電子契約は裁判で証拠となるのか?証拠力を高める方法と導入時の注意点

電子契約は裁判で証拠となるのか?証拠力を高める方法と導入時の注意点

記事更新日: 2024/06/13

執筆: 遠藤亜美

近年、ビジネスシーンにおける電子契約の利用が急速に広まっています。

しかし、電子契約が裁判の証拠として認められるのか、紙の契約書と比べてどのような違いがあるのかなど、疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、電子契約の証拠力について、民法と電子署名法に基づいて詳しく解説します。

また、電子契約の証拠力を高めるための具体的な方法や、電子契約導入時の注意点なども紹介していきます。

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電子契約とは?従来の紙媒体との違い

電子契約とは、インターネットなど情報通信技術を利用して締結する契約のことです。

契約内容に合意する意思表示として、当事者が電子署名を付与します。

電子契約と従来の紙媒体による契約の違いは以下の通りです。

  電子契約 紙媒体での契約
形式 電子データ(PDF) 紙の書面
署名方法 電子署名 記名押印・署名
本人性の担保 電子証明書 印鑑証明書
締結日時の証明 タイムスタンプ 日付記入
送付 電子データ 郵送・受け渡し
保管方法 電子的な保管 紙での保管
収入印紙 不要 必要


従来の紙媒体での契約と違い、電子契約はすべての工程をオンラインでおこないます。

電子契約ツールを利用することで契約の締結が可能です。

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電子契約の証拠力:民法と電子署名法に基づいて解説

電子契約は、電子署名を用いることで証拠力をもたせる仕組みです。

電子契約の証拠力を、民法や電子署名法に基づいて解説します。

電子署名の種類と機能

電子署名は、従来の紙媒体による契約の印鑑や署名にあたります。

電子署名の種類は以下の通りです。

電子証明書
  • 情報を送信した契約者の本人性を証明する
  • 署名後に改ざんされていないことを証明する
  • 第三者機関である認証局が発行する
タイムスタンプ
  • 付与された時刻に電子データが存在していたことを証明する
  • 付与された時刻以降に改ざんされていないことを証明する
  • 法的に付与が必須ではない
  • 時刻認証業務認定事業者が発行する


電子証明書で「誰が」、タイムスタンプで「いつ」を証明できると考えるとわかりやすいでしょう。

タイムスタンプは法的には必須ではありませんが、電子証明書とセットで付与することで完全性を担保することが可能です。

なお、電子証明書の有効期限は最大で5年と定められていますが、タイムスタンプの付与によって延長できます。

電子署名の法的効力

電子署名を付与した電子契約書は、電子署名法の第2条および第3条によって法的効力があると認められています。

電子証明書により本人性と非改ざん性を証明することで、書面による契約と同じ効力をもち、裁判で証拠として提出できます

実際に提出された事例もあるため、証拠力は十分といえるでしょう。

民事訴訟における裁判では、紙への印刷もしくはCD-Rなど外部媒体の記録で提出します。

電子契約書が裁判の証拠となるための条件

電子署名が付与された電子契約書は、民事訴訟における裁判の証拠としての条件を満たしています。

契約の成立そのものについて争う場合は、追加で電子署名の検証画面や、契約締結までの交渉経緯を示した電子メールの提出が必要です。

また、電子契約書を証拠として取り扱う場合、「二段の推定」という考え方が判断基準になります。

二段の推定とは、「契約書に実印が押されている=本人の意思により成立したもの」とする考え方です。

電子契約書を証拠とする場合、本人によって電子署名がおこなわれたことを証明しなければいけません。

  • 認証局によって電子証明が発行された
  • 電子署名を付与する際に契約者本人しか知り得ないパスワードを使用している
  • 秘密鍵が契約者本人によって管理されている

上記のような条件を満たしていれば、電子署名は本人の意思によるものと判断されます。

一方で「契約者本人以外とパスワードを共有していた」など反証があれば、電子契約書の証拠力が立証できなくなるため注意が必要です。

電子契約の証拠力を高めるための対策

電子契約の証拠力を高めるための対策をまとめました。

電子署名の利用

電子署名は、公的個人認証サービスや民間の電子署名サービスを利用することで取得が可能です。

電子署名は当事者型と立会人型に分かれており、それぞれ手続きの方法や証拠力が異なります。

当事者型
  • 契約当事者が手続きをおこない電子証明書を発行する
  • 認証局が電子証明書を発行する
  • 電子署名法に準拠しており証拠力が高い
  • 電子証明書を発行するために手間とコストがかかる
立会人型
  • 本人確認をメールでおこない第三者が電子署名をする
  • 当事者型署名と比較して証拠力が弱い
  • 電子証明書を発行するための手間とコストが削減できる


本人性の担保力が強い当事者型で電子証明書を発行すれば、立会人型より高い証拠力を得られます。

重要な電子契約を締結する際には、法的紛争を予防するために当事者型の電子署名を検討しましょう。

タイムスタンプの利用

タイムスタンプの付与により、電子契約書が作成された日時とそれ以降に改ざんがないことを証明できます。

電子証明書とタイムスタンプを併用することで完全性を証明でき、証拠力を高められるでしょう。

さらにタイムスタンプは、裁判で契約書の作成日時を争点とするケースの有効な証拠です。

実際に契約した日より過去の日付を契約締結日として記載する「バックデート」の検証に、役立ちます。

バックデート自体は不正ではありませんが、意図的に契約締結日を過去の日付とした場合は不正行為です。

契約合意前に発生した出来事や条件を隠し、権利義務の効力や契約内容を操作することも考えられるでしょう。

タイムスタンプで客観的な締結日時を証明することで、不正なバックデートかどうか見極めやすくなります。

適切に保存する

電子契約書は、不正アクセスや改ざんを防ぐために適切に保存する必要があります。

クラウドストレージサービスや専用サーバーなど、適切に管理できる方法で保存しましょう。

また、国税に関係する電子契約書は電子帳簿保存法の対象であり、以下の要件を満たす必要があります。

真実性 帳簿との相互関連性が確保されていて訂正や削除の履歴が確認できる
可視性 明確な状態で表示でき必要に応じて検索できる


電子帳簿保存法の対象範囲外で保存義務がある電子契約書を電子的に保存する場合は、e-文書法の要件をチェックしましょう。

見読性 ディスプレイなど明瞭に読める解像度で保存する
完全性 保存期間中の消去や改ざんを防ぐことができ修正履歴がわかる
機密性 許可されていない第三者がアクセスできないように管理している
検索性 文書をすぐに参照できるように検索のしやすさが確保されている


e-文書法で必須とされるのは見読性のみで、対象書類によって満たすべき要件は異なります。

どの要件を満たす必要があるのか、あらかじめ確認しておきましょう。

電子契約に関する裁判例

電子契約に関する裁判例を2つ紹介します。

電子契約の有効性が争われた裁判例

「2019年7月10日貸金返還等請求事件判決」では、「相互極度貸付契約」の電子証明書等が有効であると判断されました。

これは債務者であるB社による利息未払により、債権者のA社が支払いを求める訴訟を起こして支払いを求めたものです。

B社はA社が勝手に互極度貸付契約の電子契約をおこなったものと主張。

契約の無効を訴えましたが、裁判所はB社の同意があったものと認定しました。

電子メールが契約成立の証拠となった裁判例

「2013年2月28日業務委託料請求事件判決」は、電子メール契約が契約書として有効と認められた裁判例です。

広告業者のC社は、D社から電子メールで広告依頼を受注しました。

D社は広告の発注はしていないとし、メールの内容は偽造であると主張。

証拠の電子メールに捏造の痕跡がなかったことから、契約の成立が真正であると判断されました。

電子契約のメリット・デメリットや導入の注意点

電子契約のメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット
  • 業務効率化
  • 印刷・郵送のコスト削減
  • 契約締結までのリードタイムを短縮
  • 印紙税が非課税
  • 契約手続きが可視化できる
  • アクセス制限や承認制限によるコンプライアンスの強化
デメリット
  • 一部の契約には対応できない
  • 取引先との合意が必要
  • サイバー攻撃や情報漏洩のリスクがある
  • 業務フローの変更が必要になる


導入の際には社内への周知や業務フローの変更が必要となるため、あらかじめ準備する必要があります。

導入する電子契約ツールは電子署名法に準じているものを選びましょう。

また、法的な保存要件を満たせなかったり、取引先との合意が得られなかったりした場合、従来の紙媒体での契約が必要です。

電子契約と紙契約を使い分けることで、さまざまなシーンに対応できます。

電子契約のメリット・デメリットについてもっと詳しく知りたい方はこちら

法的効力のある電子契約ツールと選び方

公的効力のある電子契約ツールを3つ紹介します。

選び方のポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。

クラウドサイン

画像出典元:「クラウドサイン」公式HP

特徴

クラウドサインは、立会人型としては初めて「電子署名」に該当すると認められた電子契約ツールです。

電子契約に必要な多彩な機能が揃っており、契約締結から契約書管理まで対応できます。

各種認証制度をクリアした強固なセキュリティと、充実した導入・運用サポートが魅力です。

料金

  Light Corporate Business Enterprise
月額費用 10,000円 28,000円 要問合せ 要問合せ

(税抜価格)

GMOサイン

画像出典元:「GMOサイン」公式HP

特徴

GMOサインは立会人型と当事者型の署名方法から選択できます。

本人確認の必要レベルに応じて選択でき、さまざまなシーンに対応できるでしょう。

電子帳簿保存法に準拠しているため安心して利用できます。

料金

  お試しフリープラン 契約印&実印プラン
月額費用 0円 8,800円

(税抜価格)

必要に応じて追加できるオプションパック(別途初期費用・月額費用あり)があります。

WAN-Sign

画像出典元:「WAN-Sign」公式HP

特徴

WAN-Signは、立会人型と当事者型に対応する多機能な電子契約ツールです。

相手方のみメール認証で締結できるハイブリッド版にも対応しています。

紙媒体の契約書と電子契約書を一元管理でき、情報の検索や閲覧制限の設定なども可能です。

料金

初期費用 0円
月額費用 0円
当事者型締結料 3件/月まで0円
立会人型送信料 10件/月まで0円
文書電子データ管理料 累計10件まで0円

(税表記なし)

無料範囲を超える場合は有料プランへ切り替えが必要です。

SMS送信機能や書類電子化代行サービスなど、必要に応じて利用できる追加オプションもあります。

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電子契約ツールの選び方

電子契約ツールを選ぶ際のポイントをまとめました。

  • 署名方法(立会人型・当事者型)
  • 導入実績・国内シェア
  • 契約レベルに適した法的効力・署名機能の有無
  • 機能
  • 初期費用・月額料金・契約書送信料
  • セキュリティレベル
  • 既存システムと連携の有無
  • サポート体制
  • 導入までの期間

まず電子契約ツールをなぜ導入するのか、目的を明確にすることが重要です。

たとえば証拠力の高い電子契約をおこないたいなら、当事者型の電子署名に対応した電子契約ツールがよいでしょう。

電子契約書を適切に保存したい場合は、一元管理できる機能が備わった電子契約ツールがおすすめです。

総合的に比較したうえで、自社に適した電子契約ツールを選択してください。

まとめ

電子署名を付与した電子契約書は、法定効力があると認められています

電子証明書により本人性と非改ざん性を証明することで、十分な証拠力を発揮できるでしょう。

タイムスタンプを利用する、適切に保存するなど、証拠力を高める方法をチェックしておくと安心です。

法的効力のある電子契約ツールと選び方も紹介したので、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。

画像出典元:O-DAN

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