源泉徴収票は、人を雇って給与を支払っている事業主が作成する「所得税の天引き証明書」です。
作成された源泉徴収票は税務署に提出され、社員に手渡されます。
この記事では、源泉徴収票には何が書かれていてどんな用途があるのか、発行時期は?、取り扱いの注意点は?など、源泉徴収票についての疑問に分かりやすく答えています。
このページの目次
まず、そもそも源泉徴収とは何かを確認しておきましょう。
源泉徴収とは、会社が社員やアルバイトの給与から所得税を差し引くことで、会社はそれを個人に代って国に納付します。
所得税は個人が確定申告をして納付する「申告納税制」が日本の税制の建前ですが、給与を支払う会社が源泉徴収することで、国にとっては確実に税金を徴収でき、個人にとってはめんどうな所得税の計算をして確定申告をする必要がなくなります。
源泉徴収する会社にとっては1円も儲からない業務ですが、所得税法に定められた義務(源泉徴収義務)なので仕方ありません。
源泉徴収票とは、会社(源泉徴収義務者)が作成して、税務署と個人(社員)に届ける「徴収した所得税の明細書」です。
源泉徴収義務者になるのは、日常的に人を雇って給与を支払っている法人または個人の事業者です。
会社は社員が住んでいる市区町村にも同じものを提出しますが、源泉徴収票ではなく「給与支払報告書」と呼ばれています。
給与支払報告書を市区町村に届けるのは住民税を確定するためです。
源泉徴収票には「給与所得の源泉徴収票」と「退職所得の源泉徴収票」の2つがあり、書式が違います。
給与所得の源泉徴収票には、税務署提出用と個人に渡すもの2種類があり、個人に渡されるのは税務署提出用のダイジェスト版です。
引用元:国税庁ホームページ
社員に渡す源泉徴収票には、次のことが書かれています。
交通費など、立て替えたた実費の弁済分は含みません
サラリーマンの必要経費として認められている給与所得控除を差引いた金額です
給与所得控除以外の控除(基礎控除、社会保険料控除、配偶者控除、扶養控除など)の合計額
1年間で源泉徴収した合計金額が書かれています
住所・氏名の下にこの4つの金額が記されていて、その下に控除額の内訳が書かれています。
このように、源泉徴収票は本来個人がするべき確定申告の項目を網羅しているので、サラリーマンで確定申告をする必要があるとき(医療費控除の申請など)は、源泉徴収票を見れば、自分で税金計算をする手間が省けます。
引用元:国税庁 給与所得の源泉徴収票
会社が税務署に提出する源泉徴収票も内容はほぼ同じですが、扶養控除者の氏名などより詳しい情報が記されています。
退職所得の源泉徴収票には、
1. 退職金の額
2. 源泉徴収額
3. 市町村民税と道府県民税の額
4. 退職所得控除額
5. 勤続年数、入社年月日、退職年月日
が記入されています。
2. の「源泉徴収額」はすでに天引きされている金額で、3.の「市町村民税と道府県民税は」はこれから(退職した翌年)納める金額です。
勤続年数が記されているのは、勤続年数が長いほど退職所得控除額が大きくなるからです。
源泉徴収票と類似しているものに「支払調書」があります。
源泉徴収義務者は、社員やアルバイトに支払う給与だけでなく、税理士や弁護士に支払う報酬、フリーランスのライターやイラストレーターなどに支払う原稿料などからも源泉徴収しなければなりません。
その徴収金額を記したものが「報酬、料金、契約金および賞金の支払調書」です。
支払調書も源泉徴収票と同じく、税務署、市区町村、報酬を支払った個人に提出します。ただし個人に対して提出(発行)するのは所得税法上の義務ではありません。
とはいっても、税金を天引きされて報酬を受け取った側は、確定申告の際に支払調書が必要になるので、「発行しません」という会社はほとんどありません。
給与所得の源泉徴収票は、年末調整が済んで所得が確定してから作成されます。
作成された源泉徴収票は翌年1月31日までに税務署に提出するとともに、社員に手渡されます。
年末調整は、月々概算で徴収して税務署に前納していた所得税の払いすぎなどを調整するもので、それによって1年間の所得と所得税が確定します。
退職金を支給した会社は、退職後1ヶ月以内に源泉徴収票を作成して税務署に提出するとともに、退職者に交付しなければなりません。(所得税法第226条)
また、会社は同じものを「退職金の支払調書」として市区町村にも提出しなければなりません。その内容が退職した社員の翌年の住民税に反映されます。
毎年年末か年明けに会社から渡される源泉徴収票を「何のために渡されるのかな?」と思っている会社員も少なくありません。
しかし、源泉徴収票は1年間の所得額と納めた所得税額を証明する書類なので、次のようないろいろな場面で必要になります。
1. 銀行から融資を受けるときに必要
2. 賃貸住宅に入居する時必要な場合がある
3. 住宅ローン控除のための確定申告に必用
4. 医療費控除をのための確定申告書に必用
5. ふるさと納税をしたときの寄付金控除の確定申告書に必要
6. 転職するときに転職先の会社に提出する必要がある
源泉徴収票は5年分保管しておくと、どんな場合も対応できます。
たいがいは、翌年に新しい源泉徴収票をもらうまで保管しておけば間に合いますが、次のような場合に複数年分が必要になります。
会社から交付された源泉徴収票を紛失したときは、会社に再発行を依頼しましょう。
源泉徴収票は、上記のようなさまざま機会に必要な書類なのでなので、再発行を依頼された会社(源泉徴収義務者)がそれを拒否することはできません。
会社を退職している場合も再発行を依頼できます。万一会社が拒否した場合は税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出すると、事業主に行政指導が行われます。
ちなみに、会社(源泉徴収義務者)は源泉徴収票を7年間保管する義務があります。
会社が倒産していた場合は、破産管財人(弁護士)に依頼すれば発行してもらえます。破産管財人が誰かが分らない場合は、会社所在地の管轄裁判所に問い合わせましょう。
ただし、給与所得の源泉徴収票ではなく、フリーランスなどへの報酬の支払い調書は会社に交付義務がなく、再発行を断られる可能性があるので、取り扱い・保管には充分注意する必要があります。
転職したときは、新しい勤務先に前の会社で退職時に交付された所得税の源泉徴収票の提出を求められます。
転職先の会社では、その源泉徴収票の内容と転職後の給与、天引きした所得税を合わせて年末調整を行ないます。
転職先に提出しなければならないのは「所得税の源泉徴収費用」で、「退職金の源泉徴収票」は提出する必要はありません。
源泉徴収票は、渡される社員にとっては1年間の所得額と納めた所得税額を証明する書類です。年末調整以外に確定申告が必要なとき、転職するときに必要なので大切に保管しましょう。
源泉徴収票を作成する会社(源泉徴収義務者)は、作成した徴収票を税務署に提出して社員に手渡すほかに、社員が住んでいる市区町村にも提出しなければなりません。
画像出典元:写真AC、pixabay
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