帳票とは帳簿・伝票のこと|種類や役割、基本をわかりやすく解説

帳票とは帳簿・伝票のこと|種類や役割、基本をわかりやすく解説

記事更新日: 2024/05/29

執筆: TAK

経理や会計・税務の勉強をしているときに「帳票」や「帳簿」「伝票」といった言葉が出てきて、「その違いがよくわからない!」と思ったことはありませんか?

本記事では初めて見る人にもわかりやすいように、帳票の全体像から種類や役割、さらには電子帳票といった基本的な部分を丁寧に解説していきます。

帳票とは

帳票とは「帳簿」と「伝票」を合わせた総称

まず最初に基本的な用語の確認からしていきましょう。

「帳票」とは、「帳簿」と「伝票」を合わせた抽象的な総称のことを意味します。

そして、「帳票」と「伝票」の違いを理解するためには、まず取引の全体図をしっかりと把握しておくことが大切です。なぜなら、企業取引のプロセスや結果が、「帳票」や「伝票」と大きく関連しているためです。

企業取引の全体フローを図で表すと以下のようなイメージになります。

言葉で説明すると、このようになります。

①:まず企業が何かしらの「取引」を行う

②:その取引を行った証拠が「伝票(※)」として保管される

③:取引結果である「伝票」に基づいて仕訳をすることで取引を「記録」する

④:仕訳をまとめた結果が「帳簿」として作成される

⑤:「帳簿」に対して決算処理を行うことで「財務諸表」が完成する

※取引証拠としての資料は厳密には「証憑」と言われることが多いですが、「伝票」として表現されることもあります。以下「伝票」という用語を用いて説明をしていきます。

これを踏まえた上で、「帳簿」と「伝票」の違いについて見ていきましょう。

帳簿の目的は「取引の記録」をつけること

帳簿とは、企業取引を記録することを目的として作成される企業の家計簿です。

先ほどの取引フロー図で言うと、「④」に該当する部分となります。

帳簿をつけることによって、取引の結果を可視化することが可能となるため、「今月の売上は先月よりも調子がいい」「今年は去年に比べて利益が倍増した」といったような比較をすることが出来るのです。

帳簿の種類と役割、具体例については後ほど紹介します。

伝票の目的は「取引の証拠」を残すこと

一方の伝票とは、企業取引を行ったことを客観的に証明することを目的として作成される資料です。

先ほどの取引フロー図で言うと、「②」に該当する部分となります。

伝票や証憑といったような取引記録を残すことで、架空取引をしていないことの証明や、仮に帳簿の数値を疑われたとしても、数値が間違っていないことの証明が可能となります。

つまり、取引の実在性や取引数値の正確性を証明するために、伝票は必要となるのです。

「帳簿と伝票の違いがまだ今一つわからない」という方は、両者が必要となるプロセスの違いを意識してみてください。先ほどの取引フロー図を見て頂ければわかりますが、まず最初に必要となるのが「伝票」であり、その後作成されるのが「帳簿」となります。

そのため、「帳簿は、取引結果を示した伝票に基づいて作成される」と理解して頂ければ問題ありません。

帳票(帳簿・伝票)の種類

帳簿の種類は「2つ」

ここからは帳簿と伝票の種類について見ていきましょう。

「帳票」の種類をわかりやすくまとめた全体像がこちらです。

まず、帳簿には企業が必ず作成する主要簿と任意で作成する補助簿があります。

そして、この主要簿には「仕訳帳」と「総勘定元帳」があります。

仕訳帳は、一つ一つの取引を仕訳として記録する帳簿のことです。

総勘定元帳は、仕訳帳に記載された仕訳をまとめて集計した帳簿のことを意味します。

伝票の種類は「複数」

次に、伝票の種類ですが、伝票には複数の種類があります。

伝票会計を導入した場合には「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」に分類されることが一般的で、取引の証憑としては「請求書」「納品書」「レシート」などが存在します。

これらの意味をわかりやすいようにまとめると、下記のようになります。

似たような意味合いの用語が多いですが、どの段階で必要になるかを意識してみてくださいね。

帳票の役割|帳票は何のため?

帳票は「会社を見える化」する役割を担う

ここまで帳票の概要や種類について説明してきましたが、帳票が果たすべき役割とは何でしょうか?

冒頭でも軽く紹介しましたが、伝票で「取引をした証拠」を残し、帳簿で「取引結果を記録」することで、取引結果を会社の成績表として示せることが帳票の役割と言えます。

では、なぜ取引結果を可視化する必要があると思いますか?

それは、「会社の意思決定に利用するため」という理由もありますが、確定申告や決算に代表されるように「会社法や税法で作成が義務付けられている」からです。

これは、法人格を有している会社だけでなく、個人商店を営んでいるような個人事業主にも共通することなので、「帳票は基本的には作成する必要がある」ということを覚えておいてください。

次からは、帳票が利用される具体的な場面について紹介していきます。

帳票が利用される場面(具体例)

【具体例①】確定申告や決算申告時に必要

それでは「帳票」が実際にどのような場面で利用されるかを見ていきましょう。

まず代表的な利用場面が、「確定申告」や「決算申告」の場面でしょう。

個人商店を営んでいるような個人事業主であれば、毎年3月15日頃まで(※)に確定申告作業を完了させる必要がありますし、法人格を有する企業であれば、決算日から原則2ヶ月以内に決算申告を完了させる必要があります。

※2020年はコロナウイルスの影響で4月16日までが期限(国税庁)と延長されています。

このように、税務署へ会社の成績表を提出する必要性があるため、「帳票」という形で「会社の業績を見える化」しておく必要があるのです。

仮に、何かしらの理由で税務調査が入ったような場合でも、取引の証拠である「伝票」「証憑」を適切に保管していれば、自分の正当性を主張することが出来るという仕組みになっています。

(保管方法や保管期間についてはこの後紹介していきます。)

【具体例②】銀行融資を受ける場合に必要

次にあげられる代表例としては、「銀行から融資を受ける」ような場面でしょう。

なぜ銀行からお金を借りる際にに「帳票」が必要になるかと言うと、銀行担当者がお金を貸しても問題ないかを判断する手段として、「帳票」を利用するからです。

(※厳密には、帳票に決算処理を加えた後の財務諸表を使用します。)

事業を継続する観点からは資金管理が大事なので、個人事業主も企業にとっても「帳票」を適切に管理しておくことはとても重要ということがわかりますね。

帳票の保存期間・保存方法

帳票の保存期間は「会社法」と「法人税法」に従う

作成した帳票は、実際どのくらいの間保存すれば良いのでしょうか?

結論から言うと、会社法では「10年」の保管が求められ、法人税法では「7年」(繰越欠損金が生じた年度については「9年」)の保管が求められています。

法律によって保存期間が異なっているのでわかりにくいですが、帳簿と伝票は常にセットにした上で、10年保管しておいた方が無難といえるでしょう。

帳票の保存方法は「原則として紙」

次に、作成した帳票の保存方法ですが、原則「紙」での保存が規定されています。

電子で保存することも可能ですが、その場合にも「紙として出力」出来るように準備しておく必要がある点に注意です。

電磁的記録による場合には、事前に税務当局への申請と承認が必要となるケースがあるので、詳細は国税庁のHPを参照してみてください。

電子帳票とは

電子帳票は「デジタル化」した帳票

最後に、「電子帳票」についても触れておきたいと思います。

これは、インターネットの普及と進歩に伴って定められた電子帳簿保存法やe-文書保存法を根拠とした、帳票をデジタルのまま取り扱える技術を言います。

先ほど、紙での保存方法が原則という話をしましたが、常に「紙」を必要とすると印刷コストや管理コストがかかってしまいますよね。

また、大量の紙をファイルに綴じて保管したとしても、保管場所の確保にも悩まされるため、電子化の流れは今後より一層進むと考えられます。

電子帳票のメリット

【メリット①】企業コストの削減

電子帳票を導入した場合のメリットをまとめておきたいと思います。

1つ目のメリットは、先ほどの概要部分でもお伝えしたように、印刷費の削減や管理コストの削減といった企業コストの削減効果が期待出来ます。

企業にとっては、コスト削減による利益確保は重要課題なので、電子帳票の導入によってコストを減らせる点は大きなメリットと言えそうです。

【メリット②】セキュリティの向上

2つ目のメリットとしては、セキュリティの向上が期待出来る点です。

「電子化」することで、パスワードの設定等も可能となり、紙での保管と比べて盗難リスクも減少させることが可能となります。

紙での保管だと、関連資料がバラバラになってしまう可能性もありますが、電子帳票の保管であれば一元的に管理が出来るのもメリットと言えるでしょう。

【メリット③】利便性の向上

3つ目のメリットは、利便性の向上が期待出来る点です。

これは、紙資料の場合だと手作業で見たい情報を探す必要がありますが、デジタルであれば検索をかけることが可能となり、無駄な時間をかけずに探すことが出来ます。

電子帳票のサービス

 

画像出典元:「楽楽明細」公式HP

楽楽明細は請求書、納品書、支払い明細などの帳票をWeb上で発行するクラウド型のシステムです。

楽楽明細で請求書を電子化することで、郵送などにかかっていたコストが0円になるだけでなく、請求書作成にかかっていた時間も96%削減可能に。

また、初期設定や今後の運用の相談・提案等については電話又はメールにて対応しているため、初めてシステムを導入する企業にも安心のサポート体制といえます。

楽楽明細 の資料をダウンロード 

 

画像出典元:「Concur Invoice」公式HP

Concur Invoiceは、請求書データ管理の電子化によりコスト削減を図るサービスです。

経費精算の管理をクラウドで自動化出来ることでペーパーレス化が可能になるだけでなく、申請・チェックなど全てデジタル上で行える為業務効率化が目指せます。

また、経費精算を自動化することでこれまでかかっていた作業時間を大幅にカットでき、手入力によるミスもなくなります。

電子帳票システムについては、以下の記事も参考にしてください。

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回は「帳票」をテーマにして幅広く帳票の役割や利用場面、保管期間や保管方法、さらには電子帳票まで解説してきました。

管理業務は個人事業主や企業にとって必須の業務プロセスである反面、煩雑さや面倒さから適切な管理がなされていないケースが多々見受けられます。

より良い事業活動を推進するためにも、「帳票」の大切さについて今一度見直す機会になれば幸いです。

画像出典元:Pexels、ShutterStock

この記事を書いた人

 TAK

フリーコンサルタント・公認会計士。公認会計士試験に合格後、大手監査法人のアドバイザリー部に就職し、IFRSやUSGAAP、連結納税、銀行監査などに携わる。その後、中国事業の代表として外資系コンサル会社に転職し、中小日系企業の中国新規進出や現地企業のM&Aサポート、コンプライアンス業務などを担当。帰国後は独立し、フリーのコンサルタントとして生活しつつ、ブログVectoriumを運営。

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