【必見】繰延資産とは?会社法と税法の違いや節税対策を簡単解説!

【必見】繰延資産とは?会社法と税法の違いや節税対策を簡単解説!

記事更新日: 2023/09/20

執筆: 編集部

繰延資産とは、本来は支払った時に落とす「経費」を、「その支払いの効果が今だけでなく、将来に渡って続くモノ」であるため、いったん資産計上しなければならないというものです。

また、会社法と税法とで繰延資産となる対象が異なりますので、ややこしく思うことも多いのではないでしょうか。

そこで今回は、節税対策にも活用できる繰延資産について簡単に解説します。

繰延資産とは形式上の資産

「繰延資産」というのは、経理に携わっている方でもあまり馴染みのない勘定科目です。

会社が支払った経費は、支払った時に「経費」として落とすのが原則ですが、例外として将来の経費を前払いした場合には「前払費用」として資産計上しますし、固定資産を購入した場合には金額に応じて「固定資産」という勘定科目で処理したりします。

今回解説する「繰延資産」も、支払った時に落とす「経費」ではあるのですが、

「支払いの効果が今だけでなく、将来に渡り続くモノ」であるため、いったん資産計上しなければなりません。

「支払いの効果が将来に渡り続く」ということをイメージするために次の例示を見てみましょう。

例示

5年間使えるものを当期100万円で購入

1. 支払った100万円を全額当期の経費とした場合

1年目「100万円」 2年目「0円」 3年目「0円」 4年目「0円」 5年目「0円」

ということになります。

2. 5年で均等に経費とした場合

1年目「20万円」 2年目「20万円」 3年目「20万円」 4年目「20万円」 5年目「20万円」

合理的に考えるならば、②の方が実態をより正しく反映させていますよね。

経理処理や決算書作成のルールを定めているのが「会社法」、税金の計算をするためのルールを定めているのが「税法」ですが、どちらの法律も会社に求めているのは「適正な期間損益の計算をする」ということです。

1. のように、全額経費にしてしまうことで支出の恩恵を受ける2年目以降の経費が全く計上されず、結果、いびつな決算書となってしまいます。

これを制限するために、会社法も税法も、ある特定の支払いについて「いったん資産として計上した後に、期間に応じて少しずつ経費に落としてください」というルールを定めています。

それが「前払費用」「固定資産」「繰延資産」といった科目なのです。

そういう意味では、「繰延資産」は土地や車といったような固定資産と似ていますが、固定資産が目に見えるモノとして実際に存在するのに対して、繰延資産は「目に見えないモノ」「実体がないもの」であるのがほとんどです。

つまり繰延資産とは、形式上の資産であると理解すれば分かりやすいと思います。

繰延資産の種類

繰延資産のややこしいところは、どのような支出が該当するのか?という区分の難しさがあります。

会社法と税法とで繰延資産となる対象が異なります。

会社法上の繰延資産

科目 内容 償却期間
創立費 会社設立に要した費用 5年
開業費 設立後、事業を開始るまでに要した費用 5年
開発費 新技術や新市場開拓に要した費用 5年
株式交付費 新株発行等に要した費用 3年
社債発行費 社債を発行するために要した費用 社債の償還期限内

 

税法上の繰延資産

こちらは該当するものが沢山有りますので、代表的なものをいくつか列挙します。

  • 公共的・共同的施設の設置等に要した費用
  • セミナーなどに行き、ノウハウを得る為に要した費用
  • 建物など賃貸した時に支払った権利金や礼金
  • フランチャイズの加盟料

ノウハウや加盟料など、一見資産にはみえないものでも、ノウハウはそれを生かして将来的に収入を増やすといった恩恵を受けることができるものであり、加盟金はそのブランド名を利用して将来的に収入を増やすことができるものですので「繰延資産」となります。

いずれも「モノ」としての実体はありませんが、いったん資産計上することを求められている支出です。

繰延資産の償却方法と償却期間


基本的には「均等に償却」するのが原則で、計算式は下記の通りです。

支払った金額×当期の経過月数/償却期間の月数

例外として、分割で支払うことができる「下水道受益者負担金」については支払った分しか償却できません。

会社法上の償却期間は先にあげた通りですが、税法上の繰延資産の償却期間については、支払いの種類に応じて細かく定められていますので、詳細は国税庁HPで確認して下さい。

国税庁:繰延資産の償却期間 

節税対策にもなる任意償却

繰延資産は、その種類ごとに会社法上定められた期間にわたり均等償却するのが原則ですが、税法上は会社法で定めた5つの繰延資産に限り「任意償却」が認められています。

簡単にいうと「好きな時に経費で落としてOK」ということです。

いつ、いくら経費で落とすか…ということを会社が自由に決定していい、ということになります。

恣意的な利益操作を厳しく制限している税法の中でも、フリーハンドが認められている数少ない税法上の特典といえるでしょう。

任意償却を有効に活用するポイント

 では、この任意償却という特例を、「節税」や「内容の良い決算書の作成」につなげるためのポイントをケース別に解説します。

1. 法人設立時

事業を立ち上げた直後というのは、初期投資として使うイレギュラーな経費がかさむのが一般的です。

設立に際して支払う定款認証費用、会社で使用する代表印やゴム印、開業準備にかかる備品や消耗品の購入など、売上高(収入)がまだ安定しない時期に支出だけが先行する結果、法人設立1期目、2期目というのは赤字決算となる会社が多いのではないでしょうか。

赤字決算となった場合には、会社設立までにかかった費用を「創立費」、開業までにかかった費用を「開業費」として、繰延資産で経理処理するとともに、「均等償却」「任意償却」を敢えてしないという方法をおすすめします。

経費を資産計上し赤字額を減らすとともに、将来の黒字決算に備えて「節税の種」を残しておくことが狙いです。

2. 赤字決算

赤字決算が続くうちは「均等償却」も「任意償却」も行いません。

青色申告の特典である「繰越欠損金」制度を使えば、当期の赤字を10年間繰り越して将来の黒字と相殺して償却をすることはできますが、10年以内に黒字決算となる保証はありません。

第一に考えなければならないのは内容の良い決算書をできるだけ早い段階で作成すること。

これにより銀行の評価が上がり、融資を受けやすくなるからです。

3. 黒字決算

黒字決算になった場合にも注意が必要です。

先に述べた「繰越欠損金」が残っているうちは繰延資産の償却はするべきではありません。

繰越欠損金が当期の黒字を相殺してくれるので税金は発生しないからです。

償却はせず、黒字額の大きい決算書を作成し、自己資本を充実させることを優先すべきでしょう。

その後「繰越欠損金」が全額消え、税金が発生する段階になったときに「任意償却」を使って節税対策をするのがベストです。

その際の償却額は赤字決算にならないよう黒字額の範囲内で行う必要があることはいうまでもありません。

まとめ

  • 繰延資産とは形式上の資産であり、期間に応じて費用となる
  • 会社法と税法とで繰延資産となる対象が異なる
  • 基本的には均等償却
  • 会社法上で定めた繰延資産は任意償却が認められている
  • 任意償却を活用して節税対策ができる


会社の経理は「支出=経費」というようにとかく考えがちですが、その支払いの内容や金額、将来的な効果等をよく理解し、資産計上すべきものかどうかを正しく判断することが大切です。

画像出典元:O-DAN

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