代表者印の規定は?会社印との違いや使い分け方も徹底解説!

代表者印の規定は?会社印との違いや使い分け方も徹底解説!

記事更新日: 2022/04/11

執筆: 太田繙

会社を設立すると「印鑑」が必要な場面が出てきます。

「代表者印」がそのなかでも、いちばん重要な印鑑とされているのです。

では、代表者印はどのような用途で使用する印鑑なのでしょうか?

今回は、「代表者印の作成方法」「代表者印と会社印との違い」「法律上の規定」「法務局への登録方法」「電子印鑑」などについても解説します。

「代表者印」とは?

会社を経営していくうえで必要となる「代表者印」ですが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。

設立時に作成する会社の実印のこと

代表者印とは、会社の実印のことで、社外向けに使用する最も重要な印鑑です。

代表者印が押されている書類は、経営者が会社の代表として意思を示した書類であることを意味します。

基本的には、重要な契約の締結書類や官公庁への提出書類などに押印または捺印(経営者の署名+代表者印の押印)が求められるのです。

商業登記規則の改正(2021年2月15日施行)で、商業登記法第20条(印鑑届出義務)が削除されたことにより、会社設立時に代表者印を法務局に登録する義務はなくなりました。

会社を設立すると、上記のように押印を求められる機会もあるため、会社設立時には代表者印を作成しておくと安心です。

丸印と角印で用途が違う

代表者印については、サイズに規定はありますが、形に規定はありません。

「代表者印は丸型」を、「会社印は角型」を使用するのが一般的です。

 そこから、代表者印は「丸印」、会社印は「角印」と呼ばれることもあります。

会社印との違い

代表者印には「社名+役職」が、会社印には「社名のみ」の刻印です。

代表者印が「会社の意思を示す実印」であるのに対し、会社印は「会社の認印」としての役割を担っています。

会社印は自社で日常的に発行する見積書や領収書などに使用することが一般的です。

違いについては、代表者印は会社の意思があることを示すための実印、会社印は自社が発行したことを示す認印だと覚えておくとよいでしょう。

代表者印を作成する際のポイント

前述の通り、代表者印の形に規定はなく、刻印内容にも法律上の規定はありません。

法律上規定されているのはサイズのみです。

印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであつてはならない

引用:商業登記規則第9条第3項

とされています。

外枠・内枠の印文を決める

前述の通り、法律上の規定はありませんが、代表者印は二重丸の形状で作成され、外枠には社名を、内枠には役職名を入れることが一般的です。

外枠に刻印する反時計回りの印文を「回文(かいぶん)」、内枠に刻む印文を「中文(ちゅうぶん)」といいます。

印文の例としては、株式会社の場合は外枠に「○○株式会社」、内枠に「代表取締役印」とし、役職者の氏名は不要です。

個人事業主の場合は、外枠に「○○商店」や「○○事務所」などの屋号、内枠に「代表者印」と刻印するとよいでしょう。

規定サイズ内におさめる

商業登記規則第9条第3項にて定められている通り、印影は「辺の長さが1cmより大きく、3cmより小さい正方形」に収まるサイズである必要があります。

おおむね持ちやすさや刻印内容の明瞭さなどを加味し、直径1〜2cmのサイズを代表者印にするのが定番です。

社名が長い場合は、文字が潰れてしまわないよう21mmのサイズを選ぶとよいでしょう。

素材を選ぶ

法律上、具体的な素材の規定はありませんが、商業登記規則第9条第4項に「印鑑は、照合に適するものでなければならない」と規定されています。

したがって、押印の仕方によって印影に差が出たり、経年劣化によって状態が変容する素材は商号に適さないため、代表者印に用いることができません。

ゴム印やシャチハタは、代表者印として使用することができないので注意しましょう。

代表者印の素材としては、黒水牛の角、チタン、耐久性に優れた堅い木材などが適しています。

書体を決める 

法律上、書体の規定はありませんので、好みの書体で作成することができます。

以下のいずれかを使用することが一般的です。

  • 吉相体(きっそうたい)
  • 印相体(いんそうたい)
  • 篆書体(てんしょたい)
  • 古印体(こいんたい)


文字の読みやすさは「吉相体<印相体<篆書体<古印体」の順で、古印体が最も読みやすい書体といえます。

さらに読みやすさを重視し、行書体や楷書体、隷書体(れいしょたい)で作成する場合もありますが、印影が簡易すぎると偽造の危険性が高まるので注意が必要です。

一方、読解が難しい書体は先方が印影を判別しにくくなります。

今回紹介した書体のうち、社名や役職名の読みやすさと偽造のしにくさを兼ね備えているのは「篆書体」もしくは「古印体」です。

社名の長さや、刻印する漢字の画数などを考慮し、書体を選択するようにしましょう。

代表者印を作成したらするべきこと

では、代表者印を作成したら、まず何をするべきなのでしょうか。

順を追って説明します。

法務局で登録をする

従来は、会社設立の際に代表者印を法務局に登録することが義務付けられていましたが、商業登記規則改正(2021年2月15日施行)に伴い、届出は任意となりました。

法務局に登録しておくことで、印鑑証明書の発行が容易になります。

重要な契約書では、代表者印の捺印と印鑑証明書の提出が求められることも多いため、設立登記の際には代表者印を登録しておくとよいでしょう。

設立登記を書面で行う際は、申請書に「登記所に登録している印鑑」を押印しなければならないので、事実上、印鑑の登録は必要です。(オンライン申請の場合は任意)

法務局での登録方法

印鑑の登録を行うには、法務局のホームページで入手できる「印鑑届書」を法務局に提出します。

商業登記規則の改正に伴い、2021年2月15日より「印鑑届書の提出」および「商業登記電子証明書の請求」がオンラインでも行えるようになりました。

書面(郵送・窓口)に加え、オンライン申請でも印鑑届書の提出が可能です。

通常、印鑑の登録は設立登記の際の手続きの一環として行います。

設立登記を依頼する弁護士や司法書士、もしくはオンライン登記サービスを利用しての手続きが便利です。

行政書士は書類作成のみで、手続きの代行はできないため留意しましょう。

印鑑カードの発行手続き

代表者印など、法人印鑑の印鑑証明書を発行する際に必要となるのが「印鑑カード」です。

印鑑カードと印鑑証明書は同時発行できませんので、設立登記および印鑑登録の際に、「印鑑カード交付申請書」も併せて提出するようにしましょう。

印鑑証明書は、窓口やオンラインで取り寄せることができます。

窓口の場合は、印鑑証明書の交付請求書と印鑑カードを提出することで印鑑証明書(手数料450円)が取得可能です。

オンラインの場合は電子証明書とともに「申請用総合ソフト」やマイナンバーカードで申請でき、窓口受取(手数料390円)または郵送受取(手数料410円)が選べます。

保管方法を決める

代表者印は、会社にとって最も大切な印鑑なので、紛失のリスクを減らす必要があります。

会社印や銀行印とは別々に保管しておきましょう。

日常業務で使用する会社印や、金融機関と取引する際に使用する銀行印は、代表者印に比べ使用頻度が高いものです。

これらの印鑑と異なる場所に保管しておくことで、紛失のリスクを減らすことができます。

人の出入りが限られる部屋で厳重に管理するようにしましょう。

社内の運用ルールを策定する

保管方法に加え、あらかじめ運用ルールを策定しておくことが重要です。

例えば、契約書に代表者印の押印が必要になった場合の社内申請方法などを、事前に規定しておく必要があります。

社内申請方法の一例

1. 契約書とともに、社内用の押印申請書を各部署の管理職に提出。

2. 管理職が確認した後、総務部などに書類を回す。

3. その後、代表取締役など限られた重役が書類を確認し、押印する。


また、以下の事項を参考に、代表者印だけでなく会社印や銀行印の取り扱いについてもルールを定めておきましょう

  • 使用者の範囲
  • 押印または捺印が必要な場合の社内での申請方法
  • 各印鑑の管理責任者
  • 保管方法
  • 紛失、盗難があった場合の処遇 など

 

代表者印のよくあるQ&A

この章では、代表者印にまつわる疑問について解説します。

個人事業主には必要か

個人事業主の場合、契約は個人名で行うため、基本的に個人名の印鑑のみでよいとされています。

屋号を設定せず、個人名で活動しているライターやカメラマン、デザイナー、コンサルタントなどです。

 屋号で活動している個人事業主は代表者印を作成することで、屋号が刻印された印鑑を契約書に押印することができます。

○○商店や○○事業所など、お店や事業所を構えている個人事業主は作成しておくとよいでしょう。

複数あってものいいのか

原則、代表者印は1つのみ作成しましょう。

代表者印に加え、会社印や銀行印などは別途作成しておきます。

紛失してしまった場合はどうしたらいい?

早急に、管轄の法務局にて「改印手続」を行いましょう。

新しい代表者印の作成に時間を要する場合は、悪用のリスクを考え、「印鑑廃止届」を提出し、現行の代表者印を無効にしておくことが大切です。

新たな代表者印ができたら、「代表者個人の実印」+「(代表者個人の実印の)印鑑証明書」とともに新代表者印の登録を行います。

電子印鑑になった場合の代表者印の使い道は?

新型コロナウイルスの流行や、業務効率化の推進により、印鑑の電子化が進み始めています。

電子印鑑に法的効力はあるのでしょうか。

この章では、電子印鑑について解説します。

契約書には電子署名が必要

実印に関しては、民事訴訟法第228条4項に

私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する

と法的効力が規定されています。

単に代表者印の印影をデータ化した電子印鑑は、法的効力が認められません

ただし、2001年に施行された電子署名法第3条では、「本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する」と定められています。

電子印鑑に加え、本人による電子署名がなされている場合は、法的効力が認められるのです

契約をオンライン上で締結する場合は、必ず電子署名を行うようにしましょう。

法的効力が認められる電子印鑑もある

前述の通り、自社で代表者印など印鑑の印影をデータ化したものは、本人のものである証明ができないため、法的効力がありません。

電子印鑑に法的効力を付加したい場合は、有料の電子印鑑サービスを利用しましょう。

メールと手書きサインによる認証や、電子証明書による認証にて本人確認を行うことで、電子印鑑に法的効力を持たせることができます。

電子印鑑の注意点(不動産売買をする場合など)

電子印鑑を利用するには、契約書を交わす相手側が電子印鑑の利用を認めている必要があります。

現状では、実印が必要となるケースが多いといえるでしょう。

不動産契約を行う際に必要となる「重要事項説明書」は、これまで電子化が禁止されていましたが、2021年9月に施行された「デジタル改革関連法」により、電子化が進められています。

実際の電子交付は2022年5月以降に行われる予定です。

まとめ

商業登記規則の改正によって、代表者印の登録は任意となりました。

しかし会社を設立すると、必ず代表者印の押印が必要な場面が出てきます

会社の設立登記を行う際には、同時に代表者印の登録を済ませておくと安心です。

画像出典元:写真AC

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