企業の経営者なら海外進出を一度は考えたことがあると思います。また、起業を志す若い人で「将来は海外にも」と夢を膨らませない人はいません。
とくに、人口の減少に歯止めがかからない日本では今後は市場規模は縮小する一方で、パイの奪い合いも激化することが考えられます。
そんな閉塞状況のソリューションになりうる海外進出ですが、海外法人の設立はハードルが高いのでしょうか?
この記事では、海外での事業の可能性を考えている人に、海外法人の設置方法やメリット・デメリット、海外進出を検討するときのポイントを分かりやすく解説しています。
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海外法人を設立するには、法人を置く国の法律・制度に従って申請しなければなりません。
法律・制度は国によって違うので、国の数だけ海外法人の「申請方法」や「設立条件」があることになります。
したがって、実際には海外法人の設立は司法書士、税理士、弁護士などの専門家や専門家の所属するサポート企業に依頼する必要があります。
また、サポート企業もすべての国の法律や制度に詳しいわけではなく、それぞれの企業に得意国、実績国があります。
申請代行費用は国によって、サポート企業によって違います。20万円から50万円が相場ですが、タックスヘイブン(租税回避地)での設立には100万円以上かかる場合があります。
外務省領事局政策課の「海外在留邦人数調査統計」(2017年10月1日現在)によると、日本企業の海外拠点は75,531拠点です。
その内訳は次の通りです。
海外拠点75,531件を国別にみると次のようになります。
順位 | 国名 | 拠点数 |
1位 | 中国 | 32,349 |
2位 | 米国 | 8,606 |
3位 | インド | 4,805 |
4位 | タイ | 3,925 |
5位 | インドネシア | 1,911 |
6位 | ベトナム | 1,816 |
7位 | ドイツ | 1,814 |
8位 | フィリピン | 1,502 |
9位 | マレーシア | 1,295 |
10位 | シンガポール | 1,199 |
海外で事業を行なうには、現地法人方式、海外支店方式、現地パートナー方式の3種類があります。
日本マクドナルド株式会社といえば、米国マクドナルド社の子会社の日本法人です。このように、外国に子会社を作るのが現地法人方式で、もっとも多い海外進出の形です。
現地法人方式で海外法人を作ると、そこでの営業利益には現地の税率が適用されます。また、本社とは違う業務を行うことも自由です。
一方で、独立した法人なので現地国の会社法にのっとって会計や税務を行ない、その書類を作成しなければなりません。
海外支店方式は、現地での法人設立手続きが不要なので手続的には簡単です。
会計も日本のルールが適用され、税金は本社で日本政府に支払います。したがって海外支店で赤字が出たら、本社で支払う税金が安くなります。
ただし、利益には日本の税率で所得税がかかるので、節税目的での海外進出には適していません。
利益が出たときは現地政府にも税金を支払う必要がありますが、その分は日本で支払う税金が安くなります。(外国税額控除制度)
現地の企業と提携して販売代理店などになってもらう海外進出のパターンです。現地法人や支店を設立する必要がなく、パートナーとの契約だけで事業を行なうことができます。
既にあるパートナーの販路を利用できるメリットがありますが、自社独自の販売よりも当然利益率は低くなります。
また、日本企業のノウハウを学んだ現地パートナーが独自で事業を起こして、結局「盗られ損」になるというリスクもあります。
上記3つの他に「駐在員事務所」の設置がありますが、設置しても実際に営業活動を行うことはできず、市場調査などの情報収集目的に限られます。
日本の人口減少は今後も続くと考えられるので、当然市場規模も縮小していくことになります。しかし、海外に目を転じるならマーケットは無限に広がります。
また、商品・サービスによっては、海外には競争相手がいない(いわゆるブルーオーシャン)の場合もあります。
日本では過剰競争で利益を圧迫されている事業でも、海外では十分利益を上げることができる可能性があります。
アジア圏では日本より人件費が大幅に安い国がほとんどです。
現地国の経済発展によって人件費は徐々に高くなるので、現在の日本との差で長期的な計画を立てることはできませんが、メリットが大きいのは確かです。
また、店舗や事務所の賃貸料が安い、現地の安い原材料を輸入関税なしに使える、などのメリットもあります。
製造業、サービス業を問わず、日本にはさまざまな許認可制度や厳しい営業規制があります。一定以上の広さがない飲食店でのダンスを禁じるなどは、その最たるものでしょう。
その点、海外では日本に比べて諸規制がゆるい国が多いので、業種によっては出店コストが低くてすむ大きなメリットがあります。
海外には法人税か安い国があり、そこで利益を出せば日本で同じ額の利益を出すよりも、実質的な儲けは大きくなります。
例えば、日本の法人税は23.2%(事業税や地方税などを加えた実質有効税率は約30%)ですが、シンガポールでは17%、香港で16.5%、スイスではわずか8.5%です。
ただし、節税だけを目的にする海外法人の設置には「タックスヘイブン対策税制」と「移転価格税制」があり、国際的な監視網もあるので、思惑通りにいくとは限りません。
タックスヘイブンとは税金(タックス)を回避する(ヘイブン)行為です。タックスヘブン(税金天国)と勘違いしている人は間違いです。
カリブ海の英領バージン諸島など大きな産業のない島国は、税金を極端に安くしたりゼロにして企業を誘致しようとすることがあります。
そこに営業実態のない現地法人(ペーパーカンパニー)を置いて税金を逃れようとするのがタックスヘイブンです。
海外に法人があり現地の銀行と取引があれば、日本円を外貨に替えて取引するより、スピーディーで手数料もかかりません。
また、海外諸国の金利は超低金利の日本より高いので、日本円で所有するより有利です。為替変動のリスクヘッジにもなります。
日本の銀行からお金を借りようとしても、営業実績、取引実績のないベンチャー企業には困難です。
その点海外では、投資家から直接融資を受ける「直接金融」が容易な国もあり、日本よりも資金調達の道が広くなります。
中国武漢での新型コロナウイルスの流行の例を見ても分るように、海外法人には日本で事業を行なっているときにはないリスクがあります。
海外投資に伴う為替リスクなどをカントリーリスクといいますが、海外法人の設立によるカントリーリスクはもっとストレートで、ときには破壊的です。
日本より治安の良い国はめったにありません。一方、海外では、国によってはテロや戦争のリスクまで考慮しなければならないことがあります。
また、文化が違う海外では、日本で考えた事業の見通しが通用しないことがあり、目論みが大きく外れる可能性もあります。
海外に子会社を設立すると、日本と海外でそれぞれが違う制度に基づく会計処理、税務処理が必要になります。
海外に支店を置く場合よりも、このような諸手続きが多くなります。
海外法人は、当然ながら、日本の公共金融機関である日本政策金融公庫の融資を受けることができません。
日本政策金融公庫には、中小企業向けや起業支援のための融資が数多く用意されていますが、海外法人ではこのような融資がすべて受けられなくなります。
国内でも事業の目論みは当たり外れがあるので、海外ではそれがさらに大きくなります。
完璧に読み切ることは不可能なのでチャレンジすることは大切ですが、イチかバチかという姿勢ではリスクが大きすぎます。
やりは商品やサービスと現地国の分化の相性をよく検討して、読めるところまで読んでおかないといけません。
商売が成功する可能性が同じくらいなら、外国企業の誘致に積極的で優遇制度のあるフレンドリーな国を選ぶのに越したことはありません。
同じ米国に進出するにしても州によって、外国企業の誘致の積極性は違うので、拠点を置くならフレンドリーな州にすべきです。
例えば、イリノイ州には州税の優遇措置があり、会社設置の立地条件の情報提供なども行っています。
日本で計画を立てるだけでは机上の空論になるので、計画を立てる前と後に現地に足を運んで、調査する必要があります。
現地の制度の確認や現地の協力者との打ち合わせはもちろん、市場視察などで肌で感じたものを計画に生かすことが重要です。
進出する国の法人設立に詳しいサポート企業に、申請手続きを依頼するだけでなく、進出に当たってのリスクや注意点をよく相談しておきましょう。
経験が豊富なサポート企業なら進出を奨めるだけでなく、リスクについても詳しく説明してくれるはずです、
海外法人を設立するための条件や申請方法は、受け入れる国によって違います。
各国の設置のハードルは高くはありませんが、実際の手続きは複雑なので専門家のサポートが必要になります。
海外法人には多くのメリットがありますが、デメリットもあるので、海外進出の目的を明確にして、リスクを踏まえたしっかりした進出計画が必要です。
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