なぜなぜ分析とは、トヨタ自動車が発案した問題解決手法です。
問題が起こった時に「なぜ」を繰り返しながら、その原因を追求し、問題解決につなげるというもの。
今では、多くの企業でなぜなぜ分析が取り入れられています。
しかし「取り入れたけれど原因があいまい」「個人のつるし上げになってしまった」などと失敗してしまうケースもしばしばあります。
こちらの記事では、なぜなぜ分析をする時に押さえなければいけない5つのポイントを解説。
具体的な失敗例、注意点もご紹介します。
正しいなぜなぜ分析のやり方を知り、問題解決に役立ててくださいね。
このページの目次
日本を代表する自動車メーカー・トヨタ自動車。
2022年3月期の連結決算で、過去最高の売上高と純利益を記録するなど、昨今のコロナ禍でも勢いが衰えません。
なぜなぜ分析は、そんなトヨタ自動車が発案した問題解決手法です。
企業内で何か問題が発生した時、「なぜ」を5回繰り返して、その問題の原因を突き止めるという方法です。
1度だけでなく、何度も「なぜ」と問うことで、直接的な原因だけでなく、根本的な原因を洗い出すことができます。
その原因を突き止めることができれば、再発防止に役立ちます。
例えば「製品の納期に間に合わなかった」という事象を考えてみます。
1回目の「なぜ」→「製造のための機械が壊れた」
2回目の「なぜ」→「機械のメンテナンスに不備があった」
3回目の「なぜ」→「メンテナンスのチェック体制がなかった」
このように5回ほど「なぜ」を繰り返すことで、根本原因を探っていきます。
なぜなぜ分析を正しく進めるためには、押さえるべきポイントが5つあります。
具体例を紹介しながら、詳しく解説していきますね。
まず1つ目のステップは、問題とする事象を具体的に決めることです。
ここで事象をあいまいにしてしまうと、結局、原因もあいまいになり、再発防止につながらなくなってしまいます。
例えば「不良品を出荷してしまった」というケース。
「不良品を5個出荷した」というのと、「不良品を1000個出荷した」というのでは、原因が変わってくる可能性があります。
「〇月〇日に不良品を〇個出荷してしまった」などと、できるだけ具体的に設定するようにします。
分析したい事象が決まったら、事象の全体像をしっかりと把握しましょう。
詳しい経緯や背景、関わったメンバー、場所など細かく確認します。
このステップでしっかりと全体像を確認しておかないと、分析の途中で不明点が出てきてしまいます。
不明点が出る度に、分析が中断してしまうことを避けるためにも、まず事象の詳細をしっかり確認しましょう。
ここから分析が始まります。
「なぜ」を繰り返していく上で、論理的に答えるということがポイントです。
事象と「なぜ」の答えが、論理的につながっているか確認しながら進めてくださいね。
個人の感想や思い込みは排除しましょう。
また「なぜ」の答えが複数出てくることもあります。
その時はそれぞれの答えに対して「なぜ」を考え、論理的につながっていることを確かめながら進めてください。
5回ほど「なぜ」を繰り返した結果、分析がうまくいっていれば、原因が明確になります。
実は厳密に5回と決まっているわけではありません。
問題の事象によって、回数は変わります。
原因にたどり着くまで、複数回「なぜ」を繰り返してみてください。
また原因が具体的でないと、意味がありません。
例えば「努力が足りなかった」「担当者が気づかなかった」というような、あいまいな原因にたどり着いた場合は、解決策を検討することができません。
主語を明確にし、「5W1H」を意識して原因を検討してみてください。
原因が明確になったら、解決策を検証・分析します。
「どうしたら原因を排除できるか」を検証し、同じ問題が再発しないよう対策を立てることが大切です。
解決策を導いたら、実行し、効果があるかしっかり検証しましょう。
効果が見られていたら、なぜなぜ分析が成功したと言っていいと思います。
また解決策を効果的なものにするためには、実行できる解決策を導くことがポイントになります。
「時間が足りない」「景気が悪い」などという原因に帰着してしまうと、「自分たちでは解決できません!」という無意味な結論に。
解決できる、コントロールできる原因を見つけ、解決策を練りましょう。
なぜなぜ分析には、失敗してしまうケースもあります。
失敗してしまうと時間を無駄にしたり、個人を追い詰めたりして、大きな損失につながることも。
注意したい失敗例をご紹介します。
なぜなぜ分析は、問題となった事象を明確に設定しないと、結果的にたどり着いた原因や解決策もあいまいになっていってしまいます。
「すぐにアルバイトの子がやめてしまう」「売り上げが悪い」という風に、事象をあいまいに設定すると「社内の雰囲気が悪いから」「商品の質が悪いから」などと、原因も明確にすることができません。
「〇カ月で〇人のアルバイトがやめてしまった」「〇という商品が目標の〇%しか売れない」という風に数値や固有名詞を組み込んで、具体的に設定しましょう。
「なぜ」の答えが感情的になっているというのも、よくある失敗例です。
「書類の郵送先を間違えた」という事象で、「ミスが多い担当者だから」という風に感情的に分析をしてしまうと、解決策につながりません。
「書類の送り先を間違えた」を理論的に分析していくと、「チェック体制が整っていなかった」「送り先のリストが見にくい」などと具体的な原因が明確になります。
なぜなぜ分析で注意したいのは、個人の問題として責任を追及してしまうことです。
先ほどの「書類の郵送先を間違えた」という事象でも、「担当者がリストを間違えた」「担当者が書き間違えた」というように、個人の問題として片付けてしまうと、組織の改善になりません。
また責任を追及された社員は「つるし上げられた」と感じてしまう恐れもあります。
「誰のせいか」ではなく「なぜ起きたのか」に注目し、マニュアル作りや現場の環境など組織的な課題に目を向けることが大切です。
分析を進めていく中で、漠然と「なぜ」に答えていくと「コロナ禍のせい」「景気が悪いせい」など、自分たちでは解決できない原因にたどり着いてしまうことがあります。
再発防止策や解決策を実行できなければ、なぜなぜ分析の意義がなくなってしまいます。
自分たちで解決できる原因を突き止め、再発防止につなげましょう。
分析結果があいまいになってしまう理由の1つが、「なぜ」の答えに複数の要素を盛り込んでしまうことです。
「残業をする人が多い」という事象の分析で「仕事量が多い」と答えると、会社全体の仕事量なのか、部署の仕事量なのか、個人の仕事量なのか判然とせず、複数の要素が盛り込まれてしまいます。
その後の分析があいまいになったり、分析する人によってとらえ方が変わったりしてしまいます。
漠然と「仕事量が多い」と答えるのではなく、「〇部署に仕事が集中している」などと具体的に答えていきましょう。
もし複数の答えがある場合は、それぞれ個別に進めるようにします。
なぜなぜ分析はポイントを押さえて、正しいやり方で進めると、効率的に課題解決ができる手法。
問題の責任を個人のせいと片付けるのではなく、論理的に分析し、組織の課題として改善していくことが大切です。
画像出典元:O-DAN
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