正社員としての就職を目指す人は、「契約社員」という言葉だけで候補から外していませんか?
近年は契約社員を取り巻く環境も変化しており、これまでのようなデメリットは少なくなっています。契約社員になると、実際にはどのような働き方をすることになるのでしょうか。
契約社員と正社員の違いやメリット・デメリット、さらには契約社員としての将来性について考察します。
契約社員の現状を正しく理解すれば、就職活動の選択肢はより広がるかもしれません。
このページの目次
同じ会社で働いていても、契約社員と正社員にはさまざまな違いがあります。具体的には、どのような点が異なるのでしょうか。契約社員と正社員の違いを考察します。
契約社員と正社員の大きな違いの一つが、「契約形態の違い」です。雇用主は同じ企業であるとしても、契約社員は「有期労働契約」、正社員は「無期労働契約」を結びます。
まず、有期労働契約とは、文字通り「期限付き」の契約のことです。就業期間は企業と労働者の間で決めますが、労働基準法14条1項では原則3年を上限とすることが定められています。
ただし、以下に該当する場合は最長5年まで働くことが可能です。
一方、「無期労働契約」については、特に雇用期限はありません。この契約を結ぶ正社員は、企業の定める定年まで働くことができます。
次に異なるのが、労働条件です。契約社員の場合、労働条件は企業と労働者の間で個別に設定されます。
契約社員という立場は同じでも、同じ労働条件で働くとは限りません。業務内容についても個々の契約書に準ずるため、人それぞれです。
一方、正社員の場合は、皆一律に同じ労働条件で働きます。企業の就業規則に従うことが求められ、業務内容については企業の指示に従うのが一般的です。
労働契約や労働条件が異なる一方で、契約社員も正社員も「労働者」としての権利は等しく保障されます。労働基準法第9条によると、労働者とは次のように定義されます。
つまり、契約社員も労働者である以上は、労働基準法の保護を受けることができるのです。
具体的には、
などがあります。
また、解雇される場合についても、契約期間が20日以上の契約社員は、労働基準法に則って手続きされねばなりません。
企業は契約社員・正社員にかかわらず「解雇の30日前」までには解雇予告を行う義務があります。
契約社員は正社員とは異なり、働く期間に上限があります。一見すると不安定な働き方にも見えますが、契約社員ならではのメリットがあることも忘れてはいけません。
契約社員になると、どのようなメリットを享受できるのでしょうか。
契約社員のメリットとしては、「労働条件について交渉の余地がある」という点です。
実際のところ、法律上で「契約社員」という概念はありません。労働条件は会社との契約次第となる部分が多いため、場合によっては自身の望む働き方も可能です。
業務時間や内容について意見や希望を出しやすく、就業規則に縛られる正社員と比較して、自由度は高いといえるでしょう。
また、契約社員の多くは、転勤の心配がありません。もちろん契約内容によりますが、勤務地が限定されている場合がほとんどです。
加えて業務内容も固定されていることが多いため、得意な分野に集中して働くことができます。
前述のとおり、契約社員の就業期間は、契約によって事前に定められています。「○月○日に就業期間が終わる」と明確に分かっているため、その後のプランを立てやすいのが魅力です。
たとえば「契約期間が終わったら留学する」「起業する」などの予定がある場合には、働きながら準備していくことができます。
契約社員として働く間はお金も経験も得られるため、次のステップにむけて大きなプラスとなるでしょう。
契約社員なら「担当の仕事以外しない」「プライベートな集まりには参加しない」など割り切って働けます。
仕事以外のトラブルに巻き込まれにくく、オンとオフをきっちり分けたい人には魅力が多い働き方です。
働く上で不満があったとしても、有期雇用契約なら「それまで我慢すればなんとかなる」と前向きに考えられるでしょう。
一方で、無期雇用契約で働く正社員は、「その後のつきあい」「会社での立ち位置」などにとらわれがちです。
仕事以外の部分で煩わされることも多く、就業環境が変わらないことが大きなストレスとなるケースもあります。
契約社員は正社員とは異なる働き方となりますが、そのことに起因するデメリットも少なからずあります。契約社員として働く上で、知っておきたいデメリットをみてみましょう。
まず気になるのは、契約社員の福利厚生です。多くの企業で、契約社員の福利厚生は一部に限られています。
たとえば、以下のように企業独自で設定する福利厚生は、契約内容によって受けられたり受けられなかったりするので、注意が必要です。
労働基準法第20条によると、有期雇用者と無期雇用者で労働条件を不合理に差別することは禁じられています。
しかし、正社員と契約社員では業務内容や責任を負う範囲が異なるため、「福利厚生に差があるのは仕方ない」と考える人も少なくはありません。
福利厚生の差に不満を感じた場合でも、「正社員と全く同様に」と是正を求めるのは現実的に難しいでしょう。
後でモヤモヤしないためにも、契約前に福利厚生についてしっかり確認しておくことをおすすめします。
ほとんどの契約社員には、ボーナス、昇給、退職金がありません。こうした制度は長期雇用を目的とする正社員を対象にしているため、有期雇用契約で働く契約社員には適用されないことがほとんどです。
ただし、会社によってはボーナスがあったり、退職時に「満了金」というかたちで退職金のようなものを支払ってくれたりする場合があります。
契約前に内容をしっかり確認し、どのような取り決めになっているかを把握しておきましょう。
契約期間が過ぎれば、契約社員としての仕事も終わりです。長く同じ仕事を続けたい、職場を変わりたくない人には、有期契約による雇用の不安定さはデメリットといえるでしょう。
契約更新があれば続けて働くことは可能ですが、これは企業の考えや経営状態などに大きく左右されます。
人口減少から労働力不足に陥る未来が予測されている今、日本政府は「働き方改革」によって多様な働き方を支援し、将来の労働人口の維持・確保を目指しています。
現在までにさまざまな法改正や法制定が行われていますが、この中には契約社員の働き方に影響するものもいくつかあります。
政府による労働法等の改正により、契約社員の働き方はどのように変わっていくと考えられるのでしょうか。
2013年に「労働契約法の一部を改正する法律」が交付され、有期労働契約に新たな項目がプラスされました。
その一つが「有期労働契約」から「無期労働契約」に切り替えることが可能となる「無期転換ルール」です。
これは、一定の条件を満たす契約社員は無期労働契約への転換を企業に申し出ることができるというもの。
無期労働契約への転換条件は、以下のとおりです。
1. 有期雇用契約の通算期間が5年を超えている
2. 1回以上契約更新している
3. 現時点で同一の使用者との間で契約している
この権利を行使すれば、契約期間の終わりを心配せずに働くことができるようになります。
また、無期転換ルールの策定と同時に「雇止め法理」の法定化(第19条)、不合理な労働条件の禁止(第20条)という項目も加えられており、「不条理な雇止めの無効」と「正社員との労働条件の格差の是正」も併せて行われるようになりました。
契約社員を雇う企業は安易に雇止めしにくくなり、契約社員ならではの「有期」というデメリットも軽減されてきています。
2020年4月からは「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されます。これは、基本給や賞与などあらゆる待遇において、両者の間に不合理な格差を設けることを禁じる法律です。
改正のポイントについては、以下を確認してください。
出典:リーフレット「パートタイム・有期雇用労働法が施行されます」厚生労働省
この法改正の実施により、契約社員でも正社員と同様に役職手当や退職金、通勤手当などを求めることができるようになります。
ただし、労働時間や業務内容によっては、「正社員と全く同じ」とならないケースもあり、詳細については事前に企業に確認しておくことが大切です。
契約社員は「有期労働契約」を結ぶという点で正社員と異なります。契約更新をしなければそこで雇止めとなり、次の職場を探さねばなりません。
安定的に職に就きたい人よりは次のライフプランが決まっている人、一つの職場に縛られたくない人などに向いている働き方です。
ただし、政府の「働き方改革」により、近年は契約社員と正社員の待遇差もなくなってきています。
条件を満たせば「無期労働契約」への転換も認められていますし、「有期労働契約による不安定さ」のデメリットは少なくなっているといえるでしょう。
中途採用となる場合、大企業を狙うのは厳しいケースが多々あります。しかし、契約社員なら広く門戸が開放されているケースも多く、憧れの企業で働くチャンスもあるかもしれません。
初めは契約社員でも、その後正社員として雇用されたり無期労働契約に切り替わったりする可能性もあります。
就職活動を行う際は、契約社員という働き方についてもじっくり検討してみてはいかがでしょうか。
画像出典元:Unsplash、Pixabay
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