企業が経営をしていく上で重要な経営資源は一般的に「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の4つと言われています。
この4つの中でも今回は「カネ」についてです。
企業にとってカネ=資金は欠かせないものです。資金がなければ、ヒトを雇うことも、モノを買うこともできません。
今回はそんな重要な資金を調達する手段の一つである「デットファイナンス」について、デットファイナンスとは何か、どのようなメリット・デメリットがあるかを紹介します。
このページの目次
デットファイナンスという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
デットファイナンスは借入による資金調達のことです。デットファイナンスをデットとファイナンスにわけると、より理解しやすくなります。
デッドファイナンスは、借入を意味するデット(debt)との資金調達を意味するファイナンス(finance)の組合せなので、借入による資金調達のことを指すのです。
これに対して、株式(エクイティ)による資金調達は「エクイティファイナンス」と呼ばれます。これについては、あとで詳しく説明します。
デットファイナンスによる資金調達方法は、具体的には主に4つです。4つの資金調達方法をみてみましょう。
企業の資金調達として一般的なのが銀行などの金融機関から借入をする方法です。
銀行の融資にはプロパー融資と信用保証協会の保証付き融資があります。
プロパー融資は保証協会を通さずに融資を受けることができるため、保証料が要りません。
信用保証協会の保証付き融資に比べて保証料の支払いがないので、できればプロパー融資で資金調達をしましょう。
公募債は社債の一形態で、自社で発行した社債を不特定多数の投資家に買い取ってもらい資金調達をする方法です。
国が国債を発行して資金を集めるの同じように、企業も社債を発行して資金調達をすることができます。
社債には、「普通社債」「転換社債」「ワラント債」「劣後債」「電力債」の5つの種類がありますが、経営権に影響がない一般的な普通社債による資金調達がオススメです。
私募債は社債の一形態で、募集人数を50名未満の少数に絞って発行する社債のことです。
広く投資家を募るために公募を行っても、名前を聞いたことが無いような会社であれば投資家はなかなか集まりません。
資金調達のために投資家を募ったのに、投資家が集まらなくては意味がありません。
しかし、私募債は特定の人や会社に社債を引き受けてもらうので知名度があまりない会社でも発行することができます。
投資家からの融資は、ソーシャルレンディングなどを利用して資金調達をする方法です。ソーシャルレンディングは、貸付型クラウドファンディングとも呼ばれています。
以上のように、デットファイナンスにはいくつかのやり方があるのですが、実際にはほとんどが銀行などの金融機関から借入です。
では、次にデットファイナンスとエクイティファイナンスの違いを見ていきましょう。
「デットファイナンス」は金融機関などから借入をして資金調達をしますが、「エクイティファイナンス」では株式を利用して資金調達をします。
違いを理解し自社にあった資金調達方法を選択することが重要です。
デットファイナンスは返済が必要ですが、エクイティファイナンスは返済が不要です。
デットファイナンスは借入によって資金調達をします。資金調達をした資金は借入になるため返済が必要です。
一方エクイティファイナンスは株式を利用して資金調達をしているため、返済の必要がありません。
エクイティファイナンスの場合、投資家は企業に投資をして株式を取得するため、債務者ではなく株主になります。
デットファイナンスは経営権に影響がありませんが、エクイティファイナンスは経営権に影響があります。
デットファイナンスは借入であるため、株主構成に変化がありません。よって、経営権にも影響がありません。
一方で、エクイティファイナンスは株式を利用して資金調達をする方法です。
株式会社は議決権のある株式の保有割合に応じて経営が左右されるため、発行株式数によっては自由に経営ができなくなる危険性があります。
デットファイナンスによって資金調達をした場合、貸借対照表上では他人資本である「負債の部」に表示されます。
一方エクイティファイナンスによって資金調達をした場合、貸借対照表上では自己資本である「純資産の部」に表示されます。
表示場所が違うだけでは?と思うかもしれませんが、資金調達が負債の部で借入金として表示されると安全性分析の固定比率の悪化になります。
しかし、資金調達が純資産の部で資本金として表示されると自己資本比率の改善になります。
投資家に対してデットファイナンスは利息の支払い、エクイティファイナンスは配当金の支払いをします。
借入をした資金は返済する義務があります。借入を返済する時は、ただ借りた資金を返すだけでなく利息と一緒に投資家に支払います。
デットファイナンスの場合、投資家は利息収入を目当てに投資をしているということです。
一方エクイティファイナンスの場合、株主には配当金を支払います。ただし配当金の支払いは義務ではありません。むしろベンチャー企業の場合、配当金がゼロであることは珍しくありません。
エクイティファイナンスの場合、投資家は株の売却益を期待しているので、配当金の分配より企業の成長に伴う株価の上昇を重視します。
投資家に対して企業が支払った利息は経費となりますが、配当金は経費にはなりません。
同じように投資家に支払うものですが、利息と配当金では税務上取り扱いが違います。
なお、エクイティファイナンスについては以下の記事でより詳しく解説しています。
デットファイナンスについて確認ができたので、今からデットファイナンスのメリットとデメリットについてみてみましょう。
まずはメリットからです。
中小企業の多くは株主と経営者が一緒になっています。
経営者と株主が一緒であれば、株主と経営者の利害関係が一致します。
ここで勘違いをしてはいけないのが「会社は経営者のモノではなく株主のモノ」ということです。
現経営者よりも、新たな株主が保有する株式数が多くなると経営に与える影響は新たな株主の方が強くなります。
デットファイナンスは株式を利用して資金調達をするわけではないため、資金調達をした後も引き続き自由に経営ができます。
貴方の身近に銀行や信用金庫などは何行ありますか?1行ではないはずです。
デットファイナンスを利用して資金調達をする場合、融資元である金融機関は銀行、信用金庫、日本政策金融公庫など複数あります。
その中から自ら選択をして融資を申し込みますが、選択ができるということは、それだけチャンスがあるということです。
仮に1つの金融機関で融資が受けられなくても、次に申し込んだ金融機関で融資を受けられることもあります。
大事な資金調達、チャンスは1度よりも複数ある方が資金調達がしやすくなります。
エクイティファイナンスは株式を利用して資金調達をするので、通常は資本金が増加します。
資本金が増加すると自己資本比率が改善されますが、税金に影響がある可能性があります。
資本金の増加で影響がある税金は「法人税率」「交際費」「均等割」「中小企業投資促進税制」「少額減価償却資産」などがあります。
デットファイナンスは資本金に影響がないため税金の影響を受けずに資金調達ができます。
スタートアップや中小企業の事業成長支援に特化したデットファイナンスもあります。
創業したばかりの企業や先行投資により赤字決算となっている企業の方は、合わせてこちらもご覧ください。
デットファイナンスはメリットだけでなくデメリットもあります。次はデメリットです。
デットファイナンスは借入です。借りた以上、借りた資金は返済が必要になります。
エクイティファイナンスは株式を利用しているため、出資に対して返済義務はありません。
通常、借入を返済する時には元本と利息の支払いが必要になります。
借りた資金だけの返済であれば嬉しいのですが、そんなことはありません。無利息であればよっぽどのことがない限り借入できません。
利息は十分な自己資金があれば発生しない経費なので、利息の支払いは利益の減少に繋がります。
「早速デットファイナンスを利用して資金調達をしよう」と行動を移す前にこれだけは注意をして下さい。それは「返済計画を立てる」ことです。
借りた資金は返済が必要です。今までの借入をしていない状態での資金繰り表では、資金がショートする危険があります。
何も計画を立てずに資金調達をした場合どうなりますか?
借入をする前と同じように考えていては借入の返済、利息の支払い分の資金を捻出することができません。
毎月の資金が足りないまま経営を続けていては、いつか資金が底をつき新たに資金調達が必要になります。
そうならないためにも、返済計画を立てることが必要になってきます。可能であれば、将来の予測も含めた返済計画の作成をしましょう。
返済計画を作成することで将来の予測、返済能力を把握することができるため、今後の経営戦略に活かすことができます。
デットファイナンスとは何か、デットファイナンスのメリット・デメリットについて解説しました。
デットファイナンスは企業にとって大事な資金調達方法です。しかし、融資は麻薬とも言われます。依存してしまうとなかなか抜け出せなくなります。
デットファイナンスによる資金調達をする時には「借入をする理由」「返済計画を立てる」ことに着目をしましょう。
無理な返済計画で借入の返済が滞ってしまうと融資元の印象が悪くなり、最悪の場合一括返済、次回融資がされないこともあります。メリット、デメリット、注意点などをよく理解して行動に移しましょう。
なお、デットファイナンス以外にも資金調達手段はあります。その他の資金調達方法については以下の記事も参考にしてください。
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