組織開発は、社員同士の関係性にフォーカスを当てて自社の成長を促す取り組みです。
組織開発の難しさは、社内全体をくまなく見渡して施策を立案しないと上手くいかないこと。
成功させるためには、十分な情報収集をしてから正しい流れで組織開発を進めることが大切です。
今回は、組織開発の基礎知識、基本手順とフレームワーク、成功事例、おすすめの人事管理システムを紹介します。
重要ポイントをわかりやすく解説するので、組織開発に役立つ実践的なスキルを磨きましょう!
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このページの目次
組織開発(OD:Organization Development )とは、社員の関係性を改善するために意図的に人事部門が介入すること。
例えば、上司と部下の関係を良くするためのフィードバック面談を取り入れたり、マネジメント能力を高めるための研修を行うことです。
Googleが行った研究では、企業力を上げるためには従業員の心理的安全性を高める必要があるという結果が出ています。
リサーチ結果によると、心理的安全性の高いチームのメンバーは、Google からの離職率が低く、他のチームメンバーが発案した多様なアイデアをうまく利用することができ、収益性が高く、「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が 2 倍多い、という特徴がありました。
※心理的安全性:対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え
これは、安心して働ける人間関係がいかに重要かということがよく分かる調査の一例です。
安心感以外にも社員同士の関係性が業績に大きな影響を与えるのは間違いありません。
有能な人を集めてもチームワークが悪ければ良い結果を出せないでしょう。
人間関係トラブルがある職場だと、円滑なコミュニケーションが取れないことが大きなミスの原因になります。
そんな問題がある時に、チームワークを良くしたり、人間関係トラブルを解消する取り組みを「組織開発」と言います。
組織開発の1つ目の目的は、組織力を高めて健全に機能する状態にすること。
優秀な人材を確保しても、社員の関係性が悪いとせっかくの能力が無駄になります。
個々人の能力を最大限に発揮するためには、従業員がストレスなく働ける健全な環境づくりが必須です。
組織開発の2つ目の目的は、長期間に渡って高い効果を上げ続ける企業に育てること。
具体的には、環境変化に迅速に適応したり、当事者間で問題が解決できる組織作りをすることです。
近年では消費者ニーズの移り変わりが非常に早いので、変化に柔軟に対応しないと生き残れません。
それに、常に第三者が入らないとトラブルが生じる社内環境では、事業を継続させるのは困難です。
組織開発を活用すれば、健全な社内環境の構築が実現し、息の長い事業運営が行えます。
組織改革の重要性が増している理由は、従業員の属性が多様化したり、外国人労働者の増加によりコミュニケーションが取りづらい構造になったからです。
雇用の流動化で経歴や年齢がまったく違う社員が同じ仕事をするケースが増えていますが、背景が違うと「何と声をかけたら良いか分からない…」と話しにくさを感じるでしょう。
言葉や文化、価値観が異なる外国人労働者をたくさん雇っている場合は、日本人同士のようにスムーズに意志疎通できません。
それに、バリバリ働きたい人と育児中で仕事をセーブしたい人とが同じ職場にいると、仕事に求めるものが違うので衝突が起こりがちです。
このように働き方が多様化したことで新たな課題が発生していますが、組織改革で社内環境を整えればコミュニケーションに関する問題が解決します。
IT化により個人作業が増えて協力する機会が減ると、コミュニケーション不足に陥りやすいです。
組織開発を行って、個人作業メインの業務でも職員同士が会話する機会を作れば、人間関係トラブルやチーム力の低下を予防できます。
年功序列を廃止して成果主義を取り入れる企業が増えていますが、成果主義を採用するとチームワークが悪くなることが多いです。
社内の仲間をライバル視するため、みんなで協力して成果を出そう!というムードになりにくいからです。
そんな悩みがある場合も組織開発が役立ちます。社員同士の団結力を高める工夫をすれば、成果主義でもチームワークの良い社風に近付けるでしょう。
組織開発と似た言葉に「人材開発」があります。
人材開発とは社員個々人の能力を上げる取り組みを行って会社を成長させること。
組織開発は、人と人の関係性やコミュニケーションの取り方の中に潜む問題点を見つけ出し、改善するための働きかけを指します。
人材開発は従業員1人1人の”個人”にフォーカスしているのに対し、組織改革は従業員間の”関係性”や”相互作用”に焦点を当てているのが違いです。
どちらも企業力を上げるために行われますが、アプローチの仕方が違います。
大事なポイントは、会社を成長させるためには組織開発と人材開発の両方が必要であること。
例えば、風通りの良い環境を作るためには、会社全体を大きく変革できる組織開発が最適ですが、同時に個々人への働きかけも行ったほうが成功しやすいです。
基礎知識をつけた後は実践的なスキルを学びましょう。次は組織開発の流れを紹介します。
組織開発を始める際には、組織の目指す姿の見直しからスタートします。
問題が解決しても、最終的に社のミッションとズレた方向に進むと意味がないからです。原点に帰って、何を成し遂げるための組織なのか?を振り返りましょう。
その上で、問題点をはっきりさせるための情報収集を行ってください。
ここでの注意点は、必ず事実を基にした現状把握をすること。従業員目線で見た「社のリアルな実情」を知る必要があります。
人事担当だけの話し合いでは多方向からの意見を集められません。
そのため、社員アンケートや従業員満足度調査、職員インタビューを実施して情報を集め、それから問題がある部署を集中的にリサーチします。
現状が見えてくると、いくつかの課題が自然と浮かび上がってくるはずです。それらの中から組織改革によって解決可能な課題をピックアップします。
そして、課題ごとに具体的な解決策やアクションプランを練りましょう。
課題:コミュニケーション不足
取り組む課題と解決策を決める際には、組織開発をスムーズに進めるためのキーパーソン(社内での影響力が大きい人物)を見つけてください。
施策開始前に事前承諾を得るなど、キーパーソンを巻き込んで組織開発を進めましょう。
準備が整ったら施策を開始しますが、スモールスタートで小規模なアプローチから開始します。
スモールスタートとは、小さく始めること。最初から社全体に施策を実施するのではなく、限られた部署だけで試験的に組織開発を行ってください。
スモールスタートにすれば、低予算で開始でき短期間で効果測定できます。
組織開発をスタートさせたら、開始後の様子を見て、施策を社全体に拡大する、変更点を加える、中止する…など今後のプランを検討します。
上手くいかなかった部分に関しては原因追求をして改善策を考え、上手くいった場合でも成功ポイントを分析してください。
組織開発の効果を最大化するためには、どのプロセスでどんな変化が起きたかを確認することが大切です。
結果だけを見るのではなく、途中経過も細かくチェックしましょう。
フィードバックを繰り返して施策をより良い状態に整えたら、社全体に組織開発を展開します。
人事担当の働きかけにより問題が解決しても、それで終わりではありません。
継続して良好な関係性が保てるよう、各部署が自走できる仕組み作りが必要だからです。
研修を行って成果があったなら、研修マニュアルの用意、必要なツール類の導入、情報共有できる仕組み作り等を行い、各部署が自立できる環境を整えてください。
ここからは、組織開発でよく使われるフレームワークを紹介します。色々な手法を活用して、組織開発を成功に導きましょう。
コーチングとは、話し相手に新しい気付きを与える関わり方をして、目標達成に向けての理想的な行動を促す対話方法です。
アドバイスをするのではなく効果的な質問を投げかけることで、対話相手の考え方や行動の選択肢を増やす作用があります。
組織開発での使用例としては、部下の面談をする管理者に対してコーチング研修を行い、メンバーの成長を促進させる取り組みが挙げられます。
コーチングを用いることで部下が自身の問題に気付いたり、メンバーの一員として何をすべきかがはっきりすれば社員が自律的に動ける組織に近付きます。
Will・Can・Mustとは、Will(やりたいこと)・Can(できること)・Must(やるべきこと)を可視化するフレームワークです。
Will・Can・Mustのいずれにも該当する部分が重要ポイントだと分かるのがメリットです。
組織開発での使用例としては、研修で社員本人のWill・Can・Mustと企業理念としてのWill・Can・Mustの両方を再考する取り組みが挙げられます。
Will・Can・Mustで職員の意識と社のミッションの方向性が一致すれば、メンバー全員の足並みが揃います。
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)とは、問題解決型アプローチではなくポジティブアプローチを用いることで、否定的な枠組みをなくし隠れていた強みを見つけ出す手法です。
予算が足りない等の問題点を一旦横に置いて、自社ができることは何か?を自由に考えればたくさんの選択肢が出てきます。
組織開発での使用例としては、先ほど紹介した「組織開発のプロセス」のステップ1でAIを使って未来の可能性を広げる取り組みが挙げられます。
ポジティブな視点で組織の未来をイメージすれば、新たな強みを見つけ出せるでしょう。
動機付け・衛生要因とは、満たされるとモチベーションが上がる「動機付け要因」と満たされないとモチベーションが下がる「衛生要因」の2つの視点で分けて考えることで、モチベーションに影響を及ぼす要因を導き出す手法です。
組織開発での使用例としては、先ほど紹介した「組織開発のプロセス」のステップ2で動機付け・衛生要因を使って社員のモチベーションが上がらない理由をすべて拾い上げる取り組みが挙げられます。
動機づけ要因に上司からの褒め言葉があったら、部下を褒める場面を意図的に増やすよう管理者に指導する方法が有効です。
衛生要因に賃金の低さがある場合は、給与アップにつながるインセンティブ制度の導入などが解決策となります。
このように明らかになった要因を元に施策を決めれば、社員のモチベーションが確実に上がります。
タックマンモデルとは、集められたメンバーが成熟したチームになるまでの過程を「形成期→混乱期→統一期→機能期→散会期」に分けて考える方法です。
どのステップにいるかを把握することで必要な関わり方が見えてきます。
組織開発での使用例としては、管理職研修でタックマンモデルを紹介する取り組みが挙げられます。
タックマンモデルによると、衝突を繰り返す混乱期を経験してチームの結束力が高まるものなので、トラブルを回避するためにメンバー間の衝突を避け過ぎるのは良くありません。
マネージャー職がタックマンモデルを学んで上手にチーム育成するスキルを習得すれば、社の団結力が高まります。
次は実際に組織開発を行って成功した企業の取り組みを見ていきましょう。
富士通マーケティング(現在は富士通Japan株式会社)では、ミドルマネジメント育成のために2008年から『コーチング アワセシブル(Coaching Ourselves)』という研修を導入しました。
組織開発を始めた理由は、会社の統合やグループ企業の再編によりビジネス環境が激変し、最も業務負担の重いミドルマネジメント層に課題があることが発覚したからです。
実務に追われて「考える時間」が確保できず、相談相手もいないため問題が山積みになっていました。
コーチング アワセシブルの学習概念は「対話と内省」です。
→約12名の参加メンバーを3~4人ずつにグループ分けし、1人2分ずつ職場での出来事や興味深い事例を報告する「マネジメント・ハプニングス」を行う
→「自分を知る」「組織を知る」「視野を広げる」「関係を築く」「変革を進める」というマネージャー職に必要な5つのモジュールで構成された研修を受ける
研修を行った後には学んだことを現場で実践し、次の研修でシェアする…という流れを月3~4回、全20回行います。
「部下に関心を寄せるようになった」「自分の行動を振り返る習慣がついた」といった参加者の声が聞かれ、新たな視点や見識を得られたことが分かります。
また、各部門が連携してビジネスを行うための「組織間交流会」も並行して開催。
その結果、マネージャーを中心として職場が活性化し、マネジメント力と組織間連携力が強化しました。
ヤフーが組織開発に取り組み始めたのは2012年。5年後10年後にも自ら走り続ける”自走力”を強化するために始めました。
など、数多くの方法を導入
ヤフーが行った組織開発で特に効果的だったのは「1on1ミーティング」で、1週間に30分程度の面談(上司と部下の1対1)を実施する施策です。
2017年には『ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』 として書籍化されました。
ヤフーが組織開発を開始した当初は社員の反発があったものの徐々に浸透していき、部下へのアンケート調査では「自己啓発のために役立っている」「業務中の問題点が改善した」というポジティブな感想が聞かれました。
組織開発を成功させるためには、社員の意識改革をすることが重要です。なぜなら、仕組みを整えてもメンバーの価値観が変わらないと理想的な職場環境が長続きしないからです。
人事担当者の役割は、社員1人1人が自身の課題に気づき「問題を解決して、うちの会社をもっと良くしたい!」と思わせる働きかけを行うこと。
そのため、一方的に施策の押しつけを行うのではなく、従業員が賛同したくなる工夫をしてください。
職員が一致団結して取り組めるムード作りをすれば、組織開発が成功するはずです。
また、十分な情報を集めることも忘れてはならないポイントです。現状把握が不十分だと、組織開発を行っても失敗に終わるリスクが高いです。
など、様々な視点から自社を見つめ直しましょう。その際におすすめなのが「人事管理システム」です。
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組織開発を成功させるコツは、従業員が置かれている状況を正確に把握すること。
例えば、生産性が低い部署の管理職にマネジメント研修を受けさせても、新人職員の基礎的なスキルが不足していたら問題は解決しません。
人事管理システムは従業員の年齢や入社年月日等の基本情報に加え、給与、労働時間、社員教育、人事評価、昇格など人事労務に関するデータを一元管理できるシステム。組織開発を行うための情報収集に役立ちます。
これから組織開発に適した人事管理システムを紹介するので、あなたの会社に合ったサービスを見つけましょう。
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