クレープ、焼きそば、お弁当などさまざまな商品を販売できるのが魅力的な移動販売。最近は副業を検討している方や新規ビジネスを始めたい夫婦などの間でも注目度が高まっています。
移動販売はその他のビジネスと比較すると、開業までの道のりは決して遠いものではありません。しかし、成功させるにはさまざまな工夫や対策が必要になるのも事実です。
何も考えずに行き当たりばったりで開業してしまうと、1年を待たずして廃業という可能性もあります。今回はこれから移動販売ビジネスを始めたいという方に向けて、移動販売を成功させるコツや開業までの流れなどを徹底解説します。
このページの目次
移動販売は一般的な飲食店と比較すると開業資金を抑えられる可能性が高いため、近年このカテゴリで開業を目指す方も増加傾向にあります。
しかし、残念なことに移動販売を開業しても思ったような売上げが得られずに廃業、撤退をしていく方たちが数多くいるのも事実です。
移動販売の開業で失敗する理由はひとつに絞ることはできません。商品メニュー、移動販売車の仕様、販売場所など移動販売が失敗する原因は多岐に渡ります。
その中で移動販売が失敗する最も大きな理由として挙げられるのは「事前の準備や計画不足」です。
前述のように移動販売は通常の飲食店と比べると開業コストを抑えることが可能ですが、事前準備や計画などをおろそかにして成功するほど甘いビジネスではありません。
そのため、これから移動販売の開業を検討している方は後述する移動販売の基礎知識やオープンまでの流れなどをしっかりと把握しておくようにしましょう。
ここからは移動販売の開業で失敗しないための知識や基本情報をひとつずつチェックしていきましょう。移動販売を開業するには資格、許可、資金などさまざまなチェック項目がありますので手続きを進める際の参考にしてください。
移動販売と聞くと一般的にはパンやクレープなどの食品をイメージしますが、もちろんその他のカテゴリの商品を販売してもまったく問題はありません。
最近は食品以外にもアクセサリーや一般的な店舗では手に入らない海外からの輸入雑貨を取り扱う移動販売車もよく見かけます。
移動販売ではさまざまなものを販売できますが、一般的にはパンやクレープなどの食品関連が中心です。移動販売で食品を提供するときは、「食品衛生責任者」の資格を取得する必要があります。
これは後述する営業許可申請の際に必要な資格です。食品衛生責任者は調理師や栄養士の資格保持者であれば申請後、すぐに取得することができます。
また、無資格の方も保健所が実施する食品衛生責任者講習会に参加することで取得が可能です。この講習会は1日(約6時間)で完了するものですので、食品衛生責任者の資格を取得すること自体は難しいものではありません。
なお、食品の移動販売を行っているからといって必ずしも食品衛生責任者の資格が必要になるとは限りません。移動販売で食品衛生責任者の資格が必要になるのは食品をキッチンカー内で調理、販売する場合のみです(食肉、鮮魚、牛乳類は除く)。
野菜、果物、菓子類、ジュース類などを販売する場合には食品衛生責任者の資格は不要です(※ただし一度調理された食品を加熱し、温め直す行為や缶などの容器からジュースをコップに注ぐ行為、包装されていない食品の販売などを行う場合は資格が必要)。
また、移動販売で人気の焼きいもは車内で加熱行為を行っていますが、農産物(トウモロコシなど)を加熱した簡易的な加工は食品衛生法上許可を取得する必要がないため、食品衛生責任者の資格も不要です。
その他、保健所の許可施設で製造されたパンを移動販売車で販売するケースなども改めて許可を取得する必要はありません。食品衛生責任者の資格に関する疑問がある方は、開業する地域の保健所に確認してください。
移動販売で必要になる主な許可、届け出は以下のとおりです。
移動販売で必要な主な許可・届け出 | 内容 |
営業許可 | 移動販売車内で調理、加工、販売を行う場合に必要 |
道路使用許可 | 道路、路上で営業をする場合に必要な許可(※許可を取得するのは難易度が高い) |
公園内営業許可 | 公園内で営業を行う場合に必要 |
移動販売で必須に近い許可、届け出は営業許可です。営業許可は調理製造を行う施設(移動販売車)に付与される許可証であり、各地域の保健所の基準を満たすことで営業を行うことが可能になります。
営業許可は販売メニューによって以下の3つに分類されています。
営業許可証の種類 | 販売できる主なメニュー |
飲食店営業許可証 | ホットドッグ・ハンバーガー・焼きそば・たこ焼きなど |
菓子製造業営業許可証 | メロンパン・クレープ・カステラなど |
喫茶店営業許可証 | 紅茶やコーヒーなどの飲料、かき氷・アイスクリームなど |
販売するメニューによって取得する許可証も異なりますので注意が必要です。一例を出すとホットドッグとクレープを販売する場合は、飲食店営業許可証と菓子製造業営業許可証を取得する必要があります。
移動販売車内で調理を伴う営業を行う場合は食品営業自動車、車内で販売のみ行う場合は食品移動自動車に分類されます。
移動販売用に車内を改造すると「道路運送車両法」と呼ばれる法律が適用され、自動車検査法人で構造変更の検査を受けたのち、8ナンバーの交付を受ける必要があります。
道路使用許可についてですが、路上での営業は「道路交通法」「道路法」の法律が適用されますので、許可を取得するための申請が必要です。
もっともこの道路使用許可はお祭りなど地域ぐるみのイベントや行事の際に許可されることが多く、個人での許可が下りることは非常に稀です。
公園内で営業を行う場合も「都市公園法」という法律が適用されるため、申請が必要です。各許可証の申請先は以下のようになります。
許可・届け出 | 申請先 |
営業許可 | 出店を希望するエリアを管轄する保健所 |
道路使用許可 | 道路を管轄する警察署 |
公園内営業許可 | 公園を管轄する地方公共団体や国土交通省 |
移動販売の開業形態、営業形態は主に2つ。ひとつは自力での開業、もうひとつはフランチャイズの利用です。
自力での移動販売は開業までに多くの知識を身に付けたり、さまざまな手続きを自分で行ったりしなければなりませんが、一度軌道にのれば利益はすべて自分のものになるのが大きな魅力です。
一方のフランチャイズは本部にロイヤリティーなどを支払わなければならないのがネックですが、移動販売の知識を持ったプロからマンツーマンの指導を受けられるため、スムーズに営業のノウハウを学べるのが大きなメリットです。
自力での開業、フランチャイズでの開業ともにメリットとデメリットがあるため、自身の理想や希望に近い営業ができる形態を選択することが重要です。
移動販売の開業資金は販売するメニューや仕入先などにより異なりますが、概ね250万円~500万円ほどだといわれています。
店舗型のカフェ開業費用が約1,000万円(規模により異なる)といわれていますので、やはり移動販売は資金力に乏しい個人でも比較的開業しやすいジャンルといえるでしょう。
開業後は営業に必要な経費がかかります。移動販売でかかる主な経費には以下のようなものがあります。
・交通費
・包装資材など
・チラシやホームページの作成、維持費用
・消耗品(調理備品、店舗[移動販売車]装飾品、文具など)
・光熱費(水道、電気、ガス)
・車両維持費
・通信費
・出店料
各経費にかかる比率は概ね売上げの0.5%~5%ほどが相場となります。利益を確実に残すには、これら必要経費の金額もしっかりと把握しておく必要があります。
移動販売の開業資金は少なく済むといっても一個人の方が一括で250万円~500万円を用意するのは並大抵のことではありません。
仮に移動販売の開業資金を準備するのが難しい場合は、融資や助成金を利用する方法もあります。
開業資金を融資してもらう金融機関で最も有名なのは日本政策金融公庫です。日本政策金融公庫はその他金融機関と比較すると、融資を受けやすいという特徴があります。
自己資金割合は1/10となるため、500万円の開業資金が必要な場合は50万円を用意すれば融資を受けることができます。開業資金で困っている方はチェックしてみましょう。
また、国や地方自治体の助成金制度、補助金制度を活用する方法もおすすめです。
助成金や補助金制度を受けるには厳正な審査がありますが、支給が決定したあとは返済義務が生じないのが大きな魅力です。
ただし規約違反を犯した場合などには、返金を要求される可能性もありますので注意が必要です。
移動販売開業で主に準備しておくもの、用意しておくものは以下のとおりです。
・移動販売車
・営業場所の確保
・食材や調理器具
・販促物
・仕込み場所の確保
・プロパンガスの調達
移動販売で意外とおろそかになりがちなのは仕込み場所の確保です。仕込みとは調理の下準備のことであり、具体的には「混ぜる」「切る」などの行為を指します。
仕込み場所については食の安全を確保するためにも保健所が一定の基準を設けているのが一般的です。移動販売車とは別の場所で仕込みを行う場合は、仕込み場所の営業許可も取得しておく必要がありますのでしっかりと覚えておきましょう。
移動販売の基本的な知識を習得したら、次は実際に開業するまでの流れを見ていきましょう。ここでは11のステップに分けて、移動販売開業の流れを解説します。
まず移動販売を行う目的を明確にしておく必要があります。具体的には販売する商品やメニューの決定など、事業コンセプトの作成です。
この段階で事業計画書を作成しておけば、資金調達もスムーズに進む可能性が高いです。今後の手続きや許可申請を早く終わらせるためにも、しっかりとした計画を立てておきましょう。
事業計画の作成で開業に必要な資材や設備が把握できるため、これによって開業に必要な資金額も明確になります。融資や助成金、補助金制度を活用しながら資金調達の手続きを進めていきましょう。
資金調達が完了したら次は保健所への相談、問い合わせです。出店を希望するエリアを管轄する保健所に営業許可取得に関する詳細を問い合わせてください。
申請の前に保健所に問い合わせや相談をしておけば営業許可取得に必要な条件(移動販売車の構造や仕様など)を把握できるため、移動販売車制作時、購入時の失敗をなくすことができます。
移動販売車は自分で購入した車を改造、もしくはレンタルの方法などで確保することになります。
一口に移動販売車といっても構造や使い勝手などは異なりますので、制作時は慎重に作業を進めていくことを強くおすすめします。制作会社の担当者との入念な打ち合わせが重要です。
移動販売の大きなカギを握る販売商品を決定します。最初に決めた事業コンセプトの内容に合致した商品、ターゲット層に合った商品を選定することが重要になってきます。
営業に必要な食材や道具の仕入れも移動販売では重要な作業です。特に食材に関しては同じものでも仕入れ業者によって品質や味が異なることが多いです。
仕入れ価格を抑えるために品質が伴わない業者と契約を結ぶと、お客様の満足度も低くなる可能性があります。そのため、仕入先については複数の業者をお試しで利用してみることも検討しておきましょう。
営業場所の開拓も売上に直結する重要な項目です。人が多く集まる場所、お客様の財布の紐が緩む場所などを開拓できると成功率もグンと高めることができます。
移動販売の主な営業場所にはスーパー、催事、商業施設の駐車場、ビジネス街のビルの駐車場などがあります。また、営業エリアで大規模なイベントが開催されるときは売上アップのチャンスですので主催者などに問い合わせてみましょう。
移動販売車の制作は1~2ヶ月かかることも珍しくないため、この期間を使って広告、チラシ、ホームページなどの宣伝ツールも作成しましょう。
お店の基本的な宣伝ツールとなるホームページは資金に余裕があれば専門業者に依頼してもよいですが、余裕がない場合はブログやSNSを自身で運営しても構いません(将来的には専門業者への依頼も検討しておく)。
また移動販売は実店舗の一角で営業をすることも多いため、販売エリアの店舗にチラシを置いてもらう方法も有効です。
移動販売車が完成したら車両を保健所に搬入し、許可取得の申請を行います。また、この申請の際に食品衛生責任者の資格を持っていない方は講習会受講の案内も同時に受けることになります(※各地域の保健所によって異なる可能性あり)。
移動販売で最低限加入しておきたい保険は「自動車保険」と「PL保険」です。移動販売は車を長時間運転することが多いですので、自動車に対する保険加入はほぼ必須です。
また、2つ目のPL保険は生産物賠償責任保険とも呼ばれており、自らが提供したメニューによってお客様に損害を与えてしまったときのための保険(例:食中毒など)となります。
PL保険は移動販売では特に推奨されることが多い保険ですので、安心、安全な営業を希望するなら加入しておいたほうがよいでしょう。
すべての手続き、準備が完了したらいよいよオープンです。移動販売が初めての方は手探り状態からのスタートですが、1日ごとに売れる商品や売れない商品、売上げがアップする曜日などが見えてきますので根気強く継続していきましょう。
課題が見えてきたら対策、対処法を考え、改善に向けて動くというビジネスの基本は忘れてはいけません。
移動販売の基礎を知っていても失敗する人は失敗します。それは失敗の原因をいくつも作ったまま営業を行うからです。
移動販売にはその他のビジネスと同様、失敗しないためのコツなどがあります。ここでは移動販売の開業、営業で失敗しないための主なコツなどを6つ解説します。
移動販売で失敗する方のメニューを見ると「その商品は誰に対してアプローチをかけているの?」といった疑問を抱くケースが多々あります。
一例ですが主に若い女性に人気のクレープを高齢者施設で販売しても爆発的に売れることは考えづらいです。移動販売を成功させるにはターゲット層に合わせた商品メニューの開発、営業場所の確保が必要不可欠です。
具体的にはオフィス街で営業を行うならコーヒー、サンドイッチをメニューに加えることで、朝食やランチを求めているビジネスマン、OLにアプローチをかけることができます。ターゲット層、営業場所、商品メニューの相性を考慮した戦略を立てることが大切です。
移動販売は許可や資格を取得していれば販売場所は自由に選べるのが魅力的ですが、あえて1ヶ所に絞った営業を行うのもおすすめです。
たとえばですが毎日同じ場所、同じ時間にキッチンカーが止まっていると、「今日もあのお店で朝食を買えばいいや」など、固定のお客様がつく可能性が高くなります。
もちろんさらに売上アップが見込める場所を開拓できれば移動すべきですが、複数の営業場所で軌道に乗らない場合は1ヵ所に絞って販売を行うことも検討しておきましょう。
順調に売上げを伸ばしても思ったような利益が残せない場合は、原価率の見直しを行ってみましょう。移動販売では商材によって多少の誤差はありますが、原価率は30%以下が一般的、理想といわれています。
原価率の失敗でよく聞かれるのが高級食材や希少価値が高いものを仕入れて原価を抑えることができなかったというものです。販売力を高めるのはとてもよいことですが、原価率が高いままだと薄利多売の営業を永遠に余儀なくされる可能性があります。
お店のコンセプトなどの関係でどうしても原価率が30%以上になる場合は、販売価格を上げることも検討しておきましょう。もちろん販売価格もお客様が購入できるラインに設定しておくことが大切です。
移動販売でお客様が何分、何十分も待たされるのは売上低迷の原因になります。また、1日の目標販売個数を立てても1注文にかかる提供時間が長ければ当初の予定の個数を作れないといった状況も招くでしょう。
特に作り置きが難しいメニューを多く持つ場合は、いかにして提供時間の短縮を実現するかがポイントです。質を落とさずに提供時間を短縮する方法もしっかりと考えておきましょう。
「新規の営業場所開拓が上手くいかない…」と悩む方は、企画書を作成し、もう一度トライしてみましょう。
営業場所の開拓は家主、地主、スペース所有者の方と行うことになりますが、口頭だとどうしても伝えきれない部分が出てくるため、結果的に相手も首を縦に振らなくなりがちです。
土地を貸す側の不安は自身および近隣住民に迷惑がかかることですので、企画書や計画書には「ゴミはしっかり持ち帰ります」「万が一のために消化器を用意しています」などの内容を記載しておくとよいでしょう。もちろん保健所の許可を得ていることも伝えておくべきです。
また、移動販売のメリットを記載しておくと貸す側の考えも変わってくることがあります(例:近隣住民の方にも喜ばれるメニューを提供できる、お酒も扱っているのでみんなで盛り上がることができるなど)。
移動販売を長く続けていくなら目標とする売上、利益、販売個数を明確にしておきましょう。売上、利益、販売数の目標を立てておかないと、行き当たりばったりの運営になってしまい、最悪の場合は廃業の可能性も出てくるためです。
1個販売すると残る利益を計算し、そこから1日、1ヵ月に必要な目標売上、利益、販売数を立ててみましょう。一例ですが1ヵ月に利益50万円を手元に残したい場合は、原価や必要経費を差し引いた上で50万円を残す必要があります。
総売上の中で原価や必要経費の割合を計算しなければならないのは多少面倒ですが、この作業を怠ると売上は好調なのに手元に残るお金がほとんどないという状況を招きます。
原価や必要経費の割合はざっくりでも構いませんので、必ず算出し、その上で目標売上、利益、販売数を設定するようにしてください。
移動販売は開業資金が比較的少なく済むのが魅力的ですが、成功させるには事前の準備や計画が非常に重要です。
移動販売に関する基礎知識、開業までの流れ、失敗しないためのコツなどを学び多くの人に愛されるお店を目指していきましょう。現在、移動販売の開業を検討している方はぜひ参考にしてください。
画像出典元:Pixabay
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