ロシアのウクライナ侵攻で株価はどうなる?戦争時の株価を解説

ロシアのウクライナ侵攻で株価はどうなる?戦争時の株価を解説

記事更新日: 2022/03/09

執筆: 挾間章子

ロシアのウクライナ侵攻により、現在リスク回避で売りが進み、世界的に株価は大幅に下落、逆に原油価格は1バレルあたり100ドルを突破、金・小麦などの価格も高騰しています。

東京株式市場でも、日経平均株価が約1年3カ月ぶりに2万6000円を割り込むなど、大打撃を受けています。

株価の下落に関しては、ウクライナ侵攻だけでなく、アメリカのFRD(米国連邦準備委員会)が量的金融緩和政策を3月で終了し、予想より早期に量的金融引き締めが実施される見込みが立ったこと、オミクロン変異種の感染拡大も影響しています。

こうした世界情勢を踏まえ、ロシアとウクライナとの戦争が勃発した今、市場ではどんな銘柄が上がるか、下がっている銘柄はどれか解説していきます!

戦争が勃発したら株価が上がる銘柄は?

ロシアによるウクライナへの攻撃が開始されましたが、戦争が勃発すると株価が上がる銘柄はあるのでしょうか。

ウクライナはNATO加盟国ではないため、EUは戦争が始まっても直接的にロシアとの戦争に介入できません。

そこで、経済制裁という形で、ロシアの天然ガスや石油、その他ロシア産の金属・穀物などを輸入しないという方法で反撃を始めました。

現在市場では既に、それらの製品に関連する株に大きな影響が出ています。

石油関連

シェブロン

シェブロンは、アメリカの石油関連企業で、スーパーメジャー(超大手の石油会社)の1つと言われています。

石油事業としては、原油・天然ガスの生産、原油や天然ガスのパイプライン輸送も手掛けています。

欧州の天然ガスの4割を担っていたロシアに経済制裁を加えると、米国のスーパーメジャーへの依存割合が増える可能性が高まり、株価も上昇しています。


出典元:「Investing.com」公式HP『シェブロンの直近3カ月株価チャート』

 

EOG リソース (EOG)

EOGリソース(EOG)は、元破綻したエネルギー総合会社のエンロン傘下の石油・天然ガスの探査、開発、生産、販売を手掛ける会社です。

アメリカ、カナダ、トリニダードトバゴ、中国、オマーンなどで事業展開しています。

ロシアが4割を担っていたEUの天然ガスに対して経済制裁が加わると、EOGなどのシェール企業の需要が再び増えることになります。


出典元:「Investing.com」公式HP『EOGリソースの直近3カ月株価チャート』

 

シェニエール・エナジー (LNG)

シェニエール・エナジーは、液化天然ガス(LNG)関連事業を主軸とするアメリカのエネルギー関連会社です。

日本は、LNGの輸入量の1割をロシアに依存しており、経済制裁で輸入を取りやめれば、米国産のLNGの輸入量が増えるでしょう。


出典元:「Investing.com」公式HP『シェニエールエナジー直近3カ月の株価チャート』

 

穀物

WisdomTree Wheat(1695)

WisdomTree Wheat(WT小麦上場投信)は、Bloomberg Wheat Subindexを目標に運用される国内ETF(投資信託)です。

運用会社はウィズダムツリー・マネジメント・ジャージー・リミテッド(16724)です。

世界的なインフレへの不安と、小麦の主要輸出国であるロシア・ウクライナの情勢悪化によって、買いが増え価格が上昇しています。


出典元:「Investing.com」公式HP『WisdomTree Wheat直近3カ月株価チャート』

 

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド・カンパニー (ADM)

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド・カンパニーは、アメリカのいわゆる穀物メジャー(世界の穀物市場を支配する多国籍巨大穀物商社)の1つで、食用油の原料となる大豆や綿花、トウモロコシ、小麦などの農業原料の調達、保管、洗浄、輸送ネットワークを所有・運営しています。


出典元:「Investing.com」公式HP『アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド・カンパニー直近3カ月株価チャート』

 

金・非鉄金属

ニューモント・マイニング(NEM)

ニューモント・マイニングは、金、銅、銀、亜鉛、鉛の生産と探査に注力するアメリカの会社です。

世界的な市場の混乱の中でも、金は安定資産と言われており、リスク回避の目的で投資マネーが殺到し金価格が上昇しています。


出典元:「Investing.com」公式HP『ニューモントマイニング直近3カ月株価チャート』

 

住友金属鉱山

住友金属鉱山は、住友グループの非鉄金属企業で、別子銅山や世界有数の金鉱脈がある菱刈鉱山などを経営しています。

安全資産とされる金価格の上昇、日本唯一の大規模金山の菱刈鉱山を所有している点から価格が大幅に上昇しています。


出典元:「Investing.com」公式HP『住友金属鉱山直近3カ月株価チャート』

 

防衛関連

株式会社石川製作所 (6208)

株式会社石川製作所は、石川県にある紙工機械、段ボール製函印刷機、繊維機械、防衛機器を手掛けるメーカーです。

防衛関連では、国内の代表的な銘柄で、売上高の7割が防衛機器になります。


出典元:「Investing.com」公式HP『株式会社石川製作所直近3カ月株価チャート』

 

細谷火工株式会社 (4274)

細谷火工株式会社は、火薬や爆薬を使用した火工品を手掛けている会社で、売上比率では防衛省向けが最も多いです。


出典元:「Investing.com」公式HP『細谷火工株式会社直近3カ月株価チャート』

戦争が勃発したら株価が下がる銘柄は?

現在、ウクライナ侵攻の影響を受けてロシア関連株が下落しています。

ロシア関連株は、情勢の変化によって長期的な下落にはならない可能性もあります。

ロシア関連株

日本たばこ産業株式会社(JT)

日本たばこ産業(JT)は、たばこ、医薬品、食品、飲料を製造する特殊会社で、海外でのたばこ事業拡大のためM&Aを進めています。

特にロシアとの結びつきが強く、ロシア関連株の象徴的な株とみなされ、ウクライナ侵攻に伴うロシア通貨ルーブルの下落など為替デメリットが懸念され売りが強まってます。


出典元:「Investing.com」公式HP『日本たばこ産業株式会社直近1週間株価チャート』

三井物産株式会社

三井物産株式会社は、言わずと知れた全世界に拠点を広げている総合商社です。

ロシアのウクライナ侵攻に伴い、世界情勢の不安感から商社株全体が下落傾向にあり、同社は2月28日には東京株式市場で4%の下落が見られました。

これは三井物産が、ロシアの石油ガス開発事業「サハリン2」に関わっていた為とも言われています。


出典元:「Investing.com」公式HP『三井物産株式会社直近1週間株価チャート』

石油資源開発

石油資源開発は、石油や天然ガス関連の事業を行う会社で、三井物産同様、ロシアの石油ガス開発事業に関わっていることから、売りにだされている状況です。


出典元:「Investing.com」公式HP『石油資源開発直近1週間株価チャート』

ロシアはなぜウクライナに侵攻するのか

ロシアとウクライナの関係

ウクライナとは

ウクライナは、旧ソビエト連邦構成国で、欧州諸国の中でロシアに次いで2番目に人口・面積が大きい国です。

東はロシア、西は欧州連合(EU)に挟まれており、ロシアにとって西側からの侵攻を防ぐ緩衝地帯として位置づけられてきました

元々はウクライナ人もロシア人も同じ東スラブ民族で、現在人口の8割はウクライナ人、残りはウクライナ東部に住んでいるロシア系住民で構成されています。

ウクライナの起源である現在の首都キエフにできたキエフ王国がキリスト教を国教としたことが、のちのロシア正教につながるなど、ロシアとウクライナは歴史的に深い関係を持っています。

国内で対立する親ロシア派・親欧米派

 


第二次世界大戦後、アメリカ率いる西側自由主義諸国と、ソ連率いる東側社会主義諸国による東西冷戦が、ソ連崩壊まで続きました。

欧州諸国は、戦後厳しい経済状況が続き、アメリカの金銭的復興支援策であるマーシャルプランを受け入れ、次々とNATO(北大西洋条約機構)へ加盟しました。

ウクライナも、2000年代に入ると貧困から抜け出すため、EUやNATO(北大西洋条約機構)への加盟を模索し始めます。

しかし国内には、親ロシア派と親欧米派の対立があり、どの派閥が政権運営するかで国としての考え方も大きく左右され不安定でした。

クリミア侵攻で一気に反ロシア感情へ

2014年、ウクライナ国内で親欧米派によるクーデターが起こり、親ロシア派であった政権が倒れると、ロシアはウクライナ領でロシア系住民の多いクリミア半島を、軍事力で強引に併合しました。

以降ウクライナ国内では、反ロシア感情が高まり、親欧米政権が続いています

ウクライナのNATO加盟を阻止したい

では改めて、ロシアはなぜウクライナに侵攻するのかというと、1つはウクライナのNATO加盟を阻止したいからです。

ロシアにとって、EUからの脅威に対する緩衝地帯であったウクライナがNATOに加盟すれば、直接的にEUと対峙することになり、安全保障上脅威になります。

またそれだけでなく、背景には、ロシアがウクライナを元々は同じ国だと考えており、敵視するNATOへの加盟を認められない感情が影響しています。

2021年にプーチン大統領が発表した論文『ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について』にも、ウクライナとロシアは歴史的にも同一民族であるという記述が終始綴られています。

再生可能エネルギーへのシフトを阻止したい

弱いロシア

ロシアが侵攻する理由の2つ目は、再生可能エネルギーへの世界的シフトを阻止したいという思惑もあります。

ロシアは、国土こそ大きいものの経済的には非常に貧困状態に陥っており、GDPはアメリカの1/14、中国の1/10しかない状況です。

ロシアの軍事力も、かけられる軍事費は、日本の防衛費とそれほど差がない程度しか持ち合わせていません。

そんなロシアにとって、唯一外交的な武器になるのが豊富な地下資源で、原油生産では世界第3位、天然ガスでは世界第2位の産出量です。

また、ドイツをはじめとしたEUは天然ガスの4割をロシアの資源に頼っており、ロシアの国家歳入を支える最も重要な要素でした。

大国依存から抜け出したい欧州諸国

近年の世界的な再生可能エネルギーへのシフトにより、ロシアは唯一の切り札を失いつつあります。

欧州諸国は、これまで石油はアメリカ、天然ガスはロシアに完全に依存していました。

しかし大国依存から抜け出し、国家として自立していきたい欧州諸国は、無理にでも再生可能エネルギーへのシフトしたいと考えています。

一方、現状では石油や天然ガスの需要が引き続き高いことを知っているプーチン大統領は、ウクライナ侵攻をちらつかせながら、EUを天然ガスの長期的契約交渉のテーブルにつかせようと躍起になっているのです。

過去の戦争の際の市場の動向

過去の戦争の際に、市場はどのように動いていたのでしょうか。

「有事の際は買い」という言葉があるように、過去の戦争を見てみると、開戦直後の不安定な時期は一旦は株価が下がるものの、その後は、株価が上がる傾向にあります

例えば、2001年9月11日、アメリカで起きた同時多発テロの際には、市場は大きく下落し、一時テロ以前と比べて15%の下落が見られました。

と同時にリスク回避するために、円を買いに走る動きが強まり円高ドル安が進みました。

しかし、株価は底値を打った後は順調に回復を続け、テロから2か月後には、発生前の株価水準まで回復しています。



画像出典元:「マネックス」公式HP『Bloombergよりマネックス証券作成』
 
 

また2014年、ロシアがウクライナ領のクリミア半島に侵攻した際には、日米市場で一時急落しましたが、その後は上下しながら戻り歩調を辿りました。


画像出典元:「トクシル」公式HP『Bloombergより楽天証券作成』

今回のロシアによるウクライナ侵攻によって、現時点では一時的に世界の株価は下落しています。

原油価格の高騰、インフレ、金利上昇、FRDによる金融緩和の終了など、様々な要因が絡み合って、今後市場の混乱はどの程度で収まるのかは未知数です。

しかし、過去も有事に株価大幅に下落しても、比較的短期間で上昇に転じていることもあるので、焦って売り買いに走るよりも、長期的な目線で取引を考えた方が賢いと言えます。

まとめ

この記事では、ロシアのウクライナ侵攻によって上がる銘柄を、その背景を踏まえてご紹介してきました。

現在進行形で大きな動きを見せるロシアによるウクライナ侵攻ですので、戦況により上がる銘柄・下がる銘柄は大きく入れ替わることも考えられます。

焦って行動するより、日本を含む各国政府の対応などを注意深く見守りながら、市場の動向を読むことが重要でしょう。

(画像出典元:O-DAN)

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