個人・法人問わず事業を興せば、経理業務は必ず発生します。大変手間のかかる経費管理を簡略化するには、会計ソフトを導入するのがベストです。
最近では、パソコンや作業者に負荷が少なく、導入も簡単な「クラウド会計ソフト」が注目を集めています。
従来の会計ソフトとクラウド会計ソフトの違いや、クラウド会計ソフト導入におけるメリット・デメリットについて、「クラウドとは何だろう?」という基本的な部分から解説します。
このページの目次
インストールして使用する従来の会計ソフトとは違う、クラウド会計ソフトには「クラウド」という言葉が付いています。
この「クラウド」とは、個々のパソコンにソフトウェアをインストールする必要がない、インターネットを介して利用できるシステムのことを指しています。
身近なところでは、フリーメールで利用者の多いGmail、タスク管理やオンラインミーティングなどにも使われているChatwork(チャットワーク)があります。
このほかにも、さまざまなものがあり、写真画像・動画・テキストファイルを保存できるGoogleドライブやiCloudも、同じくクラウドを利用しています。
クラウド会計ソフトとは、パソコンにインストールして使用する会計ソフトと異なり、インターネットを介して利用する会計ソフトです。
従来の会計ソフトは、CD-ROMやダウンロードソフトなどの形態で販売しているものを購入して使用していました。クラウド会計ソフトの場合は、ソフトを提供しているサービス会社に使用料を支払って使うことになります。
会計データは、クラウドサーバーというデータ保管場所に“利用者ごと”に記録・保存されていきます。
このクラウドサーバーを含むクラウド会計ソフトは、サービス提供会社が管理・運用・保全といったシステム運用に関わる全てをおこなってくれます。
クラウド会計ソフトの一番のメリットは、常時最新バージョンのソフトを利用できる点です。
従来の購入型のインストール版会計ソフトの場合、バージョンアップされれば再度購入・インストール・設定をする必要がありました。
しかし、クラウド会計ソフトの場合はサービス提供元の会社がソフトをアップデートあるいはバージョンアップをしてくれるため、利用者が更新作業をする必要がありません。
インターネットを経由してソフトを利用しますから、パソコンを新しく買い替えたとしても、ソフトを改めてインストールする手間もなく、インターネット回線に繋ぐだけですぐに作業に取りかかれます。
銀行口座の入出金やクレジットカードの利用履歴といった外部データも、設定をするだけで必要なデータを自動でクラウド会計ソフトに反映させることができます。
このほか、領収書を入力する際も、領収書を写真やスキャンで読み込んだ画像からOCR(※)機能を使って、自動入力することもできます。
従来であれば、いちいち会計ソフトに手入力をしていた煩わしい作業を簡素化することができるのです。
※Optical Character Recognition/Readerの略:文字を認識しデータに変換するシステム。
税制や消費税などの改正・改定などのような法改正があった場合、従来のインストール版会計ソフトでは、システムの差分をアップデートするなどの更新作業が必要でした。
しかし、クラウド会計ソフトでは、法改正への対応作業はサービス提供会社がおこなってくれるため、利用者は更新作業に時間と手間を取られることなく普段通り作業ができます。
クラウド会計ソフトでは、入力したデータは全てクラウドサーバーに保管されます。そのため、もしもパソコンにトラブルが発生しても、データを守ることができます。
さらに、データは定期的にサービス提供会社でバックアップされますから、入力した会計データのバックアップ作業やその後の管理における手間・時間・コストから解放されます。
クラウド会計ソフトは、インターネット接続されたパソコンであれば、どの端末からでも使用できます。
従来のインストール版会計ソフトでは、ソフトウェアが入っているパソコンだけでしか作業がおこなえませんでした。しかし、使用するパソコンが限定されないため、経理業務がスムーズになります。
パソコンの他にも、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末にも対応しています。
インターネットに接続したモバイル端末であれば、いつでも必要なときに入力や閲覧ができますので、たとえば営業マンが外出先で接待にかかった飲食費を、帰社途中に入力するといったことも可能になります。
経理業務を滞りなくおこなうには、簿記や経理の知識が必要です。しかし、クラウド会計ソフトでは経理や会計に関する専門知識が疎くても使えるように、画面表示や操作がわかりやすく作られています。
なかでも人工知能(AI)を活用した自動仕分け機能は、過去に入力した会計情報から学習して、最適な勘定科目を提案してくれるようになっています。
これにより、誰でも簡単に会計データを入力できるようになっているのです。さらに、全ての会計データが一元管理されているため、決算時期になると必要になる関連書類の作成もスムーズにおこなえます。
全ての会計データが一元管理されているため、必要なデータ同士を連携させやすく、情報分析に必要なデータがとても取り出しやすくなっています。
従来であれば、必要なデータを抽出して、その後エクセルなどを使って図表化していたことも、クラウド会計ソフトではソフト上で簡単に図表化できるようになっています。
経営会議などで資料が必要になったときも、その場でサッとデータを視覚的に変化させられるため、意思決定もスピーディにおこなえるようになるでしょう。
クラウド会計ソフトのデータは全てクラウド上での保管となることから、データ漏洩やバックアップデータの紛失といったリスクが軽減されます。
クラウドで保管されるデータは、ネットバンキングなど銀行で使用されるレベルと同等のセキュリティによって守られていることから、社内でデータ管理をするよりも安全だといえます。
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クラウド会計ソフトは、サービス提供会社に対して月額あるいは年額の使用料を支払い続けている期間だけ利用できるサービスです。そのため、毎月一定額のコストが必ずかかります。
このコストは、低価格で毎月のランニングコストがかからないインストール版会計ソフトと比べると、割高になってしまうこともあります。
サービス提供会社が規定している使用料ですから、今後使用料が高くなる可能性もゼロではありません。
しかし、従来の購入型インストール版会計ソフトを使って経理業務をおこなうコストパフォーマンスと比べれば、ほとんどの場合においてクラウド会計ソフトのほうがコストパフォーマンスが高いはずです。
お試し版などもありますので、ぜひ比較してみてください。
クラウド会計ソフトはインストールする必要がない反面、インターネットに接続できなければ利用することができません。
もしもセキュリティのためにインターネットの使用を許可している端末が限定されている場合は、どこでも使えるというメリットを享受できない可能性があります。
インターネット接続をしていない場合は、この機に社内環境の改善や働き方改革のキッカケにもなるのではないでしょうか。
クラウド会計ソフトは、パソコンやモバイルなどどんな端末でも共有して使えるメリットがある一方で、操作を間違えて誤入力や削除など人為的リスクもあります。
入力できる使用者を限定する、Wチェックをする、定期的にデータを確認するなど、何らかの対策は必要でしょう。
画面に表示される内容やデザイン、操作感といったUI(ユーザーインターフェイス)は、クラウド会計ソフトのアップデートによって変更になることがあります。
これは顧客サービス向上やソフトウェアの改変などによるものですが、提供されるサービスを利用しているうえで避けることができません。
こうした変更は、従来の購入型会計ソフトであれば、バージョンアップ品を購入さえしなければ起こることがないことです。
また、サービス保証などの観点から購入せざるを得なくなっても、利用者のタイミングでアップデートすることができます。
クラウド会計ソフトではサービス提供会社側でアップデートがおこなわれるため、利用者にとって意図しないタイミングで変更があることを予め理解しておく必要があります。
ただし、UIの変更があっても突然ガラリと変わってしまうことはほぼないと考えられます。
徐々に変更が生じたり、大きな変更がある場合には変更前に何らかの形で通知があるはずです。
サービス提供会社からの通知は定期的に確認しておくようにしましょう。
クラウド会計ソフトは、提供されるサービスや機能をそのまま利用することになります。そのため、従来の購入型会計ソフトとは異なり、利用者側でカスタマイズすることができません。
従来の購入型会計ソフトから移行する場合も、UIが変わることやカスタマイズできないことが要因となって、使い勝手が悪いと感じてしまうこともあります。しかし、これは移行当初だけの一時的なものとなるはずです。
使用しているうちに慣れてくると考えられるため、移行初期は作業効率が悪くなってしまうことがあるということは理解しておいたほうがいいでしょう。
カスタマイズができない代わりに自動仕分け機能がありますので、繰り返し使ううちに使い勝手も良くなってくると考えられます。
クラウド会計ソフトは、多様な業種に広く使われることを前提に作られています。そのため、一般的ではない特殊な業種や一般よりも複雑な会計処理が必要な業種だと、対応できないこともあります。
自身の業種が特殊と思われる場合には、まずは1ヶ月だけでもトライアルで自社にマッチするかどうかを確認してみるといいでしょう。
クラウド会計ソフトは、ここ数年で利用者が増えてきたサービスです。そのため、大半の税理士は以前からある購入型の会計ソフトを使っており、クラウド会計ソフトに対応していないのが現状です。
すでに顧問契約をしている税理士がいる場合には、突然クラウド会計ソフトに変更するのではなく、予め相談してから変更するようにしたほうがいいでしょう。
もしも顧問税理士がクラウド会計ソフトに対応しておらず、先走って変更してしまうとトラブルになりかねません。とはいえ、なかにはクラウド会計ソフトへの移行を敬遠する税理士もいます。
顧問契約をしていなくても、クラウド会計ソフトに対応していない税理士に確定申告などで依頼をしようとしても対応してもらえないこともあります。
自社のメリットを考えて、クラウド会計ソフトに移行するのがベストだと判断したなら、この機会に税理士を変えることも考えてみてもいいかもしれません。
サービス提供会社によっては、クラウド会計ソフトに対応している税理士を紹介してくれるサービスを展開しているところもあります。
ぜひチェックしてみてください。
フリーランスが増えている現状を鑑みても、クラウド会計ソフトを利用する起業家や事業者は今後も増えていくはずです。
そうなると、税理士側もいずれは対応せざるをえない状況になると考えられます。
先を見越してすでに対応を始めている税理士もいますから、対応できる税理士の少なさを、大きなデメリットとして考えすぎる必要はあまりないでしょう。
初心者にとっての使いやすさが魅力!
freeeは簿記の知識が乏しい人が会計を担当する会社に特におすすめです。感覚的に操作することができます。またシェアNo.1を誇るだけあって、そのコストパフォーマンスは素晴らしいです。
初期費用は一律で無料です。
ミニマム版とベーシック版の最大の違いは、経費精算機能があるかどうかです。
経費精算も同時に導入するのであれば、ベーシック版を利用しましょう。経費精算機能が不要であれば、ひとまずはミニマム版の導入を検討すると良いでしょう。
玄人好みの安心クオリティ
freeeと同じく、コスパが高いです。
ただし操作画面などの違いでfreeeとどちらが良いかの好みは分かれるので、どちらを使うか迷ったら、まずは使ってみることをおすすめします。色々比べて悩むより使ってみて決めるほうが早いです。
無料お試し期間は1か月間
初期費用無料です。スモールビジネスとビジネスの大きな違いは、登録可能な部門数とMFクラウドストレージの容量です。
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ストレージ容量を超えてしまった場合も、あとからのプラン変更で対応できますので、まずはスモールビジネスプランがおすすめです!
積み重ねられた安心の実績
会計ソフトの老舗、弥生が提供するクラウド型の会計ソフトです。正直なところ、コスパの面ではfreee、MFクラウドにやや劣ります。
ただし、特筆すべきはサポートの厚さ。画面共有サポートなど、他社にサポートもあり大変充実しています。
また、また最大2年間使える各種キャンペーンを実施中なので、導入の検討をおすすめします。
弥生会計オンラインを選ぶなら、ベーシックプランを使用しましょう。セルフプランとの違いはサポートの有無です。セルフプランでは、最大の2ヶ月の初期サポートを除いてサポートを受けることができません。
画面共有サポートを始めとした充実したサポートは、弥生会計オンラインの大きな魅力であるため、サポートサービスが利用できるベーシックプランをおすすめします。
無料体験プランは最大2ヶ月間です。
クラウド会計ソフトは、以前からある購入型の会計ソフトと比べても、経理業務にかかる手間や時間を格段に改善できます。それだけでなく、経営会議など意思決定におけるスピードも早くなることでしょう。
自社にマッチしたクラウド会計ソフトの導入は、結果的に社内全体の業務効率アップと経営判断のスムース化に繋がります。
毎月ランニングコストはかかりますが、経理業務にかかるコストパフォーマンス全体を考えれば、使用するメリットのほうが大きいはずです。ぜひ導入を検討してみることをおすすめします。
画像出典元:PEXELS、O=DAN