【令和の渋沢栄一になる】エンジェル投資で日本にイノベーションを

【令和の渋沢栄一になる】エンジェル投資で日本にイノベーションを

記事更新日: 2021/11/17

執筆: 大和咲弥花

●株式会社54 代表取締役社長 山口豪志氏
クックパッド株式会社に入社し、2009年の同社IPOにトップセールスの貢献。12年より3人目の社員としてランサーズ株式会社に参画し、約3年の在籍期間中に事業を急成長させる。2015年5月にベンチャー支援を強化するために株式会社54を創業。

さまざまなビジネス経験を経て、現在はエンジェル投資家としてベンチャー投資に注力する山口豪志さん。

今回は、ご自身がエンジェル投資家として活動される中で、エンジェル投資家としての心構えやベンチャー投資の現状に対してのお考えをインタビューしました。

令和の渋沢栄一になりたいとは?

”最強経済人”渋沢栄一

ーブログを拝見して、「令和の渋沢栄一になる」という文言がとても印象的でしたが、具体的にどういったことでしょうか?

まず、渋沢栄一がどんな人だったか、というところから始まります。

新政府の役人として、いわゆる銀行の1つ目をつくったり、海外のビジネスの仕組みや株式会社の仕組みを学び日本に取り入れたり、一生涯の間に会社を500社ほど作り上げた。

ざっと言えば、そういった人物だと思います。

そして、僕がその「渋沢栄一みたいな」と語る上で一番意識する要素は、一番最後の

「500社くらい会社を作る」というところです。

当時の会社というのは、「財閥」や「〇〇家で継がれる会社」など、その家の者がトップとなりその下に子会社などを作っていく、いわゆる「ピラミッド型」の会社の在り方が主流でした。

しかし渋沢栄一の場合は、色んな人と共に社会に必要なサービスを、どんどん並列的に生み出していった。

「社会の要請に応じて会社を作る」みたいなところがすごくいいなと思って。

現在日本にも、高齢者介護の問題とか、シングルマザーの貧困問題とか、日本特有の社会課題ってたくさんあるんですけど、やっぱりそれを解決するような手段や、対応する法人がまだまだ足りない。

僕自身社会課題を解決するような「社会起業家」の育成に協力していて、それはそれで重要だし尊いことだと思っています。

しかし「社会起業家」まで振り切ってしまうと、30人とか50人とかの組織で、助けられる対象者が多くて数万人規模の人を助ける、超ローカルな課題解決にならざるを得なかったりする。

全ての対象者を一括で助けるには、そういった小さい仕組みの積み重ねだけでは追いつかないから、株式市場に出たり、グローバルに展開して、特定の課題解決をしながら、その課題の周辺にある領域の課題も同時に解くような企業をどんどん生み出して行きたいと思っています。

 

投資家として生きるわけ

それで、僕が投資家に徹底している理由のひとつとして、僕って社長に向いていないんですよ。(笑)

ーと、言いますと?

社長に向いている人って、2種類いて。

ひとつが、「完全なピラミッド型の体育会系組織」みたいな、どちらかと言えば将軍型の人。

社員の方々は「社長のために僕たちがいます!」みたいな組織で、これはこれで必要だと思います。

そういうワントップ型の起業家は社長に向いている。

もうひとつは、「フォロワーシップ型」みたいな、社員は家族!という感じで社員全員をケアしながら経営する人。

これは急成長というよりかは、「みんなで着実に成長していこう」っていう方が近くて、こういった会社も必要だし、そうやってスピードを殺しつつ誰も離脱しないようにサポートしながらみんなを大切にするような人も、これはこれで社長に向いていると思います。

要は社長に向いている人って、「ピラミッドの上に立つ人」か「ボトムになってみんなを支える人」だと僕は思っています。

けれども僕はそのどっちでもなくて、「中途半端に優しくて、中途半端に突破力がある」みたいな。(笑)

だからどちらかというと僕なんかは、会社の社長をやるよりかは、アドバイザーだったり顧問だったり社外取締役だったり、チーム全体からはちょっと距離をとっている関係者の方が対象の企業にとっては良いと思っています。

そういう特性って投資家に求められるポジションであり、スキルとしてすごく合うので、結果として投資家に落ち着いた、という面もあります。

あとはやっぱり、前述したように社会的に価値がある会社をどんどんつくっていきたいという思いが強いです。

僕はクックパッドもランサーズもプロトスターも、初期のメンバーとして参画しましたが、社員2,3人のところから10人20人100人前後のところまで持って行ったり、会社全体としての売り上げを上げたりすることは僕にとっては容易いことなのです。

しかし、1社に深く関わって1つの課題である点を解決していくという動き方の企業をつくっていくよりも、色んな企業に関わって、その会社同士を繋げながら点の集合体である面で社会全体を動かしていくっていうのが、僕のやりたいことなんです。

なので、ひとつの会社だけにコミットしていくというよりも、複数の色んな会社に関わって色んな会社がそれぞれに良い未来を創れるような成長ができるようにサポートしていきたいと思っています。

 

令和の渋沢栄一になるために

「意味のイノベーション」に投資する

ー「『意味のイノベーション』に特化してアイデアや視点のユニークさに投資したい」とおっしゃっていましたが、「意味のイノベーション」について教えてください。

イノベーションを起こすには、2つのエンジンしかないと思っていて、1つ目は、やはり圧倒的に「技術」です。

エジソンの電球だったり、蒸気機関の発明だったり、タッチパネルのセンサーだったり、歴史的にも、我々人類を進化させてきたのは間違いなくテクノロジーでした。

けれども科学技術によるイノベーションを起こせる人って、めちゃくちゃ限られてますよね。

科学技術の世界でイノベーションを起こせるのは、本当に一部の天才達で、それは本当に素晴らしくて尊いことなんですけど、じゃあ残りの人類はそのイノベーションが起きることをただ黙って待っているだけなのか?という話になります。

例えば科学技術によって生み出された「蒸気機関」という熱エネルギー。

革命的な発明だったが、これ最初は何に使えるかはわからなかったんですよね。

それを、「蒸気機関車として使おう」と意味をつけることによって初めて移動するサービスとして社会を変えることができた。

「蒸気」というテクノロジーの基礎を見つけて、それをアプリケーション化(サービス化)して実社会に落とし込む。というような、技術が社会に浸透していく段階があるんです。

要は世の中には、

少数が圧倒的な価値を出すイノベーションである『科学技術』

残り全ての人がチャレンジできる自らの気づきや経験・体験から見出した『アイデアや視点によるイノベーション』である物づくり要素を含むアートやビジネスモデル

という2つのイノベーションがある、ということです。

この2つ目のイノベーションを、起業家の先輩であるデジタルステージ社の熊崎さんは「意味のイノベーション」と呼ばれました。

「意味のイノベーション」は、ひとつの技術に対して、視点とかアイデアによって切り口を変えることで、どんどんアプリケーションとして可能性や利用用途を広げることができる。

これは、技術者でない誰でもがチャレンジできること、つまり、誰もが起業家になれるし、誰もが結果としてイノベーターになれるというわけです

なので僕はテクノロジーに特化している技術が強みのベンチャー企業に投資するよりも、その技術に「意味」を持たせることで社会を変えていくような起業家やベンチャー企業に投資したいと考えています。

シード投資を強化する

ーシード投資を強化するとおっしゃっていましたが、シード段階の投資では実際判断要素が少ないと思うのですが、どこを見ているのでしょうか?

いや、例えば僕があなたに投資しても、多分あなたを成功させられる自信はあるんですよ。

ーえ!!(笑)

それぐらい、ベンチャーに投資してベンチャー企業をつくるってこと自体ハードルが低いと考えています。

どちらかと言うと、起業家自身のマインドとか起業家自身の想いがどれくらいあるかとか、素直さがあるかどうかのほうが重要。

素直さっていうのは、例えばこうした方がいいんじゃないとかこういう人に会った方がいいんじゃないかとか、そういったアドバイスを愚直に聞いて行動できる人。

やはりどうしても、アドバイスを素直に聞ける人と聞けない人って明確にいて、実際に聞いて行動できる人って一握りしかいないんですよね。

ービジネスモデルよりも、人に投資するという方が近いのでしょうか。

そうですね。ビジネスモデルって時節によって変わりますしね。

コロナ前にうまくいくと言われていた旅行や海外系のビジネスモデルもことごとく全滅しました。

そんな時、情報を正しくキャッチアップしたり、人のアドバイスを素直に聞いて事業をすぐにピボットできた人がやっぱり成功していますよね。

the first angel investorでありたい

そして、僕が今まで投資してきた会社は36社なんですけど、その中で成功している会社に共通点があって。

それは自分が「ファーストインベスター」だということです。

僕が一番最初の投資家としてその企業と対峙して投資することを決めたり、僕が他の投資家を紹介したり、僕と他の投資家に信頼関係があって一緒に共同投資している案件はすごくうまくいっています。

けれども、私が投資する以前に他のVCが入っていたり、エンジェル投資家が投資してしばらく経ったあとに投資した案件はどうにもうまくいかない。

要は自分と起業家が深いコミュニケーションを取れる関係が築けている会社の方が圧倒的にうまくいっている、ということです。

最初の投資家として自分のアドバイスを素直に聞いてくれたり、事業をピボットする時などもしっかりと話し合って進められる関係が築けていると必ずうまくいく。

誰からも出資を受けていなくて、これから会社をどうつくっていこうと考えている志があって、自利より利他への意識がある起業家にだけ投資したいと思っています。

エンジェル投資家なら、エンジェルであれよ。

ー日本のベンチャー投資とエンジェル投資の現状をどう見ていますか?

一言でいうと、「欲が強い人」が多すぎる。

お金持ちがお金のことばかり言い過ぎるのはちょっといただけないですね。

こんなこと言ったら怒られそうだけど。(笑)

その企業の成功確率を最大化するように、自分も一緒になって汗をかいて動くのがエンジェル投資家なのでは、と思っています。

お金を出すだけ出して放っておいて、その企業が失敗した時に文句言うのは違うと思います。

エンジェル投資家なら、文字通りエンジェルであれよ。って思いますね。(笑)

もちろんそういうスタイルもあるとは思うんですけど、「投資家だから起業家よりも偉い」っていうスタンスは、僕はちょっと違うかな、と思います。

ーエンジェル投資は欧米から始まった概念だと思いますが、日本との違いなどありますか?

アメリカのエンジェル投資で言えば、1970〜1980年代のベル研究所で、研究所のOBたちが若手の研究者に対して、「この技術は面白いよ」とか「俺の技術を使ってくれないか」という風にノウハウやナレッジの共有を行ないながら応援していたのが始まりと言われていて。

そのバックグラウンドがすごく良いとしてVCを始めたのが、僕の心の師である原丈人さん。

彼がVCを始めたのが1980年代で、その頃のVCはどちらかというとエンジェルの延長みたいな感じで、ナレッジやスキルを提供してしっかりと事業に活かしていたと聞きました。

なので本来は、エンジェルからはお金の部分を期待してはいけないと思っています。

お金は公庫から数千万円規模で借りられるし、エンジェルからの投資額が100万だとしても50万だとしても、その人のナレッジやスキル、ネットワークを投資して貰うべきだと思います。

 

エンジェル投資家としての心構え

ー今のエンジェル投資家は、「視野が狭い人が多い」とのことですが、この「視野が狭い」というのはどういった意味でしょうか。

うーん。

さっきの、「お金の話ばかり」ということに通ずると思います。

僕のエンジェル投資家としての成果っていうのが3つあって。

1つ目は、「起業家自身の成長」。

会社がうまくいこうがいかまいが、起業経験を通じてやっぱり起業家自身は圧倒的に成長するんです。

投資を受けて、事業が進んで、社員を雇って、できることもどんどん増えていって、自信がついていったり、人間的に厚みが出てくる。

投資家として、企業の成長だけでなく起業家自身の成長も近くで見れて、成長を実感できることがやはり喜びのひとつです。

2つ目は当然ながら、「金銭的なリターン」で、やはりそのリターンの指標として数字があると成長度合いがわかりやすいですよね。数十万円が数千万円になった、というような分かりやすさは良いですよね。

3つ目は、「社会の変化」です。

「意味のイノベーション」の話もそうですけど、投資先の会社が新しい市場を作り出したという経験があって。

僕が投資したことによってその市場自体ができた、ということはすごく面白いし、投資した意義がある、最初から可能性を信じてその起業家にエンジェル投資して良かったなと感じられました。

ーなるほど。「投資家がどういうバリューを出すのか?」とはどういうことでしょうか?

例えば株式比率を1%持つ僕と30%持つ人がいたとして、企業側としては30%持つ人の方がより濃密にバリューを発揮してもらいたいじゃないですか。

僕は株を1%しか持っていないのに、起業家と共に汗水流してたくさん協力してあげてバリューを発揮している。

けれども30%持っている人が何もしないで見ているだけだとしたら、なんか嫌ですよね。

1%だろうが30%だろうがその分のバリューを発揮しろよ、と僕は思っています。

エンジェル投資を受ける起業家の心構え

あと言いたいことがもう一つあって。

起業家は、サポートしてくれるエンジェル投資家に対して、時給5000円でもいいから払いなさい、ということ。

例えば、エンジェルが営業のサポートだったり、採用のサポートだったり、何かタメになることをしてくれたとする。

そうしたら、それに対してきちんと対価を払わなければならない。

前述しているように、エンジェルの中でもお金だけ払ってあとは何もしない人もたくさんいるけれども、その中で何か精力的にサポートしてくれる人がいたら、その分対価を払わないと、結果としてその頑張ってくれたエンジェル投資家との関係性が悪くなると思います。

恩と奉」というのがキーワードで、やってもらったことに対して何かお返しをするという、このバランスが人間関係において非常に重要だと僕は考えます。

エンジェルと起業家の関係もそれと同じように、あるべきです。

起業を目指す若者へ。起業なんてろくなことないよ。(笑)

ー最後に、起業を目指す学生や若者にメッセージをお願いします。

いやぁ〜、僕はそんな起業しなくてもいいと思いますけどね。(笑)

ーええ!思わぬ回答が返ってきて、意外です(笑)

やっぱり、世の中的に起業しろっていう人がいっぱいいるけれども、会社員の方が圧倒的に楽だし、起業なんてメンタルも病むし、友達とも価値観が合わなくなってくるし本当に大変。

けれども本当に「お金持ちになりたい」か「自分の原体験が強すぎる」かのどちらかだったら、起業するのはアリだと思いますよ。

あとは、どうしても会社っていう場所が提供する既存の仕事のパッケージにはまらない人は、これはこれでフリーランスでもなんでも起業するしかない。(笑)

国が起業支援を進めているのも税金が多く取れるから推進している、という意図もあると思うので、起業が向かない人はむやみに起業しても辛いだけだと思います。

もちろん、起業家として得られる経験も多いですけどね。

会社員が悪いわけでもないし、起業家が偉いわけでもないし、向いてる向いてないもあるので、流行りだとか、時代の風潮に振り回されることなく、自分の人生を自分の納得いくように全うして歩んでいただきたいと思います。

ー山口豪志さん、ありがとうございました。

大和咲弥花

この記事を書いたライター

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