源泉徴収とは?対象・納付方法・届出について解説

源泉徴収とは?対象・納付方法・届出について解説

記事更新日: 2021/04/07

執筆: 編集部

給与を支払う時には、支払う給料に対して「源泉徴収」をする必要があります。

この源泉徴収は、従業員の給料だけでなく代表取締役の役員報酬に対しても必要です。「従業員を雇っていないから源泉徴収は不要」とはなりません。

源泉徴収は給料以外にも発生します。

今回は源泉徴収についてご紹介します。

源泉徴収とは

源泉徴収とは、事業者が従業員・役員の給料や、個人の税理士・社労士などの報酬を支払う時に所得税を計算し、支払金額からあらかじめ差し引くことです。

差し引いた所得税は、源泉徴収義務者が税務署に納付します。

源泉徴収により従業員の確定申告の手間がなくなるほか、国にとっては確実に税金を徴収することができるというメリットがあります。

源泉徴収義務者

源泉徴収義務者は給料や、税理士などの報酬に対して差し引いた所得税を国に納付する義務のある者です。

法人だけに限らず個人事業主も源泉徴収義務者になります。しかし、個人は、次の2つの条件のどちらかに該当する場合は源泉徴収義務者にはなりません。

・常時2人以下のお手伝いさんなどの家事使用人にのみ給料や退職金を支払っている

・給料や退職金の支払がなく、税理士報酬などの報酬・料金のみを支払っている

この条件をみると、多くの個人事業主は源泉徴収の義務がないことが分かります。

給与所得のみの方が住宅ローン控除、医療費控除などの申告を税理士に依頼する時の税理士報酬については、源泉徴収する必要がありません。

また、従業員に対する給料がない個人は源泉徴収義務者に該当しないので、税理士の報酬を支払っている場合も、源泉徴収は不要です。

税務署に届出を提出

会社や個人が給料の支払を開始して、源泉徴収義務者になる際には届出の提出が必要です。

給与支払事務所等を開設してから1ヶ月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を、給与を支払う事務所を管轄する税務署に提出しましょう。

ただし、個人が新たに事業を始めた場合などは「個人事業の開業等届出書」を提出するので、「給与支払事務所等の開設届出書」の提出は不要です。

役員・従業員に対する源泉徴収の対象

給料

給料の源泉徴収税額は「給与所得者の源泉徴収税額表」を用いて計算します。

給与所得者の源泉徴収税額表は「月額表」と「日額表」があり、日雇いの場合は「日額表」それ以外の場合は「日額表」を使います。

給料の源泉徴収税額は「給料」「社会保険料」「扶養親族等の数」が必要です

。給料から社会保険料を差し引いた後の金額に、扶養親族の数に応じて区分されている、該当する箇所の金額を徴収します。

給与所得者の源泉徴収税額表には「甲」「乙」「丙」の3つの区分があります。

甲は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出がされている人です。乙は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が提出されておらず、2ヶ所以上の給料がある人です。丙は日雇いの人です。

賞与

賞与の源泉徴収税額は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて計算します。

賞与の源泉徴収税額表は「給料」「社会保険料」「扶養親族等の数」に加えて「前月の給料の社会保険料等を控除した後の給与等の金額」が必要です。賞与の金額ではなく、前月の給料等の金額によって税率が決定するので注意しましょう。

退職金

退職金の源泉徴収税額は「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額の計算方法」を用いて計算します。

退職人の源泉徴収税額は「退職金」「勤続年数」が必要で、勤続年数によって退職所得控除額が計算されます。

(退職金 ー 退職所得控除額)×1/2が退職所得金額です。

退職金は退職所得金額に税率をかけて源泉徴収税額を計算します。所得によって税率が違うので速算表を参考にしましょう。

退職金を支給する場合には「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)」の作成を忘れないようにしましょう。

税理士、社労士などの報酬・料金の源泉

源泉徴収は給料などだけでなく、個人の税理士や社労士などの報酬・料金にも源泉徴収が必要です。

源泉徴収は支払先が個人の場合で、支払先が法人の場合は原則、源泉徴収は必要ありません。源泉徴収税額は業種や支払金額によって計算方法が異なります。

個人に対する報酬・料金の具体例

・原稿料や講演料

・社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬

・プロ野球、モデル、外交員などに支払う報酬・料金 など

 

源泉所得税の納付方法

源泉所得税の納付は専用の納付書で納付します。税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出すると、後日税務署から納付書が郵送されます。

納付期限は原則、源泉徴収の対象となる所得(給料・報酬など)を支払った月の翌月10日までです。

例えば5月分の給料を5月に支払った場合の源泉所得税は、翌月6月10日までが納付期限です。

納期の特例

源泉所得税は原則、毎月の納付ですが、年に2回の納付にする特例があります。

この特例は「給料の支給人員が常時10人未満」である必要があります。例え10人未満であっても、そのままでは毎月納付のままです。

年2回納付の特例を受けるには「給料の支給人員が常時10人未満」かつ「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を、給与支払事務所等の所在地の所轄税務署へ提出する必要があります。

特例を受けた場合の納付期限は以下のようになります。

支給人員が10人を超えた場合

源泉所得税の納期の特例を受けている源泉徴収義務者は、常時支給する人員が10人を超えた場合は、納期の特例を受けることはできません。

「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を、給与支払事務所等の所在地の所轄税務署へ提出する必要があります。

源泉所得税の納付が漏れていた場合

源泉所得税の納付が漏れていた場合は、延滞税や不納付加算税がかかる場合があります。

延滞税は、納付期限の翌日から2月を経過する日までは原則「年7.3%」、納付期限の翌日から2月を経過した日以後は原則「年14.6%」です。

延滞税は、計算した結果1,000円未満であれば納付が免除されます。

納付期限の翌日から納付するまでの日までの日数を日割り計算するので、納付漏れが生じた場合は、早めに納付をしましょう。

まとめ

従業員を雇用していると、源泉徴収は切っても切れない関係です。

従業員を雇用すると、毎月の給料計算、源泉所得税の計算だけでなく年末には年末調整があります。

毎月の源泉徴収金額が、扶養の人数などを勘違いし、間違えて徴収していた場合は年末調整で調整されます。

間違えて多く徴収していた場合は、従業員に還付する金額が多くなりますが、間違えて少なく徴収していた場合は、年末調整で徴収することになります。

年末調整で税金が還付になると思っている人が多く、年末調整で徴収になると従業員の負担が増え、給料計算が間違えていたとわかれば、不信感に繋がるかもしれません。

そうならないためにも、源泉徴収についてしっかりと理解しましょう。

画像出典元:写真AC

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