この記事では、従業員が退職する際の会社側の退職手続きの流れや必要書類を解説します。
退職前に行う従業員から回収するもの、返却してもらうもの、退職後の社会保険、雇用保険、税金の手続き方法、源泉徴収票など、各手続きを提出期限、書類、提出窓口まで詳しく説明していきます。
また、退職にまつわる煩雑な手続きを簡単に効率化できるシステムに関してもご紹介していきます!
このページの目次
法律上、正社員(無期限の雇用)の場合、退職の意思表示から2週間で退職出来ると定められています。
しかし、最低でも1カ月程度前から退職の意向を示し、雇用契約や就業規定にそって、業務の引継ぎや退職日の調整を行う方が一般的です。
会社側も、社員から退職の意向を受けたら、退職に必要な手続きを速やかに行いトラブルなく退職者を送り出す必要があります。
会社側の行う退職手続きの流れをチェックリストにまとめました。
詳細に関しては、次の章から解説していきます!
手続き時期 | 内容 |
退職前 |
✅退職届の提出依頼 |
退職後 |
✅社会保険(健康保険・厚生年金保険)の |
退職手続きに関して、やることが多くてすでにうんざりしてしまった、より効率的に退職手続きを進めたいという方には、労務管理システムがおすすめです。
労務管理システムでは、従業員がシステムから退職届を提出でき、社会保険・雇用保険の喪失手続き、離職証明書の提出など電子申請の形で直接システムから申請できるものもあります。
労務管理システムの詳細を先に確認したい方は、こちらから。
退職届は、解雇などの会社都合ではなく、従業員の意思で自己都合退職することを証明する書類です。
法的に義務付けられているものではありませんが、後々、退職に係る労使トラブルを防ぐためにも、退職届は書面で残しておいた方が良いでしょう。
退職届のフォーマットに決まったものは特にありませんが、退職の意思表示がきちんと明記されていることを確認しましょう。
雇用保険被保険者証と年金手帳は本人宛に発行されていますが、紛失対策として会社が保管している場合があります。
保管していた場合は、雇用保険被保険者証と年金手帳を退職日までに従業員へ返却します。
会社から渡していた健康保険を返却してもらいます。
返却する健康保険証は従業員本人だけでなく、扶養家族がいる場合は扶養家族の分も回収します。
回収した健康保険証は、社会保険の喪失手続きに必要です。
交通費や経費での購入品などの精算が終わっているかを確認します。
未清算があった場合は、支払い方法を従業員とよく相談しましょう。
書類はもちろん、名刺や社員証などの返却が適切に行われたかを確認します。
情報漏洩の観点からも「退職者からの返却物の確認」は必ず行いましょう。
手続き内容 | 申請期限 | 提出窓口 |
社会保険 (健康保険・厚生年金保険) の資格喪失手続き |
退職後5日以内 | 年金事務所 |
雇用保険の喪失手続き | 退職後10日以内 | ハローワーク |
離職証明書の提出 | 退職後10日以内 | ハローワーク |
離職票の送付 | 退職後 | ハローワーク |
住民税の変更手続き | 退職日の翌月10日まで | 納付市区町村 |
退職証明書の発行・送付 | 退職後 | 自社作成 |
源泉徴収票の交付 | 退職後1か月以内 | 自社作成 |
法定三帳簿に記録 | 退職日 | 自社作成 |
画像出典元:日本年金機構
会社側が従業員の退職後、まずはじめに行うべき手続きは、社会保険(健康保険・厚生年金)喪失の手続きです。
退職した従業員の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格喪失手続きを5日以内に行う必要があります。
手続きは、管轄の年金事務所に、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を提出(窓口持参、電子申請、郵送可)します。
社会保険の喪失の手続きには、従業員から返却してもらった健康保険証の添付が必須です。
退職者からどうしても保険証が回収できない場合は「健康保険被保険者証回収不能届」を提出します。
また、退職者から「健康保険被保険者資格証明書」を求められた場合は「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」を提出し、発行された資格証明書を退職者へ渡します。
雇用保険の喪失手続きは、会社側が従業員が雇用保険の資格を失った日の翌日から起算して10日以内に行わなければなりません。
手続きとしては、ハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出(窓口持参、電子申請、郵送可)します。
雇用保険被保険者資格喪失届は、雇用保険の資格取得の時に同時発行されています。
既に氏名や会社名など必要事項は印字されているため、資格喪失日を記入するだけで提出できます。
画像出典元:『ハローワークインターネットサービス』公式HP
雇用保険被保険者資格喪失届と共に、ハローワークに提出しなければならないのが、離職証明書、正式名称「雇用保険被保険者離職証明書」です。
こちらも、会社側が従業員が雇用保険の資格を失った日の翌日から起算して10日以内の申請が必要です。
離職証明書は、事業主控え、ハローワーク提出用、退職者に渡す「離職票-2」から成る3枚綴りの複写式の用紙です。
離職証明書には、退職する前に退職者本人が氏名の記載をすることになっている箇所があるので忘れないように注意しましょう!
画像出典元:『ハローワークインターネットサービス』公式HP
会社側でハローワークに雇用保険被保険者離職証明書を提出すると、ハローワークが内容を確認し、離職票1と2が会社に届きます。
離職票は、雇用保険(失業保険)の手続きの際に必要な書類ですが、基本的には希望者のみに渡すもので、すでに次の仕事が決まっている場合は不要です。
一般的に、退職日から数えて10日~2週間以内には退職者に離職票を郵送するようにしましょう。
従業員が依頼したのに、会社側が渡さなかった場合は労働基準法違反になるので注意しましょう。
画像出典元:中野区公式HP
住民税の納税方法を変更するため、会社側は、退職日の翌月10日までに退職者の納付市区町村へ「給与支払報告に係る給与所得異動届書」を提出(窓口持参、郵送、電子申請可)します。
給与支払報告に係る給与所得異動届書は各市区町村のHPからダウンロード可能です。
退職者が期間を開けずに次の職場でも給与天引きの「特別徴収」を継続する場合は、退職者の転職先へ「給与所得者異動届出書」を渡して手続きを任せます。
会社はどちらの手続きを行うか事前に退職者に確認しましょう。
退職証明書は、会社が希望する退職者に対して発行する書類で公文書ではありませんが、法律で希望があった場合は必ず発行するように定められています。
退職証明書には、決められたフォーマットはありませんが、業務の種類、賃金、退職理由など労働基準法で定められている項目は必ず記載する必要があります。
主な用途は、国民健康保険への加入、国民年金の加入、転職先の企業への開示などになります。
退職してから1か月以内に、最後の源泉徴収票を交付が法律で定められています。
源泉徴収票を交付しないと、罰則付きの法律違反となります。
源泉徴収票にはその年の1月から退職月までの下記を記載します。
最後に退職日を記載して、退職者へ渡します。
源泉徴収票の詳細はこちらに記載されています。
法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿等)に退職者に関する記載事項(退職日・退職理由など)を記録します。
法定三帳簿は、労働基準法で従業員の従業員の雇用に関する記録・管理・保管期間が義務付けられています。
法定三帳簿は、紙台帳のようなアナログ管理とExcelや労務管理システムのなどのデジタル管理どちらでも構いません。
法定三帳簿の詳細は、こちらの記事で詳しく解説しています。
ここまで退職手続きについて解説してきましたが、作成・提出書類が多く、かなり煩雑な業務であることは事実です。
そこで最近は、労務管理システムを導入し、退職手続きを含む労務周りの業務を一元管理する企業が圧倒的に増えています。
労務管理システムとは、法定三帳簿はもちろん、入退社手続き、申請書類の自動作成、年末調整、電子申請など様々な業務が1つのシステム内で完結できます。
退職手続きに関しては、従業員がシステムから退職届を提出でき、社会保険・雇用保険の喪失手続き、離職証明書の提出など電子申請の形で直接システムから申請できるものもあります。
労務管理システムで自動化・効率化できる業務には、以下のようなものがあります。
業務 | 業務内容 |
帳票自動作成 | 従業員データや手続きの情報を基にして帳票を自動作成します。 |
入退社手続き | 社会保険・雇用保険の資格取得書類や扶養控除申告書等の作成・提出を効率化します。 |
年末調整 | 年末調整に必要な書類を自動作成をします。 |
電子申請 | 役所まで足を運ばずにクリック1つで手続きが完了します。 |
マイナンバー管理 | 各種提出書類に必要なマイナンバー管理もクラウド上で可能です。 |
上記以外にも、各社様々な機能や特徴を持った労務管理システムがあり、退職手続きだけでなく労務に関する様々な業務の効率化に役立てることが可能です。
自社に必要な機能や検討する上でのポイントなどをまとめた無料の資料や記事がありますので、以下もご参照ください。
退職手続きについて解説してきました。
社会保険や雇用保険、納税などの手続きは、提出期限があります。
会社側は滞りなく完了するためにも、退職手続きの流れと確認事項の理解が必要です。
退職手続きを全てシステム上で行える労務管理システムも登場しています。
電子申請にも対応していますので、退職手続きの利便性と正確性の観点から導入をお勧めします。
画像出典元:pixabay
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