TOP > インタビュー一覧 > CHRO(最高人事責任者)から40代で起業。働く人がイキイキと活躍できる世の中の実現を目指す
株式会社EpoCh 代表取締役CEO 遠藤亮介氏
組織の中で人財をどう活かすか。多くの企業が頭を悩ませる問題だ。
そんなHR領域で、組織開発・戦略人事のアドバイザリーと経営層向けの伴走型ビジネスコーチングサービスを手がける株式会社EpoChが2023年3月に創業した。
代表の遠藤亮介(えんどう・りょうすけ)氏は、大手外資系企業を中心に組織開発・人事領域の業務を長く経験し、CHRO(最高人事責任者)まで務めた経歴を持つHRのプロだ。
そんな遠藤氏はなぜ、起業を決意したのか。事業アイデアの考え方や自分の強みの見つけ方なども含め、創業経緯を深く語っていただいた。
——まず、株式会社EpoChの事業内容について教えてください。
弊社は現在、大きく分けて2つの軸で事業を展開しています。1つ目が、「組織開発・戦略人事支援」と「HR組織力強化支援」のアドバイザリーです。
このサービスでは、私がこれまでHR領域で積み重ねてきた経験を活かしながら、企業の経営戦略や事業戦略を深く理解したうえで、人事・組織まわりの課題解決に向けて伴走支援を行っています。
単なるノウハウ提供、コンサルティング実施で終わるのではなく、お客様が抱える課題に合わせて、解決に必要な方法を考え、その組織のリーダーの方々に伴走して共創しながら実行していくのが特徴です。
特に現在はスタートアップ企業からの引き合いが多く、CHROの代行のような形で企業に入らせていただくこともありますね。
2つ目が、「ICF(国際コーチング連盟)認定資格コーチ」という私の保有資格を活かした企業トップ・経営幹部・起業家向けのエグゼクティブコーチングと伴走型ビジネスコーチングサービスです。
経営者・起業家が企業の社会的意義や経営目標を達成するために、新たな気付きを与えるとともに、経営者は孤独になりやすいため、事業アイデアの壁打ちも含めて「対話型で伴走する」スタイルでお手伝いをしています。
そのご支援を通して、経営者や組織リーダーが描く経営戦略と事業戦略の理解にもつながり、1つ目の組織開発・戦略人事支援アドバイザリーと組み合わせ、「伴走型ビジネスコーチ」として、経営者個人の支援にとどまらず、組織全体の支援に入らせていただく事例も出てきています。
——貴社の事業内容には、遠藤さんのこれまでのキャリアが活かされているとのことですが、どのようなご経歴を歩まれてきたのでしょうか。
私はこれまで、外資系企業のHR領域を主軸として仕事をしてきました。
米国系のエグゼクティブ向け人材紹介会社で人材コンサルタントとして仕事をした後、企業側で人事の仕事に携わりたいと思ったことから、2005年にドイツ系製薬会社に転職。
人財採用とHRBP(人事ビジネスパートナー)に従事しました。その後、2012年から2019年まで外資系のBtoC企業2社で日本法人のHR責任者を歴任。
2019年7月から東証プライム市場上場の人材紹介会社で執行役員として、12か国をカバーするグローバル全体のCHROを拝命し、組織づくりに携わってきました。
HRとしては17年間、その内でHRトップとしては10年間の経験を経て、2023年3月に株式会社EpoChを創業しました。
——遠藤さんのご経歴であれば、今後やりたいと考えていることに対して、さまざまな企業から転職のお誘いがあったのではないかと思うのですが、なぜあえて起業する道を選ばれたのですか?
今後の人生を考えたとき、自分の使命だと思えることにリスクをとってでも新たに挑戦したいと考えたからです。
私はこれまでのキャリアの中で、HR領域でやるべきことは一通り挑戦し、経験を積み、各企業・組織に貢献することができました。
今後は私の経験や蓄積してきた知見を活かしながら、ひとつの企業や組織の枠というものから脱却した「世の中目線」で、働く人をイキイキと輝かせ、組織の活性化を促し、働く人と組織のポテンシャルを最大限に引き出す仕事に全力を注いでいきたい。
そのためには、自分自身に新しい挑戦的な環境を創る意味でも、「起業」という選択肢が最適だと考え、株式会社EpoChを創業することに決めました。
——起業を決意したのは、いつ頃のことでしたか。
CHROとして3年が経過した2022年の年明け頃に起業という選択肢が浮かび、具体的に起業を決意したのはその年の秋です。
10月には退職の意向を勤め先に伝え、半年ほどの時間をかけて残りの仕事を全うし、3月に法人化の手続きを済ませました。
——新たな挑戦がしたいと考えていたとはいえ、起業への不安はなかったのでしょうか。
もちろん、不安はある程度ありましたが、むしろ40代という年齢を考えると、今起業に挑戦しないと後悔しそうだなと感じておりましたし、失敗・挫折と併せて再現性ある成功体験の経験値が豊富にあるからこそ起業するには非常に適したタイミングだと考えました。
やらないで後悔するよりは、やって後悔したほうがいい。リスクをとることでしかチャンスは生まれないと考えていたので、起業への迷いは全くなかったですね。
——事業アイデアはどのように考えたのですか?
事業アイデアの考え方は起業家によってさまざまだと思いますが、私の場合は自分自身の想いと得意なこと、優位性を活かして構想を練っていきました。
起業後にやりたいことの大きな方向性は見えていたため、事業アイデアを固めるよりも先に、まずは会社のパーパス(社会における存在意義)とミッション(お客様に対する使命)を定めました。
会社の軸が固まった段階で、事業内容を詰めていったタイプです。
——会社の軸となるパーパスやミッションをすべてひとりで考えるのは、かなり大変だったのではないでしょうか。
いえ、全く迷うことなく、自分の中のイメージをパーパスとミッションとして描くことができました。
株式会社EpoChのパーパスは「Empower People & Organization(「働く人と組織のイキイキ」を実現する)」、ミッションは「Create value through HR(HRの介在で新たな価値を創造する)」と明文化したのですが、これらの言葉は私が日頃から考え、スマートフォンにメモしていたものだったのですね。
自分がこれまで気になってメモしておいた言葉を眺めているうちに、それらがパズルのようにぴったりと合わさって、パーパスとミッションが完成しました。
加えて、パーパスとミッションの大文字部分の頭文字を組み合わせると「EPOCH」という言葉が浮かび上がってきました。
「EPOCH」から思い浮かぶのは、「epoch-making(エポックメイキング)」という言葉。
歴史的な変革や画期的な出来事を引き起こすことを意味しており、会社名にも最適だと感じました。それで、弊社の社名はパーパスの冒頭の「E」と、ミッションの冒頭の「C」を大文字にした「EpoCh」と決定したんです。
パーパスやミッションを考えたり、社名を考えたりする期間は、起業準備の中でも一番ワクワクしましたね。
——逆に、起業するにあたって苦労したことは何かありましたか?
「起業」という初めての経験に挑む以上、苦労はむしろWelcomeな姿勢でおりましたので、ネガティブに捉える要素は何一つありませんでした。
ただ、仕事をする上で必要なガジェットやシステムの準備などをすべて自分でやらねばならず、それらに思った以上の時間を費やす必要があり、会社の総務や経理、IT部門の方のありがたさを実感しました。
これまでは分からないことがあれば社内の誰かに聞けば解決できましたが、これからはそうはいきません。システムの契約や不具合ひとつとっても、自分で調べて、一つひとつを解決していかなければならないので、改めて自分で会社を興すということはこういうことかと気づかされました。
また、苦労とは少し違うかもしれませんが、会社の登記を行ってから登記簿謄本が届くまでの10日間ほどは手続き上の空白期間のようなものがあり、その時期は「何物でもない自分」を改めて実感しましたね。
法人登記の手続きはすべて完了しているものの、法人口座もつくれなければ、健康保険証の申請もできない上に、事務手続きのシステムを契約しようにも「法人の存在が確認できないから」と複数社から契約お断りの連絡が入ってしまって。
自分が本当にゼロからスタートしたことをひしひしと実感した瞬間でした。
——当然のことではあるものの、大きな環境の変化を実感されたのですね。
そうですね。起業したことで、自分が過去所属していた数々の会社の名前がいかに多くの方から信頼されていたのかがよく分かりました。
株式会社EpoChはまだできたばかりの会社で、信頼性の基盤はありません。
自分自身で信頼を獲得し、事業や私の行動に説得力が伴うような実績をしっかりと丁寧に積み重ねていかなければならないと、改めて気を引き締めるきっかけになりました。
——貴社の顧客としては、どのような企業をターゲットとしているのでしょうか。
現在は日本のスタートアップ企業のお客様が多いのですが、私としてはこれまで外資系企業で培ってきた経験もあるので、日本企業と外資系企業の両方をターゲットにしています。
日本の中小企業、スタートアップ企業を中心とした組織づくりや戦略人事の伴走支援はもちろん、日本進出を考えている海外企業の組織戦略の支援なども手掛けていきたいと考えております。
ありがたいことに、海外企業のアジアパシフィックのハブとなるシンガポールからの直接の引き合いも数件受けております。
結果、日本に拠点を置く日本企業・海外企業問わず、「働く人」と「組織」が個性を活かしてイキイキすることに貢献できる仕事をやっていきたいです。
——日本と海外、双方の企業を相手にした事業展開を考えているのですね。
そうなんです。私がこれまで外資系企業に勤めていたのも、大学時代から日本と海外をつなげたいという想いを持っていたからです。
起業後もその想いは変わらず、自分の事業を通じて、日本の人財を海外に、海外の人財を日本につなぐこともできたらと考えています。
——「日本と海外をつなぎたい」と思うようになったのは、どうしてですか?
はじめのきっかけは、高校時代に海外映画に興味を持ったことで、日本に居ながらにして独学で英語力を高めた経験にあると思います。
私はこれまで、大学で異文化コミュニケーションを専攻し、就職後は数社の外資系企業に勤めてきましたが、実は海外で暮らした経験は一切ないんです。
それでも多国籍の方々と直接ビジネスができる英語力を身につけることができましたから、日本の中から海外に対してできることがあるはずだと思うようになりました。
培ってきた国際コミュニケーション力と国際シーンでのビジネス経験を活かしながら、私の大好きな「日本」と海外とを「働く人」という軸で結び付けていきたい。私が仕事をする上で、長く変わらない想いですね。
——ここまでのお話から、遠藤さんはご自身の強みを明確に認識し、起業へと結び付けていらっしゃる印象を受けました。自分の強みを発見することは、そう簡単なことではないように思うのですが、強みを見つけるコツは何かあるのでしょうか。
強みが見つからないのは、何か一つの領域で秀でたものを探そうとするからです。
よっぽどの才能がない限り、特定の分野でトップレベルの強みをつくることは難しいですから、自分が過去に褒められた経験のあることなど複数の要素をかけ合わせ、オリジナリティーあるオンリーワンを見つけると良いと思います。
私も「グローバルな事業会社での経営メンバーとしての経験」「HRの多岐に渡る経験」「コーチングのスキル」、そして「挑戦するマインドセット」などさまざまな要素をかけ合わせた上で、事業の種となるような「自分だけの個性とオリジナリティー」を発見しました。
人と比べるのではなく、自分がすでに持っているもの(Can)と自分がやっていきたいこと(Will)を振り返りながら、それらをかけ算することで得意領域や強み、自分の特徴・持ち味を見出せると良いのではないでしょうか。
ただ、こういった自分の強みの発見は、あくまでお客様の役に立つための手段だと思っています。自分の強み、自分の優位性が事業を行う上での主語になってしまうと、ただ独りよがりのサービス提供になってしまいます。
そうではなく、やはり「世の中」と「お客様の組織と働く人」を主語に置いて、彼らが何を思い何を求めているか(Need)を主軸に据えた事業運営を大切にしていきたいです。そのうえで、その「Need」に、自身のオリジナリティーである「Will」と「Can」を重ねていくべきだと思っています。
——ちなみに、日々お忙しい中かと思いますが、遠藤さんのリフレッシュ方法は何かありますか?
リフレッシュ方法は3つあります。
1つ目が少人数で行う食事会です。ありがたいことに、起業してからというもの、友人知人や過去に仕事をご一緒させていただいた方から食事に誘っていただく機会が増えました。週に3〜4日は食事会に参加しているでしょうか。
食事会といっても、もちろん仕事の話がメインになることが多いのですが、それでもお話する方の持つエネルギーが刺激となって私自身も元気になり、お互いが精神的なギフトを与え合っているような関係性を築けます。
こういった機会を設けていただき、声をかけていただけるのはとてもありがたいことだなと感じています。
2つ目が、パーソナルトレーナーをつけた週1回のトレーニングです。30代前半の頃に外資系企業で大きな責任を持ち始めたタイミングで、タフな状況に心身共に健全で居続けられるよう始めた運動習慣なのですが、もう15年ほど続けています。
3つ目が、個室のサウナです。サウナで体の調子を整えるだけでなく、サウナに入っている時間はスマートフォンなどを見ることができないので、良いデジタルデトックスになるんです。
何も考えずに頭の中をクリアにしたり、場合によってはビジネスプランや会社のこと、そして仲間のことなどを内省できるため、私にとっては必要不可欠な空間ですね。
——最後に、今後の目標についてお聞かせください。
まずは1年後、現在アドバイザーをさせていただいているお客様の各組織が、継続的に前進できている状態を創りたいです。
また、自分が組織開発や戦略人事を含めたビジネスコーチとして伴走支援を行うことで、その方の中で閉ざされていた想いや能力が解放され、日本で働く多くの方の可能性を広げるお手伝いができたらと考えています。
さらに、近いうちに、弊社のパーパスやミッションに共感してくださる仲間を募り、会社としてできることを増やしていきたいですね。
いずれは弊社の事業を通じて世界に挑戦する日本の企業や人財、日本市場に挑む海外の企業や人財が増え、「テクノロジーと人の共創」含めて、働く人と組織がそれぞれの「個性」を「強み」として活かしながら、より一層イキイキできている状態創りを目指していきたいと思っています。
株式会社EpoCh
・住所 〒150-0001東京都渋谷区神宮前6-23-4
・代表者名 遠藤 亮介
・会社URLhttps://epo-ch.jp/
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