TOP > SaaS > 法務 > 契約管理 > 電子契約を求められたらどうすればいい?導入メリットや拒否する場合についても解説
取引先から電子契約を提案され、導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、電子契約のメリットや電子契約を求められた場合の対応方法、そして導入を拒否する場合の注意点を詳しく解説します。
電子契約を導入すべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
このページの目次
電子契約とは、従来の紙と印鑑を用いた契約書を、インターネット上で作成・締結する契約のことをいいます。
電子契約では、パソコンやスマートフォンなど、インターネットに接続できれば、いつでもどこでも契約手続きが可能になります。
(データ参照:2023年9月 デジタル庁 第2回 電子委任状法施行状況検討会 資料より)
デジタル庁による調査では、56.3%の企業が電子契約システムを導入しているとの結果が確認できます。
調査対象となった455社のうち半数超が導入しているとの結果から、普及率の高さがうかがえるでしょう。
また、56.3%は「自社主導の契約の場合に相手方に用いることを求める」場合に限定した数字です。
「他者主導の契約の際に利用する電子契約システム」は数値に含まれていないため、利用したことがある企業はさらに多いと考えられるでしょう。
電子契約システムの普及率は年々高まっており、電子契約を求められる機会は増えていくことが予想されます。
電子契約は、あくまでも契約方法の一つです。
取引先から電子契約を求められても、必ずしも応じる義務はありません。
しかし、以下の点を考慮する必要があります。
自社の状況や電子契約のメリット・デメリットを比較検討し、適切に判断しましょう。
電子契約を導入すると、以下のようなメリットが期待できます。
電子契約を導入する際は、以下ようなデメリットに注意しましょう。
電子契約を受け入れる際は、いくつかの点に注意して慎重に進めましょう。
ここでは、具体的な手順と注意点をご紹介します。
電子契約を求められたとき、まずは法令上で当該契約関連文書の電子化が認められているか確認します。
電子契約に対応している契約関連文書は少しずつ増えていますが、一部例外があるので注意が必要です。
電子化のために当事者の承諾が必要なケースもあるので、契約書の種類をチェックしておきましょう。
また、法令上は問題がないケースでも、社内ルールに反反している恐れもあるので、担当部署に確認したうえで電子契約を進めるようにしましょう。
また、電子契約では業務の流れや情報の管理方法が大きく変わるため、社内ルールの見直しを検討してください。
契約がいつまで存続するか期間の確認が必要です。
電子契約は暗号化されたうえで保管されますが、技術が発展することで解読されるリスクが高まり安全性が低下します。
そのため電子契約に用いられる電子証明書には有効期限があり、経過後は署名した本人であることや改ざんされていないことが証明できません。
電子証明書の有効期間は最長で5年とされ、多くの電子署名サービスでは有効期限を1〜3年に設定しています。
最新の暗号技術によって新たなタイムスタンプ(保管タイムスタンプ)を付与することで、有効期限のあとであっても有効性を維持できます。
1〜3年以上の契約期間が必要な契約関連文書に電子署名をおこなう場合は、長期署名の導入を検討してください。
ただし、長期契約に用いる保管タイムスタンプの有効期限は10年です。
保管タイムスタンプは繰り返し付与することで期限は延長できるため、長期にわたって継続する契約の際には利用を検討してください。
電子契約システムは立会人型と当事者型があり、それぞれ必要な準備や利用の流れが異なります。
それぞれの特徴やメリット・デメリットは以下の通りです。
立会人型 |
|
当事者型 |
|
立会人型はメールアドレスで本人確認をおこなうため、電子契約システムを利用していなくても利用できます。
一方の当事者型は取引先と同じ電子契約システムの導入が求められます。
求められた電子契約が立会人型と当事者型のどちらなのか確認したうえで、手続きを進めましょう。
契約書の文言が電子契約に対応しているか確認します。
基本的な内容は紙の契約書と同じで問題ありませんが、一部の文言は電子契約に対応するものへ変更が必要です。
契約書の文言に書面や記名・押印など書面特有の表現がある場合は、取引先と相談して訂正しましょう。
紙の契約書から電子契約に変更した箇所を取引先と共有すると、スムーズに確認できます。
電子契約には、なりすましや情報漏洩、改ざんなどのセキュリティリスクがあります。
重要な電子契約をおこなう場合は、証拠力が高い当事者型の電子契約システムであれば安全です。
確実性の高い本人確認によって、なりすましリスクの低減や法的紛争の予防につながります。
また、利用する電子契約サービスによってセキュリティレベルが異なるため、あらかじめチェックしておきましょう。
セキュリティ関連の各種認証・認定を取得している電子契約サービスなら、より安全に利用できます。
認証局の電子署名や認定スタンプ、二重認証によるログインなどのセキュリティ機能を備えているかも、あわせて確認してください。
電子契約の導入を検討している取引先から、電子契約への移行を提案された場合、さまざまな理由から拒否したいケースもあるでしょう。
しかし、安易に拒否してしまうと、取引関係に悪影響を及ぼす可能性があります。
そこで、トラブルにならない断り方と、電子契約を導入せずに契約を継続する方法について解説します。
電子契約を拒否する場合、以下のような点に注意して、丁寧な説明を心がけることが大切です。
この度は、電子契約のご提案、誠にありがとうございます。
弊社では、現在、社内システムとの連携や、セキュリティ面での懸念から、電子契約の導入が難しい状況です。
しかしながら、貴社との取引を今後も継続していくうえで、より効率的な業務遂行を目指したいと考えております。
つきましては、従来どおり紙の契約書で進めさせていただきたく、ご協力をお願いいたします。
今後とも、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
取引先との信頼関係を損なわずに、電子契約を導入せず契約を継続するには、以下の方法が考えられます。
原本となる紙の契約書を1通作成し、自社と取引先が合意のうえ押印したあと、現本は自社に、取引先は原本のコピーをPDF化し、電子データとして保管する方法です。
この方法なら、取引先の要望に応えながら、自社で保管する分はこれまでの紙の契約書で締結できます。
電子契約でのトラブルを避けるため、以下のポイントをあらかじめ確認しておきましょう。
法令により、電子契約では対応できない契約や保存要件が満たせないケースがあります。
また、初めて電子契約を利用する場合は、一部の契約から少しずつ電子契約に変えていくことで、現場の混乱を最小限に抑えられます。
なお、電子契約システムの中には、紙で作成した契約書を取り込み一元で管理できる機能をもったものがあります。
電子契約と書面契約を一元で管理したいなら、このような電子契約システムの導入を検討してください。
電子契約システムでは、本人性を担保するためにメール認証をおこないます。
手続きに利用するメールアドレスは双方に開示されるので注意。
契約専用のメールアドレスを用意することで、いつも使用しているメールアドレスの公開を防げます。
ただし、電子契約に共有メールアドレスを使用するのはNGです。
想定しない社員が認証用のURLを開き、契約を締結してしまう可能性も考えられるため、第三者が使用できない企業の個人メールアドレスを、作成・利用しましょう。
ワンタイムパスワードやアクセスコード認証など2段階認証を取り入れることで、なりすましのリスクをさらに低くできます。
紙の契約から電子契約に変更する場合、以下のような文言の変更が必要です。
紙文書 | 電子契約 |
本書・書面 | 電磁的記録・本電子ファイル |
記名押印・署名捺印 | 電子署名・電磁的措置 |
原本の作成・保有本数 | 不要 |
契約日を記載 | なくても問題ない |
上記のような変更点をふまえたうえで、電子契約書のフォーマットを作成しておきましょう。
また、電子契約の場合、電子契約システム・サービスの提供元を記載することで契約の正しさを証明することにつながります。
取引先と異なる電子契約システムを利用しているケースでは、それぞれの名称を明記してください。
電子契約に関するよくある質問と回答をまとめました。
取引先から電子契約の導入を求められても拒否することは可能です。
しかし、将来的には電子契約が主流になる可能性などを考慮する必要があります。
詳しくは、「電子契約は拒否もできる」の章をご参照ください。
電子契約を受け入れる際は、以下の点に注意が必要です。
詳しくは、「電子契約を受け入れる場合の手順」をご参照ください。
電子契約も正しい使い方をすれば、法的に有効性が認められています。
電子署名の効力について規定した「電子署名法第3条」でも、電子契約書に本人性が認められる電子署名があれば、印鑑を押した紙の契約書と同じように効力があるとしています。
画像出典元:O-DAN
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