事業経営をするうえで、資金繰りはもっとも気にかかる心配要素の一つではないでしょうか。
「支出が増加している」「売掛金が回収できない」「資金調達したいがやり方がわからない」など、経営者ならだれもが経験する悩みです。
そこで今回は、資金の減りを食い止める方法や資金調達の方法、資金繰りの改善策などについて解説します。
苦しい時に頼れる場所も紹介するので参考にしてください。
このページの目次
資金繰りが苦しい時は、資金の減りを食い止めることを優先に考えてみましょう。
具体的には以下の5つの方法があります。
各項目について詳しく解説していきます。
もっとも手っ取り早く取り組めるのは固定費の削減です。
固定費とは、「光熱費」「消耗品費」「車両費」「家賃」などが挙げられます。
電気、ガス、水道、通信にかかる費用は長年の慣習から高コスト構造が染み付いていることが珍しくありません。
日常で利用する備品についても同じです。
だからこそ、細かく見直すことで大幅にコストカットが実現する可能性があるでしょう。
車両は所有しているだけで税金や車検代、修理費、駐車場代などの費用がかさみます。
頻繁に使用するのでなければ、カーシェアを検討するのもよいかもしれません。
オフィスの賃料が財務を圧迫しているケースも散見されます。
テレワークが増加している昨今、現在のオフィス規模が本当に必要なのかを検討し、今よりも小規模で賃料の安価な場所に移転するのも一つの方法です。
人件費は会社の支出の大部分を占めるため、見直すことで大きな成果をあげやすいでしょう。
しかし急な人員カットは、社員の不満や人手不足を招く恐れがあります。
まずは社員一人一人の生産性をあげることや、残業を減らすことを考えましょう。
そのうえで、例えば「繁忙期だけ必要な業務」などは外注化やスポット採用を検討していくことをおすすめします。
製造業の場合は、「作りすぎ・売れ残り・期限切れ・不良品」といった過剰在庫を削減するのも得策です。
在庫の処分方法は、「セール販売」「リサイクル」「廃棄処分」の3通りです。
リサイクルは持続可能性の観点からすると、社会からの評価が高まる要因になり得ます。
しかし、リサイクルできる設備や環境の整備に時間とコストがかかることがあるので、かえって逆効果になりかねません。
自社の状況をよく見極めて、処分方法を考えることが大切でしょう。
不採算部門や収益性が低い事業を売却するか、整理するのも資金繰りを楽にするには有効です。
本業と関係ない事業で目に見える成果が期待できず、想定以上にコストがかさんでいるケースはよくあります。
そこで、創業時のスタイルに原点回帰して自社の強みを活かすことや、収益が見込める事業に注力するのです。
状況が改善されれば後に再度挑戦する道が開けることもあるので、当面は思い切って事業縮小に踏み切るのも得策でしょう。
金融機関から融資を受けている場合は、返済期限を延期してもらう方法も一つです。
延期を承諾してもらえれば、経費削減や不要品売却などで返済資金を準備する猶予が生まれます。
金融機関に申出る際は、事業計画の見直しや資金繰り案をしっかりと準備しておきましょう。
担保の提供が求められたり、新規の融資を受けにくくなったりするリスクもありますが、状況によっては背に腹は代えられません。
資金難から逃れるために、新たな資金調達方法を考えてみましょう。
具体的には以下の6つの方法が考えられます。
それぞれについて詳しく解説していきます。
資産を売却することで、ある程度まとまった資金を得られる可能性が高いでしょう。
資産には、以下のように様々な種類があります。
こういった資産の中で、事業に不要な物や利用価値が無くなったものを売却することで、資金調達ができると共に、経費削減や経営状況の改善も見込まれます。
資産価値は時期や内容によってまちまちで、取得時よりも高額で売却できる可能性もあれば、反対に予想以上に買い叩かれるケースもあるでしょう。
そのため、資産を売却する際は実質的なメリットがあるかどうかを総合的に判断する必要があります。
資産の売却だけでは足りない場合は、事業自体の売却(M&A)を検討する方が好ましいケースもあるでしょう。
事業売却とは、自社の事業を第三者に譲渡する方法で、事業譲渡とも呼ばれます。
全事業を譲渡する「全部売却」と、一部に範囲を絞って譲渡する「一部売却」を選択することができます。
会社自体を売却するわけでは無いため、全部売却をしても経営権を保持し続けることは可能です。
新株を発行して資金調達する方法も有効です。
具体的には「公募増資」「第三者割当増資」「株式割当増資」の3種類があります。
各増資の内容とメリット・デメリットを一覧にまとめました。
内容 | メリット | デメリット | |
公募増資 | 一般の全ての投資家を対象に新株を取得できる権利を与える増資方法 | 株式の市場流通性を高めることができる |
・株式総数が増えることにより既存株主の利益を害する可能性がある ・資本金が1,000万円を超過すると消費税の納税義務が発生する可能性がある |
第三者割当増資 | 関連性のある特定の第三者に新株が取得できる権利を与える増資方法 |
・親会社や取引先といった相手が買い手となるのでより関係を強固にできる ・買い手が特定されるため3つの中では比較的増資がしやすい |
・株式総数が増えることにより既存株主の利益を害する可能性がある ・資本金が1,000万円を超過すると消費税の納税義務が発生する可能性がある |
株式割当増資 | 既存の株主に新株が取得できる権利を与える増資方法 | 既存株主が対象のため、株主構成や持分割合が大きく変化しない |
・全ての株主が同じ割合で増資できるわけではないので不公平が生じかねない ・既存株主限定のため大規模な資金調達が困難 |
各増資方法のメリット・デメリットを確認し、自社に合った増資方法を選択しましょう。
出資や資金援助をしてくれる投資家を見つけるのもよいでしょう。
具体的には以下のような方法があります。
国内の投資家の数は確実に増加しつつあります。
それに伴い、情報交換したり投資先を紹介しあったりする交流会やイベントが様々なかたちで開催されています。
そういった場に積極的に参加して自社や自社製品を売り込むのもおすすめです。
クラウドファンディングで新規商品開発や自社サービスを広くアピールして資金提供を募るのもよいでしょう。
複数の種類がありますが、中でも資金の返済義務を迫られることがない「寄付型」で資金を調達できると安心かもしれません。
近年、自社にあった投資家をマッチングしてくれるサービスが増えています。
自社のプロジェクトに賛同し応援してくれる投資家を気軽に探すことができるサービスです。
マッチングサービスに興味のある方は、以下のサイトを参考にしてください。
国内最大級のデータベースから探すことが可能なため、高い確率で投資家が見つかると期待できるでしょう。
金融機関からの融資も、資金調達法としては非常に正当な手段の一つです。
大きく、民間(銀行や信用金庫など)と公的機関(国や自治体・商工会議所)に分かれます。
資金繰りが苦しい時に使える、主な融資制度の種類と特徴を確認してみましょう。
種類 | 特徴 | |
民間融資 | 銀行の融資 |
「信用保証協会の保証付融資」と保証なしの「プロパー融資」がある。 ◎限度額が大きく、大口の資金を借りられる可能性がある |
信用金庫の融資 |
主に会員になっている地域の中小企業向けに融資を行う。 ◎不景気でも貸し渋りや貸し剥がしの可能性が低い |
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公的融資 | 制度融資 (自治体+金融機関+信用保証協会) |
自治体・金融機関・信用保証協会が連携して融資を行う。 ◎審査が厳しすぎない |
企業再建資金 (日本政策金融公庫) |
民間の金融機関の支援が届きにくい部分を補完する、中小企業にとって救済措置となる融資制度。 ◎審査が受けやすい |
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セーフティーネット貸付 (日本政策金融公庫) |
一時的に経営が悪化しているものの回復が見込まれる中小企業に対する融資制度。 ◎無担保・無保証人で融資が受けられることがある |
売掛金を売却するファクタリングによる資金調達もあります。
ファクタリングには、「2社間」と「3社間」があり、それぞれの特徴は次の通りです。
売掛金をファクタリング会社に譲渡して売却代金を調達し、取引先から売掛金回収ができた時点でファクタリング会社に支払います。
スピーディーな資金調達が可能な反面、手数料が高いデメリットがあります。
ファクタリング会社を利用することの承諾を取引先から得たうえで、ファクタリング会社と契約をして売却代金を先に受け取ります。
その後、ファクタリング会社が直接売掛先から資金を回収します。
手数料が安い点がメリットですが、ファクタリングを利用することにより資金難であることが売掛先にバレてしまうデメリットがあります。
どうしても打つ手がなく自力での経営存続が限界という場合は、最終手段として法的整理を検討する方法もあります。
具体的には以下の2種類です。
いずれも見かけ上は「倒産」ですが、会社が何らかの形で存続し、再建をめざすことが前提です。
両者とも裁判所の許可が必要なため、手続きをする場合は弁護士に依頼することになります。
会社の資産を維持しながら、獲得した事業収益を債権者に分配する手続きのことで、経営陣がそのまま残って再建を目指すのが特徴。
対象は個人でも法人でも可ですが、債権者の同意が必要です。
経営権を維持しながらの倒産手続きが可能で、短期間での再生が期待できます。
しかし、手続きに数百万円単位のコストが必要で、担保権を行使されると不動産を失う、対価の不払いによって債務免除を受けると債務免除益課税を課される、といったデメリットがあります。
会社の資産を維持しながら、獲得した事業収益を債権者に分配する手続きのことで、裁判所によって選任される管財人が経営再建を担うのが特徴。
ただし株式会社のみが対象で経営陣は全員退任することになり、債権者、担保権者、株主の同意が必要です。
債権回収に制限をかけることができ資産が守れるのがメリットです。
しかし、経営権を失い、手続き完了まで時間がかかる、既存株主の権利が失われる、個人や中小企業は利用できない、数千万円単位の手続き費用が必要、といったデメリットがあります。
資金繰りが苦しくなる原因について整理しましょう。
具体的には、以下の4点が考えられます。
それぞれについて解説しましょう。
今まで売れていた主力商品やサービスの売上があきらかに減少してくると資金繰りが苦しくなることが多いです。
売上減少の原因を調査分析し、因子を特定したらすぐに回復に取り組みましょう。
例えば、品質低下商品を徹底的にチェックしたり、業界の流れが変化したのであれば、新商品を開発したりするなどの対策が急務になります。
過剰在庫が収益を圧迫する例も少なくありません。
すでに生産したり仕入れたりしているので、その分のコストは支払い義務が生じます。
しかも売れ残ればキャッシュインが期待できなくなるので、さらに資金繰りは苦しくなるでしょう。
処分できるものは、早めの売却を考えることも必要です。
今まであまり気にすることのなかった「接待交際費」「広告費」「交通費」「出張費」など無駄な支出が知らず知らずのうちに増加している場合も、資金繰りを悪化させる要因となります。
全ての支出を洗い出し、削減することで効果を得られそうな部分のコストカットに取り組む必要があるでしょう。
売掛金は実際に取引先から現金が振り込まれるまでタイムラグがあります。
特に、売上が急激に増加しているタイミングで資金繰りが苦しくなるケースが多くみられます。
これは、売上増加に伴い、仕入れ費用などの支払いコストも増加するためです。
そのため、売上急増時に売掛金の割合が増えている場合は要注意。
取引先に回収期間の短縮をしてもらえるよう交渉をしてみる必要があります。
資金繰りを改善する方法として、以下の5点があります。
「資金繰り表」とは、一定期間における資金の流れを把握するための管理表です。
過去の実績から将来的な収支を把握できるため、どこで資金不足に陥ってしまうか予測を立てることが可能です。
いわゆる「どんぶり勘定」が許されない状態にすることにより経営判断をブラッシュアップしやすくなるのです。
さらに資金繰り表をしっかりと作り込んでおくと、金融機関からの融資が受けやすくなるメリットもあります。
未回収の売掛金による利益圧縮を回避することも非常に有効です。
取引先と交渉し回収時期を早めたり、ファクタリングを利用して早期に回収したりする方法があります。
過剰在庫は資金繰りを悪化させる危険な要因です。
これを回避するには、必要な時に必要な分だけ供給するジャストインタイムの実現を目指します。
ジャストインタイムが実現すれば、過剰在庫のみならず、在庫保管費用や管理費用も削減できるのでコストメリットは大きいでしょう。
支払いを遅くして入金を早めれば、資金繰りは確実に楽になります。
よって、売掛金の回収を早めると同時に、買掛金の支払い期限を延長できるよう取引先に掛け合ってみるのもよいでしょう。
現場で働く当事者たちがコストの無駄に気づけないということはよくあります。
トップ自らが率先して、省エネ対策や備品の無駄遣いをなくすなど、コストカットの意識を社内の隅々にまで徹底していくことが重要です。
最後に資金繰りが苦しい時に頼れる場所を紹介しましょう。
国や自治体などの公的機関では無料で資金繰りの相談ができます。
まずは最寄りの市区町村か県庁に出向いてみましょう。
新たな支援制度が導入されている可能性もあるため、、古い情報だけで支援を受けられないと決めつけず、まずは調べてみることをおすすめします。
相談窓口では、融資制度に詳しい中小企業診断士、税理士、弁理士、弁護士や司法書士が日替わりで無料アドバイスをしてくれる例もあるので、ぜひ問い合わせてみてください。
コンサルティング会社でも経営立て直しに、数多くの知恵や手法を指南してもらうことができるでしょう。
資金調達のアドバイスだけでなく、経営改善のための提案や支援をしてくれます。
コンサルティング会社は有料である分、企業に寄り添い徹底的にサポートしてくれる点が魅力です。
また、コンサルティング会社によって得意ジャンルやコストは様々です。
よって自社の手がける分野についてのコンサル実績が豊富かどうかを、予算とともにしっかりと確認するようにしましょう。
資金繰りが苦しくなることは、珍しいことでも恥ずかしいことでもありません。
経営者であればだれでも経験することと言っても過言ではないでしょう。
資金繰りを改善したり、そこから脱したりする方法は数多く存在するので、一人で悩まずに打開策を積極的に模索していきましょう。
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