマッチ」という時は、企業側と求職者の求めるものや認識がズレていたりギャップがあったりする状態を言います。
似たような言葉に「アンマッチ(unmatch)」があります。しかし、こちらは「組み合わせることができない状態」について言う時に使う言葉です。
双方にギャップはあるけれど「採用はする、検討する」のがミスマッチ。一方、そもそもの条件やニーズが全く折り合わず「応募の対象にさえならない、応募が来ない」のがアンマッチです。
両者はよく混同されるため、違いを覚えておきましょう。
厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)」によると、新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は以下の通りであると分かります。
つまり、高卒者の約4人に1人、大卒者の約3人に1人が、3年以内に何らかの理由で会社を辞めているということです。
また、離職の原因については、平成29年に「独立行政法人労働政策研究・研修機構」が21~33歳までの人を対象に行った「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成(若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)」を見てみましょう。
こちらによると、新卒3年以内に離職した人の離職理由として、以下のようなものが上げられていました。
こうした理由を見ると、職場で感じたミスマッチが原因で離職を選ぶ人が少なくないと分かります。
人材採用のミスマッチは、企業に大きな損失を与えます。
企業は多額のコストをかけて社員を雇い入れています。しかし、社員が離職してしまえば、採用のためにかけたコストや手間は全て水の泡です。
例えば新卒者を採用する際には、以下のようなコストが掛かっています。
「株式会社エン・ジャパン」は、社員1人が3ヵ月で離職してしまった場合の具体的な損失額を以下のように試算しています。
採用経費/人 | 62.5万円 |
在席費用/人 | 112.5万円 |
研修費用/人 | 12.5万円 |
合計費用/人 | 187.5万円 |
社員1人の離職につき、企業が被る損失は約187.5万円です。
これを知れば、採用のミスマッチによって企業がいかに大きなダメージを受けるかよく分かります。
企業の人材採用におけるミスマッチのパターンとしては、以下のようなものがあります。
これらのミスマッチは、単発的に発生するとは限りません。状況によっては、複数のミスマッチが同時発生し、企業側・求職者側ともに重くのしかかることがあります。
給与や待遇といった、労働条件についてのミスマッチです。企業側が提示する内容と採用された側が求める内容が合致しない場合に発生します。
例えば、求職者が非常に専門性の高いスキルを持っているにもかかわらず、安い給与しか提示されない…、これは企業側がスキルの価値や難易度などを把握していなことから発生するミスマッチです。
採用された側は、給与面に対し大きな不満を抱くこととなります。
経験・知識・資格・スキルなどについてのミスマッチです。
企業側が求めるレベルと採用された側が所持するスキル・資格等のレベルが一致しないことによって発生します。
即戦力になると期待して採用しても、その人にスキルや経験がないのなら活躍は期待できません。
「なぜスキルのない社員を入れたのか」と、現場から苦情が寄せられることもあるでしょう。
採用後の業務に関するミスマッチです。企業側が任せたい仕事と、採用された側がやりたい仕事の内容が食い違っていた場合に起こります。
例えば、面接時には「○○の業務をお願いする」と伝えて入社してもらったにも関わらず、その業務の手が足りていたケース。
このような場合、新入社員には他の仕事を担当してもらうしかありません。新入社員は「聞いていた話と違う」と、企業に対し不平や不満を感じるようになるでしょう。
社風や人間関係などに関するミスマッチです。採用された側が企業の理念や目標に共感できなかったり、職場の雰囲気や人間関係になじめなかったりするときに起こります。
例えば、面接時には「和気あいあいとして上下関係もない」などと聞いていれば、それを期待して入社するものです。
ところが実際には「年功序列で上下関係がすごい」「社員のノリが体育会系だった」などの職場だった場合、やはり不平・不満を感じます。
せっかく入社しても「この会社とは合わない」と感じることが多いでしょう。
採用のミスマッチが起こると、企業にとってはさまざまなリスクがあります。
中には企業のイメージや今いる社員にまで悪影響を及ぼす恐れがあるものもあり、軽く考えてはいけません。
採用のミスマッチによって起こり得るリスクについて紹介します。
採用のミスマッチによって生じるリスクとして最も大きいのが、早期離職のリスクです。
入社した人の不満や不安を解消せずに放置しておくと、すぐに退職願を出されるかもしれません。
入社早々離職されれば、前述の通り多額のコストがムダになる上、企業イメージも下がってしまう恐れがあります。
就職活動をしている人の多くは、3年以内の離職率が30%を越える企業を「ブラック企業」として認識するのだとか。
もしも「あの企業は、人が定着しないブラック企業だ」と噂が立てば、今後求人を出しても人が集まりにくくなります。
せっかく新しく人を入れても、いざ現場に配置すると「使えない」「役に立たない」などと辛辣な意見が上がることがあります。
こうした採用のミスマッチは、採用担当者が現場の意見を十分に理解していない場合に頻出します。
現場で「使えない」と言われれば、再び求人を出さなければなりません。採用された側も希望していた仕事を与えられず、お互いに不満を抱くこととなるでしょう。
採用のミスマッチによって早期離職する人が出てくれば、周囲の社員もモチベーションが下がります。
親身になって教えた新人が数ヵ月でやめてしまえば、徒労感が湧いてくるものです。ムダな時間を費やしたことで、やる気を失う人も出てくるでしょう。
また新人に同調して、会社に不満や不安を抱く社員が出てくることもあります。
身近な人が離職すると、自身の今後やこれからのキャリアについて考える人は少なくありません。もしかすると、「離職の連鎖」が起こる可能性もあるのです。
採用された人が入社後に不平・不満を抱くのは、多くの場合「思っていた仕事と違う」「聞いていた話と違う」などと感じた時です。
こうしたミスマッチは、企業側と求職者側の意思疎通が適切に行われていない場合に頻出します。
「両者の意思疎通が適切に行われていない」とは、具体的にはどのような状況なのでしょうか。採用のミスマッチが発生する原因を詳しく見ていきましょう。
企業は、求職者に伝える情報を自社の思惑で取捨選択することがあります。
「高いスキルを持った人に来てほしい」「なるべくたくさんの母数を集めたい」…、こうした希望から、労働環境や仕事の良い面ばかりを強調したりネガティブな面にあえて触れなかったりするのです。
しかし、必要な情報を伝えないままに人を雇い入れても、入社すれば企業の実体は明らかになってしまいます。
採用された人は入社後にギャップを感じやすく、企業に対し不満や不平を抱くようになるでしょう。
履歴書の経歴や成果、スキルを重視しすぎる企業も、採用のミスマッチに悩まされがちです。
新しく人を雇い入れる時は、その人の仕事への意欲や取組み方、仕事上の価値観なども確認しておく必要があります。
これを怠った場合、採用してはみたものの「自分からは動けない人だった」「人とチームを組んで働けない人だった」などのトラブルが発生するかもしれません。
新しい人を採用する際は、スキルや経歴ばかりではなく「自社の社風や働き方に合うかどうか」「コミュニケーション能力はどうか」といった性格・性質的な面も見極める必要があります。
「仕事が思うように進まない」「職場の雰囲気にうまくなじめない」という不安は、入社後多くの人が感じることです。
しかし、これらの不安の多くは企業が適切にフォローすれば乗り越えられます。
ところが企業に適切なフォロー体制がない場合、新入社員は一人で不安と戦うしかありません。
いつまでたっても不安が解消されず、ついには離職につながるケースもあるでしょう。
企業と求職者の意識や認識を近付けられれば、ミスマッチを防ぐことは可能です。採用のミスマッチを防ぐ上で取り組みたい、さまざまな対策を紹介します。
入社した人に「思っていたのと違った」と思わせないためには、実際の働き方や労働条件、環境について適切に伝えることが必要です。
好ましくない印象を与える事案があったとしても、それが事実ならばありのままに伝えましょう。
まず「給与・福利厚生・休日」などは、基本中の基本です。この部分を曖昧にする企業は、求人票を見た時点で避けられる恐れがあります。
誤解が生じるような書き方は控え、正しい情報を伝えましょう。
また、入社後のイメージをよりリアルに近付けるためには、業務内容を詳細に記すことはもちろん、社風や職場の雰囲気、企業理念なども詳細に盛り込んでおきたいところです。
また、「繁忙期は残業が多い」「○○から△△までやってもらうことになる」など、覚悟が必要なことについても明記しておくのがベターです。
スキルや資格は目に見えるものですが、その人の性格や性質を把握するのは容易ではありません。
そこで、ひとつの目安としておすすめなのが適性検査の導入です。全ての求職者に受けてもらうことで、その人のパーソナリティを把握しやすくなります。
「コミュニケーション能力の高い人」「堅実に業務をこなす人」…、テストの結果から、雇い入れたい人材をみつけられるかもしれません。
また、社内にロールモデルとなる優秀な社員がいるのなら、その人にも適性検査を受けてもらいましょう。その結果と似た傾向の人を選べば、入社後の働きに期待が持てます。
人を雇い入れる時は、1次、2次、と複数の面接者が対応するケースが多いのではないでしょうか。
この時面接者の意識がそろっていないと、自社にとって本当に必要な人材を雇えません。
例えば、現場は「仕事を教える余裕がない」「即戦力がほしい」、トップが「未経験者可」「将来の幹部候補になりそうな人を」などと考えていたのでは、方向性がバラバラです。
ミスマッチがないよう上から現場までが意識をそろえ、「このような人がほしい」というはっきりとした像を描くことが大切です。
採用に関する工程には複数の人が関わります。
明確な採用基準を作らないままに進めると、採用工程が属人化してしまうかもしれません。
個々の印象や感覚で採用が進められてしまい、期待される人材の確保が難しくなります。
新しい人を雇い入れると決めたら、次のポイントを明確にし、全員で共有しておきましょう。
明確な採用基準があれば、最後まで「雇い入れたい人材」のイメージがブレません。自社にとって本当に必要な人を雇い入れやすく、ミスマッチが起こりにくくなります。
新規採用であれ中途採用であれ、仮採用期間は採用のミスマッチを防ぐ上で有益です。
企業や業務の実態をいくら丁寧に伝えても、体験に叶うものはありません。
新しく入った人に実際の業務をこなしてもらうことで、職場の雰囲気や業務の難易度をリアルに伝えられます。
この時採用した人が給与面・待遇面で割に合わないと感じたり、企業側がスキル不足を感じたりした場合は、本採用の前に話し合う必要があります。
ただし、どんなに努力してもミスマッチを解消できないこともあるかもしれません。この場合、その人は仮採用のみで終了することとなるでしょう。
ミスマッチを抱えたままで雇用関係を継続するよりは、そこで終わりとした方が双方にとって良い結果となるはずです。
採用活動は、1回採用したら終わりというわけではありません。次回の採用活動に備えて、採用までの全工程を振り返り、検証を行いましょう。
具体的には次の記録を残し、効果検証します。
採用活動を適切に振り返ることで、採用における課題が明確になります。次回の採用活動では、ミスマッチがより起こりにくくなるはずです。
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採用のミスマッチは、企業と求職者のイメージや認識のギャップから発生します。
求人をかける時は、給与や福利厚生はもちろん、厳しいことや大変なこともきちんと伝えるようにしましょう。
求職者に入社後のリアルな姿をイメージしてもらうことが、ミスマッチ防止につながります。
また、ミスマッチを防ぐには適切な採用工程を踏むことも大切です。明確な採用基準を設けることはもちろん、適性検査や採用管理システムの導入なども検討してみてください。
採用のミスマッチが少なくなれば、長く企業に貢献してくれる良い人材を獲得できるでしょう。
画像出典元:Pixabay、Pexels、Unsplash