メンター制度とは|目的やメリット・デメリット、導入方法から事例まで

メンター制度とは|目的やメリット・デメリット、導入方法から事例まで

記事更新日: 2022/12/28

執筆: 編集部

若手社員の定着率向上や、社員間でのコミュニケーション促進のためには、メンター制度の導入が効果的です。

ただしメンター制度には難しい点も多くあり、導入にあたってはポイントを押さえた制度設計・運営が求められるでしょう。

この記事では、メンター制度の概要やメリット・デメリット、導入方法などに関して解説いたします。

また、実際の導入事例なども紹介いたしますので、ぜひともご覧ください。

メンター制度とは

メンター制度とは、直属の上司ではなく年齢や社歴の誓い先輩社員(メンター)が後輩社員(メンティ)のサポートをする制度のことです。

メンターはメンティと異なった部署に所属する、入社5年目~10年目未満程度の若手社員から選ばれることが多いと言えます。

1. 類似諸制度との違い

OJT(On-the-Job Training)は現場での実践を通した教育のことを指し、メンター制度の様に指導社員をメンティ一人に対して一人などと任命するとは限りません。

OJTでは業務に直接関する指導が中心ですが、メンター制度では会社員生活に関する不安や各種ルールに関するサポートもメンターの業務範囲です。

ブラザー・シスター制度は仕事の相談役として先輩社員を任命する点でメンター制度と似ていますが、対象を新人・若手社員に限定する点や、同部署の先輩社員がメンターとなる点で異なります。

先輩社員が後輩社員をマンツーマンでサポートする点ではメンター制度と似ていますが、エルダー制度はOJTの一環としてあくまでも業務遂行に関する指導を主な目的としています。

2. メンター制度の目的

メンター制度の目的には、若手社員の定着率向上があります。

日本企業においては従来より終身雇用制度や年功序列制度が基本となってきましたが、バブルの崩壊をきっかけの一つとして成果主義の導入や働き方の多様化が進みました。

成果主義は仕事の成果を主な基準として社員を評価するため、社員同士を年次や年齢に関係なくライバルとする側面もあります。

その結果として、現在では先輩社員が後輩社員に指導をする組織風土が形成しにくいケースが多くあるのが実情なのです。

メンター制度導入により、人材育成やチームワークを醸成する風土を人為的に作り出すことができ、若手社員の孤立化防止につながります。

メンター制度を導入して若手社員の相談先を確保することで会社になじみやすくなり、離職率の低下が望めるでしょう。

3. メンター制度の現状

HR総研が2018年10月に上場及び未上場企業の人事責任者や人材育成担当者に行ったWebアンケートによると、メンター制度の導入有無は以下の通りでした。

企業規模
(従業員数)

現在
メンター制度がある

以前はあったが
廃止された

元々
メンター制度はない

全体 46% 9% 45%
1001名以上 54% 15% 31%
301~1,000名 44% 8% 48%
300名以下 41% 6% 53%

出典:HR総研(人材育成「新入社員研修」に関するアンケート調査)

企業規模が大きくなるにつれてメンター制度の導入割合は高まるものの、メンターの質や数の確保、メンター自身の負担増などを理由に廃止した企業も1割程度存在しています。


メンター制度のメリットとデメリット

メンター制度のメリットとデメリットをまとめると、以下の通りです。

主体 メリット デメリット
メンター目線 ・仕事に対する責任感が増す ・業務負担が増える
メンティ目線

・身近に相談できる人がいる安心感
・職場になじみやすい

・メンターとの相性次第では仕事がやりにくくなる

企業目線 ・部署間コミュニケーションの活発化 ・現場任せにすることができない

以下で詳しく解説します。

1. メンター目線でのメリット・デメリット

メンター目線では、メンティと接することで仕事に対する責任感が高まり、より自発的に仕事に取り組むことが期待できる点がメリットです。

後輩社員の指導経験は、今後管理職となった場合にも活かすことができます。

一方で、メンティのサポート業務が通常業務に加わるため、業務負担が一定増えてしまうことがデメリットと言えるでしょう。

2. メンティ目線でのメリット・デメリット

メンティ目線では、身近に相談できる人がいるため安心感があり、孤立化を避けて職場に馴染みやすくなることなどがメリットです。

しかし一方で、良いメンターと出会えるかは運の要素もあるため、相性次第では不公平感を感じたり信頼関係を築くまでに時間を要する可能性がある点がデメリットと言えます。

3. 企業目線でのメリット・デメリット

企業目線では、部署間のコミュニケーション活性化などがメリットと言えます。

また、女性社員には同棲のメンターがお手本として相談に乗ることで、女性活躍推進にも効果が期待できるでしょう。

一方で、メンター制度導入を成功させるにはメンターの質を高める・確保する必要があり、現場任せにせずメンターの育成を行っていくことが必要となります。

メンター制度の導入方法

メンター制度の導入フロー

メンター制度の導入フローを整理すると、以下の通りです。

フロー 概要

課題の整理と
目標の設定

自社の若手社員・女性社員の定着率を確認し、若手社員育成の課題を整理し、メンター制度導入の目的を明確化する
計画策定 制度導入にかかる期間やメンターの選定方法などの具体的制度設計や制度導入の定量目標を設定する
運用ルールの策定 円滑な制度運営ができるよう、運用マニュアルを策定する
メンターの選定 一定の業務実績やコミュニケーション能力を持った社員を選定する
社内へのガイダンス メンターやメンティへの通知のみならず、社内全体からの理解を得るために目的や実施内容を具体的に説明する

実際の運用と
振り返り

一旦制度運営をスタートさせ、定期的にメンターやメンティの状態をアンケート等で確認し、改善していく
 

メンター制度導入のポイント

メンター制度をさらに活かすためには、メンティの部署や雇用形態に応じた人選が大切です。

例えば営業系の社員に対してはエンジニア系や製造系の社員をメンターにすることで、メンティが自社製品・サービスに対する理解を深めることにつながります。

バックオフィス系の社員に対しては、業務で関わりが多い部署の社員をメンターにすることで、通常業務の円滑化も図れるでしょう。

また、メンティが正社員であれば、自社を支えていく存在であるとの自覚や幅広い業務・職種への理解を深めるために、経験豊富な社員をメンターにすることが効果的です。

パート・アルバイト社員に対しては、自身の業務内容と同じ職種の社員をメンターに据えることで、早期に業務スキルや知識を吸収してもらうことが望めます。

メンター制度における制度設計のポイント

メンター制度を運営していく上ではメンターの人選はもちろん、メンターとメンティの信頼関係をいかに構築するかを第一優先にして、マニュアル設計をしていくことが重要です。

メンティからは個人的な相談も受ける可能性があり、相談された話の扱いなどに関するルール決めはとても大切でしょう。

また制度運用をメンターとメンティの2人だけに任せきりにしないよう、企業としてもサポートし、メンタリングの現場で使えるツールを充実させていくことも求められます。

さらに、メンターに求める役割を明確に示すことや、メンター業務に対する評価体制を作ることもポイントです。


メンター制度の失敗例と対応策

メンターとメンティの相性が悪い

メンター制度はメンターとメンティの信頼構築がとても重要であるため、両者の相性が悪いと上手くいきにくいと言えます。

相性の良し悪しに関わらず一定レベル以上の運営が可能なマニュアルを作成する、両者のフォロー方法を確立する、メンターの変更方法を明確にするなどの対応が必要でしょう。

メンターがメンティの評価に関係する可能性がある

メンターがメンティの上司やそれに近い立場の人物だと、メンティが心を開くのはなかなか難しいことも考えられます。

また、メンターとメンティの上司が対立関係にある場合も、メンティの評価に影響を及ぼしかねません。

メンターにはメンティと利害関係のない人物を選定すると良いでしょう。

メンターの人選に偏りが出てしまう

メンターの適性がある社員はどうしても限られているため、特定の社員へ依頼が集中するケースもあります。

人選が集中してはメンターとしての成長機会を多くの社員に平等に与えられないこともあり、メンターの人選を分散させるルール作りが求められるでしょう。


実際の導入事例

1. 損保ジャパン日本興亜ホールディングス

SJNKホールディングスでは、女性管理職育成促進のために女性社員をサポートするメンター制度を導入しています。

女性同士でなければ相談できないことはやはり多く、優秀な女性社員の離職防止が期待できます。

2. 資生堂

資生堂は、若手社員がメンターで社長や執行役員を含む先輩社員がメンティという、通常とは逆になったユニークな制度「リバースメンター制度」を採り入れています。

社内コミュニケーションの促進や、IT領域に関するベテラン層の教育、マネジメントされる気持ちを思い出すことによる経営・管理層のレベルアップが目的です。

3. 株式会社メルカリ

近年目覚ましい成長をしている株式会社メルカリでは、新入社員に必ずメンターが付けられます。

メンターとメンティのワークショップや二人セットで様々な部署の社員とランチでコミュニケーションを図る「メンターランチ」など、両者の信頼関係構築策が充実しています。


顧問紹介やメンター派遣会社に依頼する

自社内ではなかなか難しい、そういう企業は少なくありません。

外部からスムーズに導入できる企業を以下ご紹介します。

新入社員の定着化を叶えるプロメンター『人援隊 社外メンターサービス』

画像出典元:「人援隊 社外メンターサービス」公式HP

特徴

「人援隊の社外メンターサービス」は、企業と若手の緩衝材として社外メンターを設置することで早期離職を防止する顧問紹介サービスです。

豊富な経験と実績を持ったメンターが上司や人事、経営陣と連携を取りながら、新入社員の不安や悩みを解消するためのサポートをしてくれます。

また、近年話題になっている女性管理職比率の向上や、産後離職率の改善を支援する社外シスターサービスも利用可能です。

産休・育休前後の女性社員が安心して職場復帰できるよう継続的なフォローアップが可能なので、女性活躍推進を望んでいる企業にうってつけです。

推しポイント

  • 社内メンター、研修講師として、直属上司・経営陣とのコミュニケーション、連携、支援をサポート。
  • 気軽な相談窓口として活用可。
  • 新入社員へのサポート体制構築。

 

料金プラン

人援隊の社外メンターサービスには主に2つのプランがあり、自社の育成方針に合わせてサポート内容をカスタマイズできます

オプションには複数の新入社員に対して集合型の新入社員研修オプションがあり、社内メンター育成支援も利用可能です。

いつでも気軽に相談できる場として、電話やメール以外にランチ交流会やLINEといったコンタクト方法もオプションで選択可能なので社員の好みに合わせてもいいでしょう。

  社外メンター制度 社外シスター制度
初期費用 問い合わせ
月額費用
(税表記なし)
300,000円 150,000円~
プラン内容
  • 習慣化へのアプローチ
  • 気軽に相談できる随時窓口
  • 自分軸へのアプローチ
  • 社員のサポート体制構築
  • 社内メンター育成
    (オプション)
  • 新入社員研修
    (オプション)
  • 訪問・オンライン対応及びコミュニティ
  • お役立ち情報の定期配信
  • ランチ交流会
  • 自宅派遣orSkype面談
    (オプション)

 

 

まとめ

メンター制度には、若手社員や女性社員の孤立化や離職の防止が期待できます。

メンターとメンティとの信頼関係をいかに構築していくかなど、重要なポイントを押さえた制度設計・運用ができれば、社内コミュニケーションの促進にもつながるのです。

実際に導入した事例なども参考に、自社にとって最適な制度導入を目指しましょう。

画像出典元:Burst

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