TOP > インタビュー一覧 > ビジネス書大賞『売上最小化、利益最大化の法則』の作家に聞く 「利益率29%の⾼収益企業を作る方法」
プロトスターでは2021年10月22日、スタートアップ・ベンチャー業界で働くビジネスエグゼクティブを対象に「2021年 スタートアップ・ベンチャーで働く人が選ぶビジネス書」の一般投票を実施しました。
アンケートの結果をもとに、弊社の選考会で協議を重ねた結果、北の達人コーポレーション代表取締役社長・木下勝寿氏の『売上最小化、利益最大化の法則』(ダイヤモンド社)が大賞に選ばれました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000048.000023145.html
『売上最小化、利益最大化の法則』は木下氏の初の著書ながら、7刷のベストセラーとなっています。さらに中国、台湾、ベトナムからも翻訳のオファーが届いているといいます。
本書はなぜこれほど、多くの経営者やビジネスマンの心に響いているのでしょうか。著者の木下氏に、ビジネス書を出版した経緯や読者からの反響などを聞きました。
プロフィール
木下勝寿
このページの目次
――「売上最小化と利益最大化」に焦点を当てた書籍を執筆しようと思ったきっかけを教えてください。
以前から、「利益の最大化」をテーマにビジネスセミナーや社内研修を実施しています。その中で、よく「なぜ、このようなビジネス思考になったのか」と質問されることがあります。
ただ、特にきっかけはなく、売上よりも利益を重視することは自分の中で至極当然の考え方なんですよね。
なぜなら経営の大きな目的は、利益を上げることにあるからです。私は資本金1万円で起業し、昼間はアルバイトをしていました。当初はとにかくお金がなくて、1万円を経費で使ったら、1万2000円の利益を出さないと、生活ができない状態でした。だから起業当初から数字は売上ではなく利益しか追っていません。「売上が上がったら、いつか利益も増えるだろう」と、悠長なことを言っている余裕はなかったのです。
そのような観点で経営を続けているうちに、売上が最大化したら利益も最大化するわけではないことが分かってきました。例えば、利益を最大化するために利益につながっていない売上をカットすると、売上は下がります。ですが、利益は増えていきます。
ーーたしかに、一般的には売上が多いほうが「良い会社」と解釈されがちですよね。
そうなんです。従業員を多く採用し、売上を大きく見せたい経営者が多いのも事実です。
ですが、売上の中には赤字の売上も含まれているケースもあります。売上を追うなら、赤字が出ても、他の受注で大きな黒字になれば、全体としては採算が合うと考えます。しかし、赤字の商品を受注しなければ、売上が下がっても利益は上がりますよね。
だから私は、同じ利益なら売上は少ないほうがいいと考えています。この考えを発信すると、反響が大きかったので、今回「売上最小化と利益最大化」をテーマに、本を執筆することにしました。
――この書籍には、15個の公式と51個の計算例と44枚の図表が使われており、読者からは、「ここまで詳しく解説していいのか」という驚きの声が上がっています。
利益を上げる方法を詳しく解説したところで、弊社のデメリットはないんですよね。売上を上げる方法なら競合他社に知られたくないですが、利益を上げる方法は今ある売り上げを利益化するためのノウハウなので、企業機密ではないんです。
むしろ、第5章で紹介した「採算の合わない広告はしないほうがいい」という考えを知ってもらったら、広告費の相場が下がるので、当社も含めた業界全体のメリットになります。だからこそ実体験をもとに、利益率29%の⾼収益企業を作る方法を余すことなく詰め込みました。
ーー多くのビジネスパーソンが参考になるテーマですが、特にどのような人に読んでほしいと思いますか。
ビジネスモデルによってケースバイケースですが、起業したばかりの経営者には、早い段階で読んでいただきたいですね。起業直後は余裕がないため、「早く売上を上げないと」という思考になりやすいです。しかし、そうではない視点もあることをこの本から知ってほしいです。
また、今回の書籍は会計関係者に多く読んでいただいたようです。中小企業診断士や会計士の方には第3章で紹介した独自の管理会計「5段階利益管理」が注目されました。(※)
僕自身、体系的に経理を学んでいたわけではないので、この考え方が珍しいのかもよく分かっていなかったのですが、弊社のCFOに聞いたところ、商品の販管費(販売費及び一般管理費)を「販促費」と「それ以外」で分けるという発想が、会計業界ではあまりないようでした。なので、会計関係者には教材として読んでいただくことが多いようです。
※「5段階利益管理」とは、利益を商品・サービスごとに以下の5段階で見える化することで、「隠れコスト」をあぶり出して削減する方法。
利益1 売上総利益(粗利)
利益2 純粗利(造語)
利益3 販売利益(造語)
利益4 ABC利益
利益5 商品ごとの営業利益
事業部ごとに5段階利益管理することで、「うまくいっている事業部」と「うまくいっていない事業部」が可視化され、会社を利益体質に変えることができる
――木下氏自身、ふだんどのような書籍を読まれているのでしょうか。
普段から読書量は多く、部屋の壁は本だらけです。経営やマーケティング関係はよく読んでいていますね。
特に印象に残っているのは、トップマーケターで経営コンサルタントの神田昌典さんの著書『成功者の告白』(2006年出版、講談社)です。ほとんどのベンチャー経営者が直面するであろうトラブルや失敗、難題について様々な側面でアドバイスが書かれています。読んだ後、経営者として一皮むけた気持ちになりました。
また、大企業の創業者が上梓しているビジネス書には、今後自分の身に起きるであろうハードシングスが書かれているので、経営方針を立てるときに活かされています。
意外と思われるかもしれませんが、自己啓発本もかたっぱしから読みました。自己啓発本を出すような成功者には、共通の思考パターンがあります。だからいろんな自己啓発本を読んだり、ひとつの本を何度も読み返したりして、成功者の思考パターンを自分の脳に覚えさせるんです。『7つの習慣』(著者:スティーブン・R・コヴィー、2005年出版、キングベアー出版)は何度も読み返していますし、社内研修でも活用しています。
――今回、初めてビジネス書を上梓したとのことですが、今後も出版の予定はありますか。
書籍を作るのは大変なので、ビジネス書作家として積極的に出版する予定はありません。ただ、マーケティングに関する投稿はTwitterでも反響が大きいので、このテーマで書籍を出すことは決まっています。
――ありがとうございます! 最後に、この記事を読んで『売上最小化、利益最大化の法則』に興味を持った起業LOG読者に向けてメッセージをお願いします。
ベンチャー・スタートアップ経営者は、「海外市場から競合サービスが誕生していること」を意識していない人が多い印象にあります。
海外企業のプロダクトが日々、日本に進出していますよね。日本企業が日本の商習慣や言語的な参入障壁のないアプリやWebサービスを立ち上げたとしても、、競合の海外企業に取って代わられてしまいます。
国内市場に目を向けたビジネスを展開するなら、まずは小さいユニット・エコノミクスで、利益重視の経営体質になる必要があります。そのためにはどうしたらいいのか、実体験を基にした実践方法を詰め込んだ本なので、ぜひスタートアップ・ベンチャー企業の経営者やそこで働くビジネスマンに参考にしていただきたいです。
そして、この本を読んだ人たちが、1円でも多く利益を出して1円でも多く納税していただけたら本望です。
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