証憑は、取引を交わした内容や条件を示した書類のことを意味します。
書類でのやり取りと管理が多かった証憑も、電子保存と電子提出への移行が進んでいます。
本記事では、証憑の基本から種類、保存期間と管理するときの注意点まで解説します。
証憑の意味や必要性を理解することは、経営者をはじめとした管理者のマネジメント能力を高めることにも繋がります。
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TAK
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最初に「証憑(しょうひょう)」の意味から確認していきます。
証憑というのは、取引を交わした内容や条件を示した書類のことを意味します。
最もわかりやすい証憑の例としてあげられるのが「契約書」です。
契約書は、商品の供給者と需要者との間で締結した約束事(商品内容、価格、数量、期限等)を明記した文書のことを言います。
法律的には口約束でも効力は生じますが、言った言わないなどの争いごとを避ける観点から慣習的に文書として証拠を残すのが一般的です。
そして、この契約書は「証拠」として機能することになるため、争いごとを防ぐと同時に、取引内容を客観的に確認することが可能となります。
つまり、証憑というのは、何かしらの取引に関する客観的な証拠を示す資料と解釈することも可能と言えます。
より身近な証憑の例として、コンビニで買い物をしたケースを考えてみましょう。
現金1万円を持っていて合計2,000円の商品を買った場合、残金は8,000円となりますが、支出した金額2,000円はどうやって客観的に証明することが出来るでしょうか?
答えは「領収書(レシート)」です。
この領収書を確認すれば、何をいくらで購入したかを客観的に証明することが出来るので、領収書(レシート)も証憑の一種と言うことが出来ます。
証憑のイメージを理解した後は、具体的な証憑書類の種類について紹介していきます。
ここでは企業活動の種類に応じて発生する証憑の種類について解説していきます。
売上に関する証憑とは、自社が取り扱う商品や製品、あるいはサービス(以下「商品等」)を顧客に提供する場合に必要となる証憑は「契約書」「納品書」「請求書」などが該当します。
契約書は、商品等を売る側と買う側の双方の意思決定に基づいて締結する証憑です。
当該資料を確認することで「売買の対象とする商品内容、取引価格、取引に関する期限等」を確認することが出来ます。
納品書は、主に物品などの商品を扱う場合に、売手側が買手側に商品を納品したことを客観的に証明するために用いる証憑書類です。
買手からの注文内容と照らして間違いがないことを確認することが可能になるなど、企業の内部統制の観点からも重要な書類となります。
請求書は、実際に売り手が買い手に商品等を提供した後、商品等代金を請求するために発行する証憑書類となります。
買い手側は請求書の内容にもとづいて売上側に支払いを実行することになりますが、売上の実在性や金額の正確性を確認する際にも重要な書類となります。
続いては企業活動のうち「仕入」に関連する証憑を見ていきます。
商品等を提供するにあたっては、製造業や小売業を想定すればわかりやすいように、素材や原料を仕入れ、加工した上で製品を顧客に販売する流れとなります。
原料等を仕入れるにあたっては、仕入先との間で「契約書」を締結することになります。
仕入先に対しては「注文書」を発行します。
企業活動のうち上記で説明した売上活動や仕入活動も重要となりますが、商品等を提供するにあたっては経営資源である「人」に関するプロセスも重要となります。
具体的には従業員やアルバイト等の人材を採用した上で、商品等を提供していくことになりますが、その際には事前に企業と従業員との間で「雇用契約書」を締結することになります。
雇用契約書には、勤務体系や契約期間、報酬体系など従業員が企業で働くにあたっての就業条件が示されていることが一般的です。
雇用後は、従業員は雇用契約書や就業規則に従って働き、その対価として給与をもらうことになりますが、その証憑としては「給与明細」などが該当することになります。
ここまで企業活動における中心的なサイクル「売上」「仕入」「人」を中心に見てきましたが、これ以外にもビジネスで発生する証憑は色々と存在します。
その中でも知っておいた方がよい証憑書類としては「賃貸契約書」「資産関連の書類」「負債関連の書類」が挙げられます。
ビジネスを始めるあたっては、必ず登記地として法人住所が必要となります。
法人住所が必要となる際には、レンタルオフィスなどを提供している事業者と「賃貸契約書」を締結することになります。
賃貸契約書には、賃貸場所や賃貸期間、賃貸料などが明記されています。
資産関連の書類については、主に固定資産を購入した場合の契約書や支払明細書が該当します。
負債関連の証憑書類については、主に銀行からの借入に関する契約書(金銭貸借契約書等)が該当します。
実務の場面では数多くの契約書や資料が存在することになりますが、そのすべてを把握するよりも、ある取引の客観性や正確性を証拠として示せる資料は何かを考えることが重要と言えます。
ここでは証憑書類の保存期間と関連する法律について触れていきます。
証憑は、主に契約書や請求書などのこれまでに紹介した書類を差すケースが多いですが、会計関係の書類も含めて解説していきます。
会計関係の証憑書類とは、帳簿や貸借対照表、損益計算書などです。
証憑書類の保存期間と法的根拠は、主に税法と会社法のルールに基づいています。
証憑書類の種類により保存期間に多少の差はありますが、一般的に「5年」「7年」「10年」といったような保存期間が設定されています。
適切に証憑書類が保存していないことが発覚した場合には、「青色申告の取消」や「白色申告者に対する推計課税」、「消費税における仕入税額控除の不適用」などの影響が生じます。
証憑によって客観的な取引や契約の事実を証明することが出来ない以上、優遇措置を取り消す罰則規定が設けられています。
最近では紙に代わって、証憑の電子保存も認められるようになってきました。
証憑書類の紙と電子で保存期間に違いはあるのでしょうか?
結論から言えば、基本は紙と電子で保存期間に違いはありません。
要件を満たした場合にはスキャナなどの電子保管も電子帳簿保存法にもとづいて認められています。
ただし、一部の証憑書類は、原則として紙媒体での保管が法律で求められています。
自社が取り扱う証憑書類が電子保管が可能かは法律を確認しましょう。
最後に証憑書類の管理上の注意点についていくつか紹介しておきます。
まずは、証憑書類の管理担当者を明確にしましょう。
基本的なことではありますが、誰がどこでどのように保管しているかを社内規定などでしっかりと定めるようにします。
経理関連資料であれば経理責任者が、契約関連資料であれば法務部が責任を持って保管するなど、何かしらの方針に従って管理することが重要となります。
証憑書類は、後から確認や見返したり、すぐに「どこにあるのか」が分かるように管理することが重要です。
証憑書類のファイリングでは、ナンバリングはするようにしましょう。
ナンバリングとは番号付けのことで、資料に番号を付すことで一元的な管理を実現するシンプルな方法となります。
証憑書類原本またはそのコピーに連番を振り、それらすべてをまとめたExcelファイルに対応する番号を表紙として付けておくなどです。
ナンバリングをする事で、どこにどのような証憑書類が保管されているかを確認しやすくなります。
証憑書類を紙媒体で保管する場合は、書類が物理的に劣化しないように気をつけて対策をしておきましょう。
先ほどお伝えしたように、証憑書類は長期間での保存が求められています。
長期間保存の影響により、保存している証憑書類が変色したり、文字が読めない状況になってしまっては意味がありません。
「高温多湿な場所での保管は避ける」「太陽や蛍光灯などの紫外線を受けない場所に保管する」などを心掛けてみてください。
保存期間が経過した証憑書類については廃棄することになりますが、一般的には「シュレッダーで廃棄」が多いでしょう。
証憑書類の中には個人情報や機密情報が含まれていることもあるため、しっかりと廃棄するようにしましょう。
会社によっては業者が回収し溶解するためのボックスを設置していることもあるので、大量の書類を廃棄するようなケースでは利用してみるのもオススメです。
証憑書類を紙媒体で保管する場合でも、スキャンなどの方法を通じて電子データにしてから保管しましょう。
その利便性は今更解説するまでもないですが、電子データを保存しておけば場所やデバイスを選ばずにアクセスし、内容を確認することが可能です。
さらに、原本である紙資料に触れる機会も減るため、原本そのものの紛失や劣化を防ぐという効果もあります。
最後に電子帳簿保存法を活用することも検討してみましょう。
電子帳簿保存法にもとづけば、国税関係の書類を電子データで保管しておくことが出来ます。
その際には、事前に所轄税務署長に対してスキャナ保存による承認申請書を提出する必要があります。
近年ではスマホによる電子化も認められつつあるので、国税関係の書類が多いような場合には導入を検討してみても良いかもしれません。
今回は「証憑」をテーマに概要から種類、保管期間や留意点まで紹介してきました。
ビジネスの場面、特に経営者をはじめとした管理者層にとっては証憑に対する理解は基本とも言えるので、どのような種類がありどのような役割を果たしているのかしっかりと理解してみてください。
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