中小企業の経営者にとって、常に気がかりなことといえば資金繰りではないでしょうか。
社の内外を問わずさまざまな要因によって資金に余裕がなくなったり、急きょ調達しなければならなかったりすることがあるかもしれません。
どうしても資金繰りがうまくいかず、救済措置を受けたくなることもあるでしょう。
そこで本記事では、中小企業の資金繰り改善法9選と、資金繰りが悪化する原因や支援制度について解説します。
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資金繰りとは、経営上の収入と支出を把握し、安定した財務状態が維持できるようにずい時適切な対処や調整をおこなうことを意味します。
「資金」には比較的短期間のうちに現金化できる流動資産の中でも、すぐ支払いに使える現金や普通預金、当座預金などが該当します。
売掛金や有価証券、土地や建物といった不動産のように現金化に時間がかかるものは含まれません。
よって資金の源となるのは、おもに売上金や投資によって得たインカムゲイン、定期的に支払われる不動産収入などになるでしょう。
資金繰りが悪化すると黒字であっても倒産する可能性があります。
支出より収入が多い計算のはずが、支払い期日までに売掛金が回収できなかったり、手形が不渡りになったりするケースです。
ある程度は支払い期日や金融機関への返済期限を先延ばししてもらうことは可能かもしれません。
しかし、支払い先が多岐に渡ったり、見込んでいた現金の多くを手元に確保できなくなかったりした場合は、資金ショートによって倒産という事態を招くこともあるので、決して侮れません。
資金繰りが悪化する原因には、おもに以下の4つのパターンが考えられます。
それぞれについて具体的に解説していきます。
売り上げの減少は資金繰りが悪化するもっとも顕著な原因といえるでしょう。
まとまった支出が重なったとしても、順調に売り上げが得られて現金化できているうちはさほど問題にはなりません。
あるいは、ある商品やサービスの売り上げが落ち込んでも別の商品の売れ行きが好調で十分に補填できる状態であれば大丈夫でしょう。
ところが、支出が少ないとしても、それ以上に全体の売り上げが減額すれば資金繰りは苦しくなってしまいます。
しかもその状態が一時的ではなく、慢性的に続くとさらに経営は厳しくなるでしょう。
売掛金の回収に時間がかかると資金繰りは悪化します。
売掛金の回収期間は1〜2ヶ月の間が一般的ですが、中には3ヶ月におよぶ例もあります。
ただそのような場合でも、人件費や光熱費、家賃といった固定費や仕入れコストは必要でしょう。
さらに買掛金や債務の返済、納税といった支払いが重なると資金ショートを起こし、最悪の場合黒字倒産となる恐れもあります。
トップや経営陣による経営管理不足も資金繰りの要因となります。
これらの状態は慢性化しやすく、例えば、働きがいが薄いと社員のモチベーションが低下します。
すると営業力不足や、人間関係・社内環境の悪化といった副次的なマイナス要因を引き起こすことにより業績が目に見えて下降していくケースが散見されます。
コストが増加すると収益が圧迫されて資金繰りが難しくなります。
本業以外の事業に手を広げすぎて経営が傾くケースが珍しくありません。
また売り上げが急増した場合も一見良さそうに思えますが、人件費や仕入れ費用、在庫管理費といったコストが前倒しで必要となるため資金繰りを悪化させることがあります。
中小企業が資金繰りを改善するには、おもに以下の9つの方法があります。
各項目について詳しく解説していきます。
資金繰り改善のもっとも基本的かつ正当な方法は、売り上げの向上と経費の最小化をはかることです。
そして利益を最大にできれば確実に資金繰りは楽になるでしょう。
売り上げ向上のためには、現在の商品やサービスの価値を見直し、提供の仕方や売り込み方法を再検討するか、人気商品を新たに開発するかの2択です。
経費を最小化するには、仕入れ先や生産工程を見直したり、光熱費・家賃といった固定費を減らす努力や工夫をしたりするのが有効でしょう。
入金を早めて支払いを遅らせることができれば、確実に資金繰りが改善します。
具体的には、売掛金の支払い期限を1日でも早めてもらうよう取引先に働きかけ、同時に買掛金の支払い期限を延長してもらうよう交渉をもちかけます。
金融機関からの借り入れがある場合は金利の減免を依頼するのもよいでしょう。
また返済期限を先延ばししてもらえないか交渉するのも有効です。
在庫の保管には、倉庫の保管料や人件費などのコストがかかります。
さらに、長期間保有していると品質が劣化して商品価値が下がってしまう可能性も。
今後売り切ることが不可能な場合は、セール販売か廃棄処分で早めに処分することを考えましょう。
ものによってはリサイクルも可能ですが、かえって経費がかかることもあるので注意が必要です。
人件費の見直しは、資金繰りの改善に直結するので効果が高いでしょう。
人員削減が好ましい場合もありますが、いきなり実施すると反感を買ったり、かえって人手不足を招いたりする恐れがあります。
それよりは、社員一人一人の生産性を上げる工夫や、減給・時間外労働の廃止などで様子をみるのも得策でしょう。
あるいは正規社員を減らして非正規雇用やスポット採用、一部業務のアウトソーシングを検討する方法もあります。
資金繰りが苦しい時は、税金の支払いが加わるとさらに経営状況が厳しくなることが多いです。
そのような場合は、節税対策で乗り切る方法もおすすめです。
例えば、固定資産の減価償却を避けて全額を損金計上する方法があります。
中小企業限定で、30万円未満の資産なら、一事業年度あたり合計300万円までなら減価償却ではなく損金に算入できるのです。
これにより納税額を減らすことができます。
あるいは、中小企業向けの共済に加入するのもおすすめです。
これらを利用すると掛け金は損金に計上できるので、減税になります。
資金繰り表を作成すると、これから先の収入と支出を具体的かつ正確に予測できるので、資金繰り改善に役立ちます。
資金不足に陥る可能性を前もって察知することができるという意味でもメリットは大きいでしょう。
とくに決まった書式はありませんが、Excelを使って最低でも以下の4項目は記載するようにします。
まずは月次で作成し、3ヶ月〜6ヶ月あたりまでの資金繰り表を作成しましょう。
あとは必要に応じて、例えば収入であれば「現金売上」「売掛金回収」「手形入金」など細かく項目に分けると資金の流れがより明確になります。
支出なら「現金仕入」「買掛金支払」「人件費」などに細分化するとより分かりやすいでしょう。
とくに中小企業の場合、決算書の作成は会計士などに任せて、その内容を表面的にしか理解していないケースが少なくありません。
しかし決算書というのは、会社にとっての成績表に等しく、その中身を正しく分析することで会社のありのままの状態を知ることが可能になります。
具体的には、
といった6つの視点で自社の現状を採点できると理解してください。
資金繰りが厳しいとすると、安全性に黄色信号が点滅している状態になり、その原因として「収益性」と「生産性」および「効率性」に問題があると考えられます。
過去数年分の損益計算書を見比べるだけでも、1年ごとの変化ぶりがよく把握できるはずです。
先述した資金繰り表と、決算書の両方をしっかりと活用し、弱点を浮き彫りにして経営改善や最善の意思決定に繋げる習慣を根付かせることが極めて重要です。
資金繰りは身動きが取れないほど悪化してからだと、手の打ちようがなくなってしまいます。
それよりもその兆候が見えたら早めの段階で少し余裕をもって借りられる時に借りておくのがおすすめです。
まだ大丈夫、まだ大丈夫、と無理をしているうちに急激に状況が悪化することがあるので、早めの行動を心がけましょう。
最後に、中小企業の資金繰り改善のための支援制度を紹介します。
銀行の融資が受けられなくても、他に方法はたくさんあるのでぜひ参考にしてください。
売掛金を売却して資金調達する方法で、民間における実質的な支援制度といえます。
具体的には、「2社間」と「3社間」があり、形式が異なります。
【2社間ファクタリング】
売掛金をファクタリング会社に譲渡して売却代金を受け取り、売掛金が回収できた時点でファクタリング会社に支払う方法。
手数料が高くなりますが、迅速な資金調達ができる点が大きなメリットです。
【3社間ファクタリング】
ファクタリング会社を利用することの承諾を取引先から得たうえで、ファクタリング会社と契約をして売却代金を受け取る。
その後、ファクタリング会社が直接取引先から資金を回収する方法。
2社間と比べると手数料は安価ですが、資金繰りが厳しいことが取引先に知られる点がデメリットです。
クラウドファンディング専用サイトで自社製品の情報や構想を広く発信して賛同者から資金を調達する方法です。
投資の一面はあるものの、実際は応援が主旨のため厳しく返済を迫られるケースは少ないです。
ただし、資金を集めるだけの説得力のあるアピールができるかどうかが、成否を大きく左右するでしょう。
民間の金融機関からの融資が難しい場合で、経営再建を目指す中小企業に向けた日本政策金融公庫による支援制度です。
【融資限度額】
7,200万円(うち運転資金は4,800万円まで)
【返済期間】
設備資金は最長20年(措置期間が最長2年)、運転資金は最長15年(一定の要件を満たせば20年以内も可で措置期間は最長2年)
【利率】
条件に当てはまれば極めて低金利で融資が受けられる。
取引先など、関連企業の倒産によって、資金繰りが厳しい中小企業に向けた日本政策金融公庫の支援制度です。
この場合の関連企業とは、債務保証している会社や、50万円以上の売上債権がある会社、取引依存度が20%以上ある会社のことを指します。
【融資限度額】
3,000万円(用途は運転資金のみ)
【返済期間】
8年以内
資金繰りが単なる偶然で悪化することは絶対にありません。
その原因を確実に突き止め、適切な改善策を施すことができれば経営状況は上向いていくと考えてよいでしょう。
それでも資金繰りが厳しければ、支援制度を利用する手もあります。
記事内で述べた内容を参考にして、健全な経営を目指していきましょう。
画像出典元:Pixabay
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