中小企業の資金調達に有効な私募債のメリット・デメリット・発行手順

中小企業の資金調達に有効な私募債のメリット・デメリット・発行手順

記事更新日: 2019/04/05

執筆: 編集部

多く利用されている資金調達といえば銀行など金融機関からの融資ですが、資金調達は融資だけではありません。

株式会社であれば株式を発行をする資金調達もありますが、社債を発行して資金調達をする方法もあります

今回は、社債の中でも多くの中小企業で利用されている「私募債」について、メリット・デメリットや発行手順を解説します。

私募債とは

私募債とは社債の一つの形態で、少数特定の投資家に発行する社債のことをいいます。

なお、社債とは企業が独自に発行する「債券」のことで、企業が決めた借用金額と返済日、支払われる利息があらかじめ提示されています。

企業にとって、社債発行は有効な資金調達手段の一つです。

 

社債発行の3つのメリット

私募債は社債発行は企業にとって有効な資金調達方法ですが、社債について何も知らなければ有効に活用するがでてきません。

まずは、社債発行のメリットとデメリットについて確認しましょう。

1. 金利を抑えられる

銀行などの金融機関から融資を受けた場合、借入の利率は金融機関が設定します。しかし、社債は企業が発行する債券です。

企業が自ら債券を発行するため、社債の利率を企業側で設定することができます

社債は企業が任意で利率を設定できるため、通常金融機関から融資を受ける場合の利率よりも低い利率で社債を発行すると、その分利息の支払いを抑えられます。

2. 毎月の返済がない

社債は償還日が決まっており、償還日が到来するまで元本の支払いがありません

企業にとって資金は経営をする上で重要なものになります。金融機関からの融資であれば、通常毎月元本の返済と利息の支払いがあります。

企業の中には、毎月の元本の支払いと利息が資金繰りを圧迫することもあります。

しかし、社債は償還日まで元本の支払いがないため、毎月の資金繰りが楽になります。

3. 経営権が保持できる

社債は経営権を保持しながら資金調達することができます。

資金調達には株式を利用して資金調達をする方法がありますが、株式を利用した場合経営権が保持できない可能性があります。

社債といえば一般的には「普通社債」をさしますが、社債の中には「転換社債型新株予約権付社債」と呼ばれる社債があります。

転換社債型新株予約権付社債は、一定の条件で社債を株式に転換できますが、社債の発行金額は発行する企業が設定することができるので、事前に対応ができます。

社債には、「普通社債」「転換社債型新株予約権付社債」の他にも「ワラント債」「劣後債」「電力債」があり、それぞれ違った特徴があります。

社債発行の2つのデメリット

1. 満期償還日に一括で返済

社債は償還日に一括で返済が必要になります。

先ほど、社債のメリットで触れた内容ですが、社債は償還日に元本の支払いが発生します。

そのため、毎月の元本返済がなく毎月の資金繰りは楽ですが、一方で償還日に一括返済をしなければなりません。

償還日に一括返済するにはまとまった資金が必要になるので、計画的に資金をストックしておく必要があります。

2. 債権者が増える

社債は複数の方に発行して資金調達をするので、債権者が増えることのプレッシャーがあります。

融資を例に考えると金融機関からの融資の場合、債権者は融資を受けている金融機関のみになりますが、社債の場合は債権者(投資家)が金融機関の融資に比べて増えるためプレッシャーに感じることもあります。

公募債と私募債の違いは特定か不特定か

社債は大きく分けて「公募債」と「私募債」があります。

公募債、私募債は違いがあるため、自社に適した募集が必要です。

募集相手を間違えては上手く資金調達ができなくなります。

1. 公募債は50人以上の不特定多数の投資家に募集

公募債は不特定多数の投資家に募集をすることです。

公募というのは広く公に募集するということですからね。公募債は具体的に50人以上の投資家を募集することを指します。

広く不特定多数の投資家を募集するため、社債を発行する企業の知名度が低いと投資家を集めることは困難になります。

社債権者が最終的に49人以下でも、募集人数が50人以上であれば公募債です。

上場企業のように大きな企業でなければ公募債で資金調達することは難しいでしょう。

2. 私募債は特定の人に募集

私募債は、銀行や証券会社などの適格機関投資家を募集する「銀行引き受け私募債」と親族、会社の関係者、取引先、従業員など特定の人(縁故者)に募集する「少人数私募債」があります。

多くの中小企業で利用されている社債は公募債ではなく私募債になります。

特定の人に社債を発行する私募債は上場企業のように知名度がなくても、資金調達をすることが可能になります。

銀行引き受け私募債と少人数私募債の違い

ここまでの話で勘違いしてはいけないのが、私募債は融資ではないということです。

融資ではないため、企業は銀行などの金融機関を介さなくても私募債を発行することができます

そうは言っても私募債には「銀行引き受け私募債」と「少人数私募債」が存在するのは事実です。

「銀行引き受け私募債」と「少人数私募債」について、簡単に下記にまとめてみました。

内容 銀行引き受け私募債 少人数私募債
社債権者(引受人) 銀行 会社の縁故者
保証人 銀行 不要
担保 無担保または有担保 無担保
利率 銀行が決定 発行会社が決定
手数料 不要

 

私募債の手数料

企業からすると、銀行引き受け私募債と少人数私募債の一番大きな違いは手数料です。

社債について銀行が企業に提供しているサービスとして銀行が保証する「銀行保証付私募債」、銀行と信用保証協会が保証する「信用保証付私募債」があります。

私募債は無担保で発行ができます。いくら縁故者であっても中には何の保証もないのは抵抗がある方がいます。

そんな方のために、企業が発行する私募債に銀行が保証人となってくれるのが「銀行保証付私募債」、銀行と保証協会が共同で連帯保証をするのが「信用保証付私募債」です。

銀行引き受け私募債は契約書の作成、元利金支払などの業務を銀行が代理人として代行をしてくれるため企業はスムーズに社債を発行できますが、

「財務代理人手数料」「新規記録手数料」「総額引受手数料」「元利金支払手数料」という手数料が発生します。

発行する私募債の額にもよりますが、手数料だけで数百万円になることもあります。

会社自らが発行する私募債であれば手数料が発生しないので、銀行から私募債の発行を促された時には、納得のいく説明を受け理解することが大事です。

少人数私募債を発行するための5つの条件

1. 社債購入の募集が50名未満

少人数私募債を発行するには募集者を50名未満にする必要があります。

ここで注意をして欲しいのが社債を取得した人が50名未満ではなく、募集した人が50名未満である点です。

2. 適格投資家がいない

少数私募債には募集人数だけでなく、募集相手も条件があります。

具体的には銀行や証券会社などの法的に認められた適格機関投資家は募集人から除外されます。

3. 社債総額を1口の金額で割った口数が50未満

通常社債を発行する場合、社債管理者を定め債権者のために社債の管理を行うことを委託しなければなりません。

しかし、社債総額を1口の金額(最低金額)で割った口数が50未満であれば、社債管理の設置が不要になります。

4. 転売制限を設ける

社債は転売できるのですが、社債を多数の方に譲渡可能とすると50名未満の人数制限が潜脱する可能性があるため、転売制限を設ける必要があります。

5. 発行総額を1億円未満

社債の発行が1億円以上であると社債管理者を設置する必要があるため、発行総額は1億円未満にすることをおすすめします。

少人数私募債発行の手続きと償還までの流れ

少人数私募債を発行するには一般的に下記のような手順で進められます。

手続き 内容・補足
1. 募集要項の作成 発行する社債の総額、利率などの内容を決定
2. 取締役会決議または株主総会決議 取締役会非設置会社の場合、株主総会の決議
3申込者の募集 募集要項や事業計画書などを説明し募集
4社債申込証の作成・受付 申込人、法人から社債申込証の受領
5社債の割当 申込者の中から社債の引受者を審査・決定
6募集決定通知書の送付 上記決定後、各申込者に募集決定通知書の送付
7社債申込金額の受領・確認 振込、現金持参にて社債金額の入金受領・確認
8社債申込証拠金預り証の発行 入金確認後、社債申込証拠金預り証の発行
9社債原簿の記録作成 社債の種類などを記載した社債原簿の作成・保管
10社債の償還 償還日に社債の償還

 

少人数私募債を発行する3つのポイント

少人数私募債による資金調達は利率、毎月の元本返済が不要になるなど様々な魅力がありますが、少人数私募債を発行する前に3つのポイントに注意をして下さい。

償還日に一括返済ができるか

社債は融資ではありませんが、償還日に一括で償還する必要があります。一括で償還となるとまとまった資金が必要になります。

少人数私募債を発行して資金調達をしたのは良いが、償還日に一括返済ができないとなると信用はガタ落ちです。

次回の社債発行が困難になる可能性もあります。償還日に一括返済できる見込みをまずは計画しましょう。

会社・社長の信用と投資家との信頼関係

少人数私募債には担保がないため、会社・社長の信用がなければ発行しても投資家は集まりません。

社債発行前から支払いが滞っていたり、対応が遅れていては会社・社長の信用は薄いです。

投資家との信頼関係を構築するためにも、募集をする時には募集要項や事業計画書などを用いて相手が納得のいく説明をしましょう。

会社の情報開示に抵抗がないか

通常、中小企業は金融機関など以外に自社の財務諸表や事業計画書を開示しません。

しかし、社債発行時には財務諸表・事業計画書の開示が必要になります。財務状態がよくない会社の債券を積極的に購入する投資家はあまりいません。

経営者は今まで開示していない情報を縁故者に開示することに抵抗がある場合は、少人数私募債の発行は一度考え直した方がいいです。

まとめ

中小企業の資金調達に有効な私募債のメリット・デメリット・発行手順について解説しました。

少人数私募債は仕入や販売をしている取引先、従業員などから資金が会社に流入します。

全くの第三者ではないため、同じ資金でも重みが違います。縁故者から信用を得ているからこそできる資金調達です。資金調達後に信用を失っては、取引終了、従業員の退職などに繋がる恐れがあり、良い意味で緊張感が増します。

社債に資金調達は大企業だけが利用できるものでなく、中小企業にとっても有効な資金調達手段です。メリット・デメリットをよく理解し計画性を持って社債を発行しましょう。

私募債以外の資金調達手段については、以下の記事で解説しています。

画像出典元:写真AC, Pexels

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