電子帳票は、業務の効率化・スリム化に有益です。
ただし、元となるシステムにはさまざまなものがあるため、導入までにはじっくりと検討する必要があるでしょう。
本記事では、電子帳票を導入するメリット、さらには電子帳票システムの選び方を紹介します。おすすめの電子帳票システムについても解説しますので、併せて確認してくださいね。
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帳票とは、会社で行われるさまざまな取引の証拠となる書類全般です。「帳簿」「伝票」に大別され、これらを確認すれば、会社の経営状態やお金の動きが容易にわかります。
従来までは紙媒体で記録・保管されるのが一般的でしたが、近年はすべてを電子データ化して処理する会社も少なくはありません。多くの会社が紙をやめて電子データに移行するのはなぜなのでしょうか。
帳票には以下のようなものがあり、これらを電子データ化したものが電子帳票です。
どのような書類がこれに該当するのかは、以下で確認してください。
帳票 | 伝票 |
仕訳帳 | 入金伝票 |
現金出納帳 | 出金伝票 |
預金出納帳 | 請求書 |
買掛帳 | 納品書 |
売掛帳 | 領収書 など |
総勘定元帳 | |
固定資産台帳 など |
また、これらの電子帳票は、次のファイル形式で活用されるのが一般的です。
紙媒体から電子ファイルへの移行が進んだ背景には、まずPCやインターネットの普及があります。
PCやインターネットを使えば、帳票の作成や共有が紙媒体よりもはるかにスムーズになりました。
加えて、環境問題への取り組みから、社会的に「ペーパーレス化」が推奨されていることも、電子化を後押ししました。
「e-文書法」が施行され、「電子帳簿保存法」の規制も緩和されると、ほとんどすべての帳票は電子データでの保存が可能となったのです。
そもそも取引に関わる書類のすべては、「証憑(ひょう)書類」として一定期間保存することが法律により定められています。
紙媒体の保管は手間がかかる一方、電子データなら保管の場所・手間はかかりません。紙媒体よりもメリットが多いとして、帳票を電子化する会社が増えているのです。
電子帳票を導入することにより、会社にはさまざまなメリットがあります。電子化することにより生じる具体的な効果を見てみましょう。
紙媒体での作成を止めれば、まず紙代や印刷代がいりません。手書きよりも1人で処理できる業務量はアップするため、人件費の削減も可能。
オフィスのスリム化を図ることができるでしょう。
また、帳簿を電子データ化して保管すれば、保管用のスペースも最小限ですみます。
会社の経理に関する書類のほとんどは「会社法」「法人税法」により7年または10年の保存が義務づけられています。
適切に保管するにはそれなりのスペースと環境が必要ですが、電子データならわずかなスペースがあれば十分です。
文書の保存にかかるコストも抑えられ、業務全体でかなりのコストダウンを測ることができます。
帳票を電子化すれば、必要な書類を探すのに余計な時間がかかりません。
「コクヨ株式会社」が行った調査によると、オフィスで働く人は1日に平均20分を書類探しにあてていることがわかりました。
これを1年でみると、勤務時間のうち約80時間(※1年間の労働日数240日=5(営業日)×4週×12ヶ月で換算)が書類探しに費やされていることになります。
帳票を電子化すれば、こうした無駄な時間は削減できるでしょう。
加えて、帳票の電子化により、必要な情報だけをすばやく引き出すことができるようになります。
データを抽出して表やグラフ化することもできるので、経営戦略を立てるときなど有益です。
また、ほかのデータベースとの連携すれば、必要な数値を自動的に帳票に反映させることもできます。
帳票作成にかかる手間や人員は大幅に削減でき、業務効率は劇的にアップするでしょう。
さらに、ネットワークを介して帳票をやりとりすれば、わざわざ出向かずとも取引先とリアルタイムでやりとりすることも可能です。
先方からの変更や修正にもその場で対応できるため、お互いに無駄なく作業できます。
帳票を電子化すれば、データの一元管理が可能です。
これにより、他者が入り込めない複雑な認証方法を仕組んだり、権限管理を行って情報へアクセスできる人間を制限したりなど、さまざまな対策をとることができます。
万が一不正なアクセスがあっても発覚しやすく、紙媒体よりもよりセキュリティ体制は強固となるでしょう。
ひとくちに電子帳票システムといっても、種類はさまざまです。システムを選ぶ際はどのような点に注意すればよいのでしょうか。
電子帳票システムは、上記の3つの機能があります。それぞれの機能でどのようなことができるのか、細かくチェックしておきましょう。
まず帳票作成では、データの取得方法や扱えるデータの種類が重要です。
出力形式もさまざまあるため、PDFやExcelなど、どんな形式に対応しているのか見ておく必要があります。
また、帳票の配信では、電子データを取引先や社内の必要な部署などに送ります。このとき、紙媒体での出力やFAX送信などにも対応しているものが望ましいでしょう。
さらに、帳票管理では、データの適切な分類に加え、部分的なデータ抽出や検索ができるものがベターです。後に過去のデータが必要になったとき、慌てずにすみます。
電子帳票システムのなかには作成、配信、管理のどれかに特化したもの、すべてを網羅したものなど、さまざまです。
どのようなシステムが望ましいかよく考え、使い勝手のよいものを選びましょう。
どんなに優秀なシステムも、自社の環境とマッチしていなければ使えません。特に電子データのファイル形式については、きちんと確認しておきましょう。
一般的にCSV、Excel、PDFに対応していれば、ほとんどのシステムは使えます。
しかしフォーマットがこれら以外の場合は、データの連係や変形について注意が必要です。
また、データの処理スピードも、システムを選ぶ上では重要となります。
大量データに対応できないシステムだと、プリントアウトやFAX送信に1日かかってしまうこともあるでしょう。
電子帳票システムを選ぶ際は、対応可能なデータ容量なども見ておくことをおすすめします。
ここからは、特におすすめの電子帳票システムを選りすぐって10点紹介します。それぞれ特長は異なるので、必要な機能など検討してみてくださいね。
・どんな帳票も発行可能
・請求データを一括で連携完了
・複雑な機能がなく、帳票発行業務に特化している
楽楽明細は請求書、納品書、支払い明細などの帳票をWeb上で発行するクラウド型のシステムです。
楽楽明細で請求書を電子化することで、郵送などにかかっていたコストが0円になるだけでなく、請求書作成にかかっていた時間も96%削減可能に。
また、初期設定や今後の運用の相談・提案等については電話又はメールにて対応しているため、初めてシステムを導入する企業にも安心のサポート体制といえます。
・利用者の制限可能
・大量帳票にも対応
・ExcelやCSVに出力可能
・帳票承認フロー機能 など
Pandora-AXは、NTTデータビジネスブレインズ社が提供する電子帳票システムです。
特徴としては、強固なセキュリティ対策が挙げられます。
まず、電子帳票は、利用者ごとに詳細な権限の付与が可能です。
閲覧、印刷、検索、二次加工などについても、それぞれに利用権の設定を変えることができます。
さらに、帳票承認フロー機能で情報伝達の記録を残せるため、誰が帳票をチェックしたのかの確認も容易です。
そのほか、帳票変換はプリンタをはるかに凌ぎます。帳票入手までにかかる時間は大幅に短縮されるでしょう。
・プラグイン完結型1種・クラウド型2種の3タイプ
・kintoneと連携
RepotoneUは、株式会社ソルウェアの電子帳票システムです。
ビジネスアプリクラウドサービス「kintone」で管理しているあらゆる帳票データをExcelやPDFで出力します。
サービスを選択する際は、ランニングコストのかからないプラグイン完結型か、初期費用不要のクラウド型かを決めましょう。
クラウド型の「RepotoneU Pro」は、ワンクリックで電子データの出力が可能。出力方法は多彩で、帳票を一括で出力したり一覧形式にしたりできるほか、ラベルに印刷もできます。
・RepotoneU Pro(クラウド型)15,000円/月(税別)
・RepotoneU PDF(プラグイン完結型)98,000円(税別)
・RepotoneU Excel(プラグイン完結型)200,000円(税別)
・高度な検索機能
・複数のオーバーレイ作成可能
・データ参照画面を2パターンで展開
株式会社三菱電機ビジネスシステムの電子帳票システム、e-image(イーイメージ)はセキュリティ対策やデータの二次活用が容易などの理由から、現在までに1600もの会社がこのシステムを導入しています。
プログラムを書かずに帳票定義を行えるため、自動仕分けが可能です。
そのほか、タイムスタンプ機能、メール一括送信機能など帳票管理に必要なさまざまな機能を利用できます。
・多言語対応可
・ドラッグアンドドロップで帳票作成
・UnicodeやWindows外字、各種バーコードにも対応
・ほかのオープンシステムとの連携も可能
Paplesは、日鉄日立システムエンジニアリング株式会社の電子帳票システムです。
誰でも簡単に帳票を作成でき、作った帳票はPaplesサーバーに保管されます。
インターネットに繋がっていれば、権限を持つ人は容易にデータを活用できます。
各種業務システム、ERP、帳票設計ソフト等、オープンシステムとの柔軟な連携も可能。Paples内に取り込み、一元管理することが可能です。
・QRコードでフォルダパスの設定可能
・タイムスタンプ機能
・CSV出力可能
株式会社 クラウド テクノロジーズの電子帳票システム、DOCUMENT MARKは帳票の共有と活用が容易になる、さまざまな機能が揃っています。
大量の書類はQRコードをまとめて発行し、それぞれスキャンするだけで取り込めます。
トップ画面も分かりやすく作られているため、検索もスピーディ。10,000ページの書類も瞬時に検索可能です。
・ベースライセンス:150,000円(導入費用)+オプション代
・ランニングコスト:30,000円/月
・CSVデータまたは帳票イメージを送信すれば自動でFAX送信
・送信結果はメールやFAXでお知らせ
株式会社ネクスウェイの電子帳票システム、FNX e-帳票FAXサービスは「帳票配信」に特化したシステムで、クラウドサーバーを介して取引先などに必要な帳票をFAXします。
高度な通信技術を備え、大容量の帳票もすばやく処理。
セキュリティやサポートも充実しており、24時間365日対応してくれます。
海外やフリーダイヤルへの送信もでき、帳票配信機能だけが欲しい場合におすすめです。
・10,000円~/月
・高速変換・高速検索が可能
・多彩なオプション
・堅牢なセキュリティ
2007~18年までシェアナンバーワンを誇る、JFEシステムズ株式会社の電子帳票システム、FiBridgeII(ファイブリッジツー)です。
複数帳票の串刺し検索、複数条件によるスムーズな検索が可能。データを抽出して二次活用もしやすく、CSV形式で出力できます。
帳票へのアクセスをきめ細かく権限設定できるほか、アクセスやイベントログでの履歴管理機能もついており、セキュリティも安心。導入実績も多く、運用方法に合わせて最適なシステムを構築できます。
・安定した識字率
・手書き文字にも対応
・ファイル一括出力機能
株式会社ユニオンシンクの電子帳票システム、OCRデザイナーは「帳票管理」に特化しており、さまざまなデータをスキャナで読み取り、加工可能なファイル形式(CSV)にしてくれます。
手書き文字などにも対応するため、過去の古い記録も二次加工可能です。
ファイルのグループ分けもできるため、あとから自分で分類する手間がありません。
・100種類以上のテンプレートフォーム
・豊富な帳票発行方法
・クラウド型でプログラミング不要
ティービー株式会社の電子帳票システム、LinkPrint CLOUDは、印刷データとフォームとの紐付けなどはクラウド上で行うため、ワンクリックで必要な情報がそろいます。
すぐに利用可能なテンプレートフォームは100種類以上あるうえ、それぞれカスタマイズも可能です。
いつ・誰が・どのフォームで・どのデータを印刷したかは履歴で確認できるため、情報管理も適切に行えます。
・LinkPrint CLOUD(開発版):180,000万円~/年
・LinkPrint CLOUD(ユーザー版):240,000円~/年
・190カ国50万社が利用
・スマホのようにカスタマイズ可能
こちらは、デンマークに本社を持つ「Tradeshift」のグローバル電子取引プラットフォーム、Tradeshift Pay(トレードシフト・ペイ)です。
請求書などを電子化できるため、見積・注文・請求など、商取引プロセスのすべてをオンライン上で行うことができます。
取引先と口座番号の紐付けなども可能なため、入金消し込み作業もスムーズに行えます。
また、ビジネスアプリを使うことで機能をカスタマイズできるため、自社にマッチした使い方が見つかるでしょう。
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帳票を電子データ化すれば、必要な情報の整理・二次活用・管理が容易になります。
作業効率や業務のスリム化が重視されている現在、電子帳票の利用はメリットが大きいといえるでしょう。
電子帳票の作成・整理・管理には電子帳票システムの利用が不可欠です。
それぞれ特徴やコストは異なるため、自社に必要なのはどんな機能なのか、まずはじっくり検討してみることをおすすめします。
利用人数や利用目的に合う電子帳票システムを見つけてくださいね。
画像出典元:o-dan