飲食店開業時の資金調達方法6つ| 融資を成功させるコツ・手順を徹底解説!

飲食店開業時の資金調達方法6つ| 融資を成功させるコツ・手順を徹底解説!

記事更新日: 2023/03/09

執筆: 編集部

そもそも飲食店開業には多額のお金が必要になります。以下はそれぞれの開業資金の金額例です。

  • バー:500~1,000万円
  • ラーメン店:1,000万円
  • カフェ:1,500万円
  • 居酒屋:2,000~4,000万円
  • レストラン:3,000~5,000万円

加えて飲食店は「開業したら終わり」というものではなく、ここから人件費や家賃など運転資金としてさらに多くのお金が必要となってきます。

開業するだけでも1,000万円以上かかってくるものなので、「自分の飲食店を開業したい!」という夢を実現するためには、「資金調達」をすることは必要不可欠と言っても過言ではないでしょう。

この記事では、そんな飲食店の開業を志ざしている方々が資金調達を円滑に進めることができるように、「代表的な資金調達方法6つ」と「融資を成功させるためのコツ」を紹介しています。

開業に必要な額を計算するための計算式もご紹介しているので、併せてご覧ください。

飲食店が可能な6つの資金調達方法

1. 共同経営者を募る

飲食業界でもよく見かける経営スタイルの一つ、共同経営。二人以上の人が資金を出し合い、一つの事業の経営を対等な立場で進めていくという経営手法です。

資金調達という視点から見ると、「より多くの資金を集めやすい」というメリットがすぐに浮かぶでしょう。

経営面では「効率の向上」や「相乗効果」などが期待されています。

また一方で、複数人がゆえに起きてしまうトラブルが懸念されているという側面もあります。

経営方針に関する意見の食い違いなど、トラブルが引き金で経営が困難になってしまったというケースも少なくありません。

共同経営者を募る際は、資金調達面のみに目を向けすぎず、あらゆる側面からメリット・デメリットを把握した上で慎重な判断を行うように心がけましょう。

2. 家族や親族から借りる

最もハードルが低く、かつ負荷が少ないのは、やはり家族や親族からの資金調達でしょう。

金利や返済期日への心配も少なく、融通が効きやすいというのも大きな利点です。

そんな気が知れた仲だからこそ、金銭トラブルは誰しもが避けたいところ。

家族だからと曖昧にせず、借入れる際には返済義務の有無や返済期間、利子などについて明確に取り決めを行い、契約書まできちんと作成するようにしましょう。

3. 日本政策金融公庫(新創業融資制度)を利用する

日本政策金融公庫は国が運営する金融機関です。そして、新創業融資制度とは、日本政策金融公庫が提供している公的制度。

「創業段階で利用しやすい制度」として知られており、多くの飲食店事業主がこの制度を利用しています。

ハードルも高い点もあり、それが「自己資金を最低でも10%は用意しないといけない」ということです。

全部で2000万の資金で飲食店を準備したいとすると、200万は自分で用意しないといけない、ということになります。

4. 銀行から融資してもらう

銀行は普段から利用している身近な存在ということもあり、多くの人が真先に思いつく借り入れ先候補でしょう。しかし、実は一番難しい融資ルートです。

銀行は事業主の過去の取引実績をもとに厳正な審査を行うため、それを証明できない個人の新規事業主には首を縦に振ることができません。

とはいえ、銀行もさまざまな融資プランを提供しているので、長年の付き合いがある銀行であれば何か手が見つかる可能性もなきにしもあらずです。

5. 地方自治体の制度融資を申請する

助成金や補助金を受けるというのも有力な資金調達候補です。毎年、さまざまな助成金制度が自治体によって提供されています。

金融機関と保証協会、自治体の3社が力を合わせ、起業家を支援する融資制度が、自治体の制度融資です。

制度融資には要件が複雑なものも多いため、最寄りの役所や県庁の窓口へ相談に行くと良いでしょう。

雇用の促進を狙った助成金制度などもあり、それについてはハローワークで情報を取集することができます。

6. 保証協会の融資を利用する

日本政策金融公庫や自治体の融資の他に、保証協会での融資、という融資方法もあります。

それは「東京信用保証協会(創業融資)」です。

保証協会は、日本政策金融公庫の次に有名な第2の金融機関です。日本政策金融公庫との違いは、自身では融資を行いません。

特定の金融機関が、貸し出した融資の金額についての保証をする、という仕組みになっています。

たとえば、信用保証協会の融資を受ける場合は、信用保証協会が融資してくれる銀行などを探す協力をしてくれます。

そしてその銀行からの融資金額を、信用保証協会が「保証」してくれるのです。

あなたの経営になにかトラブルがあって返済困難な場合は、保証協会が融資してくれた銀行に返済額を立て替えてくれる・・・というイメージです。

新しい起業家が、どんどんビジネスを起業できるように、信用を補完する役割を果たすためにあるのが保証協会です。




日本政策金融公庫で資金調達する手順

ここからは具体的な申請手順などを解説していきます。

飲食店の開業資金を調達する方法はいくつかありますが、最も一般的かつ現実的と言える方法は日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の利用です。

日本政策金融公庫を利用する上でのメリット

日本政策金融公庫を利用するにあたっては以下のような利点が挙げられます。

  • 起業家の支援に積極的で、無担保無保証で最大3000万円までの融資の可能性があり
  • 金利が安い(おおよそ1〜3%)
  • 基本的には無担保・無保証。経営者本人の連帯保証も不要
  • 審査に通りやすい
  • 融資実行までが早く、申込みから実際に融資が受けられるまでに1カ月程度
  • 全国152箇所に「創業サポートデスク」が展開されているので足を運びやすい

国が運営する公的融資制度というだけあり、民間の金融機関に比べて有利な条件で融資を受けられるのが大きな魅力と言えるでしょう。

日本政策金融公庫を利用する上でのデメリット

日本政策金融公庫の融資制度は融資申請者に対して間口を広く設けていますが、それなりに制約もあります。申請にあたっては主に以下のような点に注意が必要です。

  • 融資を受けるには開業資金の3分の1以上の自己資金を保有している必要がある
  • 融資の上限額は1,000万円まで
  • 審査や融資実行までに時間がかかる

実のところ、自己資金に関する「創業資金の3分の1以上」という規定は平成24年以前のもので、現在は「10分の1以上」へと引き下げられています。

自己資金の要件は、融資額の10%が必要という事でしたが、この割合は他の融資の機関に比べるとかなり低い割合です。

(例えば自治体の制度融資を申し込む場合は、希望融資金額に対して50%の自己資金が必要となります。)

しかし、実際の現場の意見では緩和された印象は持たれておらず、従来通りの「3分の1以上」が無難なラインと定義されているようです。

日本政策金融公庫の申請の手順

手順には「個人で申し込む場合」と「認定支援機関にお願いして申し込む場合」があります。

まず個人で申し込む場合は・・・

1. 事業資金ダイヤルに電話か、支店の窓口で相談。

その時に、前もって事業計画書を作成しておくと話がスムーズに進みます。

(事業計画書や借入申込書は、支店の窓口に提出します)

2. 必要書類をそろえる。

  • 身分証明書と現在の資産がわかるもの(通帳コピー)。
  • 設備融資が必要な場合は、設備の見積書なども必要です。

3. 必要書類をそろえて、日本政策金融金庫に郵送。

4. 金庫から連絡があり、面接の日取りを決めます。 

次に、認定支援機関の専門家にお願いする場合は・・・

1. 認定支援機関に登録している専門家にお願いして、「中小企業経営力強化資金」の制度を利用。

認定支援機関とは、商工会議所や金融機関のこと。

中小企業経営力強化資金とは、政府公庫の制度。

起業時に無担保、無保証人で融資を受けることができ、金利が低く設定されています。

2. 専門家と連絡を取り合い、必要な書類を作成。

事業計画書は必ず提出しましょう。提出すると利息が約1%安くなります。

3. 面接の日取りを決め、個人で面談を受ける。(専門家の同席も可能)

日本政策金融公庫で融資を成功させるには?

融資成功のコツ1:申請のために必要な準備

融資を申請する際には、以下のような事に対して準備が必要です。

  • 税金・年金・保険での未納がない状態にする
  • 創業資金に対し3分の1以上の自己資金を準備する
  • 物件の賃貸借契約書を準備する
  • 概算の借り入れ用見積書を作成(融資額が減額されることを見越して多めの金額で記載)
  • 創業計画書の作成
  • 自己資金を証明するものを準備(通帳など)

 

融資成功のコツ2:創業計画書が審査を左右する

融資を申請する際に提出する書類の中で、最も重要とされているのが「創業計画書」です。融資審査官はこの創業計画書をベースに審査を進めます。

限られた枠の中で、いかに的確に創業の意図や将来性を伝えることができるか、それが審査通過の決め手となります。

創業計画書を含めた各種申請書類は日本政策金融公庫のホームページからダウンロードが可能です。

業種ごとの記入例も確認できるのでぜひ活用しましょう。

参考:日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード」

創業計画書を記入する上で抑えるべきポイント

創業計画書の記入欄の中で、特に重要なポイントについて解説します。

1. 創業動機

創業動機は、審査官が経営者の経営能力をジャッジする際の判断材料の一つです。

飲食店を開業するという決断に至るまでの経緯、またそこにある信念や理念などを自分の言葉で、説得力や明確性を意識して、簡潔に伝えることが求められます。

2. 経営者の略歴等

同じ飲食業界での勤務経験は審査の上でとても重視されます。

就いていた役職やその時の待遇、実績や取得資格など、できるだけ具体的な情報を記載し自身の能力をアピールすることを心がけましょう。

3. 取扱商品・サービス

開業するお店のコンセプトを明確にし、審査官が「どんな魅力をもったお店なのか」をイメージしやすいように伝えることがポイントです。

4. 必要な資金と調達方法

「必要な資金」とは、開業するために必要な「設備資金」と開業後に必要な「運転資金」の2つの総称です。

設備資金については2社以上の業者に見積もりを依頼し添付する必要があります。

5. 事業の見通し

「事業の見通し」は、返済能力を見極めるために基準とされるとても重要な項目です。

融資審査官との面談では、間違いなく、この事業の見通しの内容について具体的な説明を求められることになります。

しっかりとした裏付けを持ち、信ぴょう性の高い金額を提示できるように思案しましょう。

 

融資成功のコツ(番外):家族からの出資で自己資金を増やそう

先述の通り、融資を受けるには一定条件以上の自己資金を持っている必要があります。

しかし、その条件を満たせていない人でもある手段を用いれば、その壁を乗り越えることが可能になります。

日本政策金融公庫による審査では、血縁・親族からの返済義務のない「出資」であれば、高い確率でそれを自己資産として認めてもらうことができます。

また、グレーなゾーンではありますが、返済期間未定の「出世払い」という借入れも自己資金と認めてもらえるケースもあるようです。

家族からの資金サポートはその額が大きいほど、資金自体によるサポートはもちろん、公的融資からの借入れを後押しするという副次的効果も期待できる、ということを覚えておきましょう。



自治体の制度融資で資金調達する手順

自治体の制度融資は、金融機関と保証協会と自治体がひとつとなって、起業家に融資をしてくれます。

安定と信用、飲食店を開店した場合のメリット(自治体イベントの参加の可能性など)もあります。

しかし自治体の制度融資は、日本政策金融金庫に比べると融資実行までの期間が長いのが特徴です。

そして自治体の制度融資の大半は、自己資金割合が50%とかなり高い割合を求めています。

手順

1. 地方自治体の窓口で融資の相談をします。

自治体により概要や条件が異なることがあるので、説明を受けましょう。

2. 専門の窓口にて、融資申請の申し込み。

3.自治体から紹介された中小企業診断士と何度も面談があります。

4. 面談に合格すると「あっせん書(紹介書)」をもらえます。

5. その「あっせん書」と事業計画書、必要書類を持って、指定の金融機関にて融資の申し込みをします。

(この時に、保証協会の審査もはじまります)

開業に失敗しないために準備すべき資金の総額

準備すべきは「開業資金」と「運転資金」

資金調達は、必要となる資金を正確に把握することから始まります。

そして飲食店を開業する際には、大きく分けて「開業資金」と「運転資金」の2つが必要と言われています。

この章ではこの2つの資金について解説します。

業態別の開業資金目安

開業資金とは、その名の通りお店を開業するための資金のこと。

開業する飲食店のコンセプトや店舗の立地・面積など、さまざまな要因によってそれは大きく変動しますが、業態別に見たときの相場はおおよそ以下のようになるでしょう。

  • バー:500~1,000万円
  • ラーメン店:1,000万円
  • カフェ:1,500万円
  • 居酒屋:2,000~4,000万円
  • レストラン:3,000~5,000万円

 

開業資金の内訳

開業資金の内訳の中で、最も大きな割合を占めるのは「不動産取得費」と「設備投資資金」です。

この2つの費用を大本とし、そこにその他諸経費を肉づけしたものが、開業までにかかる投資コストの総額となります。

内訳の目安は以下の通りです。

スケルトン物件の場合

  • 物件取得費用(賃料の9~12ヶ月分)
  • 内装工事費用(坪あたり50~80万円)
  • 食材仕入れ費(初期仕入は想定売上高の30~40%)
  • 開業諸経費(50~200万円)
  • 設備費、什器費、備品費、消耗品費など

居抜き物件の場合

  • 造作代金(50~300万円)
  • 内装工事費用(坪あたり5~50万円)
  • 食材仕入れ費(初期仕入は想定売上高の30~40%)
  • 開業諸経費(50~200万円)
  • 造作譲渡代金、手数料など

 

運転資金について

次に運転資金。

これは人件費や仕入れ費用など、お店を運転するために必要となる資金のことを意味します。

ほとんどの飲食店は、オープンから経営が軌道に乗るまでに3~6ヶ月がかかり、その間は赤字経営を余儀なくされることとなります。

運転資金は以下のような計算でざっくり導くことが可能です。

運転資金 =(仕入れ代金+人件費+家賃+光熱水道比) × 3~6ヶ月分

上記の計算をすることが難しいようであれば、売上高から逆算して計算することもできます。その場合は、

運転資金 =( 売上高 ー(売上高×営業利益率/100)) × 3~6ヶ月分

上記の計算で大まかな値をだせます。

売上高300万円、営業利益率20%と仮定すると、(3,000,000 - (3,000,000×20/100)×3=7,200,000

1月で240万円、3ヶ月で約720万円ほどの運転資金が必要になることが見積もることができます。

運転資金はその数ヶ月を乗り越えるために欠かせない、最も重要な資金の一つです。

予算立ての際には、数ヶ月分の運転資金についてもしっかりと検討を行いましょう。

いくら調達すべきか?

調達が必要とされる資金の総額は「必要資金の総額(開業資金+運転資金)」から「自己資金」を差し引いて算出することができます。

調達が必要な資金の総額 = 必要資金の総額(開業資金+運転資金)ー 自己資金

例)ラーメン屋を開業するとして、月の売上高180万円、営業利益率20%、自己資金500万円と仮定

  • 開業資金:1,000万円
  • 運転資金:144万円×3ヶ月=432万円
  • 自己資金:500万円

 → (1,000+432)-500=932万円

上記の仮定では932万円の資金調達が必要という結果がでました。

しかし、ここで注意すべきポイントがあります。それは、自身が保有している資金全てを上記の「自己資金」に当てはめるのは現実的ではない、ということです。

自身の生活のことも踏まえ、保有している資金からいくらぐらいを開業資金に使うことができるのかを慎重に考える必要があります。

前述の運転資金同様、新しいお店が利益をあげることができるようになるまでの半年から1年分の生活費を忘れずに確保するようにしましょう。

また、「どこからいくら借りるのか」を検討する際にも注意が必要です。

これに関しては、だいたい第3案くらいまでは考えておくことをお勧めします。

なぜなら、実際に融資される資金額は申請時の金額から減額される可能性もあるからです。

あらゆるケースに備えて、多角的な視点でプランニングを行いましょう。

まとめ

資金調達をいかに円滑に進めることができるか、それは念入りなプランニングと情報収集に尽きると言っても過言ではないでしょう。

準備を始めるのに早すぎるということはありません。

各機関への問い合わせはもちろん、無料アドバイスを提供している飲食店開業の専門家に、まずは話を聞いてみるというのも有力な選択肢です。

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