起業や事業拡大を考えるとき、自己資金でカバー出来ない場合には資金調達を行う必要があります。
本記事では、その方法の1つ「出資」のメリット・デメリットを解説していきます。
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ベンチャーキャピタルや個人投資家が事業の成功や成長を期待してお金を出すことです。
もらった資金は原則的には返済の必要がなく自由に使うことができますが、投資家に経営権(株式)の一部を渡す必要があります。また利益が出た際に配当金として還元する必要性も出てきます。
なお、ベンチャーキャピタル(VC)とは投資家から資金を集め、有望なベンチャー企業に投資をする金融機関のことです。
融資の場合、審査と契約状況によって条件は異なってきますが、毎年 数%~10%程度の利息が発生します。利息が悪影響を及ぼし、黒字企業でも赤字に転落するという事例もあります。
しかし、出資金には基本的に利息がかからないので、そのような心配はいりません。出費を抑えられるという点で、利息がかからないのは大きなメリットです。
出資は返済不要の資金なので、融資を受ける場合に発生する 利子・返済時期・返済額を気にする必要がありません。返済の資金を用意する必要がありませんので 資金繰りが安定しますし、連帯保証人になる必要もありません。
つまり、出資のほうが経営者個人のリスクは融資に比べて小さくなり、経営者は利益を出すことだけに尽力することができるというわけです。
返済不要のお金は世の中にほとんどありません。そんな中、事業を評価され出資を受けられるということはとても恵まれたことですし、それだけ応援されているということなんです。
出資を受けられることになった場合は、投資家の期待を裏切らないよう、全力で事業に取り組みましょう!
自己資金を投入する場合、資金の量に限界があるというデメリットがあります。しかし他の企業や投資家から出資をしてもらう場合、将来大きく成長することが期待されていれば、会社の実態にそぐわずとも巨額の資金を集めることもできます。
近年、公的機関は以前に比べると積極的に中小企業への投資を行っているという傾向にあります。 1年間の起業件数は5万件ほどありますが、その中でも2%の企業しかベンチャーキャピタルから投資を受けることはできていません。
投資を受けるというのは起業した中でも一握りの存在といえます。
数あるベンチャー企業の中から選ばれて出資を受けるために、革新的な技術や事業アイデアなど、他の企業と有意な差別化を図って「将来性」をアピールしていきましょう。
出資を行ってもらうことで、アクセルを踏んだ経営が可能になるということも大きなメリットです。
例えば、企業のサービスを広く認知してもらうために、広告宣伝費にお金をかけることもできます。
効果的な広告宣伝を行った企業として、情報キュレーションサービス・ニュース配信アプリを運営している株式会社Gunosyの例が挙げられます。
誰もが一度は目にしたことがあるであろう「グノシー」や「ニュースパス」のCM。実は Gunosy社は 上場前に沢山の出資を受けて広告宣伝費にお金をかけることが出来たため、一気に会員数を増やしてサービスを拡大させることが出来たのです。
Gunosy社のように投資金を効果的に利用できれば企業の規模を一気に拡大させるチャンスとなります。
さらなる事業拡大のために再び資金調達が必要になった時、出資者から適切な投資家・幹部人材・顧客を紹介してもらえる、企業のPRをしてもらえるなどのビジネス援助が期待できます。
ビジネス的な知見やノウハウを持つ方がいれば、創業期の悩みや問題点などを解決するためにも多方面から貴重なアドバイスをもらうこともできます。このような強力な助っ人で固められたベンチャー企業は強く、どんどん成長していきます。
目先のお金を集めることだけを考えてしまいがちですが、出資者からの豊富な経験を享受できるというのも、出資のとても大きなメリットです。
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出資を受けている個人や企業は 投資家に対して経営権(株式)の一部を渡す必要があり、経営者が自由に企業を運営できなくなるというリスクが生じます。
では、会社の「経営権」とは何を指しているのでしょうか?
具体的には「取締役の選任権、解任権、定款(会社のルール)の変更等の決議において株主総会で議決権を行使する権利」のことを指します。
つまり株式会社の経営者・定款の決定に株主も関与することができるので、経営者は株主の影響力を無視することができないというわけです。
「株式会社においては経営者よりも株主の方が強い立場にある」という構図が成り立つのにはこのことが大きく関係しています。
さらに投資家は「会社の利益の配当を、株式比率に応じて受け取ることができる権利」や「会社を売却や清算をした際、比率に応じて売却額や清算金を受け取ることができる権利」も保有しています。
融資のように資金の返済をする必要はありませんが、投資家に対して利益や売却金等を分配しなければならないということです。
上記のように出資をしてもらう場合、投資家に対して株式数に応じた経営権を与えることになります。
会社の経営権は特殊な株式を発行していない限りは出資比率で決まっています。
例えば、経営者と投資家の出資比率がそれぞれ90%と10%になった場合、会社法上は会社の90%は経営者のもので10%はその投資家のものになります。
そのため、企業側より多い株式数を持つ投資家がいる場合は、経営者に代わって投資家が経営の実権を握るということも起こりうるのです。
外部の出資比率が50%を超えた場合には、定款に別途定めが無い限り取締役を解任できる権利が生じるので、最悪の場合、経営者の立場を失ってしまうというリスクが出てきてしまいます。
また、投資家と起業家との間に締結された契約によっては事前承認条項が盛り込まれていることもあります。その内容の確認を怠ってしまうと経営者が自由に経営を行うことが出来ないという事態も起こりえます。
ファンドとは、金融機関・個人投資家・機関投資家から集めた資金を起業家に投資をして、満期時に利益をつけて資金を返す仕組みのことです。そのためファンドを組成して投資をしている投資家(主にVC)の場合、ファンドの償還期限が存在しています。
償還期限が到来した際にファンドを運営する投資家は、資金の出元である金融機関・個人投資家・機関投資家にお金を返す必要があり、株式のまま保有している訳にはいきません。
そのため、ファンドで保有している当該企業の株式を発行会社・経営陣・第三者などに売却し、資金を回収する必要があります。
以下は、このファンドの償還期限が原因で事業を閉めることになった事例です。
Aさんが取り組むのは、事業の立ち上げに時間のかかるヘルスケア系の領域。
5年ほどかけて足場を固め、そろそろ事業拡大していくぞ!となっていたところ、急にとある投資家から「ファンドの償還期限が迫っており、IPOできないのであれば事業売却するか、株式の買取先を見つけてほしい(=お金を回収したい)」と言われてしまいました。
その後は株式買取の資金をつくるための事業に注力し、元本分を返済。消耗したAさんは事業を閉めてしまいました。
ファンドからの投資を受けるのであれば、そのファンドの償還期限までにIPOまたはM&Aといったエグジットの実現を求められているということを理解しましょう。
最初から元本分の買い取りのことに言及してくる投資家には注意をしたほうがいいですが、場合によっては株式の買い取りを求められる可能性もあるということは念頭に置きましょう。
有価証券の発行過程・流通市場における「不公正な取引(不公正ファイナンス)」を防ぐために、上場の際には反社会的勢力・反市場勢力との関与がないか厳しい審査が行われます。具体的には「反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」の提出が求められます。
役員・役員に準ずる者・重要な子会社の役員・株主上位50名・主な仕入先及び販売先について記載が必要です。
仮に審査で反社会的勢力・反市場主義勢力との関係が確認された場合、その実態が株主や投資者の信頼を著しく毀損したと認められると 上場が廃止されてしまいます。そうした組織と関与することで会社の社会的生命を絶たれてしまうことも考えられます。
いざ上場申請をしようと思っている矢先にそのようなことが起きてしまったら…。今までの努力が水の泡になってしまいます。
では このような状況を未然に防ぐにはどうしたらよいのでしょうか? 以降ではこのような状況を防ぐためにはどうしたら良いのか解説していきます。
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まず「リファレンスを怠った」「周囲から投資者に関する評判を聞いていない」という事が一番に考えられます。金融会社・証券会社のチェックを通らない人が 出資者リストに名を連ねていることもあり得るので、安心しきってしまってはいけません。
場合によっては「投資を受けたのちに投資家が反社会的勢力になってしまう」という事も起こりうります。これだけは避けられない状況ですが、複数人にリファレンスを行ったうえで「この人なら信頼できる!」と思える人物を判断しましょう。決して実績だけで判断してはいけません。
反社から出資を受けないために、反社を見抜くための方法を紹介します。
2010年より、証券市場から暴力団や関連企業を排除する取り組みの一環として、警察庁は反社会勢力に属する人物のデータを証券会社や銀行・保険会社に共有するようになりました。これらの機関に依頼をして情報を得ましょう。
信頼度が高く、これがベストな方法であると言えます。
Google・日経テレコンで出資者の名前とネガティブワードを入れて検索し、過去の情報を調査しましょう。
「RISK EYES」のように、過去の新聞・Web記事などの公知情報から取引先に関する情報を一括検索できるスクリーニングサービスもあります。
ただし、日経テレコンは個人情報保護のために過去の犯罪者の逮捕記事の名前はAやBとなって消されていることがあるのでヒットしない可能性もあります。
また人物によっては、名前を一文字変えるなど偽名を使っており、検索に引っかからない場合もあるので検索の際は注意が必要です。
出資者とつながりのある人から聞き込みを行いましょう。プライバシー権の侵害として個人情報保護法に違反してしまうという場合もあり得ますので、そのことを念頭においたうえで調査をしましょう。
アレンジャーとは資金調達者と投資家の間を取り持つ金融仲介者のことです。「新会社を使ってカモフラージュする」「役員を送り込む」「業務提携候補先や出資者を紹介する」といった方法で企業に接近してくるようです。
反社会勢力や反市場主義勢力に協力することで 会社側も刑事責任を問われたり、会社の運営が難しくなってしまいます。安易に信頼しない・上手い話には簡単に乗らないよう心掛けましょう。
出資を受けてしまった場合には、以下のような対応をとりましょう。
弁護士に相談を行い、出資者から株式を買い取りましょう。
企業の合併買収を行うことで企業の存続が実現可能になります。事業を継続することで、従業員の雇用が守られるという点でも大きなメリットがあるといえます。
ただし、吸収合併の場合は買手オーナー側に経営権を握られてしまうので、自由に経営を行うことが出来なくなってしまいます。
弁護士に相談をしたり、M&Aを進めるためにアドバイザーを雇用するにもそれなりの費用がかかってしまいます。金銭的に問題がある場合は、残念ですが上場を諦めるしか方法はありません。
ここまで出資のメリット・デメリットについて考察してきましたが、以降では出資以外の資金調達方法を紹介します。
金融機関や他人からお金を貸してもらう方法です。融資は必ず返済する必要のあるお金であるため、返済力(信用力)に応じて借りることができるお金の額が決まります。
経営権(株式)を渡す必要がないので、会社の経営権を握られたり、自由な経営が出来なくなるという心配もいりません。返済力(信用力)を積み上げることができていれば、より大きなお金を集めることが可能になります。
融資は金利負担が発生します。また借りるには基本的に個人保証が必要になってきます。
国や地方自治体等から支払われる、返済不要のお金です。申請しても必ずもらえる訳ではなく、お金を使った後からもらえる「後払い」形式という特徴があります。
融資と同様に経営権(株式)を渡す必要が無く、返済も不要です。創業する前後で申請が可能になります。
原則お金は後払いとなるため、それまでの運転資金は自ら確保する必要があります。金額が少額なわりに手続きが煩雑・条件が多いという面も。
ここまで出資のメリット・デメリットについて解説してきました。
融資は元本の返済や利子を支払う必要がありますが、出資の場合は不要なので出資のほうが資金繰り的には楽だと言えます。更に銀行からの融資が不可能な状況にある場合にも、出資は資金調達手段として有用です。
ただし 経営権の一部を投資家に譲渡しなければならないため、自由な経営を行うことが出来なかったり、最悪の場合 経営権を外部にはく奪されてしまうというリスクも考えられます。
これらのことや、他の資金調達方法(融資、補助金等)を考慮したうえで最適な資金調達方法を選択しましょう。
以下の記事では資金調達の方法と、それぞれのメリット・デメリットを網羅的にまとめています。
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現在、登録済のベンチャー企業は2,600社以上、投資家数は900名以上にのぼります。
画像出典元:pxhere
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