ライブコマースとは、ライブ配信とEC(オンラインショッピング)とを組み合わせた、新しい販売形態です。
お隣の中国では、インターネット利用者の6割以上がライブコマースで購買行動を行った経験があるのだとか。
ライブコマースは、今後日本でも拡大していくのではと見られています。
本記事では、ライブコマースの概要やメリット・デメリット、さらにはライブコマースの始め方やおすすめのアプリを紹介します。
このページの目次
ライブコマースは、実店舗での購入と変わらない体験ができるのが強みといわれています。
ライブコマースとはどのようなものなのか、具体的に見ていきましょう。
ライブコマースとは「Live(生中継)」と「Commerce(商業)」を組み合わせた造語です。
具体的には商品の紹介や販売をオンラインで行う販売手法を指し、ライブ配信で買い手を惹きつけ、ECサイトへ誘導・販売します。
ライブコマースでは、売り手と買い手がオンラインを通してつながるのです。
必要な情報はリアルタイムで共有でき、買い手は実店舗での対面販売に近い購入体験を得ることができます。
コロナ禍の影響により、消費者の消費行動はインターネットを通じたものに大きくシフトしました。
ライブコマースの導入は、企業にとって重要性を増しているといえるでしょう。
ライブコマースの特徴として、しばしばSNSとの親和性の高さが挙げられています。
SNSを活用すれば、集客からライブ配信まで一気通貫で行うことが可能です。
ライブコマースで買い手は、「信頼できる相手・憧れのインフルエンサーから購入できる」、売り手は「本当に興味を持ってくれる人にピンポイントで発信できる」というメリットがあります。
効果の高い販売手法として注目度は高く、実際に選択される機会が増えているのです。
ライブコマースでの販売には、さまざまなメリットがあります。
どのような点が魅力的なのか、詳細を見ていきましょう。
ライブコマースのメリットとして、広告費や販売に掛かるコストが少ないことが挙げられます。
SNSやアプリをうまく活用できれば、自社のリソースのみで宣伝・販売できるのです。
余計なコストがかさみにくく、利益率の向上が期待できるでしょう。
ライブコマースと似た販売方法として、「テレビショッピング」が挙げられます。
しかしこちらは、多額の広告費・販売数に応じた成果報酬が発生することがしばしばです。
「外部リソースをあてにせず、利益を見込めるライブコマースのほうがメリットは大きい」と考える企業は少なくありません。
ライブコマースの大きな特徴として「双方向性」があります。
売り手は買い手のニーズを汲み取った行動を選択でき、買い手に対し満足度の高い購入体験を提供することが可能です。
例えば、売り手が商品を提示した際、買い手は「気になる点」「疑問に思った点」をその場で確認できます。
問題が解決されれば買い手の購買意欲は増し、実際の購入につながるでしょう。
実店舗での購入のように、売り手と買い手の距離が近いのは、ライブコマースならではのメリットです。
商品の魅力は、Web上の文章や写真だけでは十分に伝わりません。
ライブコマースで実際に使用してみせたり着用したりすることが、顧客の興味・関心を惹きつけやすくなります。
ECサイトは選択の自由・閲覧の自由がありますが、その分顧客が離脱しやすいのが実情です。
買い手に合わせて必要な情報を提供できるライブコマースなら、「もう一押しで購入に至る」という買い手の離脱を防げます。
売り手のスキルにもよりますが、ECサイトよりも「買いたい」と強く思わせることができるでしょう。
ライブコマースを導入する企業・個人が増えるにつれ、課題や問題点も顕著になってきました。
ライブコマースのどのような側面が問題視されているのでしょうか?
ライブコマースのデメリットを紹介します。
ライブコマースは配信場所を選ばないため、屋外やイベント会場で販売を行う配信者もいます。
中にはマナーの悪い配信者も散見され、公共の場所を占領したり大きな声・音で周囲に迷惑を掛けたりすることも少なくありません。
配信マナーの悪さを懸念するイベント開催者は多く、ハンドメイドイベント「ヨコハマハンドメイドマルシェ」やアートイベント「デザインフェスタ」などでは、ライブコマースの配信が禁止されています。
ライブコマースの効果を高めるため、人気の高いインフルエンサーをホストに据えるケースもあります。
インフルエンサーの知名度によって視聴する人が増え、売上アップが見込めるためです。
しかしこの手法を取ると、「インフルエンサー=企業」のイメージが定着する恐れがあります。
インフルエンサーが不注意な発言をしたり、違法な行為を行ったりすれば、企業やブランド名にも傷が付くでしょう。
一方、社員で配信を行う場合は、リスクは少ないかもしれません。
しかし素人感丸出しになってしまっては、視聴者に購買行動を促すのが難しくなります。
ライブコマースで売上を伸ばすには、配信者の選定が非常に重要です。
ライブコマースを行う場合は、以下の法律に注意が必要です。
ライブ配信は撮り直しがきかず、うっかりミスが「1発アウト」になることもあります。
配信を行う際は綿密な計画を立て、法に抵触しないよう注意しましょう。
なおライブコマースは近年急成長を遂げた手法のため、法律の整備が後手に回っています。
トラブルがあってもカバーできる法律がないケースもあり、問題が長引いたり大きくなったりする可能性も考慮しておきましょう。
ライブコマースは対象が限定されるため、「何でも配信すればよい」というわけではありません。
ライブコマースと相性のよい職種や業種を見ていきましょう。
配信映えするアパレル系は、ライブコマースと特に相性がよいといわれています。
写真だけでは伝えきれない着こなし方・着用のメリットを伝えることが、顧客の購買行動を加速させるでしょう。
またファッションに敏感な若者は、新しい物を受け入れる素養があります。
SNSやアプリを通じて何かを購入することに抵抗を感じにくく、ライブコマースという手法と好相性です。
よい商品を丁寧に説明すれば、スムーズに購入に結びつくでしょう。
見ていて楽しくなるコスメ系も、ライブコマースでは人気のジャンルです。
メイクのテクニックや使いやすいツールを知りたい女性は多く、ライブでのスウォッチやメイクには興味を持ってもらえるでしょう。
近年は、コスメ系の動画配信チャンネルも充実しています。
「配信で化粧品を紹介」というプロセスはすでに浸透しており、視聴者の抵抗も少ないはずです。
食品系のライブコマースは、「生産者と直接やり取りできる」という点から人気を集めています。
普段食品を購入しても、生産者の顔が見えることはまれです。
ライブコマースで生産者の声を聞いたり食品作りへの情熱を聞いたりすることが、視聴者の購入意欲をかりたてます。
おいしそうな食べものを見れば、人は素直に「食べたい」「どんな味なんだろう」と思うものです。
視聴者の欲求を刺激しやすく、購買行動につなげやすいでしょう。
例えば近年は、マグロの解体をライブ実況する「マグロ解体ショー」が話題。
解体されたマグロは視聴者がオンラインで購入でき、即日発送される仕組みです。
ライブコマースを始めるには、さまざまな準備が必要です。
スムーズな配信&顧客獲得につなげるために、すべきことや注意点を紹介します。
ライブコマースの主なプラットフォームには、「専用アプリ」「SNS」があります。
専用アプリのメリットは、視聴者がアプリ上で購入に進める点です。
「欲しい」から「買う」までの手間が少なく、スムーズな購買行動につなげられます。
ただし手数料等が発生するケースが多いため、詳細の確認は必須です。
またSNSは、ライブ機能を使うことでライブコマースが可能となります。
料金もかからない上、フォロワーがそのまま顧客になってくれることも珍しくありません。
使い慣れたツールで配信でき、視聴者があまり警戒心を抱きにくいのがメリットです。
とはいえSNSは、ECサイトまで適切に顧客を誘導できるかがネックとなります。
視聴者を離脱させないよう、配信や誘導に工夫が必要です。
ライブコマースのプラットフォーム選定は、その後の展開に影響します。
「専用アプリ」「SNS」のどちらがよいかは、商品・展開規模によって異なるため、自社のニーズを見極めましょう。
ライブコマースの配信者は、「インフルエンサーや有名人に依頼する」「自社の社員に任せる」などの選択肢があります。
コスパ度外視で「話題を呼びたい」「視聴者をたくさん集めたい」のであれば、インフルエンサーや有名人がおすすめです。
一方「自社リソースでコストを抑えたい」という場合は、社内で人材を探すのがよいでしょう。
前述の通り、どちらのケースもそれなりにリスクはあるため、商品との相性や今後の展開を見極めて配信者を決定してください。
ライブコマースは、視聴者がいなければ意味がありません。
既存顧客がいるのであれば、まず配信のお知らせを出しましょう。
新規で視聴者を増やしたい場合は、以下の宣伝・広告の選択肢があります。
宣伝・広告効果が高いほど、かかるコストも高額になります。「広告費>売上」とならないよう、周知・集客の方法も十分な検討が必要です。
ライブコマースの最終目標は「視聴者に商品を購入してもらうこと」です。
配信から購入までの動線がスムーズにつながるよう、環境を整えておきましょう。
例えば、「ECサイトへのリンクを分かりやすくする」「適宜ナビゲーションを入れる」といったことが基本です。
視聴者をもう一押しできるよう、「配信限定クーポンを出す」「ECサイトに特設ページを設置する」なども行っておくとよいでしょう。
コロナ禍を経て日本でも、ライブコマースを導入する企業が増えています。
今後の日本のライブコマースの指標となる、成功事例を見ていきましょう。
「SHISEIDO」は、資生堂が世界88の国と地域に配信しているライブ配信です。
日本では2020年7月より配信を開始し、ビューティーコンサルタントが美容法・おすすめの化粧品を紹介しています。
資生堂は、ライブコマースの本場・中国にも多くの顧客を抱えているブランドです。
中国市場ではすでにライブコマースを行っており、大きな成果を上げています。
日本でいち早くライブコマースを導入した資生堂は、コロナ禍に悩む他企業に、販売活動の活路を示しました。
ベイクルーズは、「IENA」「JOURNAL STANDARD」などの人気ブランドを持つアパレルの最大手です。
同社では、2020年5月よりライブコマースツールを導入。
ライブ配信1回の視聴平均は4,000~5,000人、売上平均は約90万円と、高い効果を発揮しているのです。
ベイクルーズの配信では、自社スタッフがコーデのポイントを紹介したり、商品の魅力をアピールしたりしています。
今ではスタッフ個人に固定ファンが付き、ライブ配信からブランドに興味を持つ新規顧客も増加したそうです。
高級チョコレート専門店・ゴディバは、バレンタインや母の日などに積極的にライブコマースを行っています。
配信中は期間限定のスペシャル商品が紹介され、多くの視聴者の注目を集めました。
また顧客の興味をかきたてるため、ゴディバの シェフがチョコレートスイーツを作る「ホームメイドゴディバ」の配信もスタート。
見ているだけでワクワクするライブ配信は、既存顧客はもちろん、新規顧客の獲得にもつながっています。
ライブコマースを始めるなら、ツールの選定が重要です。
ライブコマースの配信ツールとして注目される、おすすめのアプリを紹介します。
画像出典元:Instagram
若者世代の利用が多くライブ機能も搭載しているInstagramは、特にライブコマースと相性がよいとされるツールです。
「インスタライブ」機能を使えば、動画・音声・テキストで商品の情報を伝えられます。
視聴者からリアルタイムで反応が返ってくるため、インタラクティブなやり取りが可能です。
制限時間60分という決まりがネックですが、ライブコマースの導入ツールとしては十分でしょう。
画像出典元:YouTube
YouTubeは世界最大といわれる配信プラットフォーム。
利用者が多く、ライブコマースの配信ツールとしては定番です。
高音質、高画質でのコンテンツ配信が可能で、無料で質の高いライブコマースが行えます。
動画下部にある概要欄やチャットからECサイトに誘導できるため、購入動線の構築も簡単。
「対象を絞って限定公開が可能」「アーカイブ配信が可能」など、機能も充実しています。
画像出典元:Live torutte
接客特化型のライブコマースプラットフォームです。
「Zoom」を使用してECサイトに誘導する仕組みで、1対1での視聴者には接客を受けているかのような体験を提供します。
特徴的な機能は、視聴者が画面越しに顔を合わせて接客を受けられる「ライブ相談」や、回答漏れを防ぐチャットコミュニケーション機能などです。
配信機材のレンタルから、当日の配信オペレーションまでベンダーに依頼できるので、ライブコマースを外部リソースに丸投げしたい企業にも向いています。
画像出典元:TAGsAP
短いコードを加えるだけで、ECサイトにライブコマースのプラットフォームを追加できます。
導入の手間がかからず、あらゆる規模のライブコマースに対応可能です。
ECサイトを持たない企業は、Shopify連携の「TAGsAPI for Shopify」プランが便利。
配信前後のフォロー耐性も整っていて、ライブコマース未経験の企業でも質の高いライブ配信が行えます。
画像出典元:POPO
気軽なライブコマースにぴったりの、ライブ配信&ライブコマース・ショートムービーアプリです。
スマホ1つで配信が行え、カメラや機材を準備する必要はありません。
ライブコマース機能を使うには、出店申請と出品登録が必要です。
これらを済ませれば、ボタン1つでライブコマースを開始できます。
コロナ禍で対面式の販売に限界が見えた昨今、ライブコマースの販売手法は日本でも確実に裾野を広げ始めています。
今後企業がさらなる飛躍を目指すなら、ライブコマースの導入も視野に入れるべきでしょう。
ライブコマースには「オンライン」という性質上、販売する商品・客層には向き・不向きがあります。
ライブコマースを行う際は、インターネットとの親和性やターゲット層へのアプローチ方法を適切に測る必要があるでしょう。
画像出典元:Unsplash、Pixabay
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