「0から1を作るノウハウが圧倒的に不足している…」という悩みを持つ起業家にとって、有力な助けとなるのがインキュベーションの活用です。
インキュベーションとは起業のあらゆるフェーズをサポートし、起業家の独り立ちを助けるサービスのこと。
起業家はこれを活用することで起業の課題をクリアしやすくなり、ビジネス成功の確度が大幅にアップします。
本記事ではインキュベーションの意味や受けられる支援、さらには実際にあるインキュベーション施設や今後の課題などを紹介します。
インキュベーションへの知識を深め、起業に役立ててください。
このページの目次
インキュベーションとはどのようなことを意味するのでしょうか?
まずはインキュベーションの意味や目的を理解しましょう。
インキュベーション(英:incubation):孵化(ふか)、卵をかえす
インキュベーション(incubation)という単語そのものは「卵をかえす」「孵化」という意味です。
ただしビジネスで「インキュベーション」というときは、事業の創出・創業を支援するサービスや活動のこと。
「卵を孵化させる」という本来の意味の通り、新規事業がスタートするまでのフェーズで活用されるのが一般的です。
起業家の中には、起業の知識や資源・ノウハウが不足している人が少なくありません。インキュベーションはこうした起業家を助け、スムーズな起業のバックアップを行います。
もともとインキュベーションは、1950年代のアメリカで生まれたサービスです。
日本で広く知られるようになったのはバブル以降で、「日本新事業支援機関協議会」が設立された1999年頃といわれています。
インキュベーションの目的は起業をスムーズにすることですが、ただ「起業して終わり」ではありません。
インキュベーションでは、アーリーステージの包括的な支援の中で、企業が長期的・継続的に存続できる体形・仕組みを獲得することを目指します。
企業自身が自然に成長を続けるサイクルを確立し、今後ビジネス社会で淘汰されずに生き残っていくためです。
また、より広い意味でのインキュベーションの目的は、地域経済の発展や日本経済の復活です。バブル崩壊後、日本政府は積極的な創業支援を「経済活性化」「経済成長戦略」の柱の一つとしました。
新しいアイディアを持った多くの企業が生まれれば雇用が創出され、個人の将来の選択肢が広がります。
これが地域や日本経済を活性化させる上で、重要な原動力になると考えられているのです。
「創業の支援をする」のが目的なら、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家なども存在します。
ただし両者が支援するのは、あくまでも資金のみです。資金調達が難航している場合は大きな助けとなりますが、「ノウハウがない」「知識がない」などの不安は解消してくれません。
インキュベーションは、資金調達の方法から起業に必要な準備・設備まであらゆる面をサポートしてくれます。
つまり「支援がより具体的」というのが、インキュベーションとベンチャーキャピタル・エンジェル投資家の違いです。
インキュベーションは条件によって次の類型に分類できます。
1. 運営主体
2. 設置場所
3. ビジネスシステムの形態
4. 提供サービス
インキュベーションの利用を考えるときはそれぞれの特性を理解して、起業スタイルに合うものを選ぶことが必要です。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
インキュベーションを提供する運営主体は、主に3パターン。近年は民営型が増えています。
近年は大学内にインキュベーション施設を設置し、産学連携を図るケースが増加中です。例えば、東京大学や名古屋大学、北海道大学などではインキュベーション施設の整備が進んでいます。
インキュベーションの形態としては、既存事業から新しい試みを目指す既存事業型、全くのゼロから取り組みを始めるベンチャービジネス型があります。
提供されるサービスは、個々のニーズで選べます。
ハードからソフトまで全ての支援を望む場合はフルサポート型、ビジネスノウハウや知識などの支援だけを得たい場合はソフト型、設備だけを利用したい場合はハード型がおすすめです。
インキュベーションを利用することで、起業家はどのような支援を受けられるのでしょうか?
インキュベーションが提供する主な支援を紹介します。
インキュベーションを利用すれば、起業のために必要な施設を通常より安価な賃料で借りられます。
施設では電源や設備などがオフィス向けに整えられており、起業家が準備する必要がありません。
中には会議室や商談室などが備えられているところもあり、最適な環境で起業に必要な準備をおこなえます。
また、事業内容によっては工場やラボを借りることも可能です。
工場なら三相電源を備えるものなどがあり、試作品の開発がスムーズ。また実験給排水設備や耐薬素材の床を備えたラボなら、実験研究に最適です。
インキュベーションでは、インキュベーションマネージャーが個々の起業パターンに合わせた最適なアドバイスを与えてくれます。
インキュベーションマネージャーとは、起業のさまざまなフェーズに必要な知識やノウハウを持っている専門家で、インキュベーションの中核的な存在です。
インキュベーションマネージャーによって提供される支援には以下のようなものがあります。
「起業に興味はあるけれど、何をしたらよいか分からない」「事業アイディアはあるけれど、どうビジネスに生かせばよいか分からない」…、こうした起業の不安を持つ起業家は、インキュベーションマネージャーの助けを得ることで、解決の糸口を見つけやすくなります。
インキュベーションの一環として、起業家同士が交流できるイベントや交流会を企画する経営主体も少なくありません。
起業家はこれらに積極的に参加することで、異業種の起業家とのつながりができます。
また、起業の際は困難な場面に直面することもあり、愚痴や悩みを言いたくなることもあるでしょう。
このようなとき同じ悩み・課題を持つ仲間がいれば、有益な意見交換が可能です。インキュベーションを終了した後でも長く付き合えるような、重要なパートナーが見つかるかもしれません。
インキュベーションは、文脈の中でどのように使われるのでしょうか?
ここでは、インキュベーションの使い方を例文を交えて紹介します。
インキュベーションの例文としては、以下のようなものがあります。
「インキュベーション=創業支援」と置き換えれば、用法を誤ることはないでしょう。
インキュベーションが付く言葉には次のようなものがあります。
このほか、創業支援のための事務所は「インキュベーションオフィス」、創業支援期間中に利用する部屋は「インキュベーションルーム」などと呼ばれます。
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現在、日本各地にはさまざまなインキュベーション施設が設置されています。
ここでは、実際に稼働しているインキュベーション施設の中から、3つの施設を紹介します。
神奈川県相模原市にあるインキュベーション施設です。
計102室のオフィス・ラボ施設を有しており、新分野進出を目指す中小企業から研究開発の事業化を目指す企業まで、多種多様な企業が活発な活動を展開しています。
こちらのインキュベーション施設での支援内容は、主に次のようなものがあります。
なお入居期間は原則3年です。
福岡県久留米市にある、バイオテクノロジー専門のインキュベーション施設です。
バイオテクノロジーを核とした新産業を創出し、関連企業・研究機関の一大集積拠点の形成を目的に創設されました。
九州大学や久留米大学と連携しているほか、福岡県や九州経済産業局なども本施設に参加しています。
主な支援内容は次の通りです。
現在インキュベーション施設には13の企業が入居中です。
東京都中野区にある、アニメ、映画、ゲーム等コンテンツ分野のベンチャー企業や起業家を対象としたインキュベーション施設です。
特徴としては、コンテンツ事業者向けに充実したアクセラレーションプログラムが提供されること。入居者はこれを活用することで、高精度のピッチスキルのコツを学べます。
こちらの施設で受けられる支援としては、次のようなものがあります。
ただし、入居はいつでも可能というわけではありません。「第○期」として一斉募集を掛けるスタイルなので、募集があったタイミングで応募することが必要です。
日本は欧米諸国と比較してインキュベーションの重要性がより高いといわれます。
現在日本でインキュベーションが重視される理由や、今後の課題について見ていきましょう。
日本でインキュベーションが重要と言われるのは、起業までのさまざまなトラブルや課題をクリアしやすくなるためです。
日本は欧米諸国と比較すると「起業する」という文化が根付いておらず、一般人にはそのノウハウもありません。
いざ起業しようとしても壁にぶつかる起業家が多く、途中で挫折したりすぐに廃業となってしまったりするケースが多いでしょう。
このような日本の起業家にとって、インキュベーションの利用は、起業の手間やリスク低減に有益です。
随時専門家によるサポートを受けられる状態なら、不安要素や不確定要素を極力排除した状態で起業できます。事業成功の確度が上がり、一企業として長く存続しやすくなるのです。
日本のインキュベーションの課題は、ソフト面の充実です。
もともと起業家を支援する仕組みのなかった日本では、起業のあらゆるフェーズをサポートできる優秀なインキュベーションマネージャーが育っていません。
充実したハード面と比較してソフト面のサポートが脆弱になりがちで、起業家が思うような支援を受けられないケースが散見されます。
インキュベーションマネージャーの不足から、現在では「インキュベーションマネージャーで解決できない課題については外部の専門家に委ねる」というスタイルを取るインキュベーション企業も少なくありません。
層の薄いインキュベーションマネージャーをどう育てて活用していくかは、どの経営主体にとっても大きな課題となっています。
インキュベーションを活用できれば、有益な設備や専門家のアドバイスを受けることが可能です。
起業経験のない起業家の卵でも、不安なく事業をスタートできるでしょう。
また、専門家のアドバイスを受けたり最先端のノウハウに触れたりすることは、今後事業を展開していく上で、非常に有益な経験となるにちがいありません。
起業を考えている人は、各施設の入居条件や家賃などをチェックして、利用できそうなものはないか検討してみてはいかがでしょうか。
画像出典元:BURST、Pexels
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