アメリカのシリコンバレーで取り入れられることが多い目標管理の手法「OKR」についてご存じでしょうか?
この記事では、OKRとKPIの違いや、OKRの特徴、目標設定の際に注意すべきポイントなど、効率的な目標設定のために必要なことを解説します。
OKRを実践することでチームのマネジメントや、社内の目的意識の共有が容易になるので、そういった悩みをお持ちの方は是非参考にしてください。
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OKRとは、Objectives Key Resultsの略称です。日本語では目標と主要な結果と呼ばれています。使い方としては、まず目標(Objectives)を設定し、それに対する成果指標(Key Results)を3個ほど設定します。
飲食業界での具体例をあげると、
→既存店舗1店舗当たりの売上を20%UPする
といった形で活用します。
この目標設定方法は、インテル社が発祥であり、現在では、GoogleやAmazonなどの有名企業から、シリコンバレーでは多数の企業が取り入れ、活用しています。
OKRがシリコンバレーの多くの企業やメルカリなどで導入されているのは、OKRという目標管理を通して会社のメンバー全員の方向性をそろえることができるという特徴があるからです。
先ほどの飲食業界の例で例えると、OKRは下のような構造になっています。
会社として設定したOKRをもとに、各部署のOKRを決めて、それをもとに各個人のOKRを決めて…というようにOKRを設定していくのです。
例えば、先ほど例としてあげた「売上をあげる」というO(Objectives)を持つ会社の場合、その下のKR「既存店舗の売上を20%UPする」をOに据え、「客単価をあげる」を各店舗のKRとして設定することになります。
このように目標をどんどん細分化していくことによって、会社のメンバー全員の目標・成果指標(OKR)が会社全体の目標につながっているのがOKRの特徴です。
本当に会社のためになる目標を設定するのは案外難しいものです。それを解決するのがOKRなのです。OKRは優れた目標管理のツールでありつつ、目標設定のツールでもあるといえます。
OKRの一番の特徴は、会社の目標が個人単位の目標と繋がっている点です。
一番最初に会社全体のOKRを設定し、それをもとに下のOKRを設定するため、会社の目標と個人レベルの目標がずれることがありません。
OKRは、その他の目標設定とは違い、60%~70%達成で成功とみなします。100%達成できてしまうような目標は低すぎる目標であり、常にチャレンジングな目標を掲げることが重要です。
目標(Objectives)は、定量性のない、曖昧なものを設定しても構いませんが、それに対する成果指標は数値化して設定する必要があります。
これは目標達成の評価を簡単に行えるようにするためであり、Googleでは0.0~1.0の範囲で評価が行われています。
OKRの達成率のみを従業員に対する評価として使うことはできません。
仮に評価基準としてOKRの達成率を採用してしまうと、評価をよくするために目標を低く設定してしまう、チャレンジングな目標を掲げた余り達成率が低くなり、不当な評価をされたと感じてしまう、などの問題が起きてしまう場合があります。
仮に評価指標として活用する場合は、達成までの過程を評価するなどが必要であり、数値だけを見る機械的な評価は好ましくありません。
OKRの目的の一つとして従業員のモチベーション向上も含まれているため、それを阻害してしまうようなことは避けましょう。
OKRは組織の全員に公表します。
これを行うことにより、組織にとって何が重視されているか(Objectives)、それはどのような基準で判定されるか(Key Results)を全員が理解できるようになり、また、部署や個人の課題と組織全体の目標とを結びつけることができるようになります。
これにより各個人が、現状のタスクの優先度についての認識を共有することができます。
OKRでは、目標サイクルを1か月~四半期と短く回していきます。
短いサイクルで目標を再設定するため、調整が簡単に行えるようになり、リスク管理の面でも優れているといえます。
OKRでは、組織の目標(O)、成果指標(KR)を設定し、組織のKRをもとに部門のOを設定する、といった順番に設定していきます。
これを行うことで、全体の目標からずれることなく下部組織の目標を設定することができるため、上司と部下で意見がすれ違う、といった事態を避けることにもつながります。
OKRはチャレンジングな目標を達成し、最高のパフォーマンスをもって100%達成を目指す手法です。
他の目標設定手法では、ゴールとなる100%達成が、OKRでいうところの60~70%の達成に当たるため、「100%達成ができそうだから気を緩める」といったことがなく、最後までモチベーションを保ちながら仕事をすることができます。
OKRでは、やるべきことを複雑にしないために、一つの目標に対して成果指標は2~3個までを推奨しています。
これを徹底することで、絶対にやるべきことが明確になり、何から手を付けていいかわからない、優先順位が低い仕事に力を入れてしまったという事態を避けることができます。
OKRでは、長くても3か月のスパンで目標の設定を行います。これにより、誤った目標や、チャレンジングではない目標を立ててしまった場合でも、軌道修正することが可能です。
それだけではなく、企業としての方針が変わりやすいスタートアップの時期や、変化の激しい業界においては、3か月毎の目標設定が機会損失を減らすことにもつながります。
実際に、OKRを導入していることでも有名なメルカリの人事部マネージャーである奥野氏は、以下のように述べています。
我々は今創業から7年目ですが、この間、スピード感を持って事業・組織を成長させ続けてきました。そうした環境で働いていると、3カ月前のことですら、ひと昔前のように感じるものです。
変化が激しいので、振り返ってみると「あのタイミングでもっと力を入れておけば状況は違ったのに」ということも少なくありません。出来るだけそうした機会損失を減らすために、クオーター毎にOKRを設定しているのです。
※引用:OKRのリアルなハナシ~(株)メルカリの場合
このように企業では、チャレンジングな社風作りや、組織と個人の目標を結ぶといったメリットを期待して、OKRを導入していることが分かります。
現在、目標設定がルーチン化していたり、組織と部署の目標が噛み合わず、悩んでいたりする企業では特にOKRの導入が向いているといえます。
OKRは組織OKR→部署/チームOKR→個人OKRという形で段階的に設定していきます。
先ほどの図を使い説明します。
まず大きな目標であるObjectivesを設定します。この目標はチャレンジングなものを設定する必要があります。
しかし、難しすぎる目標は逆にモチベーションを下げてしまう可能性もあるため、「実現は可能であるが相当難しい」くらいの目標を設定するとよいでしょう。
また、この目標は必ずしも定量的で数値化できる必要はありませんが、期限を明確に設定する必要があります。
目標を決めたら、それに対しての成果指標を3個ほど設定します。これは目標の達成度を計るための指標であり、目標と違って定量的で数値化できるものである必要があります。
ここで設定するものは、行動ではなく行動の成果でなければなりません。
この成果指標の達成可能性は60%~70%レベルのものが望ましいです。
上部組織のKRとして設定されたものをもとに下部組織のOを設定します。このように、上のOKRから目標を設定することで、上部と下部の目標の方向性を統一することができます。
「市場シェア〇〇%を下回らないようにする」など、確かに企業にとっては重要なことでも、現在やっていることをそのまま続けるだけで達成できてしまうような目標はOKRとしてはふさわしくありません。
OKRの目的はチャレンジングな目標を立て、100%達成に向けてモチベーションを上げるというものなので、革新的な目標を設定しましょう。
OKRの目標は、企業全体やチームの力を集結してようやく100%達成できるような難易度で設定しましょう。誰かが手を抜いていたり、連携がうまくいっていない場合でも100%達成できてしまう目標はOKRとしてふさわしくありません。
目標に対して成果指標を設定する際に、成果指標をすべて達成しても目標達成には届いていない、となってしまうパターンがあります。
成果指標を決める際は、その成果指標をすべて達成する=目標の達成となるように決めましょう。
成果指標が十分ではない場合、予想外の失敗や、スケジュールの遅延に繋がってしまいます。
これまで説明してきた通り、チャレンジングな目標設定を行い、60%~70%の達成で成功とみなします。目標達成までの期間も短いスパンで、四半期ごとの目標を立てるスタイルであるのがOKRの手法です。
一方、KPIは100%達成を前提とし、目標設定も、1年ごとなど長いスパンで行います。
また、目標設定以外の大きな違いとして、KPI/KGIは従業員の業績評価に用いるのに対して、OKRはそのまま業績評価に用いてはいけない、という違いがあります。
どちらも目標設定の手法として優れているため、自身の職場の状況に応じて使い分けることが肝心です。
企業やチームにとって目標を設定することは欠かせません。目標を立て、チームの意識を統一することでパフォーマンスは格段に向上します。
しかし、不適切な目標を立ててしまったり、チームでの目標の共有ができていないと逆効果になってしまう場合もあります。
どの手法が自身のチームに合っているのかを考え、より効果的な目標を設定しましょう。
画像出典:o-dan