労働者代表とは|適当に選ぶと懲役も!?正しい選び方や注意点を解説

労働者代表とは|適当に選ぶと懲役も!?正しい選び方や注意点を解説

記事更新日: 2022/01/13

執筆: 編集部

36協定を結ぶために労働者代表を選出をしなければならない。といった状況で、労働者代表の選び方や役割りがいまいちピンとこない人がほとんどです。

そもそも労働者代表どころか36協定が何なのかを知らない従業員がほとんど。

「36協定」と「労働者代表」について知らなければ、企業側にとっても従業員側にとっても大きなリスクがあることをご存知でしょうか?

本記事では「労働者代表と36協定について」「労働者代表の役割りやメリット」「労働者代表の選び方や注意点」などについて詳しく解説していきます。

労働者代表とは?

労働者代表とは36協定の締結当事者の一人です。

労働者代表がなんのために必要なのかを知るためには、36協定を理解しておく必要があります。

まずは、36協定について詳しく見ていきましょう。

36(サブロク)協定とは残業や休日出勤についての取り決め

36協定(正式名称:時間外・休日労働に関する協定届)とは従業員が時間外労働をする場合、事前に会社側と従業員側が締結をしておかなければならない書面です。

労働基準法36条に定められていることから「36(サブロク)協定」と呼ばれています。

36協定を締結していない場合、会社側は従業員に残業をさせると法的には罪に問われます。(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)

長時間の残業や休日出勤はもちろんのこと、たった1分の残業でもです。

36協定の違反は会社側にとって「信用の低下」「ブラック企業認定」といった大きなリスクが付きまといます。

労働者代表は36協定を締結するのに必要

労働者代表は従業員の過半数で組織された労働組合のない企業が、36協定を従業員と企業が結ぶ際に必要です。

従業員の過半数で組織された労働組合がある場合は、労働組合側と会社側で36協定を締結することができます。

一方、従業員の過半数未満の労働組合や労働組合が無い企業の場合は、各事業所の従業員の過半数を代表する者(過半数代表者)を選出しなければなりません。

この従業員の過半数を代表する者(過半数代表者)が労働者代表と呼ばれ、36協定を会社側と締結する際の代表者となります。

労働者代表には誰がなれるの?

労働者代表になれるのは「管理監督者でない人」です。

労働基準法では、労働者代表になれる人の要件として「労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないこと」と定められています。

下記の引用の二が「管理監督者」の要件ですので、引用に文言に該当しない従業員が労働者代表になることができます。

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

引用:労働基準法

厚生労働省のリーフレットでは「一般的には部長、工場長など、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人」と紹介されています。

ですが、ひとつ注意することがあります。

それは、「組織の長だからといって管理監督者に必ずしも該当するとは限らない点」です。

リーフレットの文言通りであれば、労働者代表は組織の長なら該当しそうなものもの。

しかし、管理監督者は「労働時間や休憩、休日に制限を受けない従業員」ですので、「一般職員と比べて待遇と労働条件が特殊に設定されている」ことが重要です。

労働条件や待遇が一般職員とさほど変わらない組織の長の場合は、労働者代表となることが可能な場合もあります。

労働者代表のやることは?

労働者代表となった人の行うことは、36協定の内容について「従業員側の意志を取りまとめて会社側へ伝える」ことです。

具体的には、会社側の提示した36協定の内容について承認なら署名・押印、または否認を代表して行います。

補足として、労働者代表として36協定の意思決定をすることで、解雇や賃金の減額、降格等を受けることはありません。

不当な扱いを受けた場合は、会社側が労働基準法施行規則第六条の二3に違反することになるので、安心して労働者代表の責務を果たすことができます。

労働者代表の選び方と具体例

労働者代表の選び方について、厚生労働省からは次のような案内があります。

労働者の過半数がその人の選任を支持していることが明確になる民主的な手続きが取られていることが必要です。

引用:厚生労働省

労働者の過半数が労働者代表となる人を支持している事が明確に分かることと民主的な手続きが取れていればよいというもの。

つまり、全ての従業員の過半数の同意が確認できれば構わないということになります。例えば以下のような選出方法はすでに認められています。

(1)挙手・投票

(2)話合い

(3)持ち回り決議

 

(1)挙手による選出

原則全ての従業員が出席している場において労働者代表になりたい人が挙手をしてその場で選ぶ方法。

立候補者が複数いる場合は、候補者をその場で投票して選びます。

(2)話合い

原則全ての従業員が参加した場において、話合いによってその場で労働者代表を選ぶ方法。

(3)持ち回り決議

(1)や(2)において選出された労働者代表の候補者を、回覧やメールなどを利用して全ての従業員から承認および否認の意見を回収して選ぶ方法。

労働者代表を選ぶ時の注意点は?

労働者代表を選出する際には、労働者代表となる人が「事業所ごとに従業員の過半数の信任を得る」ことが条件です。

信任を得ることについて以下の4点に注意する必要があります。

・使用者の意向に基づき選出されたものでないこと

・親睦会の幹事などの正式な役職ではないリーダー的な人を自動的に労働者代表とすることも無効

・事業所単位(会社ごとではない)

・従業員の母数を確認する

実は、労働者代表を選ぶ際の記録などの保存は、法律では求められていません。

そのため、証拠が残らないことからトラブルに繋がりやすいため、選出の際の記録保管は必須であると考えられます。

それぞれについて詳しく解説していますので、しっかりと確認してみましょう。

使用者の意向に基づき選出されたものでないこと

会社の代表者などから特定の従業員を指名して労働者代表を選出することはできません。

労働者代表の選び方で説明した通り、「従業員全員の参加と承認および否認」が条件だからです。

会社側の意向で労働者代表が選出された場合は36協定そのものが無効になります。

加えて、残業等を従業員にさせていた場合は違法となり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

親睦会の幹事などのリーダー的な人を自動的に労働者代表とすることも無効

職場にはなにかとリーダー的な人、またはイベントを行う際にいつもリーダーとなる人がよくいます。

そういった方を「勝手に」労働者代表とすることはできません。

そのような場合も36協定が無効となります。

民主的な手続きを踏まなければなりませんので、「全ての従業員の承認および否認」を確認してから信任を得ることが必要です。

事業所単位(会社ごとではない)

労働者代表は各事業所で選任をしなければなりません。

なぜなら、事業所によっては同じ会社でも労働環境が異なる場合があるからです。

例えば、本社のオペレーション勤務と支社の24時間稼働の工場勤務では明らかに労働条件や労働環境が異なります。

36協定では従業員の意見を適切に反映する必要があることから、労働者代表は事業所単位での選出が必要となります。

従業員の母数を確認する

労働者代表を選出する際には、事業所ごとに全ての従業員数を正確に把握する必要があります。

正確に把握していなければ過半数の要件を満たせず、36協定が無効となる恐れがあるからです。

労働者代表選出における従業員としてカウントできるかどうかの判断基準は以下の表にまとめています。

役員と派遣社員には労働者代表の選出権がありません。派遣社員は派遣元の従業員として扱われるので、派遣先ではなく派遣元での選出件となります。

企業が雇用している従業員にのみ投票権があるからです。

したがって、管理監督者は労働者代表にはなれませんが、役員でなければ投票権があることに注意が必要です。

また、休職中の職員にも投票権があるので、意見を聞く必要があります。

まとめ

労働者代表を選出することは企業側、従業員側、どちらにとってもとても重要なことです。

企業側は有効な36協定を締結せずに休日出勤や残業を従業員にさせてしまうと罪に問われるため、大きなリスクを負うことになります。

従業員側は36協定の内容について労働者代表が意思決定をできるため、休日出勤や残業の内容については労働者代表の判断にゆだねることになります。

企業側、従業員側にとって働きやすい環境と不要なトラブルを回避するためにも、正しい手続きをしながら労働者代表を選出しましょう。

画像出典元:Pexels、Unsplash

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