TOP > 組織 > 組織活性化 > 組織開発とは?使えるフレームワーク9選!進め方も解説
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働き方が多様化する中、組織の生産性や健全性を向上させる「組織開発」が注目されています。
本記事では、組織開発の基本や実践に役立つフレームワーク、進め方をわかりやすく解説します。
職場でのコミュニケーションやチームワークを見直し、社員が協力し合う環境を作りましょう。
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このページの目次
組織開発(OD:Organization Development )とは、社員の関係性を改善し、組織を活性化させる取り組みを指します。
Googleが行った研究では、チームのメンバーが誰であるかよりも「どのようにチームが協力しているか」が重要であるという結果が出ています。
どんなに有能な人材を集めてもチームワークが悪ければ良い結果を出せないばかりか大きなミスの原因にもなりかねません。
近年、テレワークによるコミュニケーション不足などの影響から、組織力が弱まる傾向があります。
こうした課題を解決し、メンバー同士の関係性を向上させる施策として多くの日本企業が取り組んでいるのが「組織開発」です。
組織開発を行うことで、チーム内ひいては組織全体のパフォーマンス向上の効果が期待されています。
組織開発と似た言葉に「人材開発」があります。
どちらも企業力を上げるために行われますが、アプローチの仕方が違います。
人材開発は社員一人ひとりの能力を上げる取り組みを行って会社を成長させるのに対し、
組織開発では、社員同士の関係性やコミュニケーションの取り方の中に潜む問題点を見つけ出し、働きかけます。
大事なポイントは、会社を成長させるためには組織開発と人材開発の両方が必要であることです。
組織開発の目的は大きく2つあります。
1つ目の目的は、組織力を高めて健全に機能する状態にすることです。
優秀な人材を確保しても、社員の関係性が悪いとせっかくの能力が無駄になります。
個々の能力を最大限に発揮するためには、従業員がストレスなく働ける健全な環境づくりが欠かせません。
2つ目は、長きに渡って高い効果を上げ続ける企業に育てることです。
近年では働き方改革の必要性が叫ばれるようになるなど、さまざまな変化に柔軟に対応しないと企業は生き残れません。
なぜ、日本でも組織開発が注目されるようになったのでしょうか。
今、組織開発が重要な背景には、仕事の仕方や人との関わり方の変化があります。
組織開発の重要性が増している理由は、従業員の属性が多様化したり、外国人労働者の増加によりコミュニケーションが取りづらい構造になったからです。
雇用の流動化で経歴や年齢がまったく違う社員が同じ仕事をするケースが増えていますが、背景が違うと「何と声をかけたら良いか分からない…」と話しにくさを感じるでしょう。
言葉や文化、価値観が異なる外国人労働者をたくさん雇っている場合は、日本人同士のようにスムーズに意志疎通できません。
それに、バリバリ働きたい人と育児中で仕事をセーブしたい人とが同じ職場にいると、仕事に求めるものが違うので衝突が起こりがちです。
このように働き方が多様化したことで新たな課題が発生していますが、組織開発で社内環境を整えればコミュニケーションに関する問題が解決します。
IT化により個人作業が増えて協力する機会が減ると、コミュニケーション不足に陥りやすいです。
組織開発を行って、個人作業メインの業務でも職員同士が会話する機会を作れば、人間関係トラブルやチーム力の低下を予防できます。
年功序列を廃止して成果主義を取り入れる企業が増えていますが、成果主義を採用するとチームワークが悪くなることが多いです。
社内の仲間をライバル視するため、みんなで協力して成果を出そう!というムードになりにくいからです。
そんな悩みがある場合も組織開発が役立ちます。社員同士の団結力を高める工夫をすれば、成果主義でもチームワークの良い社風に近付けるでしょう。
ここでは、組織開発の実践に役立つフレームワークを9つ紹介します。
MVVとは、「Mission(ミッション)」「Vision(ビジョン)」「Value(バリュー)」、それぞれの頭文字をとった言葉です。
ミッション(企業が果たすべき使命)、ビジョン(中・長期的な目標)、バリュー(価値観や行動指針)を明確にし、組織の方向性を定め、目指すべき姿を社員一人ひとりと共有しましょう。
社員の意識を統一し、目標に向かいやすい環境を整えられるようになります。
OKR(Objectives and Key Results)とは、目標の設定・管理方法のひとつで、すべての社員が一丸となって重要課題に取り組むことを目的とします。
企業の方針を反映した目標を設定し、社員一人ひとりの目標と結びつけることで、組織で統一感を持ちながら目標達成を目指せるようになります。
また、OKRでは組織全体で目標を共有するため、社員一人ひとりが企業への貢献を実感しやすいです。
7Sとは、マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した組織課題の分析に役立つフレームワークです。
組織をハードとソフトの両面から細かく分析し、組織が解決すべき課題は何かを明らかにします。
7Sはハードの3Sとソフトの4Sで構成されており、具体的には以下の通りです。
【ハードの3S】
【ソフトの4S】
それぞれの問題点を総合的に考え、7つの要素がバランスよく機能しているかを分析し、全体の調和を図ることで、企業内の重要な問題を解決できます。
タックマンモデルとは、集められたメンバーが成熟したチームになるまでの過程を「形成期→混乱期→統一期→機能期→散会期」に分けて考える方法です。
どのステップにいるかを把握することで必要な関わり方が見えてきます。
タックマンモデルによると、衝突を繰り返す混乱期を経験してチームの結束力が高まるものなので、トラブルを回避するためにメンバー間の衝突を避け過ぎるのは良くありません。
タックマンモデルを学んで上手にチーム育成するスキルを習得すれば、社の団結力がアップします。
サーベイ・フィードバックは、社員の意見をアンケート形式で収集し、その結果をもとに組織の改善を図る方法です。
サーベイ(調査や測定)には、組織サーベイ・エンゲージメントサーベイ・モラールサーベイ・モチベーションサーベイなどの種類があります。
サーベイフィードバックで重要なのは、社員との対話で本音を丁寧に聞き出し、適切なフィードバックを行うことです。
社員の意見やニーズをくみ取り、潜在的な課題を把握・改善できれば、社員のエンゲージメント向上や良好な人間関係の構築が期待できます。
コーチングとは、話し相手に新しい気づきを与える関わり方をして、目標達成に向けての理想的な行動を促すコミュニケーション技術です。
対話の相手へ効果的な質問を投げかけ、考え方や行動の選択肢を増やす作用があります。
コーチングを用いることで部下が自身の問題に気づき、メンバーの一員として何をすべきかがはっきりすれば社員が自律的に動ける組織に近づきます。
Will・Can・Mustとは、今の自分がWill(やりたいこと)・Can(できること)・Must(やるべきこと)を可視化できるフレームワークです。
自身の意欲や能力、役割を見つめ直すことで、社員一人ひとりが強みを活かしながらやりがいを持って会社に貢献できるようになります。
個人の能力や個性を発揮できるチームづくりの実現に効果的です。
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)とは、問題解決型のアプローチではなく、ポジティブアプローチを用いて隠れていた強みを見つけ出し、組織の風土改革を促す手法です。
AIは「8つの原理」と「4Dサイクル」に基づいて構築されています。
8つの原理は、組織は言葉や会話で構築されるという考えから、ポジティブな視点で未来を描き、全員参加型で変化を実現する指針を示します。
一方、4Dサイクルは、成功体験や強みを「発見(Discover)」し、「夢(Dream)」を描き、「設計(Design)」を行い、「実行(Destiny)」する4段階のプロセスです。
社員や組織の価値をポジティブな視点でイメージすれば、新たな強みを見つけ出せるようになります。
仕事へのモチベーションは、ハーズバーグが提唱した二要因理論によれば、満たされるとやる気がアップする「動機付け要因」と、満たされないと不満に感じる「衛生要因」の2つの関係性によって成り立つとされています。
管理者が二要因理論をしっかりと理解してマネジメントを行えば、社員のモチベーション向上や離職防止につながる効果があります。
基礎知識をつけた後は実践的なスキルを学びましょう。次は組織開発の流れを紹介します。
組織開発を始める際には、組織の目指す姿の見直しからスタートします。
問題が解決しても、最終的に社のミッションとズレた方向に進むと意味がないからです。
原点に帰って、何を成し遂げるための組織なのか?を振り返りましょう。
そのうえで、問題点をはっきりさせるための情報収集を行ってください。
ここでの注意点は、必ず事実を基にした現状把握をすること。
従業員目線で見た「会社のリアルな実情」を知る必要があります。
人事担当だけの話し合いでは多方向からの意見を集められません。
そのため、社員アンケートや従業員満足度調査、職員インタビューを実施して情報を集め、それから問題がある部署を集中的にリサーチします。
現状が見えてくると、いくつかの課題が自然と浮かび上がってくるはずです。それらの中から組織開発によって解決可能な課題をピックアップします。
そして、課題ごとに具体的な解決策やアクションプランを練りましょう。
課題:コミュニケーション不足
取り組む課題と解決策を決める際には、組織開発をスムーズに進めるためのキーパーソン(社内での影響力が大きい人物)を見つけてください。
施策開始前に事前承諾を得るなど、キーパーソンを巻き込んで組織開発を進めましょう。
準備が整ったら施策を開始しますが、スモールスタートで小規模なアプローチから開始します。
スモールスタートとは、小さく始めること。最初から社全体に施策を実施するのではなく、限られた部署だけで試験的に組織開発を行ってください。
スモールスタートにすれば、低予算で開始でき短期間で効果測定できます。
組織開発をスタートさせたら、開始後の様子を見て、施策を社全体に拡大する、変更点を加える、中止する…など今後のプランを検討します。
上手くいかなかった部分に関しては原因追求をして改善策を考え、上手くいった場合でも成功ポイントを分析してください。
組織開発の効果を最大化するためには、どのプロセスでどんな変化が起きたかを確認することが大切です。
結果だけを見るのではなく、途中経過も細かくチェックしましょう。
フィードバックを繰り返して施策をより良い状態に整えたら、社全体に組織開発を展開します。
人事担当の働きかけにより問題が解決しても、それで終わりではありません。
継続して良好な関係性が保てるよう、各部署が自走できる仕組み作りが必要だからです。
研修を行って成果があったなら、研修マニュアルの用意、必要なツール類の導入、情報共有できる仕組み作り等を行い、各部署が自立できる環境を整えてください。
次は実際に組織開発を行って成功した企業の取り組みを見ていきましょう。
富士通マーケティング(現在は富士通Japan株式会社)では、ミドルマネジメント育成のために2008年から『コーチング アワセシブル(Coaching Ourselves)』という研修を導入しました。
組織開発を始めた理由は、会社の統合やグループ企業の再編によりビジネス環境が激変し、最も業務負担の重いミドルマネジメント層に課題があることが発覚したからです。
実務に追われて「考える時間」が確保できず、相談相手もいないため問題が山積みになっていました。
コーチング アワセシブルの学習概念は「対話と内省」です。
→約12名の参加メンバーを3~4人ずつにグループ分けし、1人2分ずつ職場での出来事や興味深い事例を報告する「マネジメント・ハプニングス」を行う
→「自分を知る」「組織を知る」「視野を広げる」「関係を築く」「変革を進める」というマネージャー職に必要な5つのモジュールで構成された研修を受ける
研修を行った後には学んだことを現場で実践し、次の研修でシェアする…という流れを月3~4回、全20回行います。
「部下に関心を寄せるようになった」「自分の行動を振り返る習慣がついた」といった参加者の声が聞かれ、新たな視点や見識を得られたことが分かります。
また、各部門が連携してビジネスを行うための「組織間交流会」も並行して開催。
その結果、マネージャーを中心として職場が活性化し、マネジメント力と組織間連携力が強化しました。
ヤフーが組織開発に取り組み始めたのは2012年。5年後10年後にも自ら走り続ける”自走力”を強化するために始めました。
など、数多くの方法を導入
ヤフーが行った組織開発で特に効果的だったのは「1on1ミーティング」で、1週間に30分程度の面談(上司と部下の1対1)を実施する施策です。
2017年には『ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』 として書籍化されました。
ヤフーが組織開発を開始した当初は社員の反発があったものの徐々に浸透していき、部下へのアンケート調査では「自己啓発のために役立っている」「業務中の問題点が改善した」というポジティブな感想が聞かれました。
組織開発を成功させるためには、社員の意識改革をすることが重要です。なぜなら、仕組みを整えてもメンバーの価値観が変わらないと理想的な職場環境が長続きしないからです。
人事担当者の役割は、社員一人ひとりが自身の課題に気づき「問題を解決して、うちの会社をもっと良くしたい!」と思わせる働きかけを行うこと。
そのため、一方的に施策の押しつけを行うのではなく、従業員が賛同したくなる工夫をしてください。
職員が一致団結して取り組めるムード作りをすれば、組織開発が成功するはずです。
また、十分な情報を集めることも忘れてはならないポイントです。現状把握が不十分だと、組織開発を行っても失敗に終わるリスクが高いです。
など、様々な視点から自社を見つめ直しましょう。その際におすすめなのが「人事管理システム」です。
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ポイントをおさえた組織開発で、組織の活性化や生産性の向上を実現させましょう。
ここでは、組織開発を成功させる3つのポイントを紹介します。
組織開発を進める前に、まず解決すべき課題や達成したい目標を明確にしましょう。
組織開発を通して実現したい組織の姿を具体的に設定する必要があります。
また組織開発では、社員同士のコミュニケーションや関係性に注目する必要があるため、社員へのインタビューやアンケート実施が効果的です。
社員が自分の役割を理解できるように目的を組織全体で共有し、プロジェクトをスムーズに進行させましょう。
経営層のコミットメントが組織開発の成功を大きく左右するといっても過言ではありません。
経営層が主体的にメッセージを発信することで、プロジェクトの重要性が全社的に認識されやすくなる効果があります。
組織開発は、改善を図りながら継続的に実行しましょう。
外部環境の変化や社員の意見を踏まえ、計画を柔軟に修正していくことが大切です。
いきなり組織全体で実践するよりも特定の部署のみで行うなど、効果検証しやすいようにスモールスタートがおすすめです。
事業を長く継続させるために重要な役割を果たすのが組織開発です。
事業規模の拡大と共に従業員数が増えると対人関係トラブルが発生するリスクが上昇しますが、組織開発を行ってメンバー間の関係性を良好に保てば健全な事業運営を続けられます。
深刻な状態になると修復が難しくなるので、問題が小さなうちに課題を拾い上げて対策を行うことが大切です。
画像出典元:O-DAN
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