雇用契約書とは?労働条件通知書との違い・記載事項と作成方法を解説!

雇用契約書とは?労働条件通知書との違い・記載事項と作成方法を解説!

記事更新日: 2021/07/19

執筆: 佐藤杏

雇用契約書とは、会社と従業員が労働条件について合意したことを証明する書類です。

この記事では、労働条件通知書の違いと、雇用契約書の記載事項について解説します。

雇用契約書のひな形を掲載していますので、自社に必要な記載事項を判断して作成を行いましょう。

また、雇用契約書の保存期間は、2020年に3年間から5年間に変更されています。

雇用契約書がない場合の対処法についても確認しましょう。

雇用契約を電子契約で行う方法についても紹介します。

雇用契約書とは

雇用契約書とは、民法第623条に基づいて雇用主と労働者の間で交わされる書面のことです。

会社が人を雇用する事は、会社と個人の間で雇用契約を結ぶことを意味しています。

雇用契約に限らず「契約」は口頭だけでも成立しますが、契約の証拠が残らずトラブルが起こる可能性があります。

雇用契約書は、雇用主(会社側)と雇用される人(働く側)が労働条件に合意していると証明する「雇用トラブル回避」を目的とした書類です。

労働条件通知書との違い

雇用契約書と労働条件通知書は、「労働条件を明示する書類」ですが、意味と法的根拠が異なります。

労働条件通知書

労働条件通知書は、名前の通り「通知」なので会社の意向を伝えるだけの書類です。

雇用主は従業員を雇用したら「労働条件を従業員本人に明示する義務」があります。

労働条件通知書の交付によって「労働条件を従業員本人に明示する義務」を行い、交付しなかった場合は雇用主に30万円の罰金が科せられると労働基準法第15条で決まっています。

雇用契約書

雇用契約書は会社の意向だけでなく、従業員の合意と労働条件通知書を兼ねた書類です。

雇用契約書そのものは、民法の一般的な契約書と同じ位置付けであり、雇用契約において交付義務はありません。

法律上は、労働条件通知書を交付していれば「労働条件を従業員本人に明示する義務」はクリアしているので、雇用契約書がなくても良いとされています。

労働条件を従業員本人に明示する義務

会社は人を雇用したら「労働条件通知書」もしくは「労働条件通知書の内容を含んだ雇用契約書」で労働条件を伝える事が必須です。

雇用契約書も労働条件通知書もなく、労働条件の説明をしていない状態は違法になるので注意しましょう。

労働条件の明示の方法は、2019年4月から労働者の希望があって、紙に印刷できるデータであれば、FAXや電子メール、SNS等で明示することが認められています。

雇用契約書の電子化については、別の章で解説します。

参考:「労働基準法施⾏規則」 改正のお知らせ

雇用契約書に必要な記載事項

雇用契約書に必要な記載事項は、労働基準法第15条に規定されている「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」の2つがあります。

絶対的明示事項(書面による明示が必要な項目)

「絶対的明示事項」は、口頭説明だけでは通知義務を果たした事にはならず、必ず書面で明示・交付しなければなりません。

雇用契約書を作成する時は必ず記載しましょう。

  • 労働契約の期間 
  • 就業場所
  • 従事する業務の内容 
  • 始業・終業時間
  • 交代制のルール事項
  • 所定労働時間を超える労働の有無 
  • 休憩時間、休日、休暇
  • 賃金の決定、計算、支払方法、締切日、支払日 
  • 昇給に関する事項 
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
  •  

相対的明示事項(記載したほうがよい項目)

「相対的明示事項」は、該当する項目があれば明示する必要のある項目です。

記載ではなく口頭説明でも構わない項目ですが、トラブル回避と労働条件の合意の観点から記載することが望ましいです。

  • 昇給に関する事項
  • 退職手当が適用される労働者の範囲、退職手当の決定方法、計算と支払いの方法、支払いの時期に関する事項
  • 臨時に支払われる賃金・賞与などに関する事項
  • 労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項
  • 安全衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰、制裁に関する事項
  • 休職に関する事項

雇用形態別の記載事項

正社員の場合

無期限の雇用契約である正社員の場合は、下記を明記することが望ましいとされていますが、断定出来ない場合は「あり得る」と明示しておいても大丈夫です。

  • 転勤の有無
  • 人事異動や携わる業務内容の変更についての有無
  • 試用期間の有無

 

契約社員の場合

契約社員の場合は、契約期間・契約更新・業務内容に関して細かく明示することが必須です。

一度だけでなく、契約更新のたび、改めて雇用契約書の交付・締結を行います。

  • 雇用契約期間
  • 契約更新の有無(どのように更新が決まるのか、いつまでに更新の有無を予告するのか、など)
  • 労働内容の詳細
  • 労働内容・条件の変化の有無

 

アルバイト・パートタイムの場合

下記の4点は労働基準法では「相対的明示事項」ですが、パートタイム労働法では「絶対的明示事項」になるため、アルバイト・パートタイムの雇用契約書を作成する時は注意が必要です。

  • 昇給の有無
  • 退職金の有無
  • 賞与の有無 
  • 相談窓口の担当者、役職、氏名
 

雇用契約書のひな形

雇用契約書

氏名   生年月日  
現住所  

株式会社 (以下 「甲」 という) と (以下 「乙」 という) は以下の条件に基づき雇用契約 (以下 「本契約」 という) を締結する。 

1、雇用・業務の内容  
2、雇用期間

期間の定め 有・無

※期間の定めの場合
○○○年 ○○月 ○○日 ~ ○○○年 ○○月 ○○日(○○○ヶ月間)

3、就業場所  
4、就業時間 

午前○○時○○ 分 から 午後○○時○○ 分 まで 

休憩時間○○ 時~○○時
(但し業務の都合上 就業時間・休憩時間を変更する場合がある)

5、休日・休暇

土・日曜日及び祝祭日、年末年始、夏期休暇
(但し、業務の都合により上記休日を変更させ就業する場合がある)

代替休暇(有・無)

その他特別休暇(有・無)

6、給料・賃金

基本給(○○○○円)
○○手当(○○○○円)

締切日、支払日・ 毎月 ○○ 日締め翌月○○ 日(銀行が休日のときはその前日)支払

7、昇給 年 ○○回 (○○ 月 )
(但し会社の業績 または個人の成績により改定しない場合がある)
8、賞与 年 ○○ 回 ( ○○月 と ○○ 月 )
(会社業績により 支払日の変更 または支給しないことがある。 額は本人の成績勤務態度、能力等を勘案して定める。)
9、支払方法 ○○銀行 ○○支店 乙の口座へ振込 
10、退職に関する事項 1.定年制:有(満  歳)・無
2.自己都合退職(自己都合退職の場合、退職する  日前に届け出ること)
3.解雇(解雇については、当社就業規則による)
11、保険関係 健康保険 厚生年金 雇用保険の加入(労災保険は事業所に適用) 
12、就業規則 その他 勤務上の詳細な規程は就業規則よる。
13、その他  

以上の合意を証するため本契約書を 2通作成し、甲乙の両当事者記名 (又は署名) 捺印の上、各々1通を保有する。 

 ○○年 ○○ 月  ○○日

 (甲)

所在地
会社名
代表者 代表取締役 

(乙) 

住所

氏名

 

参考:厚生労働省「労働条件通知書のサンプル」

雇用契約書も労働条件通知書も法的に決まったフォーマットはありませんが、厚生労働省のホームページで労働条件通知書のひな形を公開しています。

雇用契約書は、労働条件通知書の内容を参考にして、自社の雇用形態・労働条件や従業員の個別条件を調整して作成を行います。

掲載した雇用契約書のひな形は、自社に合わせて書き換えて利用してください。

 

雇用契約書のポイント

雇用契約書には押印(署名)が必須

雇用契約書は2部作成し、両者の押印(署名)をした上で、雇用主(会社)と雇用される人(従業員)それぞれが各1部づつ保管します。

雇用契約書を2部作成・押印するのは、合意の証明と改ざんを防ぐのが目的です。

保存期間は5年間

雇用契約書の保存期間は、2020年4月1日の労働基準法の改正施行よって3年間から「退職の日から5年間」に変更されています。

雇用契約書は、労働基準法109条の「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類」に該当します。

退職金請求権や賃金請求権も「未払いが発生した日から5年間分をさかのぼって請求できる」に変更されています。

つまり、雇用契約書は、何か雇用トラブルがあった時のために従業員が退職してから「最低でも5年間」は保存する義務があります

在職中(契約期間中)の従業員の雇用契約書は、破棄すると保存義務違反になるので長期間保存する必要があると覚えておきましょう。

10年間勤務後、退職した従業員の雇用契約書=最低15年間保存

参考:厚生労働省リーフレット「未払賃金が請求できる期間などが延長されます」

トラブルを防ぎたいなら雇用契約書

雇用トラブルを防ぎたいなら雇用契約書は必須です。

雇用契約書の方が一方的な通知になってしまう労働条件通知書よりも、雇用トラブル回避に繋がり、双方が信頼して雇用関係を構築できます。

デメリットは、雇用契約書の方が2部作成するなど作成・締結に手間とコストがかかることです。

雇用契約書と労働条件通知書を雇用形態や期間など自社で基準を設けて使い分ける事もできますが、業務が煩雑になるため統一したほうが良いでしょう。

雇用契約書を電子化するには

雇用契約を電子契約で行うことは可能です。

ただし、雇用契約書は署名が必要なため、原本性を証明する電子署名や電子帳簿保存法の要件を満たしていないと法的に有効な契約と認められません。

また、紙の雇用契約書を電子データ化して保存する事は可能ですが、契約書原本を廃棄してしまうと5年間の保存義務違反になります。

紙の雇用契約書を完全廃止して電子データだけで雇用契約の締結・保管を行うには、法的要件を満たした「電子契約システム」や「労務管理システム」が必要です。

雇用契約書を電子化するなら「電子契約システム」や「労務管理システム」を導入しましょう。

 

雇用契約書がない場合はどうする?

会社側が行うべき対応

会社は、従業員が入社してくる前に労働条件を提示する事が望ましいとされています。

雇用契約書か労働条件通知書のどちらを交付するのか決定して、遅くとも従業員入社当日までに交付を行います。

従業員が労働基準監督署や弁護士に「会社が労働条件を通知しない」「通知の求めにも応じなかった」と相談した場合は違反が発覚します。

従業員側が行うべき対応

雇用契約書などで労働条件を書面で交付してくれない会社への就職は避けるべきです。

労働条件の確認と書面の受け取りは、できる限り「入社前」に行います。

入社後も交付されない場合は「いつ労働条件の書面通知があるのか」と確認して催促しましょう。

労働基準監督署か弁護士に相談する

会社に書面通知を催促しても対応がなかった場合は、労働基準監督署か弁護士に相談しましょう。

雇用契約書がない会社を辞める方法

労働条件の通知を催促しても交付されない場合は、違法行為を行っている会社と判断し退職した方が良いでしょう。

労働条件の通知がない場合は「雇用期間の定めがない従業員」と判断されるため、民法627条の「退職希望日の14日前に伝えれば退職が認められる」ルールが適用できます。

会社に「労働条件の合意と通知がないため、民法627条に従って退職する」と伝えて退職することが可能です。

 

まとめ

雇用契約書についてまとめました。

雇用契約書は、会社と従業員が「雇用契約に同意した」証拠の書類です。

労働条件を従業員に明示するのは義務ですので、雇用契約書もしくは労働通知書で明示を行いましょう。

画像出典元:O-DAN

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