TOP > インタビュー一覧 > 海外で活躍する女性起業家の実態 〜2児のママがシンガポールで起業した理由とは?株式会社ハニーベアーズ〜
コロナ渦でなんとなく縁遠くなってしまった海外。
ですが、こんな中でも海外で活躍している日本人の女性起業家がいました。
今回は起業ログでは珍しい海外で活躍している女性起業家の神谷智子様にオンラインで取材しました。
プロフィール
神谷 智子
ー「夫の転勤をきっかけに起業した」とお伺いしましたが、海外での起業はハードルが高いように思います。どういう経緯で起業をしたのか教えていただけますか?
はい。私は、新卒で電通に入社したのですが、当時は起業など1ミリも考えていませんでした。それから今の主人と結婚して、夫のシンガポールへの転勤が決まり、一緒にシンガポールに行くことになりました。
私は2度、シンガポールに移住しているのですが、このときが1度目のシンガポールでした。
当時はまだ子供もいなかったので、シンガポールでフルタイムで就職しようとも考えましたが、なかなかすぐにはやりたい仕事と出会うことができませんでした。そんなとき妊娠が発覚したのでパートとしてメディア対応の手伝いなどをしていました。そして1年半が経った頃、シンガポールから日本に帰りました。
ー日本に帰ってからは何をなさっていたのですか?
帰国してからは、老人ホームで施設長として働きました。私の家族が経営している医療法人は病院の他に介護施設も営んでいて、ちょうど新しい老人ホームがオープンするタイミングだったので、これも何かの縁だと思い「手伝いたい」と私から父にお願いをしました。
介護業界で働くのは初めてでしたが、高齢化社会になる今後の日本のために、自分が吸収できること、出来ることが必ずあると思ったので。
ー老人ホームのオープン準備は大変だったのではないでしょうか?
そうですね。一からwebページ作って入居者を募集をしたり、プロモーションや経営方法を考えました。もともとそんなに興味がなかった分野でしたが、やっていくうちに楽しくなり、
経営とはこういうことなのかと、実感することができました。
ー施設長としての経験が何かに繋がったのでしょうか?
この経験が、起業に繋がったのだと思います。
施設長として経営を任されたことで、経営の楽しさを感じました。
そして老人ホームの施設長として結果が出てきてからは、さらにシニアビジネスに特化したサービスを立ち上げたくなり、施設長を辞めることにしました。
ー次々とご自身の経験を次のステップに変えられていますね!そのマインドが本当に素敵です。施設長をやめてからは、何をされていたのでしょうか?
その後はベンチャー企業に就職しました。仕事内容としては、日本全国の新聞販売店のネットワークを活用しながら、そのエリアに住んでいる高齢者の困りごとを解決するといったことをしていました。
私は、デジタル企画部長というポジションに就き、デジタルデバイスの開発と営業をしていました。
ーそこで起業された会社にも繋がってくる「デジタル」に関わることになったのですね!
そうです。シニアとデジタルはかけ離れた存在と考えられがちですが、私は、シニアにももっとデジタルの恩恵を受けて欲しいと思っています。デジタルの格差は情報の格差にもなりますし。
そこで、そのベンチャー企業では、老人でも簡単に使えるデジタルデバイスを開発しました。その時にデジタルって面白いなという気づきを得られました。
ーなるほど。これらが起業するきっかけになっているというわけですね!
そうなります。
施設長としての経営経験とベンチャー起業でのデジタル企画を担当して、デジタルの恩恵を身をもって感じました。そしてもっとサービスを開発したいという思いが芽生えました。
その頃にちょうど2度目の主人の転勤によって、再びシンガポールに行くことになりました。
それまでに様々な経験をすることができたので、起業に対してのハードルは全く感じておらず、もはや日本と比較しても法人登記が簡単かもしれないくらいのレベル感でした。
ー海外で起業と聞くだけで構えてしまいそうですが、そうなのですね!
現地では、女性が働きやすい環境だったので、やりたいことをやるには自分で起業して会社を持つのが手っ取り早いと思えました。
今まで働いていたベンチャー企業でも区切りがよかったので、去年(2020年)の5~6月に株式会社ハニーベアーズを立ち上げました。
ー実際にシンガポールで起業してみて、体感としての起業のメリットはありましたか?
大きく2つあります。1つ目は、シンガポールは国として外国企業を呼び込むことに積極的だということです。というのも、政府の政策として、国が外国の優秀な企業を資産として持つことで国の価値をあげる、ということをしているからです。
2つ目は、税金関係です。日本では法人税と住民税を含めて30%前後払わなくてはいけないのですが、シンガポールには色んな条件はあるものの、基本的に17%で一律です。
シンガポールでは、国としても海外企業を呼び込みたいし、法人も会社を置くことで受けられる恩恵が大きいというwin-winな関係が成立しています。
ーシンガポールでの女性の働きやすさはどう感じますか?
国の方針で働く女性に優しい環境が作られており、かなり働きやすいです。特に、シンガポールには働く女性が多いので、外国人のシッターさんを雇用しやすい環境にあります。
私自身も、インドネシア人のシッターさんを雇っていますが大変助かっています。シッターさんを雇っていなかったら、日々変動する中で集中して仕事に打ち込めていたかわからないです。
ー聞いている限り、シンガポールでの起業にデメリットはなさそうですが、実際どうでしょうか?
良い質問ですね(笑)
2つあって、1つ目は、日本の企業向けにサービスを展開しているのですが、基本的にオンラインで活動しているので、たまにはオフラインで会いたいと思うことはあります。シンガポールにある企業なので、私が求めるレベルのコミュニケーションまでとれていないという現状があります。
2つ目は、最近は国内で色んなことがビジネスとしても成り立つ世の中なので、突然「シンガポールの企業です」と言うと「え、海外なの?」という反応をされることがあってそこは不便に感じます。
日本独特の島国思想というか、海外の企業だと色んなことが複雑なのではないかという風に思われがちですね。そういう意味でも、日本ではまだまだ海外に対して壁を感じている人が多いような気がします。
もしかしたらこれは日本のこれからの課題なのかもしれないですね。
ー確かに、おっしゃる通りだと思います。シンガポールで働くことで日本の課題が浮き彫りになっているという感じですね。
本当にそう思います。女性が働くためには、子供がいる場合、サポートがないと両立が難しいです。日本も無認可保育園であれば、お金があれば入れることができますが、高額な場合があるので、働いたお金がなくなってしまいますよね。
日本政府は、女性活躍を推進しているのに、その裏側には気軽に働けない女性もたくさんいる状況です。本当にシンガポールに来て考えさせられることが多いですね。
ー日本でもコロナで少しずつDXが進み始めている印象ですが、日本と比較してDXの浸透具合はどうでしょうか?
コロナ禍での感染者管理は、シンガポールではデジタルを活用して徹底的に管理されています。
施設やレストランも含めて、建物内に入る人は必ず政府が作ったアプリのQRコードや自分のIDカードをスキャンしないといけないのです。それを、モールのエントランスにいる人が確認しています。
そして、もしそのモールで感染者が出たら、そのモールにいた人が認識されて、政府の担当者から連絡がきて、病院に行くように指示されます。
このような体制が整えられているのでシンガポールでは感染者はほとんどいない状態が維持できています。
ーそこでもシステムで管理するんですね。日本と比較してやはり進んでいますね。
そうですね。積極的にシステム管理をしていこうという考えが国全体で浸透していると、住んでいて感じますね。
しかも、小さなレストランとか商店みたいなところでの電子決済も浸透しているんですよね。メニューもペーパーレスが基本です。小さいお店で、老人がやっているようなお店でもきちんとペーパーレスになっているので、デジタルに対しての認識の規模感が違うなと感じます。
ー日本とシンガポールでシニアのデジタルに対する抵抗感の違いみたいなものはあったりするのでしょうか?
それはおそらくないですね。シンガポール政府の手厚いサポートがあるからこそ実現しているのだと思います。例えば、スマホを持っていない高齢者には四角い箱みたいなトークンという機械を全ての高齢者に無料で配ります。そのトークンはBluetoothで近くの人のスマホや街に設置しているシステムと繋がれるので、そのトークンを首元やポケットに常時しておくことで、位置情報などが管理されています。それによって、何かトラブルがあったら迅速に対応できていたりします。
あとは、シンガポールのカルチャーとして家族で住むということが普通というのも、デジタルが国全体として浸透している要因なのではないかと思います。
日本では核家族化が進行していますが、シンガポールでは両親と住む、もしくは近所に住むことを前提に不動産を購入すると補助金が一部屋あたり300万円程もらえるといった政策を打つということまでしています。
そうすると家で、高齢者がデジタルがわからなかったら孫や子供にも聞くことができますし、総合的に考えるとそういう面も含めてうまいなと思いますね。
ー最後に、そんな起業の壁も乗り越えた神谷さんから起業を考えている方にメッセージをお願いします。
国によって働ける条件とか国によってあることは理解した上で、自分はどうやって働くのかきちんと考えるのが大切だと思いますね。
ただ、その壁が高すぎるかというとそんなことはありません。
それこそ、雇用ビザを持っていない場合、シンガポールで働くためには帯同ビザの他に別途LOCといった雇用許可証のようなものが必要になるので、それを取得することがひと手間かかます。私自身も1回目には、リジェクトされましたし。
LOCの場合はその壁が高すぎるかというとそんなことはありませんが、雇用ビザを取得することは様々な条件をクリアする必要があり、現在シンガポールではハードルが高くなっています。
起業を怖がるよりも、むしろ働きたいスタイルがあるのであれば諦めずにそれを実現するための道を探していくと必ず答えが出てきます。
なので、女性で起業したい人や海外で働きたいという人がいれば、ぜひ諦めずにトライして欲しいです。
慶應義塾大学経済学部出身。いろんな人と出会って話をするのが好き。
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