オフィス移転のフローと必要な手続きの流れを完全解説!

オフィス移転のフローと必要な手続きの流れを完全解説!

記事更新日: 2023/12/19

執筆: 高浪健司

事業を展開していくなかでオフィスを移転することは良くあることです。このオフィス移転は、個人宅の引越しとは違って非常に大がかりなものとなるため、移転作業をスムーズに進めるためにはしっかりとスケジュールを組むことが重要です。

そこで今回はオフィスを移転する際の流れや必要手続きなど、オフィス移転について詳しく解説していきます。

オフィス移転までのおおまかな流れ

オフィス移転は非常に多くの時間を要するため、移転に向けたスケジュールは6ヶ月前から立てながら、しっかりと準備していかなければなりません。

ではまず、オフィス移転までのおおまかな流れを見ていきましょう。

6ヶ月前

移転計画の立案、旧オフィスの解約予告、オフィスの移転先選定、現状回復条件の確認

5ヶ月前

新オフィス物件の決定、内装・レイアウトの検討、引越し等必要業者の選定

3〜4ヶ月前

什器備品の選定と購入依頼、物品整理、移転作業スケジュールの詳細決定、各種工事手配

2ヶ月

内装工事着手、取引先等へオフィス移転の挨拶、移転前の届出

1ヶ月前

移転に伴う引越し最終チェック、現状回復工事依頼

当日

オフィス移転作業開始(引越し)

移転後

公的機関への必要書類の提出、現状回復工事、旧オフィスの契約終了


オフィス移転においてのおおまかな流れはこのようになっており、オフィス移転は一般的に6ヶ月前からプロジェクトが動き出します。

オフィス移転の目的を明確にする

会社の一大イベントであるオフィス移転は、まず「何のために移転するのか」といった、移転する目的やコンセプトをしっかりと明確にすることから始まります。

移転目的が曖昧な状態だと、イメージしているレイアウトが作れなくなったり、かえって仕事がやりづらく社員からクレームが発生したりするなど、満足のいく移転ができなくなる恐れがあります。

なお、移転の目的に関しては会社によって様々となりますが、具体的な移転目的の例としては下記の内容となります。

オフィス移転目的の一例

  • 従業員など人員の増加
  • オフィスにおいての環境改善
  • 社内の連携強化
  • 会社に対するイメージの向上
  • 賃貸料などのコスト削減
  • 業務拡大など新規拠点の開設
  • グローバル市場の対応
  • 交通アクセスなど利便性の向上
  • その他


このように、何のためにオフィス移転をおこなうのかをしっかり確認し、まずは明確に洗い出しましょう。

移転先オフィスの条件設定をおこなう

さて、オフィスを移転する目的が明確に洗い出せたら、次に洗い出した移転目的に基づき、移転先オフィスの条件を設定していきます。

移転先のオフィス条件を設定する際は、「立地」や「オフィスの面積・レイアウト・内装の雰囲気」もしくは「賃料などの予算」など、移転目的において何がもっとも重要なのかを考え、新オフィスで実現したい条件に優先順位をつけて決めていきます。

こうして新オフィスで実現したい条件に優先順位を付け、あらかじめ明確にしておくことによって物件の条件もある程度絞られてくるので、後におこなう物件探しが楽になります。

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なお、オフィス移転にかかる費用とその相場については以下の記事で解説しているので、こちらもぜひ参考にしてください。

 

現オフィスの退去予告と原状回復工事の内容決め

オフィス移転が決まったら、現オフィスの賃貸契約に基づき、退去が可能な時期の確認や、退去時の原状回復工事の内容も決めておく必要があります。

1. 現オフィスの解約予告をおこなう

前述のとおり、オフィス移転が決定し、現在使用しているオフィスを退去する運びとなった場合、物件を管理している管理会社もしくはオーナーへ契約解除の意思表示(解約予告)を示す必要があります。

なお、解約予告を出す期間はオフィスの面積によって異なり、「30坪以上/6ヶ月前」「10~30坪/3ヶ月前」「10坪以下/2~3ヶ月前」「マンション等/1~2ヶ月前」が一般的となっています。

ただし解約予告期間は契約時に交わした契約内容によって異なる場合があるため、どのような契約内容になっているのか各自確認するようにしてください。

ちなみに、正式に解約予告を出し受理されると、原則としてキャンセルすることができませんので注意してください。

2. 原状回復の打ち合わせ

オフィスを退去する際は、物件を借りた時の状態に戻す「原状回復工事」を行わなければなりません。この原状回復工事は借主が行なわなければならず、その工事費用も借主が負担することになります。

なお、原状回復工事に関する打ち合わせの手順としては、下記の流れが一般的です。

1. 施工業者を探し工事を依頼する

2. 依頼する業者とオフィスを管理する管理会社またはオーナーを交え、原状回復が必要な箇所を確認する

3. 工事の必要範囲を確認したら、工事費に関する見積もりを依頼する


後からトラブルに発展しないよう、打ち合わせを行う際は必ず工事施行業者とオフィスの管理会社もしくはオーナーを交えながら、原状回復に必要な工事内容をしっかり打ち合わせを重ねることが重要です。

オフィスプランニング

オフィスプランニングとは、オフィス全体のレイアウトや部署ごとのレイアウトを決め、さらにはOA機器や棚やテーブルなどの什器を決定することです。

オフィス移転の際、オフィスプランニングは絶対に必要となりますが、物件を決めてからおこなうとスペースに無駄が生じたり、収まりが悪くなったりと問題が発生するケースがあります。出来たらオフィスプランニングは物件を探す前に行うと良いでしょう。

なお、このオフィスプランニングを行うには専門的な知識が必要となるため、専門業者に依頼して進めていくのが一般的です。しかし、理想的なオフィスを作るためには、やはり会社側からのリクエストも必要です。

つまり、オフィス移転担当者もオフィスプランナーとの打ち合わせがスムーズに行なえるよう、会社のコンセプトを明確に整理し、準備しておくことが重要です。

オフィス移転担当者がやるべきこと

1. 現在使用しているオフィスのスペース面積や使用状況、稼働率、それにOA機器の設置状況や各部署の人員数など、現オフィスの状況の把握する。

2. オフィスプランナーのアドバイスを参考に、具体的なオフィスレイアウトの作成と、OA機器や什器など新たに導入する必要がある場合はそれらの選定など。


オフィスプランニングの専門業者にはヒトカラメディアというオフィス移転業者がおすすめです。

ヒトカラメディアの大きな特徴は、オフィスを「会社の成長の好機」と捉え、それぞれの会社の組織課題に合わせたオフィス移転を提案してくれることです。

たとえば、社内コミュニケーションの活性化が課題の会社の場合には、その課題に合ったオフィスを提案してくれるだけでなく、従業員でどのようなオフィスが良いかを考えるワークショップを開催してくれたりもします。

 

新しいオフィスの物件探し

新オフィスの物件探しは、先に移転先オフィスの条件設定で出した優先条件やオフィスプランニングの他、立地や設備、コストなどを加えて探していきます。

では続いて、良いオフィスを選ぶ際のポイントをいくつか挙げていきますので、オフィス探しの参考にしてみてください。

1. 立地条件

立地条件はオフィスを構えるうえで非常に重要なポイントとなってきます。具体的には最寄り駅から近く交通の便は良いか、また近くに銀行や郵便局、さらには飲食店が多いかなど、交通の便や周辺環境のチェックは必須です。

2. オフィス面積

会社の規模や従業員数によっても様々ですが、目安としては従業員1人に対して約2.5坪の面積が必要ですので、例えばフロアに30人の従業員がいるとすると、単純に計算しても75坪は必要となります。

また、将来的に従業員が増えることが予想される場合、当然それ以上の坪数は必要となるため、事業内容や従業員数を考慮しながら適切な広さのオフィスを選択しましょう。

3. オフィスの使用時間と管理体制

事業を行っていくうえで早出や残業、休日出勤など時間外での勤務は付きものです。そのため、オフィスの使用可能な時間等の確認も必要です。

また、防犯システムに関しての確認も重要で、基本的には24時間体制の警備システムが導入されている管理体制のオフィスビルが理想です。

4. 賃料等のコスト

賃料をはじめ、保証金や共益費、契約更新費や不動産手数料など、どのくらいコストかかるのかをしっかり確認しておく必要があります。

通常、オフィスなどテナントの場合は、一般の住居とは違って敷金・礼金・保証金・権利金などが高額になるのが一般的です。

 

5. 設備

電気・ガス・水道に加え、コンセントがある場所や数、容量、さらには電話回線の数や光ケーブルの引込対応の有無など、最初から備え付けてある設備に関しても細かくチェックする必要があります。

6. 駐車場の有無

業務において車を使用しているなら駐車場も必要ですので、駐車場の有・無についても確認しておく必要があります。

また、駐車場の賃料と使用可能なスペース(台数)、さらに時間等なども確認しておく必要があります。なお、駐車場はオフィスと賃料(敷金・礼金等)が別になるケースが多いですので、そうした細かなところもしっかり確認するようにしましょう。

このように、オフィスを探す際は、優先する条件に対してしっかりクリアできているかを確認しながら進めていきます。

そのうえで、条件にマッチした物件が見つかれば、賃貸借契約書を確認したうえで契約書に捺印し、その後保証金や敷金などを受け渡して契約という流れになります。

なお、オフィス(テナント)の賃貸契約というのは一般の住居と比べて内容も非常に複雑で項目も細かいため、契約内容の確認も一人だけではなく複数人で行ないましょう。

新しい物件が決定したタイミングで、現オフィスの管理会社もしくはオーナに対して解約予告を提出します。

注意:事業用の場合は敷金・保証金が高い

賃貸物件は、一般の住宅であっても「敷金・礼金」など支払いますが、支払う額としては賃料の1~2ヶ月分が通常です。

しかし事業用になると敷金などの預託金が6~12ヶ月分と高くなります。(預託金に関しては物件によって異なります。)


このように、事業用の場合は敷金や保証金などの預託金が高くなるということをしっかり知っておきましよう。

業者の選定と連絡

オフィス移転に伴い、電話やインターネット回線をはじめとする通信関係の変更手続きや、電気などの配線工事などを行う必要があります。

そのため、オフィス移転担当者は、必要に応じて専門業者の選定し依頼をすると同時に、オフィス移転のための変更手続きを行います。

また、なかにはコピー機やファックスなど、リースで使用している場合もあるので、リース品に関して移転先でも引き続き使用するのか、それとも新しいものに交換するのかもこの時点で決めておきましょう。

オフィスレイアウトの決定

新オフィスが決定した後は、新オフィスに合せて具体的なレイアウトプランを決定していきます。

レイアウトプランの決め方は、始めにオフィスの見取り図を確認しながら、執務室以外の「打ち合わせ室」「会議室」「休憩室」など、必要なスペースをざっくり決めていきます。

あとは法令で定められている動線や空調設備の位置などを踏まえ、専門業者のアドバイスを受けながら、具体的なレイアウトプランを作成します。

内装のレイアウトは従業員のモチベーションに繋がる重要な事項ですので、従業員の意見を取り入れつつ、はじめに設定したオフィス移転目的に基づきながら、快適に過ごせるオフィスレイアウトを決定していきましょう。

またこの際考えておきたいのが、受付システムの見直し。最近では無人で済む便利な受付システムを安く導入できるようなってきています。

オフィス移転は受付システムの見直しにベストのタイミングなので、受付システムを変更する可能性がないか確認しておきましょう。

 

引越し業者の選定

オフィスレイアウトも煮詰まってきたら、次は引越し業者を選定し、選定した引越し業者との移転の打ち合わせを行います。

なおオフィスの移転は、新しいオフィスのレイアウト計画に加え、電気やネットワーク工事、さらには搬出・搬入など、非常に多くのタスクが同時進行で動きます。

そのため、引越し業者のオフィス移転における対応力が求められます。

引越し業者を選定する際のポイントは、費用が安いところを選ぶのではなく、オフィス移転においてスムーズにこなせる対応力があるかなどが重要なポイントとなります。

さらに廃棄するものなどのゴミ処理に関しても、同時に引き受けてくれる引越し業者を選ぶと尚さら良いです。

いずれにしても引越し業者は数多く存在していますので、1つの業者で決めてしまうのではなく、複数の業者から見積りを取り、しっかり選定しましょう。

移転作業スケジュールの詳細決定

オフィス移転に伴い必要な業者に連絡または依頼をかけ、オフィスレイアウトなどが決定したらオフィス移転の詳細スケジュールを作成していきます。

スケジュールは内装や設備工事などの進行具合を考慮しながら、細かく決定していきます。

なお移転作業スケジュールが決定したら、今一度漏れがないかを確認したうえで、速やかに社内告知にて移転計画の説明を行います。

各社員は移転作業スケジュールに基づき、通常業務に支障をきたさぬよう、持っていく物や廃棄する物などを選別しながら、少しずつ梱包作業を開始していきます。

なお梱包方法や引越しの作業などのマニュアルを作成し、そのマニュアルを社員内で共有させればよりスムーズに作業を行うことができます。

オフィス移転作業の開始(引越し)

移転作業スケジュールの詳細が決定し社内告知が済んだら、次にオフィス移転作業を本格的に開始させます。

この段階で、取引先に対してオフィス移転についての案内を順次発送していきます。それと同時に、新オフィスの住所が入った封筒や名刺、さらに会社パンフレットなどの印刷物を業者に発注します。

それから忘れてはいけないのがデータのバックアップです。

移転の際、何らかの理由でデータが消えてしまうという事態も考えられるため、会社にとって重要なデータは必ずバックアップを取っておくようにしましょう。

無事にオフィス移転が完了したら、次は公的機関にて住所変更の届け出をしなければなりません。なおこの変更手続きにはそれぞれ期日が定められているので、申告漏れの無いよう確実に行ないましょう。

続いては、オフィスの移転前・移転後に行うべき手続きをそれぞれ紹介していきます。

オフィス移転に伴う手続き(移転前)

郵便局(郵便物届出変更届)

オフィス移転後、間違いなく郵便物が届くよう「郵便物届出変更届」を、移転前の受持郵便局にて移転する前に提出します。

なお窓口にて手続きする場合は社員証もしくは健康保険証など、会社との関係が確認できるものが必要となります。

オフィス移転に伴う手続き(移転後)

1. 法務局(本店移転登記)

会社の住所が変更となった場合は、2週間以内に法務局にて変更に関する書類を提出する必要があります。なお提出する書類は「登記簿謄本」「定款」「印鑑証明書」です。

登記変更は煩雑であるため、司法書士に依頼するのが最も手間がかからない方法でした。

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2. 税務局(異動届出書)

移転日から1ヶ月以内に移転前と移転後、それぞれの管轄税務署に対して住所が変わった事実を報告する「異動届書」と、移転手続きが完了した「登記簿謄本」を添えて提出します。またそれと同時に「給与支払事業所等の開設・移転・廃止届出書」も提出します。

3. 都道府県税事務所(異動届出書)

異動届出書は税務局のほか、都道府県税事務所においても提出しなければなりません。その際、税務局の時と同様、移転手続きが完了した登記簿謄本を一緒に添えて提出します。なお、届出をおこなう場所は移転前の管轄都税事務所で、提出のタイミングは移転直後です。

4. 社会保険事務所(事業所所在地変更届)

オフィス移転後、原則として5日以内に「健康保険厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更(訂正)届」を、移転前の管轄年金事務所へ提出します。

5. 労働基準監督署(名称・所在地変更届)

オフィス移転後、原則として10日以内に、その住所を管轄する労働基準監督署にて、「労働保険名称、所在地変更届」を提出します。また、移転先が他都道府県の場合は「労働保険関係成立届」「労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書」を提出します。

※内容確認のため「登記簿謄本写し」「賃貸借契約書写し」が必要な場合があります。

6. 公共職業安定所(雇用保険事業所変更届)

オフィス移転後、原則として10日以内に移転後の管轄職業安定所にて「雇用保険事業所変更届」を提出する必要があります。

 

このように、オフィス移転を行った際は様々な場所にて変更手続きを行う必要があります。なお、業種によっては必要書類などが異なる場合もあるので、もしわからないことがある場合は、各自関係官庁に直接確認するようにしてください。

まとめ

今回は、オフィス移転について詳しく解説してきました。

ここでお伝えしてきたとおり、オフィス移転は会社の一大イベントであり、会社経営においてのターニングポイントとも言える大事なことです。

また、オフィス移転は普通の引越しとは違い、移転に伴うスケジュール作成やレイアウト作成、物件探しに取引先への挨拶廻りなど、複雑かつ膨大なタスクが発生します。

そのため、一つひとつ計画的に進んでいかないと、途中で発注ミスや連絡漏、手続きに不備が発生するなど、円滑な移転が困難になります。

オフィス移転をスムーズに遂行させるためには、しっかりとした段取りに加え、綿密な計画が非常に重要となります。

そうしたことを念頭に入れ、しっかりと準備を整えたうえで、理想なオフィスを実現してください。

 

画像出典元:O-DAN

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