会計帳簿を作成した後、具体的にどのくらいの期間保存し、どのように保存するかについて悩んだことはありませんか?
そういった悩みを解決するために、本記事では「総勘定元帳」などの会計帳簿の種類から帳簿の保存期間、青色申告の場合の保存期間、保存方法、保存しなかった場合のリスクまで網羅的に解説していきます。
このページの目次
会計帳簿は保存対象となる重要な資料ですが、「具体的に会計帳簿が何を指すのか今一つわからない」という方も多いかと思います。
結論から言うと、会計帳簿は主要簿と補助簿の2つから構成された総称です。
主要簿は企業が必ず作成する必要がある「総勘定元帳」と「仕訳帳」から構成されます。
補助簿は企業が必要に応じて作成している帳簿で、売掛金元帳や買掛金元帳、現金出納帳といった帳簿が存在します。
会計帳簿に該当する一覧表(一例)をまとめたものが下記となります。
会計帳簿と並んで保存対象となる資料に「書類」があります。
ここでいう書類とは、貸借対照表や損益計算書といった計算書類や、帳簿を作成するために利用した契約書、注文書、領収書等の取引としての証憑が含まれます。
書類に該当する一覧表(一例)をまとめたものが下記となります。
以上の表を参考にして、まずは保存しなければならない対象をしっかりと抑えるようにしてください。
では実際に、帳簿と書類はどのくらいの期間保存しなければならないのでしょうか?
基本的な考え方としては、下記3点を抑えておけば十分でしょう。
1. 「計算書類」と「帳簿」は、税法・会社法ともに保存が求められている
2. 会社法では「10年」、税法では基本的に「7年」の保存が必要である
3. 税法で保存が求められている「書類」のうち「契約書」や「請求書」等の証憑資料の保存は「5年」となっている
少し複雑なのですが、保存期間は「会社法のルール」と「法人税法のルール」で異なっており、それぞれの法律に従って保存する必要があります。
具体的には、会社法では「10年」の保存が求められ、法人税法では「7年」(繰越欠損金が生じた年度については「9年」)の保存が求められています。
法人税法の法令では「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要がある」との記載があります。具体例をあげると、決算日を3月末とした場合、提出期限は5月末となり、その翌日6月1日から7年間保存する必要があるということになります。
これに加えて、帳簿と書類ごとの保存期間が異なっているので少しわかりにくいのですが、結論としては下記の表に基づいて保存してもらえれば問題ありません。
この表は、帳簿と書類ごとに税法と会社法のどちらが適用されるかを示した表です。
青色申告の場合は、表の「税法(青色申告)」に記載しているようにこの期間に基づいた保存が要求されています。
一般的には上記のようになりますが、いずれも重要な資料となるため、永久に保存するかまたは電子データとしてスキャンしておくことをオススメします。
帳簿と書類の保存期間がわかったので、保存方法について見ていきたいと思います。
帳簿書類の保存方法としては、細かく規定されていますが、実務的には必要に応じて「紙」として出力出来るような状態にしておくことが基本的な考え方となります。
なぜなら、税務署を始めとした各当局では電子データに関する整備が進んでいるものの、帳簿や書類をチェックする担当者にとっては「紙」の方が確認しやすいからです。
帳簿や書類は通常数枚ではなく、数十~数百枚程度の分量となることが多いため、場合によっては「紙」で見比べた方が担当者にとっては利便性が高いということですね。
ただ、チェックする担当者側の利便性だけを考慮すると、数百枚にも及ぶ資料を作成している企業側は事務管理コストが高くついてしまうため、電子データによる保存も認められています。
会計ソフトを使って帳簿を作成する場合も、必要に応じて紙として出力出来る状態にしておきましょう。
実務ではどのように保存するのが望ましいのでしょうか?
企業の実情に応じて異なりますが、一般的な方法を簡単に紹介していきます。
紙で保存する場合には、資料を「カテゴリ別」「年度別」に分類することがオススメです。
例えば、「法人税関係の申告書」「消費税関係の申告書」のように「カテゴリ別」にわけた上で、「2020年度」「2019年度」といった「年度別」分類をするイメージです。
このように保存することで、過去の資料が必要となった場合にもすぐに必要な資料を探し出し、無駄な時間を費やす必要がなくなりますので、うまく管理出来ていない方は参考にしてみてください。
一方で、「電子データとして保存したい!」という方も最近は多いと思うので、電子データで保存する方法も紹介しておきます。
電子データで保存する場合には、資料の「重要度や優先度に関するルール」や「共有範囲」「電子化の頻度」「保存媒体」を社内で決めた上で、担当部署ごとに保存することがオススメです。
なぜなら、帳簿や書類すべてを電子データ化するのは非常に手間で事務コストもかかるので、特に重要度が高い契約書や金額の大きい領収書を対象とするなど、何かしらのルールを設けておいた方が効率的な管理を実現することが出来るからです。
また、合わせて電子データとして保存する頻度(毎週/毎月末など)や、何に保存するか(PDFした上でUSBに保存等)を決めておくことも重要となります。
税務当局によって認められている電子データの保存方法一覧が下記となります。
いずれの場合も、税務当局が認める要件や事前承認が必要となるため、具体的な内容については担当官に確認されることをオススメします。
最後に、帳簿や書類を保存しなかった場合に想定されるリスクについて解説します。
そもそも、「帳簿や書類を保存していないことが発覚するのか?」と疑問を持たれている方もいるでしょうが、これは税務局の「税務調査」が入った場合に発覚します。
具体的には、税務担当官の要望に応じて帳簿や書類を提出できない場合、適切な保存をしていないことが発覚します。
その結果、まず考えられるリスクとしては「青色申告」が取り消される可能性があります。
青色申告は適切に帳簿や書類を保存することと引き換えに、税務上の恩恵を受けられる仕組みとなっているため、前提要件を満たしていないことで「青色申告」が取り消されるということです。
これによって、青色申告特別控除(最高65万円)のような恩恵が受けられなくなるので、デメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
次に考えられるリスクとしては、税務調査時に必要な帳簿や書類を提出出来ないことで、税務担当官から追加で税金を支払うように求められる可能性があります。
税務担当官によっても異なるでしょうが、適切な保存がされていないことを原因として、「適切な納税額を納めていないのではないか」と疑われてしまうわけです。
その結果、税務担当官の判断により、追徴課税を課されてしまうことがあるので、これも大きなデメリットになると言えるでしょう。
いかがだったでしょうか?
今回は帳簿や書類の保存期間から保存方法、保存しなかった場合のリスクまで解説してきました。
管理業務は一見面倒な性質を持ち合わせていますが、適切な管理をしておくことは税務上の恩恵を享受したり、デメリットを回避出来ることに繋がっているとも言えます。
本記事をきっかけに、適切な帳簿や書類の保存が出来ているか是非見直してみてください。
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TAK