会社勤めをしている人の場合、年末になると会社から「年末調整」に関する書類の提出を求められます。
年末調整は基本的には会社が実施するものですが、中には年末調整の前に退職し、「年末調整を自分でやらなければ」と考える方もいるでしょう。
しかし、年末調整は会社の義務であり、自分(個人)で行うことはできません!
では、どうしたらいいの?という疑問に答えるため、この記事では年末調整は自分ではできない理由や対処法、混同しやすい年末調整と確定申告の違いについて詳しく解説していきます。
年末調整に関する知識を深めたい方はぜひ参考にしてください。
このページの目次
年末調整とは、給与所得者(従業員)が1年間に源泉徴収で納めた所得税と、実際の所得税額との差額を年末に精算するための手続きです。
日本では会社から従業員に給与を支払う際に、従業員が国に支払うべき所得税を会社が天引きするシステムを採用しています。
天引きされた所得税は一旦会社が預かり、従業員に代わって1年分をまとめて国に対して収めているのです。
しかし実際に1年働いてみると、給与額の増減や転職、控除対象扶養親族の人数が変化するなどして、納税額の過不足が生じます。
そこで年末に所得税額を再計算して、所得税を確定させるために年末調整を行うのです。
年末調整は文字通り「その年の最後の給与を支払った時期」に行われます。
そのため、11月中に会社より必要書類の提出を求められ、12月下旬までに実施されるのが一般的です。
年末調整の手続きの期限については、翌年1月31日までと定められています。
会社は期限内に従業員の給与や所得税を計算して、税務署へ申告しなければなりませんので、スムーズに確定申告を行えるよう早めの書類提出を心がけましょう。
年末調整と確定申告は、どちらも納税に関する手続きであることに変わりはありません。
ただし、年末調整は「先払い」した所得税を会社が従業員に代わって再調整するのに対して、確定申告は年間の利益にかかる所得税を自分で計算して「後払い」するという違いがあります。
また申告を行う時期にも違いがあり、年末調整は年末に申告するのに対して、確定申告は原則として翌年の2月16日から3月15日の期間に申告します。
年末調整は所得税法で雇用主の義務とされており、個人で実施することはできません。
したがって「年末調整の前に会社を辞めた」や「会社に知られたくない情報があるので年末調整の書類を提出したくない」といった場合でも、自分で年末調整をすることはできないのです。
万が一必要書類を紛失したり、期限までに書類の提出が間に合わず年末調整ができなかった場合は、自分で確定申告を行いましょう。
また、確定申告は年末調整の後に行われるため、年末調整で間違えてしまった場合でも確定申告によりミス部分を取り戻すことが可能です。
会社員であっても年末調整の対象外となるケースについて解説します。
年間の給与が2,000万円を超える会社員は、所得税法の規定により年末調整の対象外となるため、会社に属していても年末調整を受けることができません。
そのままでは、概算で天引きされている所得税の精算がされないので、個人で確定申告を行う必要があります。
また配偶者控除や社会保険料控除、生命保険料控除などの控除を自分で確認して申告しなければなりませんので、手続きに慣れていない方は注意が必要です。
転職をした方が年末調整を受けるには、前職の所得を証明する「源泉徴収票」が必要となります。
前職の源泉徴収票がまだ発行されていないようであれば、前の会社に連絡をして源泉徴収票の発行をお願いしましょう。
もし転職先の年末調整までに必要書類が間に合わない場合、転職先で年末調整を受けることができないため、自分で確定申告をする必要があります。
年末調整と確定申告の両方が必要なケースは、以下のとおりです。
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
副業などで2カ所以上の給与収入がある方は、正確な所得税額を算出するために、原則として確定申告を行わなければなりません。
後述する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出できるのは、1社のみと定められていますので、基本的には給与額を多くもらっている会社で年末調整を実施します。
副業先の給与が年間20万円以下であれば、確定申告を行う義務はありませんが、年末調整で受けられない控除を適応したい場合は確定申告が必要となります。
住宅借入金等特別控除、いわゆる「住宅ローン控除」を受けたい場合、入居した翌年に確定申告をしなければなりません。
2年目以降は年末調整で手続きを行いますが、初年度は確定申告を通じて、控除対象となる住宅やローンの条件に合っているかどうかを税務署側で確認してもらう必要があります。
必要書類を紛失するなどして、会社の年末調整が期限までに間に合わなかった場合は、確定申告をしなければなりません。
確定申告は年末調整の後に実施されますので、年末調整の手続きでミスが見つかったときには、確定申告で修正することが可能です。
なお年末調整と確定申告は両方実施しても問題はなく、重複した場合には確定申告の情報が優先される仕組みとなっています。
年末調整で必要な書類は、主に以下の3つです。
「扶養控除等(異動)申告書」は、その年の12月31日時点で従業員が扶養している家族に関しての申告を行い、個々の生活状況に合わせて税金を軽減するための申告書です。
この申告書を給与所得者が会社に提出すると、配偶者控除や扶養控除、障害者控除、勤労学生控除を含めたさまざまな控除を受けることができます。
扶養家族がいなかったり、控除項目に当てはまらない場合でも、給与所得者は「扶養控除等(異動)申告書」を会社へ提出する義務がありますので、しっかりと記入して提出しましょう。
「保険料控除申告書」は、生命保険や地震保険などで支払った金額を申告し、納税する額を軽減するための申告書です。
保険料控除申告書を勤務している会社へ提出することにより、以下のような保険料の一部を控除でき、所得税が減税となります。
控除項目に当てはまらない場合は、保険料控除申告書を提出する必要はありませんが、会社によっては白紙のまま提出を求められることがありますので、勤務先に確認しておきましょう。
「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」は、その名が示すように「基礎控除申告書」「配偶者控除等申告書」「所得金額調整控除申告書」の3つを1つの用紙にまとめたものです。
基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、所得金額調整控除の対象となる人は、以下のとおりです。
・基礎控除
1年間の合計所得金額が2,500万円以下の人
・配偶者控除
1年間の合計所得金額が1,000万円以下の人(かつ配偶者の合計所得金額が133万円以下の人は「配偶者特別控除」も適応される)
・所得金額調整控除
1年間の合計所得金額が850万円を超える人のうち「本人、同一生計配偶者または扶養親族が特別障害者である」「23歳未満の扶養親族がいる」のいずれかに該当する人
続けて、確定申告の際に必要なものについても解説します。
確定申告の際には、以下の準備が必要です。
上記に挙げたものを用意し、全国の税務署窓口などで申告することができます。
なお電子申告で確定申告をする場合は、社会保険料控除証明書や生命保険料控除証明書など、第三者が作成した書類のほとんどについて添付の省略が認められています。
年末調整を逃してしまい、さらに確定申告もしなかった場合は「無申告加算税」という罰則を課せられるおそれがあります。
無申告加算税の金額は、本来収める税金に対して、50万円までは15%、50万円を超える場合は20%が課されてしまうのです。
なお所得税の申告を期限内にできなかったことを自分から申告すれば「期限後申告」となり、無申告加算税は5%に軽減されます。
不要なトラブルを避けるためにも、期限内に必ず申告するようにしましょう。
この記事では 年末調整は自分でできない理由や、年末調整と確定申告の違いについて解説しました。
年末調整は会社の義務であり、個人で実施することはできません。
会社の年末調整が間に合わない場合や、年収が2,000万円を超える場合などは、確定申告を行う必要があります。
年末調整と確定申告に関する正しい知識を身につけ、適切な申告をできるようにすることが大切です。
画像出典元:photo AC
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