財務分析とは?押さえるべきポイントや具体的なやり方を解説!

財務分析とは?押さえるべきポイントや具体的なやり方を解説!

記事更新日: 2021/04/14

執筆: 編集部

財務分析が重要な作業という事はなんとなく理解していても、どんな資料が必要で、どんな目的があるのか、分析の指標となるのは何かなどは説明するのが難しいです。

この記事では財務分析に必要な資料、目的、分析するときに注目すべき4つの指標、財務分析の方法を説明します。

財務分析がある程度できれば企業の経営状態を把握できるので、それを経営判断や投資に活かすことができるでしょう。

財務分析とは?

財務分析とは、財務諸表を用いて企業の経営状況を分析する作業です。

分析結果の数値を業界の標準値や同業他社と比較するなどし、企業の経営力や安定性、将来性などを評価します。

財務分析は会社の定期検診

人間は毎年の定期検診で健康状態を把握し、それを病気の予防や健康の増進に活用します。

企業も1年間の業績を計算した決算書などが作成されると、それを利用し財務分析を行い経営状態を把握します。その分析結果を,経営者は経営方針の立案、投資家や株主は投資判断などに活用します。

ですから、財務分析は会社の定期健診のようなものです。

この記事では、財務分析に必要な書類、財務分析の目的、財務分析で注目すべき4つの指標、財務分析の方法を紹介します。

財務分析に必要な財務諸表とは?

財務分析には財務諸表が必要です。

財務諸表には以下の6つが含まれます。

1. 賃借対照表

2. 損益計算書

3. キャッシュフロー計算書

4. 営業報告書

5. 利益処分計算書

6. 付属明細書

 

財務諸表のそれぞれの内容

財務諸表に記載されている内容を簡単にまとめて表にしました。

  1.賃借対照表 企業の財務状態
財務三表 2.損益計算書 企業の経営成績
  3.キャッシュフロー計算書 企業の資金状況
4.営業報告書   当期の営業状況と今後の見通し
5.利益処分計算書   株主総会で決議された利益処分の内容
6.付属明細書   賃借対照表や損益計算書の重要項目に関する明細

財務諸表の中の賃借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書は「財務三表」と呼ばれており財務分析には欠かせない書類です。

 

財務分析の種類とその目的

財務分析は誰が分析をするかで「内部分析」と「外部分析」の2種類に分けられます。

それぞれの意味と目的を次に説明します。

内部分析

企業の経営者、労働組合、従業員といった会社内部の人間が行なう分析です。

企業内では経営管理、経理、営業統括などの部門がそれを行ないます。

内部分析の目的

経営者が財務分析を行う目的は、自社の経営状況を把握するためです。分析結果は今後の経営方針を立案したり、経営判断を下す材料になります。

労働組合や従業員が財務分析を行なうのは、経営状況が健全かどうかをチェックすること、経営の改善や賃金交渉をするための材料とすることが目的になります。

外部分析

会社外の機関や人間により行われる財務分析が外部分析です。

金融機関、企業アナリスト、投資家、取引先企業、国や自治体などの行政機関が行なう場合があります。

外部分析の目的

金融機関がある企業の財務分析を行うのは、その企業の支払い能力を分析し、融資に値するかどうかの与信判断を下すためです。

投資家や株主は、その企業の安定性や成長性を分析し、投資に値するかどうかを判断します。

企業が取引先企業の財務分析を行なう場合もあります。それは取引先の信用状況をチェックしたり債権回収が可能かどうかを判断する材料とするためです。

行政機関も経済状況の把握や適性な税金徴収の指針とするために外部分析を行うことがあります。

財務分析での重要な4つの指標

財務分析には、内部分析と外部分析の2種類がありました。

分析する立場の違いはありますが、分析する際に注目すべき4つの指標は変わりません。

次に、財務分析を行なう際に注目すべき4つの指標を説明します。

1. 収益性分析

「企業がどれだけ利益を上げたのか」という点に注目するのが「収益性分析」です。

財務分析の対象となっている企業にどれだけ「稼ぐ力」があるかを見るわけです。

2. 安全性分析

「借金を返済する能力があるのかどうか」つまり「企業の体力」を評価するのが「安全性分析」です。

資金繰りが悪く借入が多くなり返済ができなくなると倒産する可能性があるので、このポイントも財務分析では欠かせない指標のひとつです。

3. 成長性分析

「企業の将来性」を判断するのが「成長性分析」です。売上や利益の伸び具合、従業員の増加率などを参考に企業の成長や将来について分析します。

4. 生産性分析

「生産性分析」では、企業が経営資源の「ヒト・カネ・モノ」を上手に活用し、付加価値の創出や売上につなげているかを分析します。

付加価値とは、企業により新たに生み出された価値、もしくは追加された価値の事です。

例えば、製造業では仕入れた原材料を加工することで、新たな価値を持った製品を作り出します。付加価値が付いているので、仕入れ値より製品の販売価格の方が当然高くなります。

財務分析の具体的なやり方

財務分析で注目できる4つの指標を説明しました。

それぞれの分析を、財務諸表内の項目や数字を拾って、どのように分析できるのかそのやり方を説明します。

1. 収益性分析

収益性分析は、財務諸表の「損益計算書」に記載されている項目や数字を拾い以下の3つの数値を計算することで分析できます。

1. 売上高総利益率

2. 売上高営業利益率

3. 売上高経常利益率

1-1. 売上高総利益率

売上高総利益率とはいわゆる「粗利率」のことです。

計算式は次の通りです。

売上総利益率(%)=売上総利益÷売上高×100

全業種での粗利率の平均は約17,18%です。

一般的には粗利率が高いと儲かるといわれていますが、業界や業種により儲かる基準となる粗利率は異なるので、業界や同業他社、過去の自社データとの比較分析が必要です。

1-2. 売上高営業利益率

売上高営業利益率により、その企業の本業だけでの収益率が計算できます。

計算方法は以下の通りです。

売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100

一般的に売上高営業利益率の標準は1%~3%です。

この数値が前年度より上がっていれば、本業での収益力が上がっているという結果になります。

1-3. 売上高経常利益率

売上高経常利益率は、企業の本業と本業以外の活動を足したもの、つまり企業全体の事業活動でどれくらいの収益力があるかを計算したものです。

計算式は以下の通りです。

売上高経常利益率(%)=経常利益÷売上高×100

この数字が4%以上で優良企業と分析されます。

もし売上高経常利益率が0%以下であれば、その企業は経費削減や収益を伸ばすための改善が必要と判断できます。

 

2. 安全性分析

安全性分析では、企業の借入に対する支払い能力、つまり財政的に安全かどうかを判断します。

1. 流動比率

2. 自己資本比率

こうした数値を計算し安全性を分析できます。

2-1. 流動比率

流動比率は、短期間で支払が求められる負債に対し、短期間で現金化でき支払に対応できる資産がどれくらいあるかを計算したものです。

財務諸表の「賃借対照表」の項目や数字を拾って流動比率は計算できます。

計算式は以下の通りです。

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

流動比率が130~150%なら十分な支払い能力があると分析できます。

しかし100%以下なら、短期で支払が求められる負債には対応しきれないと判断できます。

2-2. 自己資本率

自己資本率とは、企業の総資産のうち、返済する必要のない資本の占める割合を計算したものです。

これも「賃借対照表」の数字を使い、以下のように計算できます。

自己資本比率(%)=自己資本÷総資産×100

一般的に自己資本率が40%以上ならば財務状況は健全と分析できます。

10%を下回るなら、会社の資本のほとんどをよそからの資本に依存していることになるのでとても危険な状況と分析されます。

 

3. 成長性分析

企業がどれくらい売上を伸ばしているのかを見て成長性を分析します。

1. 増収率

2. 増益率

3. 従業員増加率

こうした数字を計算することで、企業の成長性が分析できます。

3-1. 増収率

前期売上高と当期の売上高を比較して、どれくらい伸びたかを数値で表したものが増収率です。売上高伸び率とも言います。

計算式は次の通りです。

増収率(%)=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100

売上高が伸びているなら、市場やシェアを拡大できた、付加価値の高い商品が販売できたと考えられます。

前年度より売上が下がるなら、増収率ではなく「減収率」となります。

3-2. 増益率

前期の経常利益(企業の本業での収益とそれ以外の活動での収益を足したもの)と当期の経常利益を比較して、どれくらい伸びたかを数値で表したものが増益率です。経常利益伸び率とも言います。

増益率(%)=(当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益×100

増収率と同じように増益率も増加していれば、その企業は順調に成長していると分析できます。

3-3. 従業員増加率

売上高が伸びることで、従業員数が増えていれば、その企業は健全に成長していると判断できます。

計算式は以下の通りです。

従業員増加率(%)=(当期従業員-前期従業員)÷前期従業員×100

売上高が増えていても、設備の導入による省力化で従業員が減っているというケースもあります。財務分析の対象となっている企業でそうした現象が起こっているかどうかを判断するためには財務諸表内の情報や他の指標を参考にできます。

4. 生産性分析

企業の生産性を分析するためには、「付加価値」を計算しなければなりません。

付加価値が計算できたなら、それをもとに「労働生産性」つまり従業員一人当たりがどれほどの付加価値を創出してるのか計算できます。

業界の基準や、同業他社の数値と比較して、財務分析の対象企業が生産性の高い企業かどうか判断できます。

4-1. 付加価値の計算

付加価値の計算は以下の通りです。

付加価値=経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用(支払利息)+租税公課

付加価値が計算できれば、それを使って労働生産性が計算できます。

4-2. 労働生産性

労働生産性の計算式です。

労働生産性=付加価値÷従業員数

企業にはフルタイムの従業員もいれば、パートの従業員もいます。働き方の違う従業員を同じにして計算すると正しい分析結果がでません。

正確に計算するためにフルタイムの正社員を1として、パートの従業員を0.5として合計するなどの調整が必要です。

数値が高ければ経営資源が有効活用できていると分析できます。

4-3. 従業員1人あたりの売上高

企業の生産性を分析する方法として「従業員1人あたりの売上高」を計算することができます。計算式は以下の通りです。

従業員1人あたりの売上高=売上高÷従業員数

前期と比べて、企業としての売上高は上がっているのに、従業員1人あたりの売上高が減少しているなら、個々の生産性が下がっていると分析できます。

他にも、同業他社と数字を比較して数字が高ければ、生産性の高い、競争力のある企業とみなせます。

財務分析に必要な財務諸表の作成には会計ソフトが便利

財務分析の方法を紹介しました。

経営者の側ならば、自社の経営状態を正確に把握し、分析結果をもとに次の一手を打つために財務分析は欠かせない作業となります。

とはいえ、財務諸表を手作業で記入したリ計算したりするのはたいへんな作業であり、ミスも起こる可能性があります。

そんな悩みを解決してくれるのが「会計ソフト」です。クラウドサービスを利用すれば導入・毎月の運用費用を抑えることも可能です。

 

まとめ

財務分析とは、財務諸表を使い企業の経営状況を分析、把握するものです。いわば企業の定期健診です。収益性・安全性・成長性・生産性を指標とし分析します。

経営状況に問題があることが分析結果として出れば、経営者はそれを経営方針を改善するための材料にできます。金融機関や投資家は分析結果を投資や融資を判断する材料にします。

財務分析の作業は、最初のうちは難しいので専門家と協力しながらできるでしょう。毎年定期的に財務分析を行なうことができれば、正確な経営判断を下すための貴重な資料となるでしょう。

画像出典元:pixabay

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